月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第37話 1977 『世界儒陀イジメ協会の陰謀』

 年明けの1月3日から青酸コーラ無差別殺人事件が世を騒がせていた。

 東京で2件、大阪で1件、

 さらに毒入りチョコレート箱(東京)が発見され、

 “オコレル ミニクイ ニホンジンニ テンチュウヲ クタス”

 とゴム印で脅迫文らしきものが添えられていた。

 一般家庭

 朝の食卓に家族が集まり、夫は新聞片手に食パンを頬張る。

 農家なのだがパン食にも抵抗が無くなっていた。

 食材の3分の1近くを満州帝国頼ってる。

 アメリカの農産物交渉も始まり、

 国内産は、安全だが割高なモノというイメージばかりが強まっていた。

 「怖い事件だな」

 「パンはやめようかしら」

 「「えぇえええ〜!!」」 ガキ共の抗議の悲鳴

 「不精しないでパン作ればいいだろう」 にや

 「小麦粉に毒が入ってたらどうするのよ」

 「熱を加えたら毒が壊れないのかな」

 「そんなの知るわけないじゃない」

 「家で小麦も作ってみるか」

 「作れるの?」

 「まぁ 農協で米と交換する方法もある」

 「そっちの方が身元もわかるし安全かしら」

 「お前たちも落ちてるモノを口に入れるじゃないぞ」

 「「えぇ〜 そんなことしないよ」」

 「だといいけどな」

 「「・・・・」」 むぅ〜

 「誰がやってるのかしら」

 「東京と大阪だから組織的だ」

 「まぁ 日本人を無差別に殺したがって、毒を扱ってる連中だろうな」

 「「・・・・」」 ため息

 

 

 

