月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第39話 1979 『世界起源伝説』

 大海原に小さな島が寂しげに浮かんでいた。

 小さな島であっても3海里(5.5km)〜12海里(約22km)の領海を主張でき、

 +12海里(約22km)は接続海域として法規制ができ、

 排他的経済水域(約370km)は水産資源と鉱物資源権益を主張できた。

 各国とも領域の監視を怠れば侵入され漁業資源を荒らされるため、

 国と国民は、相応の負担が必要になった。

 標高360mの高台にレーダーサイトを載せた管制塔が建設され、

 海燕3機、朱雀3機が全長2500m×全幅80mの滑走路に配備されていた。

 守備隊は2個中隊(約300人)ほどで、対空対潜対艦の管制を行う為、

 海軍艦艇並みのシステマチックな基地と組織編制となっていた。

 指令室に中華民国と国境が近いことから大尉でなく、少佐が立っていた。

 魚釣島(3.82ku) 管制塔

 海燕が探知した情報は、暗号解析を経たのち、基地のモニターに映される。

 「レーダーの影が増えてるようだな」

 「魚釣島の周辺に魚群が集まってきたのでしょう」

 「中華民国の漁船も増えてるようです」

 「中国沿岸から離れて沖まで来てるじゃないか。日本の経済水域に近付いてる」

 「日本製ディーゼルエンジンを積んでる船が増えてるようです」

 「上海の漁船団を仕切ってるのは、イタリア系シンジケートだったな」

 「資源ばかりかまけてるから、イタリア系に中華漁船を取られるんですよ」

 「大陸裏社会じゃ イタリアマフィアは最優良組織らしいからな」

 「他が戦意喪失して守りに入ってるのでしょうか」

 「かもしれないが中華漁船団が遠洋漁業で採算が取れると煩くなってくるぞ」

 「エンジンを売らなきゃいいのに」

 「売らないとボーナスが減るのだろう」

 「売ると国内漁業関係者が困る、売らないとエンジン製造会社が困るという図式ですか」

 「漁業関係者だって、安くていいエンジンを使って豊漁なのだろう」

 「赤潮も増えてるようですし、捕り過ぎると万年不漁になるのでは?」

 「それはあるかもね」

 「ところで、あの船は中華民国の漁船に突っかかってるようだが?」

 「・・・巡視船が割り込もうとしてますね」

 「在日儒陀右翼の抗議船では?」

 「またか・・・」

 「中国漁民は極悪ですからね」

 「日本漁船隊は、在日儒陀の右翼船を心強く思ってるようだが」

 「必要以上に漢民族の反日を増やして攻撃的にさせてるだけだし」

 「やめさせようとすると非国民、売国奴ってなじってくるし。天皇万歳って煩いんですよね」

 「そのくせ、日本漁船の頭目と中華漁船の頭目との交渉を妨害するし・・・」

 「在日儒陀は右翼と組んで表面上は、共産主義を攻撃するがね」

 「軍国主義者と組んで民主主義、民族主義、国粋主義を攻撃するときがあるからな」

 「むかしのように日本の軍拡と戦争を望んでるのでは?」

 「ふっ 軍国連中ほど引っかか・・・・・って、ぶつけやがった!!」

 「朱雀を出して、儒陀船と中国の漁船を分けさせろ」

 「中華民国海上警察にこちらで引き離すと連絡してくれ」

 「まったく、また、日本と中華民国の不和が庶民レベルで広がるな」

 「確かに・・・」

 「撃沈したくなる」

 「えっ!」

 「在日儒陀船を・・・」

 「ええぇ」 くすっ

 

