月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第38話 1978 『走れ、ケンチャマン!』

 儒陀秘密基地

 “日本人から奪うニダ”

 ““““日本人を不幸にしてやるニダ!””””

 “日本人を騙すニダ”

 ““““日本人から奪うニダ!””””

 “日本人を犯すニダ”

 ““““日本人を犯すニダ!””””

 “日本人を殺すニダ”

 ““““日本人を殺すニダ!””””

 “日本人を不幸にしてやるニダ!”

 ““““日本人を不幸にしてやるニダ!””””

 

 “この店は、ゴキブリの入った飯を出してるニダ”

 「そんな・・・」

 “謝罪と賠償を要求するニダ”

 「・・・・・・」

 

 「そんな店、知らないニダ」

 「あの店は、とてもうどんと呼べる代物じゃないニダ」 ひそひそ

 「あの店は、カビ臭くて駄目ニダ」 ひそひそ

 「あの店は、気持ち悪いニダ。やめた方がいいニダ」 ひそひそ

 「グルメ専門家ニダ。あの店は最低最悪ニダ」 ひそひそ

 「あの店は、最低のクズみたいな料理ニダ」 ひそひそ

 

 がちゃん!

 “こんな店潰れるニダ!!」

 キャー!

 

 “この店は抵当に入ったニダ”

 「お願いします。も、もう少し・・・」

 “もう潰れるニダ”

 

 「うひょ! ひょ! ひょ!・・・」

 きゃー! やめてー!

 ・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 「ふぅ〜 やったあとの一服は美味いニダ」

 

 