 首相公選は、議員100人以上の推薦で立候補でき、

 国民投票で選出される、

 一旦、総理大臣に収まると任期は4年と決まっていて、

 支持基盤の党から離れ、

 大統領(統治者) VS 議会(監視団体)の構図が作られた。

 総理には衆議院の解散権があり、

 議会は過半数で首相をリコールでき、

 首相の継続を国民投票で問う仕組みになっていた。

 日本首相官邸

 「ったくぅ 総理大臣になったばかりで、無差別毒殺事件は困るよ」

 「国民は、時勢の悪い総理という印象を持ちやすいですからね」

 「党内じゃ党首の挿げ変えを考えてるよ」

 「そういう動きもありますね」

 「あの中卒野郎の差し金じゃないだろうな」

 「まさか」

 「やれやれ、総理になったと思ったら2期目にケチがついて、四面楚歌か・・・」

 「ところで・・・なんだ。この開発費の増額は?」

 「露鳳の科学技術が頭打ちに近付いてるので、思考錯誤が増えたようです」

 「さらに例の時空関連か開発予算も・・・」

 「こんな予算を回せるわけがかろう」

 「日本は以前から開発費が少ない傾向でしたから通常は、こんなものだと」

 「オイルショックで設備投資が落ち込んでるのに、官僚の我が侭を一々聞いてられるか」

 「もっと取捨選択して予算を絞るか削減したまえ、うんなに回せるか」

 「産業は、露鳳の技術の恩恵を受けてるはず」

 「恩恵と言ったって間接的なものだし、高額投資の割に利潤が小さいだろう」

 「利益を早期回収して資源を買わないといけませんから、薄利多売になる傾向です」

 「エコノミックアニマルで叩かれてるだろう」

 「だいたい、そんなに急いで先行投資する必要があるのか」

 「もっと腰を落ち付かせて、利潤を高めるべきだろう」

 「ドイツとアメリカが高級品の開発競争を仕掛けてくる傾向が強く、手抜きがしにくいことと」

 「中華民国が中級品の生産で追い上げを掛けてきてるので」

 「日本の中級品以下の産業は価格競争を強いられてます」

 「中華民国から特許料を取れてるのだろうな」

 「それはもう」

 「しかし、中国労働者の場合、低賃金どころか、衣食住だけという事も珍しくなく」

 「知っとるよ。戦時中、中華民国の財務顧問だったからな」

 「戦後は、外資シンジケートの配当もありますし」

 「それで産業の空洞化で。所得が上がって、物価も上がって、開発費も上がる・・・」

 「そういうことになりますね」

 「せっかく、土地転がしを押さえさせたというのに、大陸の外資株か」

 「資源もろくになく、土地も狭い日本で、工業生産に頼らず、株に頼るようになるのは危険だな」

 「とはいっても国民も安楽に稼ぎたいと思いますから」

 「あんな紙切れを借金買いして生活を依存してどうする」

 「あまり、耳痛いことを言うと国民の支持失いますし」

 「狂乱物価か・・・・」

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 葉巻型の時空巡洋艦 “春日” の開発が始まっていた。

 CADの製図は、これまで得た情報に対応でき、

 且つ、もっとも信頼のおける構造工学が使われる。

 「進んでる?」

 「露鳳の核素材のほとんどは、生産部門と他部門にとられますからね」

 「時空巡洋艦の質量に回せる核は4000tほどしかないから・・・」

 「3600tに減った」

 「またですか」

 「すまんね」

 「初の時空巡洋艦は、幸先の良さで “春日” に決まったよ」

 「“かすが” でなく “はるひ” ですか?」

 「八咫烏(やたがらす)は、無人偵察機にとられたし」

 「日本語読みは親しみやすいし、春の門出っていうだろう」

 「しかし、完成はいつになるやら」

 「まぁ 実証試験と造船所が完成するまでの間の下書きのようなものだ」

 「気長にやるしかないだろう。書き直しでも使えるものだし」

 「CADで、随分、楽になりましたね」

 「まぁ 使いこなせないとドロップアウトすることになるがね」

 「DPP障壁を形状変化させられるとなると遮蔽と迷彩が可能になりますし」

   次元(Dimension) + 位相(Phase) + 粒子(Particle)

 「障壁をどう考えるかで微妙に変わってきますね」

 「現状で防弾は、あまり期待できそうにないかな」

 「成形炸薬(HEAT)弾は、前衛防御が都合がいい」

 「しかし、装弾筒付翼安定徹甲(APFSDS)弾にとって、薄紙程度でしかない」

 「質量比だけで考えるなら、装甲重量に回した方がましですからね」

 「でもDPP障壁全体にエネルギーが拡散して、余剰分が貫通するからビーム兵器には強いよ」

 「それはありますね」

 「やはり、遮蔽と迷彩に重量を回す方がましか」

 「ええ・・・」

 「次元モーターの方は?」

 「基本的に質量分の光速は変わらないので最大で限界」

 「問題は、次元モーター制御と船体強度に集約されますね」

 「上手く調整できないと、乗員がシェイクされかねない」

 「武装はどうするんです?」

 「まぁ 船体ありきだからね」

 「ビーム兵器と実弾とミサイルを付けたす程度になるらしい」

 「弱そうですね」

 「いまのところ、約6500万年前の白亜紀大絶滅から生き残った知的生命体は確認されてない」

 「どの時空潮流でも中生代の大型動植物がリセットされ」

 「中小以下の動植物で新生代の生態系が組み立てられている」

 「自衛する程度の兵装は持たせてもだ」

 「先行してる連中とは最大数百年くらい科学技術が違うから戦う気はないよ」

 

 

 生体技術フロア

 研究員と被験者

 “どうだい、少尉。上手く風に乗れば計算上、滑空できるぞ”

 「ムササビ男みたいだ」 憮然

 “特殊部隊向きだろう”

 「こんな間抜けなモノが特殊部隊に入るのか?」

 “将兵の安全が第一だからね”

 “アメリカで発見されたというモスマンをヒントにした空中脱出用だよ”

 「空中で事故にあったら、この格好で飛び降りろと?」

 “そうそう、地上に無事、降りたら人間に戻る”

 ”ほかにも河童型、人魚型も作ってるぞ”

 「撃たれそうだな。もっと神々しいのがいい」

 “発見した人間が自分の目を疑えばいいよ”

 「そっちか!」

 “いいか、少尉”

 “例え、殺人犯を見てもだ”

 “危険に晒されても正義を貫く勇気があるなら警察に通報するだろう”

 “社会の秩序を正したと人から称賛され尊敬もされる”

 “しかし、それが真実でもだ”

 “人から馬鹿にされる勇気を持つ者は少ない”

 “少尉は、ムササビ男や人魚を見たと人に言えるか”

 「真面目にふざけてんだな・・・」 ため息

 

 

 