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 時空潮流の研究が進むにつれ、

 時空潮流の分岐が全滅と生態系進化の過程の歪みから起きることが判明する。

 特に知的生命体の発生後は、分岐の頻度が大きくなっていくことから、

 個体利益、繁殖利益、社会的利益における矛盾が分岐を足す要素として最大になっていた。

 「つまり個体の利益を追求し過ぎれば、配偶者から嫌われ、社会的にも食み出し者」

 「かといって、繁殖利益を追求すれば、自己犠牲で辛くなり、社会的にも停滞する」

 「社会的な利益を追求し過ぎると全体主義となり、個体利益や繁殖利益が失われる」

 「個体と交配と社会な立ち位置で葛藤する選択肢が分岐の発生となるわけか」

 「しかし、分岐未満で重複してる矛盾を内包世界も冗長があるというか。ファジーというか」

 「人が認識できる他者は限られているし、思い出なんて曖昧なものだし」

 「バックフラッシュが強力すぎて違う人生を送る同位時空者たちが同列平面上に重複してしまう」

 「ドッペルゲンガーとの邂逅とか」

 「まぁ 波長が合えば感じやすくなるだろうな・・・」

 「所長。準備できました」

 「そうか、やってくれ・・・」

 筒のような次元カタパルトが伸び、

 中に円盤型の探査機が設置されていた。

 それは手順に従って、操作され、

 青白い閃光が瞬くと一瞬にして消えてしまう。

 「早く、有人探査船を送りたいものですよ」

 「携帯用DPP障壁は、完成度がいま一つだからな」

 「しかし、オーラーローブで現地生命体になり済ますとなると」

 「こっちに来てる連中だって似たようなことやってるんだから」

 「次元世界の常識なんじゃないのか」

 

 

 

 民度は、詐欺と窃盗、殺人の発生率と反比例する。

 彼らは労苦を惜しみ、公益を軽蔑し、

 呼吸するように安易に詐欺と窃盗を繰り返し

 “悪党” と呼ばれる集団を形成していく、

 そして、一度作られた不正利益を守るため攻撃的になりやすく、

 時に異常な行動を起こすこともある。

 いかなる国であれ、民度が低下すると法と公益性と新規性が薄れ後進国となっていくため、

 先進国の国民は一定以上のモラルを有していた。

 目の前の東洋人は、世界の最貧国から這い上がろうとしてる民族の一人で・・・

 ベルリンの医療会社

 モニターに駐車場の監視カメラ映像が映されていた。

 黄色人が白人を足蹴にするという珍しい光景が見られ

 “この敗戦国民のフランスチョッパリ!!!”

 げしっ! げしっ! げしっ!

 “ドイツの同盟国、日本は儒陀人のおかげで勝ったニダ!!!”

 げしっ! げしっ! げしっ!

 “だから儒陀人のおかげでドイツ帝国は勝ったニダ!!!”

 げしっ! げしっ! げしっ!

 「・・・なんか、酷い扱いしてるな」

 「ドイツ人でさえ、やらないぞ。誰だ」

 「アポイントだと・・・儒陀人の営業のようです」

 「やれやれ、この会社に来るのかよ」

 「はぁ 例の件の関係者だと」

 ちっ!

 

 役員室

 「今のところ、医療市場の総合で4割というところか」

 「アメリカと競争しながら、日本の追い上げを押さえて4割。悪くありませんね」

 「情報によりますと、日本が我々より優れた医療器具を開発してるのは確かだと」

 「しかし、民間レベルで売買できなければ企業収益が得られず会社は生きていけない」

 「そして、日本医療業者が輸出してる医療器具は同水準で著しく優れてるわけでもない」

 「モンキーモデルを輸出してるのでは?」

 「数倍の開発コストを賭けて、我々と同水準器具の利益では、大損になるだろう」

 「試作品レベルに抑えてるのでは?」

 「んん・・・」

 コツコツ!

 「失礼します。アポイントのありました客人です」

 「どうぞ」

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・

 「こ、これは・・・」

 「世界に誇る儒陀医学界が発明した最新のX線CT装置の設計図ニダ」

 「しかし、これは、72年にアメリカで開発されたものでは?」

 「そ、そんなことないニダ。よく似てるけど、細部が違うニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「完全なメイドイン儒陀ニダ」

 「現物は?」

 「げ、現物はないニダ」

 「「「「・・・・」」」」

 「作れば必ず成功するニダ」

 「本当ニダ。実証済みニダ」

 「現物もないのにどうやって、実証したのかね?」

 「そ、それは・・・・」

 「「「「・・・・」」」」 じーー

 「この私を信用するニダ。必ず儲かるニダ」

 「「「「・・・・」」」」 じーーー

 「X線CT装置の設計図なんて盗んでないニダ〜!!!!」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 

 