 中華民国

 政府は、シンジケートが作成した文書にサインをする役所でしかなく、

 国会は、シンジケートが提出した案件に賛否するだけの機関でしかなかった。

 各外資シンジケートは各々の勢力比と上納金が票数となって、行政が決められていた。

 獣の国は、国権たる牙をもがれ、国威たる爪を削られて檻の中だった。

 その代償は大きく、

 各国は安心感によって、膨大な中華投資を行い、

 漢民族の衣食住は、歴代王朝史上、最も豊かだった。

 上海の日系ホテル

 日本人たち

 「相変わらず蒸し暑い街だな」

 冷房の利いたホテルに入ると日本人たちはくつろぎ始めた。

 海外利権が大きくなると国内の貧富の格差は大きくなる。

 欧米諸国はその格差が大きく、日本は比較的小さかったとはいえ、

 大航海時代以来の鉄則であり、

 現代社会でも息づいていた。

 「さっそくだけど、オーストラリアの中華民国への15700t級空母メルボルンの輸出の件だが」

 「日系シンジケートのサイン待ちになってる」

 「戦中の軽空母だろう。大したことはなさそうだが」

 「問題は、中国海軍が空母運用のノウハウを会得してしまうことだな」

 「器だけなら怖いことないし、クビ根っこは押さえてるだろう」

 「あのなぁ 4bit、8bitのマイクロプロセッサーを組み上げれば即席の電子戦はできるぞ」

 「そうだよ、中華民国は、偏狭なナショナリズムが廃れ」

 「普遍的なグローバルズムが進んで恐ろしく、センスが良くなってる」

 「それにアフリカ大陸を占領しかけるし」

 「だけど、空母習得の不信感が強まれば、日本海軍の正当性にもつながる」

 「外資シンジケートが中国支配できるのは、漢民族支配より穏健で」

 「中華民族資本より搾取率が小さいからだよ」

 「漢民族のプライドを傷付け過ぎたら全ての利権を失いかねない」

 「満州帝国と雲南省は、耐えられるだろう」

 「そういう問題じゃないよ」

 「日本は、国内消費の十倍以上のモノを生産して国内需要では賄いきれない」

 「敵国が増えれば、輸出先は減るし」

 「軍事費が増大すれば社会資本を削がれ、国内の購買力が無くなる」

 「当然、売れ行き不振は投資熱を押し下げ、連鎖倒産を招き」

 「資本を回収できなければ、国際競争力も低下する」

 「それに大陸の資源帯を失えば日本の経済成長も低迷する」

 「そうはいっても、中華民国の品質が上がってる」

 「日本の中級品産業は軒並み苦戦してるぞ」

 「外資シンジケート産だろう」

 「品質管理は欧米並み、賃金は最貧国並みだ」

 「何とかして欲しいものだな」

 「中華民族資本に手を出したら暴動が起こるし、無理だろう」

 「外資シンジケートができることといったら」

 「中華民国の上前を撥ねて、野心を遅らせることくらいのものだ」

 「中華民国の人口をアフリカ大陸に移動させて、住みやすくしてるのも悪い」

 「漢民族は私利私欲が過ぎてバラバラ。統一行動を取らせにくい国だ」

 「しかし、現状がいいと思わせるのは大変でね」

 「ほかの外資系と同じ意見だが、漢民族同士でいがみ合わせてる方がいいと思えてくるよ」

 「まぁ それだといまの日本の繁栄もないということか」

 「そうそう、海外貿易が日本経済を牽引してるといってもいい」

 「まぁ メルボルンくらいなら支障はないよ」

 「核武装されるよりマシだからね」

 

 

 

 日本帝国国会

 国権派と民権派の戦い、

 「有事法案の修正と言われるが。有事の際は、国権を優先させるべきだ」

 「有事とはいえ、国家権力の法人所有地、私有地への冒涜は回避すべきものだ」

 「それでは、ここを戦場にしましょうと敵軍と交渉しろというのかね」

 「それとも、病人や老人が起き上がれないのに家宅侵入は駄目だと?」

 「極端な例を出して、国民の権利を侵害するのは、やめたまえ」

 「現行有事法は、補償もない接収が認められている」

 「戦争は天災と同じ扱いにすべきだろう」

 「天災であっても、民間への強権発動は、承服しがたい」

 「手続きで戦争に負ける方が問題だろうが」

 「現行法の予防処置は平時でも実行可能であり、修正すべきだ」

 「」

 「」

 「」

 

 

 

 “走るニダ ケンチャマン 転ぶニダ ケンチャマン♪”

 “跳ぶニダ ケンチャマン 落ちるニダ ケンチャマン♪”

 “泳ぐニダ ケンチャマン 溺れるニダ ケンチャマン♪”

 “超極悪闇魔王将軍日王から子供たちの未来を守るニダ♪”

 “ケンチャマン パンチ♪”

 “行くニダ ケンチャマン 戻るニダ ケンチャマン♪”

 “腕立て伏せニダ ケンチャマン 懸垂ニダ ケンチャマン♪”

 “遊ぶニダ ケンチャマン 寝るニダ ケンチャマン♪”

 “儒陀を貶める陰謀から子供たちの希望を守るニダ♪”

 “ケンチャマン キック♪”

 “速くニダ ケンチャマン 休むニダ ケンチャマン♪”

 “笑うニダ ケンチャマン 泣かないニダ ケンチャマン♪”

 “自尊心ニダ ケンチャマン 戦うニダ ケンチャマン♪”

 “闇の侵略と支配から子供たちの夢を守るニダ♪”

 “ケンチャマン ビーム♪”

 

 いらいら いらいら! いらいら!!

 バス停

 「遅い 遅い 遅い」

 “小日本(こひもと)君。ケンチャナ♪”

 「ケンチャマン」

 「「うん、ケンチャナ ケンチャナ」」

 

 きゅー! がちゃん! どかん!

 交通事故

 「な、なんてことするんですか」

 “小日本君。ケンチャナ♪”

 「ケ、ケンチャマン」

 「「「うん、ケンチャナ ケンチャナ!」」」

 

 テレビ映像が・・・

 「これは、マジンガーZ?・・・」

 「テコンVニダ」

 「パ、パクってるじゃないか」

 “小日本君。ケンチャナ♪”

 「ぅ・・ケンチャマン」

 「「「「うん、ケンチャナ ケンチャナ!!」」」」

 

 

 2対1!! 2対1!!! 勝ったニダ!!!!

 サッカー

 「や、八百長だ! 八百長じゃないか!!!」

 “小日本君。ケンチャナ♪”

 「で、でも、ケンチャマン」

 「「「「「うん、ケンチャナ ケンチャナ!!!」」」」」

 

 ぐらっ〜 ガタガタ! どか〜ん!!