 インド洋

 3480t級ギアリング(忠北)型駆逐艦

 1番艦 忠北(チュンブク)

 2番艦 全北(チョンブク)

 忠北 艦橋

 白人将校が乗艦していた。

 儒陀海軍の信頼性と実力の判定を任され、

 将来、韓国海軍とアメリカ海軍が統一行動できる可能性を本国に報告しなければならなかった。

 「艦長。海燕ヘリニダ」

 水平線上にヘリが浮かんでいた。

 ヘリに見つかれば、日本艦隊に座標と速度が知られ、

 水平線の向こう側からでも一方的に攻撃される。

 しばらくすると水平線上に小さな黒い点が現れる。

 「日本の9000t級相模(さがみ)型巡洋艦2隻ニダ」

 艦橋の将兵の視線が水平線に浮かぶ二隻の軍艦に集中する。

 少しばかり海面温度が高く、大気が揺らいで焦点をぼやけさせていた。

 「距離12000mニダ」

 127mm砲でも届く距離だ。

 「大きい軍艦ニダ」

 「大きいだけニダ」

 「忠北は127mm砲3門ニダ」

 「相模(さがみ)型の大砲は100mm砲2門だけニダ」

 「撃ち合えば勝てるニダ」

 「相模(さがみ)型は、両舷に対艦対空対潜ミサイルを格納してる噂ニダ」

 「日本の巡洋艦を撃沈したいニダ」

 儒陀の魂が震える。

 「「「・・・・」」」 ごっくん!

 「撃ちたいニダ」

 「戦争は駄目ニダ」

 「操艦ミスで、ぶつけたら戦争にならないニダ」

 「ぶつけるなら軍艦は勿体無いニダ。民間船をぶつけるニダ」

 儒陀の魂が震える。

 「「「・・・・」」」 ごっくん!

 “や、やめるニダ”

 “撃つニダ”

 “駄目ニダ”

 不意に伝声管から騒ぎが聞こえてくる

 「どうしたニダ?」

 “艦長。スン・ピョンオ伍長が大変ニダ”

 “日本の巡洋艦を撃つニダ!”

 “待つニダ。そんな命令は出てないニダ”

 “日本の巡洋艦を撃たせるニダ”

 “ま、待つニダ”

 “我慢できないニダ”

 1番砲塔が勝手に動き始めていた。

 「と、止めさせろ」 白人将校が真っ青

 儒陀水兵たちがスン・ピョンオ伍長を止めようと1番砲塔に入って・・・

 “日本の巡洋艦を撃たせるニダ”

 “スン・ピョンオ伍長。やめるニダ”

 ばーん!

 「ど、どうした?」

 「スン・ピョンオ伍長が銃を持ってます。撃ちました」

 “日本の巡洋艦を撃つニダ、撃つjこl・vふぃうydちゅs。dつldtl7うづ、b:・お9@h8い!!!”

 「艦長。やめさせるんだ」 白人将校

 「う、撃て、スン・ピョンオ伍長を撃て。大砲を撃たせてはならないニダ!」

 ばーん! ばーん! ばーん! ばーん!

 銃声が1番砲塔から何度も聞こえ・・・

 砲塔内は血塗れ、死者2人、重軽傷3人を出してしまう。

 「スン・ピョンオ伍長・・・人一倍、勇敢で愛国心の強い男だったのに・・・」

 「どうしてニダ・・・スン・ピョンオ伍長・・・」 涙々

 「くっそぉ〜 みんな、日本の巡洋艦に殺され負傷したニダ」

 「許せないニダ・・・」

 「日本は許せないニダ! 日本人は許せないニダ!!!」

 「「「「・・・・・」」」」 怒々・・・憎々・・・恨々・・・

 『儒陀海軍との共同作戦は、当分。困難と報告しておこう・・・』 ため息

 

 