 アメリカ合衆国

 小売店

 「また来たニダ〜」

 「今度はなんだ?」

 「儒陀製菓が誇るチョコパイニダ。世界初の新商品ニダ!」

 「・・・あそこにある日本のエンジェルパイとそっくりだが」

 「あれは偽物ニダ。高くて味が悪いニダ」

 「これが本物オリジナルのチョコパイニダ」

 「こっちの方が美味しいニダ。試食してみるニダ」

 「虫は入ってないだろうな・・・」

 白人店主は、用心深げに割って中を覗こうとする。

 「入ってないニダ!!!!」

 「しかし、そういう話しを聞くぞ」

 「日本人が流した嘘ニダ!!! 誹謗中傷ニダ!!!」

 「本当は、日本のエンジェルパイに入ってたニダ!!!」

 「それを儒陀の製菓に入ってたとデマを流してるニダ!!」

 「日本人は、いつもいつも邪魔をするニダ!」

 「本当に悔しいニダ!!!」 ぐすん!

 もぐ、もぐ、もぐ、

 「・・・いまいちだな」

 「そんなことないニダ」

 「こっちが先に開発したのに日本はいつも先に売るニダ!」

 「本当に極悪最悪最低の国ニダ!!!!」

 「世界の汚物みたいな民族ニダ!!!!」

 「日本の盗作は絶対に許せないニダ!!!」

 「で、いくら?」

 電算機に数字が入れられていく、

 「これくらいでどうニダ?」

 「高い」

 「アメリカ人は酷いニダ。韓国人の血と汗と涙と労働を搾取する気ニダ」

 「でもなぁ・・・」

 「韓国伝統舞踊! 病身舞(ピョンシンチム)やるニダ」

 「ほぉ 面白かったら、この額の1割引きで仕入れてもいいぞ」

 「やるニダ〜♪」

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・

 「出ていけ!!!!!」

 「アイゴ〜 なんで笑ってくれないニダ〜!!!」

 「二度と来るな!!!!」

 

 

 

 

 歯舞諸島 水晶島

 島全体が霧に覆われ、視界は100mほどもなかった。

 人工衛星の軌道が計算され、少ない空白時間のみ利用できた。

 技術者たちと将校たちの目の前に直径5mほど円盤が宙に浮かんでいた。

 「八咫烏(やたがらす)の性能はどうかね」

 「いいようです」

 「消せるか?」

 「はい」

 ふっ

 「「「「「・・・・・」」」」」 呆然

 「人間と違って、円盤は中芯点に対してほぼ均一ですから意外に簡単なんですよ」

 「しかし、なにか、擦りガラスのような」

 「微妙に見えるような、見えないような・・・」

 「動くと電子処理速度が間に合わず、もっとばれるでしょう」

 「それと霧の中でこれですので」

 「陽が照っていたら、もっとばれやすいですね」

 「まぁ うっかりしたら気付かないような」

 「遠いと気付かないかもしれません」

 「人間は、まだ、できないのかね」

 「透明はまだ」

 「迷彩は幾つか可能です」

 「ただ、容量の関係で携帯できる迷彩は一つですが」

 「それでも電子制御の問題か?」

 「はい」

 「「「「「・・・・・」」」」」 ため息

 「お前ら予算取り過ぎだろう。3個航空師団返せ」

 「そんな。そっちこそ。発電所とLSI工場の建設を邪魔して」

 ばちっ! ばちっ! ばちっ! ばちっ! ばちっ! ばちっ! 