 倒壊事故

 「あ、危ないじゃないですか」

 “小日本君。ケンチャナ♪”

 「げっ ケンチャマン」

 「「「「「「うん、ケンチャナ ケンチャナ!!!!」」」」」」

 

 どかーん!!!!

 爆発事後

 「これは、酷い・・・」

 “小日本君。ケンチャナ♪”

 「ケンチャマン・・・」

 「「「「「「「うん、ケンチャナ ケンチャナ!!!!!」」」」」」」

 

 「こ、こんなのって、こんなのって・・・」

 「あり得ない、あり得ないよ」

 「もう嫌だ!!!」 だーーーーー!

 「もう、信じられないよ!!!」 ガクガク ブルブル

 “小日本君。ケンチャナ♪”

 そぉ〜

 手が差し伸ばされ

 「ケンチャマン・・・」

 “さぁ 君も・・・”

 「ケ、ケンチャナ・・・」

 すぅ〜

 がしっ!

 「さぁ あの夕陽に向かって一緒に走るニダ」

 「ケンチャマン・・・」 ぽっ!

 ほるほる〜〜〜

 

 映像が流れていく

 「これは、いったい・・・」 ハリウッドの人たち

 「儒陀人の心意気ニダ。生き様ニダ」

 「「「「・・・・・」」」」」 呆然

 「儒陀の “ケンチャナ” 精神は壮大で寛容ニダ」

 「それに比べ、日本人の矮小で稚拙な “和” の精神はゴミニダ」

 「こ、これを本気で?」

 「アニメ史上空前の世界的傑作ニダ〜♪」

 「いっそのこと、大韓航空機銃撃事件も入れたらどうだ?」

 「それ、いただきニダ〜♪」

 「「「「・・・・・」」」」」

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 時空無人探査機 八咫烏(やたがらす)の情報が解析されていく、

 技術者たち

 「映像がいま一つ安定しないな」

 「直接いかないとわからない事が多いからね」

 「最悪でも食糧が得られる世界じゃないとな」

 「しかし、生態系が違うと大気組成や温度。土壌まで微妙に変わってしまうとはね」

 「いまのところ、どの世界でも生存不可能なほどじゃないだろう」

 「こわいのは、化学組成かな」

 「DPPは液体、固体、気体の障壁を調整できるけど、呼吸は必要だから気体分子は素通り」

   ※ 次元(Dimension) + 位相(Phase) + 粒子(Particle)

 「必要な呼吸の消費・排出量を考えると隙間は相当大きくなるし」

 「それにDPP障壁が守れるのは表層面だから、食べてしまうと体内に摂り込まれてしまう」

 「やはり、安全性が気になるな」

 「異世界人の様に現地民に生体反応測定器を体内に打ち込んで、化学変化を調査すべきだろう」

 「いい方法だ。参考になるよ」

 「しかし、予算がな」

 「バックフラッシュで悪影響を受けない範囲で、どの程度、利益をあげられるか、だね」

 「変に悪影響を与えると、近隣世界の先行組に妨害されたり攻撃されかねない」

 「バックフラッシュが先行してる異生態系分岐世界から人類が守られている要素なんだろうな」

 

 

 月巳(つくみ)諸島 (59018ku)

 弥生(ニューブリテン)島、飛鳥(ニューアイルランド)島、端花(ブーゲンビル)島

 大粒のスコールが降り注ぎ、時に地震を起こす、

 勾配が大きく、火山煤の振り積もった島、

 近代化に向かないと誰しもが思った。

 しかし、日本人が入植し、

 熱発電所、水力発電所が次々に建設され、

 鬱蒼としたジャングルが切り開かれていく、

 公共設備と社会基盤が整備されると人口は増加し、

 近代化の弊害なると思われた活火山は地熱発電の宝庫で、

 年間8000mmを越える降雨量は水力発電の源になった。

 オイルショック後も有り余る電力で工業製品が生産され、

 製品が諸外国へと輸出されていく、

 月巳(つくみ)諸島はオースロラリアの130分の1の面積に過ぎなかった。

 しかし、人口は1600万人に達し、オーストラリアの1400万人を越え、

 GDPはオーストラリアの2倍弱に達していた。

 土砂降りの雨が駅ビルの屋根を叩き、

 巨大な稲妻が避雷針に吸い込まれていく、

 