 9000t級相模(さがみ)型巡洋艦 三河、尾張

 三河 CIC

 将兵たちがレーダーを見つめる。

 「忠北(チュンブク)。全北(チョンブク)とも縦列航行してるじゃないか」

 「軍艦が増えればもっと複雑な隊形を組む事が出来るはずです」

 「我々は、人種と民族性で偏見を持つべきではない」

 「各員が私利私欲で派閥を作らず」

 「思いやりと礼儀と努力と誠実を心がけるなら海軍は育つ」

 「個人の努力と皆の協調の結果が成果として現れる」

 「儒陀海軍将兵に負けないようにしなくてはな」

 「「「「はい」」」」

 「艦長」

 「ん?」

 「艦橋の報告ですと」

 「先ほどの忠北(チュンブク)の一番砲塔付近で騒ぎが起きた模様です」

 「映像は撮ってるか?」

 「はい・・・艦外カメラでは、小隊が第一砲塔に移動してますね」

 「距離が遠くてわかり難い・・・何かあったのかな」

 「CICはこういう時、緊迫感とか空気が掴み難くて困るよ」

 「ヘリを近付けさせてみては?」

 「変に警戒させることもないだろう」

 「インド藩王諸国の砲艦外交もおわったし」

 「そろそろ、帰還するとしよう」

 「儒陀艦隊に “航海の安全を祈る” と発光信号を出してくれ」

 「はい」

 

 

 

 丈の低い緑の木々が剥き出しの大地を埋め

 複雑な入り江に沿って白い家々が並んで、コバルトブルーの海を囲む、

 点々と散らばった十数隻のヨットの帆が潮風になびき、

 水平線まで青い空が続く、

 大理石の支柱が並び立ち高台から、良く知られた地中海の風景が広がっていた。

 違和感があるとしたら鷲の国章の付いた海軍旗を掲げた3000t級フリゲート艦がドイツの海を誇示し、

 街の所々にドイツ語の標識が並び、背丈の高いドイツ人が路地を行き来していたことだった。

 日本と欧州の貿易は増え、

 商品の移動だけでなく、

 文化交流、観光、留学など人の行き来も増えていた。

 ドイツ人が増えてもギリシャの伝統は需要があり残され、

 タラモサラタ、ドルマ、イエミスタ、ムサカ、スーヴラキ、ギロ・・・

 ギリシャ料理がテーブルに並んでいた。

 日本人たち

 「雅楽オーケストラの評判は、どうだったね」

 「少なくとも我慢大会にはならなかったと思いたいね」

 「好評じゃないわけか」

 「日本人でさえまともに聞かないモノだっただろう」

 「元々 大人数の楽団を支えられる国内需要がなかったから供給力は育ちにくいからな」

 「それもあるがね」

 「庶民が競争して何十回と伝統を壊して再構築しなきゃいけないのに雅楽家相伝」

 「洗練されてないし、変化と曲数が乏しい」

 「だから切磋琢磨してきた交響曲が入ってくると負けてしまう」

 「伝統が完成されてると思い込んで守り続けると競争力を失ってしまうという例だな」

 「いっそ、交響曲で勝負したらどうだ」

 「そっちの方がいいとは思ったけど戦争で負けなかった災いしたな」

 「戦後、雅楽楽器を学校教材にして層を増やして今風のアレンジを加えてたけど」

 「テンポとメリハリが弱かったからね」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「まぁ ツアーも終わったし、観光を楽しむか」