 「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」 憮然

 

 

 日本

 日本の帝国国会は、貴族院と衆議院に分かれていた。

 貴族院は、皇族議員、華族議員、勅任議員、

 帝国学士院会員議員、多額納税者議員で構成されていた。

 戦後は、華族勢力が弱まり、

 多額納税者議員が半数以上を占めてしまう。

 これは、一定の脱税抑止の効果をみせたものの

 我田引水的な財政融資が行われやすくなった。

 衆議院で普通選挙が行われたのは1928年のことで男子25歳以上の者で選挙が実施され、

 戦後の1960年、国民の協力を得るため、

 衆議院の選挙権は20歳以上の日本国民となり、被選挙権は25歳以上の日本国民となった。

 戦後軍縮に伴い軍部が国権から退くと、首相公選制が敷かれ、

 首相はそれまでの利権構造の調整役から、

 国民利益に敏感な政策に比重が移っていく、

 その結果、国民の集票を気にする総理と、

 地域の利権構造を基盤とする国会議員との間で確執が作られる。

 どのような政治制度であれ、

 不正腐敗は存在し、事件が起きるたびに対処され、改変され、

 法律の項目が増え、矛盾も増していく、

 不逮捕特権は、一つの例であり、

 “皇室典範の摂政の二十一条”

 “摂政は、その在任中、訴追されない”

 “但し、これがため、訴追の権利は、害されない”

 が国会議員と外交官にも当てはめられていた。

 国民から選ばれた議員が信念に従い、

 党利党略、国益、民益、あるいは、地域利益を追求しようと自由であり、

 どれが正しく、どれが間違ってる、とも言えなかった。

 大きな予算が動く、

 あるいは、不穏な情報を仕入れた時、

 特高は、特権を利用し公共に反しそうな議員の情報を集め、

 見張る程度しかできない。

 特高の人たち

 黒板に利権構造の利害関係を描き、

 最終的な繋がりを儒陀系右翼団体のとこで止める。

 「・・・発電所は建設しないといけないだろうな」

 「しかし、儒陀を使ってまで建設するかな」

 「まぁ 早く、安く上がる利点はあるね。国益だな」

 「だけど反対派を後援してるのも・・・・」

 別の団体の行き先も儒陀系人権団体だった。

 「まぁ 人権は大事だよ。煩く騒いでくれるなら心強いだろうし」

 「結局、どちらも高い金を払わされてるわけか」

 「でもやめると不利だし、やめられないんじゃないのか」

 「結局、不正未満でも一定の金が転がり込むのか」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 「問題は、中華民国の麻薬組織とのつながりだな」

 「議員まで行くのか?」

 きゅー きゅー

 「いや・・・ここで止まってるようだ」

 「実際に麻薬が流れ込んでるという噂は?」

 「いまところ中華民国側から話しがあった人脈の繋がりだけだよ」

 「最近は、人権団体が煩くて、容易に動けなくなったからな」

 「本当なら国民のモラルに期待したいところだが・・・」

 「競争が激し過ぎてな。そこに儒陀が煽ってくるから需要が生まれる」

 「取り敢えず、麻薬シンジケートがブツを入れそうになった時が勝負だな」

 「「「「「・・・・」」」」」 こくん

 

 

 扶桑半島

 企業は大陸から流れ込む資源を加工し、

 輸出することで利益を上げ、

 収入の一部を設備投資することで競争力を上げていく、

 国家は税収の一部を公共投資に充てることで国力を高めていく、

 とはいえ、過剰な投資をしても必ずしも利益になるわけではい、

 企業の設備投資は、収益を当て込んでのことであり、

 赤字覚悟で行えるものではなかった。

 国家財政も企業収益と国民所得の負担によって支えられていた。

 国家の公共投資は、財政赤字未満か、将来的に回収できるか、であり、

 企業であれ、国家であれ、無理な投資は回収が困難になり、

 需要以上の供給をしても収益より経費がまし、

 損益分岐点を下回れば、資本の回収が滞り、

 赤字となって来期へ繰り越され、国民の負担となっていく、

 かといって、紙幣を印刷すると物価が高騰しインフレとなる、

 収入の少ない老人層は苦境に立たされ、

 家族持ちも経費が増え、将来の展望が危ぶまれた。

 そのため、国家と企業が求める過分な投資の多くは、黒字貿易によって支えられる。

 この時期、日本は世界の工場となっていた。

 もっとも、国際市場は、日本とアメリカとドイツが熾烈な競争を繰り広げており、

 経済戦争は和戦問わず油断が許されなかった。

 