 料亭

 「日本はアジア・太平洋の盟主ニダ」

 「それなのに戦後、日本の弱腰外交でアジア人は欧米の経済支配を受けてるニダ」

 「日本人は好きニダ。日本軍も立派ニダ」

 「しかし、いまの日本政府は弱腰で駄目ニダ」

 「日本民族は、アジアから欧米資本を排斥し」

 「全アジア人解放独立を達成した世界選民にならなければならないニダ」

 「いまこそ、軍備を拡張し、ソビエト、アメリカ、ドイツのアジア支配を防ぐニダ」

 「そうはいっても、いまは、国内産業が優先だからなぁ」

 「戦争が国益のために起こると思ってる間抜けが多いから大丈夫ニダ」

 「戦争は権力掌握のために起きるニダ」

 「日本軍が全アジアを軍事的に支配した後、国権を掌握し全権を握るニダ」

 「国内も占領地も、どうにでもできるニダ」

 「全アジアの排他的日系経済圏を確立するニダ」

 「まぁ それができたら理想てきではあるがね」

 「立ち上がるなら全面的に協力するニダ」

 「協力する代わりに月巳でもポストが欲しいニダ」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 インド戦争が終結し、

 戦雲は、アフリカ内戦と中東戦争へ遠のいていた。

 日本圏は、国内投資と国際交易を中心にした利潤が優先され、

 月巳は、敵対勢力から遠いことから、平和外交の急先鋒に立つことが多く、

 軍事費とポストの削減が取りざたされていた。

 

 

 日本人たち

 「地震が多いのに良くもまぁ こんな高いビルを建てたがるものだ」

 「耐震技術が進んでるし、平地が少ないからね」

 「日本の様子は?」

 「相変わらずの利権社会かな」

 「首相公選でも利権社会は変わらずか」

 「まだ、土建が強いけど、工業も伸びてきてるし、軍属も巻き返してる」

 「票も大きいから利益団体で紛争みたいになって、月巳の派閥にも影響出てきてる」

 「まぁ 月巳は元々利権が小さかったし」

 「しがらみと既得権が小さいときに区画整理してしまったからね」

 「一旦、産業が軌道に乗ると成長は速いし、基盤も強いよ」

 「利権が偏り過ぎて国政を支配したり、民衆から吸い上げ過ぎなければいいけど」

 「しかし、最近は極度な反戦主義者や主戦論者が増えてる気がするがね」

 「バランスを取ろうというより、意図的に二者選択に扇動してる節がある」

 「月巳は近隣に脅威があるというわけでもない」

 「事を荒立てることもないのだが、馬鹿ほど声が大きいし」

 「希少価値がなくなれば暴落して紙くずになることも知らない連中も多いし」

 「札束を印刷すれば国防費を賄えるだろうとか、年金は大丈夫だとか」

 「資源があれば戦争できるだろうとか、経済無知ぶりだ」

 「島国だし、文化的に井の中の蛙のようなところがあるからね」

 「潜在的な脅威と共存するストレスに耐えられず攻撃的になるのかね」

 「下手に世相が偏ると戦前の二の舞になり兼ねないのにな」

 「しかし、族派は、死活問題だから自作自演と誹謗中傷に気をつけないな」

 「連中の口車に乗ると、つらない選択を強いられる」

 

 