 「あのオレンジの街路樹は面白い」

 「ネラジアの実は酸っぱいからジャム用らしいよ。風呂に浮かべるのも悪くないそうだ」

 「写真より木が増えてる気がするな」

 「ドイツ人は森が好きだからね。大昔のギリシャに戻したがってる」

 「へぇ じゃコバルトブルーの海も長くないかもな」

 「どうもドイツは、観光に向かないな」

 「ドイツ人の性格だからねぇ」

 「でも地中海の風土のせいか、ベルリンのドイツ人より性格が大らかな気がする」

 「風土が人の性格に与える影響ってあるだろう」

 「でもまぁ いちいち入出国検査しなくていいし悪くないよ」

 「北のバルカン山脈は面白そうだけどね」

 「ドイツ当局の話しだと、もう少し待った方がいいそうだ」

 「ベオグラードをやめたのも、パルチザンの生き残りがいるらしいからだ」

 「全部、雲南省に追い出したんじゃないのか」

 「結局、伝統は残すべきとなって、10分の1くらいは残したらしいよ」

 「それで何パーセントかは、反ドイツ精神に燃えるらしい」

 「そういや、日本も延辺朝鮮族自治州を残したっけ」

 「あれは忘れたんじゃないのか」

 「いや、半島と少しばかり気質が違ってて見送られたらしいよ」

 「実は杓子定規で管轄が違ったのが最大の原因」

 「だから、満州帝国に逃げた朝鮮族はそのまま残ってる」

 「そこを足場に儒陀人が日本に入ってきてるわけか」

 「そういえばドイツにも儒陀人がいたよ」

 「なにやら情報源になってるらしいって、ドイツ人が言ってたな」

 「まぁ どこの国でも似たようなことしてるんだろう」

 「外務省も東欧の少数民族に知り合いがいるらしいからね」

 「ふ〜ん」

 「どちらにしろ、本物の伝統は雲南省に引っ越してるよ」

 「・・・しかし、ドイツは、日本とどこかで似てるな」

 「まぁ 皇帝と貴族が残ってドイツ人が多数を占めてる」

 「特権階級に実力、能力、新参が押し潰される傾向があるからね・・・」

 統一でもたらされる画一化は、メリットとデメリットがあった。

 ドイツ人にとって慣れ親しんだ習慣でも、異民族にとって苦痛なこともある。

 そして、聖域を広げ大国化したドイツ人は、日本人と同様、

 質の変化より量の拡大に向きやすく、

 時流や時勢に鈍感になり、意識変化しにくく、

 自浄能力と改革する意欲を低下させていた。

 「それで、実力と能力を評価されやすいアメリカや雲南省に行くドイツ人もいるわけか」

 「日本人も、満州に行くやつ多いけどな」

 「実力や能力があるからというより、特権があるからだろう」

 「まぁな」

 

 

 ドイツ軍 演習場

 滑空砲と複合装甲を装備した新型戦車が疾走しながら砲撃していた。

 日本外交武官たち

 「砲身のぶれも少なそうだし、いいじゃないか」

 「陸地でソビエトと接しているだけはある」

 「日本も満州帝国と樺太でソビエトと接してるよ」

 「日本の場合、途中に海があるし、首都にまでは来れないだろう」

 「それはそうだがね」

 「どちらにせよ」

 

 レオパルド2戦車

  重量59.7t  全長10.93m×全幅3.74m×全高2.64m

  1500馬力  速度72km/h  行動距離500 km(整地)

  45口径120mm滑腔砲  7.62mm機関銃2丁  4人

 

 「核兵器で睨み合ってるのだから、本格的な戦争にならないと思うね」

 「まぁ 平和が一番だけどね」

 「しかし、リーゼ重戦車とドラッヘ重戦車は、現役なんだな」

 

  100t級リーゼ(巨人)戦車

   全長12m 車体長10m×全幅4.2m×全高3m

   2500馬力 速力65km/h  航続距離260km

   PaK44 55口径128mm砲  7.92mm機銃2丁

 

  180t級ドラッヘ(龍)戦車

   全長14m 車体長12m×全幅5.2m×全高4m

   4500馬力 速力65km/h  航続距離260km

   K39クルップ製52口径149.1mm砲  7.92mm機銃2丁

 