 戦後、日本人は半島と月巳へと移住し、

 満州帝国へも住み始めていた。

 気薄になった人口密度を沿線へ誘導し、

 集約させることで生産力と消費力を効率化させていた。

 工業力が向上するにつれ、貿易黒字は増し、

 人口は徐々に増え、

 内需需要の高まりは投資を加速させ、生産も増大させていく、

 そして、国民の需要は必ずしも国益と一致しないことが多く・・・

 開発ビル

 「満州に温水プールって、本当に需要があるのか」

 「日本人は温泉が好きだからな」

 「温泉だろう? 温水プールじゃなくて」

 「温泉は阿尓山(アルシャン)、大興安嶺に結構あるから次は温水プールだと」

 「しかし、場所的に温泉はでないだろう」

 「だから需要があるんじゃないのか」

 「そうだけど水を沸かすのって大変なんだぞ」

 「竜鳳油田の力は大きいからな」

 「誰か、経費がかかり過ぎるレジャーランドは上手くいかないって教えてやれよ」

 「そこもスポンサーの一つだよ」

 「手を引いたら潰れるってことだろう」

 「漢民族もの温泉好きが増えてるし、中華民国の旅行者も増えてるからな」

 「道理で治安が悪くなってると思った」

 「治安が悪くなっても収入を増やしたい」

 「それが航空会社、旅行会社、観光宿泊業界の総意で集票圧力になってる」

 「金が絡むと捕らぬ狸の皮算用するからな」

 「オイルショックで国の公共事業は、経費増大だろう」

 「国民は特定産業ばかりの財政投資に嫌気をさしてるし」

 「国家予算の公共投資準備金も頭打ち、開発業者は自主採算しろってことだからね」

 「民間活力か・・・」

 「外資シンジケートをあまり入れたくないんだけどな」

 「外需が安全なんだけどね」

 「むかしと違って中華民国の中級品は質が良くなってる」

 「特に雲南省産の中級品は日本の品質と変わらないから輸出産業の収益率も低迷してるよ」

 「自助能力と自浄努力を頑張って競争に勝てってか」

 「政官財の大きなところで粉飾決算してる噂もあるしな」

 「まさか、野党やマスコミが黙って無いだろう」

 「ところで、アフリカの建設発注が増えてないか」

 「漢民族がアフリカ大陸に移動するほど外貨収入が増えてるし」

 「中華民国も一人当たりの所得が増えてるから発注が増えてる」

 「日本もアメリカもドイツも華僑資本の発注を受注しようと血眼だよ」

 「潜在的な仮想敵国の国力を大きくしてどうするんだろうね」

 「平和ボケだろう」

 「外資シンジケートが支配してると思って、弛んでるんだよ」

 「しかし、会社としても、中華需要は大きいからな」

 「華漢帝国建設は近そうだな」

 

 半島の山を刳り抜いた工場で

 ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン火薬が量産されていた。

 開発、合成されるのは1987年のアメリカで量産も、さらに後だった。

 「くっそぉ こんな大きな穴を掘らせやがって」

 「だって、機密でしょ」

 「費用対効果を考えろよ」

 「費用対効果は悪くないよ」

 「核やバンカーバスターの直撃でも大丈夫だし」

 「航空戦力をフリーにさせられるし」

 「戦闘機、何百機分奪って、フリーはないだろうに」

 「また、航空機だけの数字を引き合いに出してサバ読むな・・・」

 

 

 大東亜共栄圏 タイ王国

 戦後、日本軍駐留部隊は、維持費負担に耐えられず引き揚げたものの、

 日本権益は残されていた。

 日本資本は公共投資や設備投資で外貨を上げ、

 流通を支配しつつタイ市場を席巻していく、

 しかし、タイ王国も在タイ華僑を中心に再生産で巻き返し、民族資本を強めていた。

 タイ王国は国力に比例して自信を強め、

 民族資本の圧力により、機会均等外交を目指していく、

 端的に言うなら “好条件を出す相手と取引する” という意味であり、

 ほかの大東亜共栄圏諸国もタイ王国と横並びの外交政策を取っていく、

 それまで日本資本独占だった市場は国際競争に晒され、

 アメリカとドイツの足場が作られると徐々に広がっていく、

 バンコクの自動車販売店

 「残念ある。来月からドイツと取引するある」

 「ちょ ちょっと待ってください、本社に問い合わせますので」

 「競争しない会社は、ただの押し売りある」

 「・・・・・」

 「一週間だけ待つある」

 「・・・・・」

 