 アメリカ合衆国

 白い家

 「X艦の情報は、これだけかね?」

 「いまのところ、確証がありそうなものは・・・」

 「んん・・・端的に言うと日本は、瞬間移動と異世界に干渉する技術を有している・・・か・・・」

 「どこのゴシップ誌を複製したのかね?」

 「気に入ったから、定期購読することにするよ」

 「いえ、これは、CIA、FIB、国防省を合わせた情報ですので」

 「裏付けのデーターはともかく」

 「大枚かけて、ゴシップ記事並みの内容で、目撃証言と写真とはね」

 「君、国家反逆罪に相当するよ」

 「もっとも確証の高い情報です」

 「物証がない限り、どうしようもないぞ」

 「国際外交で、日本に情報提供を強要するというのは?」

 「そんなモノで日本が提出するくらいなら、とうに出させてる」

 「それにX海域は日本が近い、空中給油機を使えば日本の制空圏内に入る」

 「こじれて、日本海軍に妨害されると面倒だ」

 「やはり、内部分裂を誘って、情報を得る方がいいのでは」

 「日本は縦割り組織で特定の利権構造を増長させれば、バランスを崩すはずです」

 「いまは、土建が強かったかな」

 「オイルショック以降は、工業全般に切り替えているようです」

 「日本で後を継げない次男坊以下は満州、半島の大地が吸収したはず」

 「農業はともかく、日本の工業が強くなる要素をどう思うね」

 「官営主導で形を作ったのち、民営に移譲してるからでしょう」

 「消極的で、パイオニアの欠片もない手法ですが、失敗の少ない手法ですし」

 「貧富の格差で遠慮が生まれる要因の一つともいえます」

 「戦後の工業の躍進は、軍事費の削減と低賃金を利用した国際貿易」

 「そして、X艦の情報によるものが大きいかと」

 「疑似未来情報があるなら失策も少なく。合理的な投資も可能なわけか」

 「取り敢えずこれまで通りハワイ銀行を使って日本の幾つかの利権団体と協調し揺さ振りをかけよう」

 「日本人の多くは国益より組織権益で衝突している」

 「“地獄にいる者は天国がわからない” になりやすい」

 「不和と不信を増大させよう」

 「亀裂が大きくなればもっと情報を漏らしてくれるかもしれないな」

 「日本に有利な取引はあまり良くないのでは?」

 「情報戦でドイツに遅れを取るのはまずい」

 「「「「・・・・」」」」

 アメリカ人は、決闘で戦争を終結させた日本と、

 核の応酬で戦争を終結させたドイツとの間で複雑な感情を持っていた。

 

 

 X海域

 100000t級ミニッツ型原子力空母2番艦ドワイト・D・アイゼンハワー

 就航したばかりの空母で、F14トムキャットがタッチダウンを繰り返していた。

 史上類をみないほど巨大な飛行甲板も大型のF14トムキャットが並ぶと手狭になった。

 航空管制官はトムキャットの駒をミニチュアの飛行甲板の上で動かし、

 飛行甲板を効率良くコントロールしていく、

 そして、将兵と空母が一体となって動かなければ空母としての機能を発揮できない、

 1番艦ミニッツの経験がマニュアル化され、

 5000人もの将兵が訓練を繰り返して仕事を体に覚えさせる。

 “空母部隊1群で1国の軍隊と交戦が可能”