 「大きいから移動が不便なだけで、重量と馬力の比率はいいし」

 「ライフル弾だから対人・対戦車の両用で使えて、自走砲と違って防弾があるからね」

 「中衛まで前進させて、そこから長距離砲撃ができるのが延命の理由らしい」

 「対戦車ヘリや地対地ミサイルで代用が利くだろう。的になりやすいと思うがな」

 「まぁ ロマンでしょう」

 「それは言える。満州でも欲しい」

 「複合装甲にしているのかな」

 「さぁ 自走砲も兼ねてるし」

 「月1両生産らしいから段階的に複合装甲に変えていくんじゃないのかな・・・」

 爆音とともにドイツ空軍の新型双発戦闘機が上空を飛び去っていく、

 「あれがドイツの双発TaFフレイアと単発MeF12トールか・・・」

 「ドイツ人のデザインはユニークだな」

 「形状はともかく、同じクラスの瑞鶴、瑞燕よりやや小さいようだ」

 「日本戦闘機の作戦域は洋上で。ドイツ戦闘機の作戦域は、対地作戦を想定してるからでしょう」

 「ドイツ機は燃料が少ない代わりにマルチロール機能を持たせてます」

 「満州帝国は、ドイツ機の方が好みのようだ」

 「北のソビエト。南の中華民国で、地政学的に似てるところがありますからね」

 「対地作戦用に改良した瑞燕を納入してますが基本設計は変わってませんからね・・・」

 そして、双発の対地攻撃機JuEF010が爆弾を投下していく、

 「あれが、お目当ての対地爆撃機か」

 「ええ、30mm対空機銃弾を受けても簡単に落ちないとか」

 「日本じゃ あまり使わなそうだが、満州なら使い勝手が良さそうではある」

 「アメリカも対地専用の爆撃機を開発中です」

 「中途半端なマルチロール戦闘機より、戦闘機と爆撃機の機能を分担させた方がいいと思うがね」

 「戦争が始まれば互いに巡航ミサイルの先制攻撃で航空基地が機能しない可能性がある」

 「さらに空挺部隊の強襲を受けるようになればお手上げ」

 「そう考えるなら攻撃機より攻撃ヘリの方がいいような気もする」

 「あとイギリスのハリアーとかも・・・」

 「ドイツ帝国は、アウトバーンの一部を滑走路として運用可能だし」

 「日本も一部の道路を滑走路として運用できるようしている」

 「瑞燕と瑞鶴は600mもあれば離着陸できるよ。まぁ 不満ではあるがね」

 「やはり、VTOL機の開発は必要ですか」

 「まぁ 検討してるが、どうにも予算が足りない」

 「いったいどこに浪費してるのやら」

 「ふっ」

 

 

 

 インド大陸

 ハイデラバード藩王国

 マンティコアの絵を掲げたインド人が反儒運動を起こしていた。

 ホテルの日本人たち

 「インド人と儒陀人。いい勝負だと思うんだがな」

 「同属嫌悪ってやつだろう・・」

 扉が開くと同僚がラッシーとマサラカリの入った袋を買ってくる。

 「参ったよ。日本人だと知ったら押し売りが集ってくる」

 「最初に、いらないって強めに言うんだよ」

 「インド人の商売はそこから始まる」

 「愛想笑いしてたらカモとしか思われないよ」

 「だから、韓国人というと殺されそうになるし」

 「「「あははは・・・」」」

 「儒陀とハイデラバード藩王国は同盟国なのにな」

 「海の道を儒陀に押さえられて年々交通料が増えて面白くないのだろう」

 「ハイデラバード藩王国は生き伸びそう?」

 「アメリカ軍の装備を中心に軍事力が伸びてる」

 「M48パットンとノースロップF5で基本的に儒陀と同じだな」

 「インド藩王諸国はソビエト製、ドイツ製、日本製が多い」

 「武器売買で日本は負けてるんじゃないのか」

 「あまり売りたくないモノがあるらしい」

 「だから、民需ばかり強くなるらしいけどな」

 「しかし、儒陀の入植がインド独立の切っ掛けになったとはいえ、日本人の評判も良くないようだ」

 「まぁ 儒陀人がいるのは日本人のせいだからね」

 「儒陀の悪行が増えると日本人のイメージも下がるよ」

 「だとしたらインド全体から嫌われるのも時間の問題だな」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 儒陀藩皇国

 反政府暴動が起きていた。

 戦争が終わり外敵の脅威が薄れ、

 国民は生活苦の原因を権力層に向けはじめる。

 陸橋の工事現場

 「相変わらず、騒がしい国だな」

 「反政府暴動だよ」

 「やれやれ、反日国のために陸橋を作ってやるなんて、とんだお人よしだぜ」

 「まぁ 戦後で困ってるのは確かだし、金を払ってくれるならね」

 「アメリカに貰った金は使い切ったんじゃないのか」

 「上は私腹肥やしてるし。この橋は、アメリカが戦車を通すための橋だよ」

 「アメリカ人が金を出して、日本人が作って、儒陀人が使うんだな」

 「ふっ ところで、政府からよろしくというのは?」

 「青酸コーラ無差別殺人事件の内偵でね。しばらく作業員でいさせてくれ」

 「儒陀人が?」

 「さぁ しかし、国の命令なのか、私的なのかわからなくてな」

 「三つ子の魂100まで」

 「学校で反日教育される以前から親から英才教育を受けてる生粋の反日だよ」

 「嘘吐きで泥棒で強盗だから、握手してくるときは左手にナイフを持ってると思ってたらいい」

 「本国は、戦争なんてしたくないのだけどねぇ」

 「金持ちなんとやらですか」

 「まぁ そういうことだし、儒陀人はアメリカ、ドイツ、ソビエトを盾代わりに使おうとするし・・・」

 どかーん!!!!