 国同士が緊密になると日本料理がタイ国に出店し、

 日本料理がタイ王国に出店することもあった。

 それは目新しさで集客が得られるためであり、

 味と価格が良ければ、異国料理として定住も可能だった。

 バンコクの沖縄料理店は意外に人気があるのか、

 タイ人も少なくなく、スパイスを利かした別料理も考案されていた。

 ヒージャーそば、テビチ、ゆしどうふ、海ぶどう、あおさの天ぷら、ジューシー、

 グルクンのから揚げ、ジーマーミー豆腐、ヒラヤーチー、ゴーヤーチャンプルーが並び、

 泡盛が飲まれる。

 日本人商社マンたち

 「やられた。ドイツ車も食い込んでくるとは」

 「華僑も日本車とドイツ車を天秤にかけるつもりだな」

 「うちもアメリカの計算機が入ってきて苦戦中」

 「まぁ 値段と性能で比較して選んじゃうからな」

 「日本側はアフターサービスがいいぞ」

 「まぁね・・・このぷつぷつはなに?」

 「海ブドウだよ」

 「味はあまりないけど、面白いな」

 「こっちで養殖できたみたいだよ」

 「本場の沖縄人に言わせるとちょっと違うらしいけど」

 「へぇ〜」

 「しかしまぁ 随分と儲けられたし」

 「ここは、値下げするしかないと思うな」

 「だけどあっちの車は、本家本元だからな」

 「そういえば、中華民国はイタリア車が強くなってるってよ」

 「イタリア系シンジケートか」

 「あいつらの組織は怖いからな。日本ヤクザも引いてる」

 「イタリア車は、それだけじゃないと思うな」

 「まぁ アメリカ車を買うくらいならイタリア車を買うよ」

 「日本車は燃費がいいし、低価格でコンパクトな大衆車で押してきた」

 「大馬力で頑丈なだけのアメリカ車には強いけど」

 「コンセプトが多様な欧州車が入ってくると切り崩されやすくなる」

 「しかし、中華民国はシンジケート会議でだいたい、決まっちゃうだろう」

 「日本は資源を押さえて守りに入ったからな」

 「消費財の市場を荒らされるんだよね」

 「まぁ 人手不足もあったからね」

 「年末のボーナスが厳しくなりそうだな」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 インド大陸

 この頃のインド大陸は、既得権を有する国権と自由と平等を求める民権の戦いが吹き荒れる。

 インド各地で民衆の暴動が起こり、軍・警察による鎮圧が行われていた。

 全インド非公式会議

 儒陀、パキスタン、ハイデラバードと、インド藩王諸国の人たち

 「民主化暴動が増えてる。まずい・・・」

 「既得権を守るため、もう一度戦争したくなったニダ」

 「そうだよ。このままだと民衆の突き上げで、権力構造が崩壊だ」

 「だけど、戦争する金がないからな」

 「そうそう。民衆は仮想敵国より権力側の不正腐敗と差別に敵意むき出しだし」

 「まず、戦意と金ないと戦争できないよね・・・」 しみじみ、しみじみ

 「「「「「・・・・・・・」」」」」 こくん、こくん

 「いまこそ、全インドが儒陀の優秀民族に従う時ニダ」

 「「「「「・・・・・」」」」」 脱力

 「儒民族はインドのチャトランガ将棋でも優秀な成績を収めてるニダ」

 「儒陀人は全ての分野で、とっても優秀ニダ」

 「儒陀は、アメリカ型の総合学科じゃなくて、ドイツ型の専修学科が強いからね」

 「軍事、政治、経営、芸能、ファッション、スポーツ、人文の専修グループがある」

 「それぞれの分野で競争して予備軍がとぐろを巻いて順番待ちしている」

 「専修だから専門的に優れている」