 巨大国家プロジェクトで建造される機動部隊の海軍思想であり、

 アメリカ合衆国の政治的なテーゼともなっていた。

 そして、インド戦争で数倍のインド軍の侵攻を食い止めたことで証明していた。

 艦橋

 背広と制服の男が洋上を見渡していた。

 「ようやく、馴染んできたじゃないか」

 「訓練のたまものですよ」

 「空母機動部隊は、アメリカの意思そのものだ」

 艦長は配られて来たコーヒーの一つを背広の男に手渡す。

 「しかし、日本、ドイツ、ソビエトの制空圏内は危険だ。特に日本は・・・」

 「同感です」

 「噂が本当なら、この空母は撃沈24時間前だそうだ」

 「開戦後、1日ですか」

 「前線指揮官の直感と後方司令部の計算が近くて驚いてますよ」

 「正直、F14トムキャットと瑞鶴をどう思うね」

 「まず航空力学的な形状で瑞鶴が上ですね」

 「電子戦能力と気体の素材も数段上でしょう」

 「瑞鶴が日本戦闘機の上限だと思うかね」

 「X艦は地勢力学的な選択肢の形状で、ソビエトのキエフ型航空巡洋艦で間違いないでしょう」

 「艦齢で判断するなら、たぶん、50年前後の未来」

 「何かの現象で、タイムスリップしたものだと思いますね」

 「その何かの答えが、この海の底に眠ってる」

 「わかってますよ。危険を冒してまで、このX海域に張り付かされてるのですから・・・」

 6900t級ロサンゼルス型原子力潜水艦が浮上する。

 「日本の原子力潜水艦建造の動きは?」

 「動きだけならあるよ」

 「というより、小型原子炉なら既に装備してる」

 「あれは機関というより、淡水プラントと酸素中空紙膜の発電用では?」

 「動けなくても潜り続けられるメリットはあるのだろう」

 「本格的な原子力潜水艦の建造が遅れてる」

 「本当は、未知の機関を搭載してるということはないでしょうね」

 「だとしても驚かないね」

 

 

 

 アフリカ大陸

 荷降ろしされた物資が街に流通していく、

 土木建設機械と資材で、内陸に向かう鉄道が建設され、

 内陸から運ばれてきた鉱物資源が船積みされ、日本へと出航していく、

 中国人の移民が増えるほど日本とアフリカ大陸との輸出入量も増加していく、

 ケープタウンの中華街

 日本の船員たちが歩いていた。

 「中国人が増えてないか?」

 アフリカ大陸の総人口は5億5000万ほどで、

 そのうち、中国人は5000万を占めていた。

 「いよいよ。華漢帝国建国かもな」

 「不吉過ぎる」

 「アメリカと欧州も焦り始めてるんじゃないか」

 「欧米の利権も、華僑の利権に比例して大きくなってるし、どうだろう」

 「日本資本は、土木と輸出入だけでいいのか」

 「元々入り込む余地は少ないからね」

 「それにプラチナ、ダイヤモンド、コバルト、クロム、ボーキサイトは大きいし」

 「漢民族に仕切ってもらう方が楽なんだよ」

 「それに中華街なら日本人も居心地がいいしね」

 「ゴミ箱にしか見えないが」

 「なにもないよりいいだろう」

 「しかし、日本資本が再処理施設を受注して建設したと思ったがね」

 「中国人の仕事の仕方は、日本人の感覚と違うからね」

 

 

 

 

 満州帝国

 サーチライトが雪を光らせ、黒雲が地平線の彼方まで覆う、

 灰色の吹雪が防風林を軋ませ、

 凍った路面を数台の自動車が競いながら曲がっていく、

 危険とわかっていても若者は走る。

 「ブレーキングドリフト!!!」

 「いちいち言わないと駄目あるか?」

 「気合いだよ。気合いで曲がるんだ」

 「精神論者のドライバーは危険ある」

 「この暗さと凍った路面じゃパワーは関係ないからな」

 「この車でも勝て・・・あ・・・」

 「カブに追い抜かれたある」

 「くそぉ あの東北弁やろう」

 「なんで寒くないある、普通、凍るある」

 「知るか!」

 「4輪で、まともに走れないのに、よく2輪で滑らないある」

 「カブのくせに」

 「カブに負けたら10万円ある」

 「カブのくせに! カブのくせに!! カブのくせに!!!」

 きゅー!

 「「あ・・」」

 きゅるるるる〜〜!!!!

 満州帝国は、学制、税制、軍制を安定させると治安が良くなり、

 広大な土地から産する穀物が周辺国の食料を支え、

 寒冷地用の住宅地が増えるにつれ、

 日本人は、特権の強い満州国への入植が急増ししていた。

 竜鳳(大慶)油田と低賃金を核にした工業が急速に拡大し、大国化していく、

 所得と娯楽が増えると、若者たちは、遊ぶことを覚え、時に破天荒な方向へと向かう。

 ぼこっ!

 「いたっ!!!!」

 「眠ったら死んべ」

 「殴られて死ぬより、眠って死ぬ方がましだ!」

 「「・・・・・」」

 「連れは?」

 「死んだべ」

 「そうか・・・」

 ぼこっ!

 「いたっ!!!!」

 「眠ったら死んべ」

 「殴られて死ぬより、眠って死ぬ方がましだ!」

 「ここは凍えるべ、行くべ」

 「なぜ助けた?」

 「ほったらかしてたら死ぬべ」

 「ほっとけばいいのに・・・」

 「無茶すんなべ」

 「カブで4輪と競争するお前が言うな!!!」

 

 うどん屋

 「おばんです〜」

 「おや、この雪の中、客が来たよ」

 「こんな日でも開いてるべ」

 「ほかにできることないからね・・・」

 「・・・・」

 ぼこっ!