 駅が突如、爆発し、周辺の街まで吹き飛ばし阿鼻叫喚となっていた。

 「なんだ? 爆発したぞ」

 「不発弾でも残ってたのかな」

 「そういえば、戦後だっけ」

 「この辺の空域はアメリカ空軍が守ってたから大丈夫だと言ってたんだがな」

 直径30m、深さ10mの穴が空き、

 駅の周辺500mの建物の大部分が破壊され、

 1647世帯、7800名の被災者を出してしまう。

 

 

 儒陀藩皇国 日本語学校

 “戦前戦中の軍事費増大と日本経済不況に相関関係があることが知られるにつれ”

 “過去の反省の下、周辺国の軍事力に見合う軍事費の整備を行うことになりました”

 “戦後、軍事的に不足であっても、国家財政を破綻させるわけにはいかず”

 “不足分は同盟や国際外交努力により補いました”

 “海外から資源を購入し、加工し、輸出することで利益を上げ”

 “日本産業は大きくなり、国際社会と高度な工業製品で競争できるようになりました”

 “いまでは、世界有数の経済大国として・・・”

 「もういいニダ」

 「日本はインド戦争を利用して豊かになった癖に許せないニダ」

 「全部、儒陀民族の血で成し得た繁栄ニダ」

 「全部、奪い返すニダ」

 「チョッパリ日本人には何一つあげてはいけないニダ」

 「日本に行ったら全て奪ってくるニダ」

 

 

 

 儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「皇帝。駅の爆発は、爆発物を輸送中だった貨物列車で。護送員の火の不始末だったニダ」

 「皇帝。民衆の反政府暴動が大きくなりそうニダ。発砲許可を・・・」

 「皇帝。国庫のお金の金額と財務表の金額が違うニダ」

 「・・・・」

 「「「皇帝!」」」

 「儒陀は、世界文明発祥の天孫民族の国ニダ」

 「儒陀人は、世界最高の頭脳ニダ」

 「戦争が終わったら世界文化の中心になるはずニダ」

 「あっという間に日本を追い抜いて、世界の5強に入るはずニダ」

 「なんで上手くいかないニダ」

 「きっと、優秀な儒陀人を妬んで世界的な反儒陀組織が作られてるニダ」

 「そ、そうニダ」

 「そうに違いないニダ!!!」

 「世界一優秀な儒陀民族がこんな酷いはずがないニダ」

 「悪いのは、儒陀政府でも儒陀民族でもないニダ」

 「儒陀と儒陀人が上手くいかないのは、闇の反儒陀勢力の陰謀ニダ」

 「「「「おお〜〜〜!!!」」」」

 「その名も世界儒陀イジメ協会J・I・Kニダ」

 「「「「おお〜〜〜!!!」」」」

 「日本、インド、カーストの略も兼ねてるニダ」

 「「「「おお〜〜〜!!!」」」」

 「すぐ、日本人とインド人の闇の組織が儒陀侵略する映画をハリウッドに作らせるニダ」

 「正義の儒陀人が変身して、儒陀と儒陀人と全世界を守るニダ」

 「「「「おお〜〜〜!!!」」」」

 「日本、インド、カーストは、20世紀の倭寇枢軸同盟ニダ」

 「反儒陀運動を利用して世界征服を企んでる悪の組織ニダ」

 「「「「おお〜〜〜!!!」」」」

 「日本とインドとカーストの世界的な陰謀を暴いてやったニダ」

 「「「「おお〜〜〜!!!」」」」

 「日本に謝罪と賠償を要求するニダ!!」

 「「「「要求するニダ!!!」」」」 

 「インドに謝罪と賠償を要求するニダ!!!」

 「「「「要求するニダ!!!」」」」 

 「カーストに謝罪と賠償を要求するニダ!!!」

 「「「「要求するニダ!!!」」」」 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 20世紀の倭寇覚醒でしょうか (笑

 代わり映えしない関係です

 

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第36話 1976 『銀河盆栽祭り』

第37話 1977 『世界儒陀イジメ協会の陰謀』
第38話 1978 『走れ、ケンチャマン!』