 「しかし、総合的な視点と視野で物事を考えられないから先鋭化し過ぎてしまうし」

 「儒陀の場合、封建的だから引き立て役より、能力と実力で劣る傾向になる」

 「優秀といってもそれは権威主義と年功序列主義の狭い世界で引き立てられただけ」

 「地縁や縁故主義の派閥になるし、多様性は乏しく新規性は生まれない」

 「インド藩王諸国に紛れ込んでる儒陀連中もそうやって徒党を組んで脅迫してくるし」

 「騒ぎまくってこちらが引くと、どんどん浸蝕してくる」

 「そういえば幾つかの分野でマンティコアが血路を開いて」

 「そこから儒陀のゴキブリのような愚連隊予備軍が縁故で仲間を増やしていきますな」

 「それで似た者同士で足を引っ張り合うか、奪い合って産業を衰退させてしまう」

 「我々儒陀は間違ってないニダ!! 優秀ニダ!!!」

 「別に専修が悪いというわけじゃないだろう」

 「総合も専修も車の両輪」

 「後進国小国は専修の方が伸びやすいし」

 「両輪を上手く運用できれば成果も上がる」

 「・・・・・」 ぶつぶつ ぶつぶつ

 「儒陀が表向き民主主義・自由主義を気取っても、所詮、似た者同士」

 「統治の考え方は階級を固定したがる我々と変わらないだろうが」

 「まぁ 儒陀は数も少ないし、利用できるだけ利用して何時でも消せますがな」

 「「「「「「あははははは」」」」」」

 「・・・・・・・・」

 「暴動を起こしてる民衆をどうしよう・・・」

 「もっと儒陀人を入れたら暴動を押さえてみせるニダ」

 「「「「「「・・・・・」」」」」」  ため息

 “国際会議の名議長はインド人を黙らせ、日本人をしゃべらせることができる人物である”

 儒陀代表は手の内を見抜いてる同類に近い人種を相手にしなければならず

 全インド会議で苦戦していた。

 

 

 儒陀藩皇国 国防総司令部

 儒陀将校たちが見守る中、

 一人の将校が念を込め恍惚とした表情で呟く、

 “日本沈没、日本沈没、日本沈没、日本沈没・・・・”

 “チーウァージャー!!!!!!”

 気合いと共にユンノリ棒が投げられ、

 カタンッ! カタンッ! カタンッ! カタンッ! 

 “““““アイゴーーーー!!!!!””””

 歓声が上がる、

 「F5戦闘機部隊60機の攻撃が成功したニダ」

 儒陀藩皇国の沖合に並べられた日本艦隊の駒が引っくり返っていく、

 

  45000t級若狭(わかさ)型強襲母艦

    若狭、播磨

  9000t級相模(さがみ)型巡洋艦

    相模、讃岐、薩摩、駿河、 三河、尾張、信濃、因幡、

    摂津、河内、伯耆、常陸、 近江、但馬、和泉、上総”

    大和、武蔵、長門、周防、

       ※ 赤字 沈没艦

 

 「「「「ウェー ハッハッハ!」」」」

 「楽勝ニダ! 楽勝ニダ!」

 「さすが空軍長官ニダ」

 「次は、海軍長官ニダ」

 「駆逐艦5隻、忠北、全北、大田、光州、江原で日本艦隊に突撃するニダ」

 “日本沈没、日本沈没、日本沈没、日本沈没・・・・”

 “チーウァージャー!!!!!!”

 気合いと共にユンノリ棒が投げられ、

 カタンッ! カタンッ! カタンッ! カタンッ! 

 “““““アイゴーーーー!!!!!””””

 歓声が上がり、

 日本艦隊の駒が引っくり返されていく、

 

 

 新・皇帝府

 「大変ニダ。民衆が新・皇帝府に迫ってるニダ」

 「き、金KCIA部長。速く、暴動を鎮圧するニダ」

 「学生運動を虐殺して叩き潰すニダ」

 !?