 「いたっ!!!!」

 「眠ったら死んべ」

 「殴られて死ぬより、眠って死ぬ方がましだ!」

 「そちらは・・・怪我してるじゃない」

 「交通事故にあったべ」

 「まぁ たいへん、大丈夫?」

 「薬箱持ってくるわね」

 ・・・・・・・

 ・・・・

 「なにか、あったけぇのこしゃってくれ」

 「鍋うどんでいいわね」

 「薬箱、ここにおいとくから」

 ・・・・・・・

 ・・・・

 「・・・・・」

 「はよ、たべ」

 「ああ・・・」

 ずる ずる ずる

 「おめげのせいで、50万以上、稼ぎ損ねたべ」

 「だから、放っておけばよかったんだよ」

 「そうはいかないべ」

 「馬鹿だな・・・」

 ずる ずる ずる

 

 どこかの峠

 「ほったらこんなとこに、あるべか?」

 「ああ、あそこだ」

 「ん?」

 ぽん!

 「うぁああああ・・・・」

 ずるずる

 「な、なにするべ!!」

 「おまえ、警察だろう」

 「・・・・」

 「落ちて死ねよ」

 「・・・・」

 「じゃな」

 ・・・・・・

 ・・・・

 がさっ!

 崖から手が伸びる

 「ふぅ〜 危なかったべ・・・」

 「よく落ちなかったな」

 男は、崖の上の岩に座っていた。

 「・・・警察と知って、なぜ、とどめをささなかった」

 「おれは、物覚え付く前から爺さん、婆さん、父親、母親から日帝の悪口を聞いて育ってきた」

 「日本を滅ぼせ、日本人を殺せってな」

 「学校でも日帝が儒陀にしてきた悪行を何度も何度も教育され」

 「日本人を不幸にする計画を練らされた」

 「・・・・」

 「酷い国で、まともなモノなんて何一つなくてさ」

 「同胞を殺して剥ぎ取らないと生き残れなかったし」

 「互いに奪い合って・・・潰し合って・・・憎み合ってきた」

 「糞みたいな国が自画自賛して」

 「糞みたいな民族が日本と日本人を誹謗中傷して正気を保ってきた・・・」

 「・・・・」

 「それで日本に来たら、物が腐るほどある」

 「馬鹿みたいに無防備で人が良い連中ばかり」

 「ころころ騙せるし、隙だらけだ」

 「親と国を信じて、散々悪さもしてきたけどな・・・」

 「・・・・」

 「おまえ、おれの気持ちがわかるか?」

 「・・・・」

 「・・・なぁ あの鍋うどん、美味しかったなぁ」

 「おれは、あの店が、もっと大きな店だった頃、嫌がらせして騙して潰したんだぜ」

 「自殺した娘さんにも酷いことをしたな・・・」

 「ふっ それなのに忘れてやがったよ」

 「・・・・」

 「来るな!!!」

 「おい、あぶねがら・・」

 「ふっ 苦労して日本語を覚えたのに。おまえ、まともな標準語を覚えろよ」

 「ほったらこと・・・」

 「もう、いいニダ・・・」

 「ま、待つべ・・・」

 「じゃな・・・」 ふっ

 すぅ〜

 「待つべ! 秘密基地のアジトを教えてから飛び降りるべ〜〜!!!!!!」

 

 

 インド大陸

 インド藩王諸国と

 儒陀、ハイデラバード藩王国、パキスタン連合の対立構造は戦後も残され、

 軍事競争は終わらなかった。

 日本、ドイツ、アメリカ、イギリスは、武器弾薬を輸出して利益を上げていた。

 儒陀

 戦争が終わり外敵の脅威が遠のくと民衆の不満は権力側に向けられていく、

 国権側は、戦後復興のため資本を集約させ、近代産業を整備するようになると、

 国権に繋がる権益者を中心に利権が強まり、貧富の格差が生じ広がっていく、

 そして、国民の不満を権力層から逸らすため、差別階層を憎ませ、

 弾圧することで誤魔化す、

 しかし、不正腐敗が不満を差別で吸収し誤魔化せなくなるほど大きくなり、

 怒りが限界に達すると反政府運動が起こり、暴動へと発展していく、

 警察は暴動を鎮圧し、

 対外的に向けられるべき軍の銃口さえ、国民に向けられ、発砲される。

 反政府暴動も苛烈化し、

 火炎瓶が投げられ、焼身自殺する者が現れていた。

 