 「・・・なにをするニダ」

 「やめるニダ」

 「待つニダ・・・末期の言葉くらい残させるニダ」

 「言うニダ」

 「・・・・お、思いつかないニダ〜!!」

 バァーン!

 儒陀皇帝暗殺

 

 

 儒陀藩皇国 日本語学校

 「卒業式の前にいうことがあるニダ」

 「皇帝暗殺事件が起きたニダ」

 「キム・パルせんせい」 ぐすん!

 「せんせい」 ぐすん!

 「悲しいことニダ」

 「せんせい」

 「せんせい」

 「しかし、生徒たち」

 「挫けてはいけないニダ」

 「反日精神がある限り、儒陀は永遠ニダ」

 「せんせい」 ぐすん

 「卒業の門出で、泣いてはいけないニダ」 ぐすん

 「はい・・・・」

 「せんせい」 ぐすん!

 「儒陀は、世界文明発祥の天孫民族ニダ」

 「世界人類の根源は、儒陀民族にあるニダ」

 「人類文明発祥の起源は、儒陀民族にあるニダ」

 「儒陀創世記にあるように儒陀民族は、神と契約し通り、世界に文明を興したのち」

 「このインドに凱旋したニダ」

 「せんせい」 ぐすん!

 「せんせい・・・も、皆と分かれるのが・・・」 ぐすん!

 「「「「せんせい!」」」」

 「しかし、儒陀黙示録を忘れてはいけないニダ・・・」 ぐすん

 「せんせい」

 「世界の敵、日本。人類の敵。日本民族を滅ぼさなければならないニダ」

 「日本人に成り済まし外国人を攻撃するニダ」

 「外国人を煽って日本人を攻撃させ、日本人を世界から孤立させるニダ」

 「「「「はい!」」」」

 「卒業の前に言っておくことがあるニダ・・・」

 こつ きゅー こつ きゅー

  I   人間    I   ← 黒板

 「人間は人と人の間で生きているから人間というニダ」

 「みんなは、これまで習った通り、日本人と日本人の間を離反させ」

 「日本人と世界民族の間を離反させ、日本と日本人を孤立させるニダ」

 「日本の党派と党派。組織と組織を争わせ」

 「日本人同士を仲違させバラバラにするニダ」

 「悪化は良貨を駆逐するニダ」

 「日本がいくら勢いがあっても人と人の信頼関係が失われたら容易に滅びるニダ」

 「それでは、全員前へ」

 「「「「はい!」」」」

 「日本沈没ニダ!」

 「「「「「日本沈没ニダ!!!」」」」」

 ぽろっ ぽろっ ぽろっ ぽろっ ぽろっ

 「いくニダ!!」

 「「「「「いくニダ!!!」」」」」

 シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! 

 シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! 

 「日本沈没ニダ!!」

 「「「「「日本沈没ニダ!!!」」」」」

 シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! 

 シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! シャッ! 

 

 

 新・儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「第10代儒陀皇帝即位おめでとうニダ」

 「うむ。これより伝統に従い独創的な国際外交を始めるニダ」

 「まず、第10代儒陀皇帝即位に対し、貢物の無いインド藩王諸国に謝罪と賠償を要求するニダ」

 「第10代儒陀皇帝即位に対し、祝電の無い日本に謝罪と賠償を要求するニダ」

 「インド人を躾けられなかったイギリスにも謝罪と賠償を要求するニダ」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 今回の注目は、楽しそうな儒陀将校たちでしょうか (笑

 

 どこの世界でも営業は大変ですね。

 なにはともあれ、一生懸命です!

 最近の日本人は営業を忘れちゃったかな。

 韓国伝統舞踊 病身舞(ピョンシンチム)

 埋め込みしようかと思いましたけどやめました。

 気が向いたら検索して見てください。

 どこか、褒めるとこ探そうと思ったら挫けました (笑

 いくらアメリカ人でも傷病踊り見て喜ぶ人は少数派ですね。

 

 

 

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第38話 1978 『走れ、ケンチャマン』

第39話 1979 『世界起源伝説』
第40話 1980 『愛国は矛、人権は盾』