 儒陀 航空基地

 ノースロップF5戦闘機が並んでいた。

 儒陀軍将兵たち

 「まだ、ライセンス生産できないニダカ?」

 「まだニダ」

 「なんで、そんなに工業力が弱いニダ」

 「工業は白丁の仕事ニダ」

 「白丁は人間じゃないニダ。忌み嫌われた地位ニダ」

 「もう、そんな時代じゃないニダ」

 「白丁をいたぶらないとやり切れないほど苦しいニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 儒陀藩皇国 日本語学校

 “戦後の国際社会は、アメリカ、ドイツ帝国、日本、ソビエト連邦を主軸に回っています”

 “様々な国々は、独自の国際外交で自国の国勢を高め、国政を安定させています”

 “産業革命以降、国と国の間は狭まり”

 “他国の生産と市場を脅かすほど工業生産力が増し、国力の指標にさえなっています”

 “日本は、明治維新以降、工業を強め”

 “際貿易の利益によって、繁栄を築いています”

 “しかし、時代は変化し、国際情勢も変化します”

 “何時まで、この状況が続くのか、世界を見据え、よく考えなければなりません”

 「もう、いいニダ」

 「くだらない、クズみたいな日本が生意気ニダ」

 ばしっ!!!

 「こんな教科書! こんな教科書! こんな教科書!」

 がしっ! がしっ! がしっ!

 「嘘ばかり書いて、デタラメな事を!!!」

 がしっ! がしっ! がしっ!

 「お前たちは、日本を信じてはいけないニダ」

 「小心で一人では何もできないゴミどもニダ」

 「日本は悪魔の国。悪魔の民族ニダ」

 「日本を滅ぼすニダ!! 日本民族を滅ぼすニダ!!!!」

 「日本人を苦しめて自殺に追いやるニダ!!!!」

 「日本をミスリードさせて自滅させるニダ!!!!」

 「ウェー ハッハッハ!」

 『『『『せ・・せんせい・・・』』』』

 

 

 新しい儒陀皇帝府が完成し、

 日本の建設業者は追い出され、

 儒陀閣僚と仕上げを行った儒陀業者の手によってテープカットがなされた。

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「中は涼しいニダ」

 「いい屋敷ニダ」

 「皇帝。扉が抵抗なく滑るニダ」

 「日本製ニダ」

 「凄いニダ」

 「日本なら発注すれば自分の墓石でも受注するニダ」

 「「「「ウェー ハッハッハ!」」」」

 「そのうち、遺品になるニダ」

 「日本対世界の戦争を早くみたいニダ」

 「世界が滅びたら、競合のいないインド洋を支配する儒陀が世界を支配するニダ」

 「皇帝。インド藩王諸国は強敵ニダ」

 「インド藩王諸国はドイツ帝国、日本、ソビエトの支援がなければゴミニダ」

 「軽く、一捻りニダ」

 「「「「ウェー ハッハッハ!」」」」

 「皇帝。学生運動が激しさを増してるニダ」

 「鎮圧するニダ!」

 「日本人の外患誘致に乗せられた馬鹿な学生なんか、儒陀人じゃないニダ」

 「民衆を扇動してる日本に謝罪と賠償を要求するニダ」

 「民衆を支援してるインドに謝罪と賠償を要求するニダ」

 「虐殺を牽制する諸外国に謝罪と賠償を要求するニダ」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 ケンチャマンは、暴走するとファビョン魔人に変身するかも (笑

 

 

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第37話 1977 『世界儒陀イジメ協会の陰謀』

第38話 1978 『走れ、ケンチャマン!』
第39話 1979 『世界起源伝説』