月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第42話 1982 『蜘蛛の糸と猫じゃらし』

 中華民国

 中華民国は、表面上、民主的な選挙を採用している、

 しかし、実態は、政府と議員の間、政府と行政の間に利権を持つ外資シンジケートが居座り、

 彼らの代理人しか、選挙で勝ちえないことから民主主義国家の体を成していない、

 無論、漢民族の同胞資本は年々増大し、利権回収していた。

 とはいえ、外資資本の下で働く方が華僑資本の下で働くより条件がいい、

 という理由で中華(外資シンジケート)民国は、一般的な漢民族大衆に支持され続いていた。

 北京

 紫禁城の西に作られた湖水を囲む一帯は、中華民国の政治中枢だった。

 中南海と呼ばれ、

 外資シンジケートの代表が周辺に居を構え、

 匪賊上がりの代理人に指示を出すことで中華の支配を可能にしていた。

 外資シンジケートは、中華民国経済の生産、市場、設備、中間流通を押さえ、

 総量に占める搾取率は大きい、

 しかし、中華民国の経済成長は、外資シンジケートの搾取率の割に高く、

 その内訳は、膨大な資源の輸出利益と、

 安い賃金で堅実な中低級品を輸出し、外資を稼ぐことで成り立ち、

 また、カジノの収益率は国家予算の大半を占め、

 資本がとどまらず還流されて、庶民の多くは好景気と認識してしまう。

 また、軍事と未来投資の手抜きによる余剰資本を公共設備費に振り分けることもでき、

 国民の負担軽減になっていた。

 無論、広大な中華民国に社会福祉が及ぶまで、年月を要するものの、

 民権と民益優先で、社会福祉が充実し、公共設備は毎年の如く増えていた。

 シンジケート支配は適切な利益分配と、

 社会福祉など弱者救済処置を講じる限り支配は盤石と考えられていた。

 また、外資シンジケートは支配体制を延命させようと可能な限り利権を強化し、

 人とサービスを結び、人と人を繋ぐ権益を拡大させていた。

 中華風カフェテラス

 中南海の湖面と周辺の中華様式は客を魅了する。

 語られてる言葉は、祖国の言葉が多く、中国語は半分ほどだった。

 日本人たち

 「いよいよ。中華民国も国産自動車生産か」

 「華僑は民族資本を増やしているし」

 「彼らが国産車の生産をしたいというのなら止めようがない」

 「日中企業の提携は悪くはないよ」

 「しかし、中国車が国外に輸出されたら日本車は苦戦するのではないのかね」

 「日本がやらなくても、各国とも合併の動きを見せてますよ」

 「それに出資が半額なら利益は折半ですからね」

 「力を付けてからでは、出資半分どころか、3分の1になってしまうでしょう」

 「軍拡させて中華民国の国力を削がせる方法もあるがね」

 「日本に近いし、やり過ぎるのは危険だと思いますね」

 「それに外資シンジケートが追い出されたら終わりだ」

 「しかし、工場を作るとしても、どこの省人が誠実且つ堅実かね」

 「大陸の国民性に誠実を求めるのは間違いと思うがね」

 「といっても匪賊は減少してるし、法は順守され始めている」

 「外資シンジケート付属学校出身学生は学んだ国の国民性に近付いてるようだ」

 「むしろ、大陸の国民性でまったく売れない自動車を製造して潰れてくれるのならよしだけど」

 「ふっ」

 「工業力に占める自動車の量産はウェートが大きいからね」

 「国際市場で成功したら中進工業国として、一気に伸し上がるだろうな」

 「シンジケート会議では、15、16社に競合させて、収益を削がせる気のようだ」

 「それくらいの方がいいだろうな」

 「しかし、アフリカにも市場を広げられるはず」

 「当面は、ライセンス生産で金のなる木だと思うがね」

 「まぁ 模倣車量産されるよりましか」

 「しかし、眠れる獅子が動き出すと周りは落ち着かないね」

 「潜在的には、世界最強になり得てもおかしくない資源と人口だからね」

 「教育水準が上がって、人間不信が緩和されたら、一気に力をつけてもおかしくない」

 

 

 中華民国雲南省

 省全土が山岳帯にあって天然の防衛壁を形成していた。

 中華民国でありながら東欧風の街並み、

 外交権はないものの9割自治の白人社会、

 中華民国を支配する外資シンジケートの人材的供給源となっていた。

 結果的に雲南省支配権確立と相乗効果を成し、

 強力な準国家を形成していく、

 南辺は雲南省と敵対する意欲の無いビルマ、ラオス、ベトナム帝国が連なるだけであり、

 雲南省の防衛戦力の多くは中華民国と蜀華合衆国に向けられていた。

 山岳の一角、

 台地を更地にした駐屯地に雲南省軍ポーランド第一師団が置かれ、

 攻撃ヘリAH1コブラとレオパルド戦車が並べられ、歩哨の白人兵士が立っていた。

 日本の外交武官たち

 「近代兵器の充足率が高い、欧米列強の後押しが大きいようだ」

 「これなら雲南省の牽制で中華民国は動けず、満州帝国は守りやすくなるだろう」

 「どうかな。雲南省軍は、守りはともかく、攻勢力に欠けている」

 「むしろ、蜀華合衆国の方が攻勢能力が強いように思う」

 「それに中華民国は国力が大きくなっていても満州帝国に侵攻できるような戦力じゃない」

 「となると、要注意はソビエトか」

 「しかし、極東ソビエト軍の侵攻があるようにも思えないが」

 「核地雷仕掛けて待ってるような国に攻め込む国なんてないだろうし」

 「あの国は、弱ってない限り攻めてこないと思うよ」

 「ところで、中華民国の儒陀人は静かに思えるな」

 「延辺朝鮮族自治州からこっちに流れてきてる朝鮮人は多いだろうに」

 「漢民族は大義のために小指一本だって動かす気はないし」

 「漢民族は儒陀人の性格をよく知ってるからね」

 「反共を利用した浸透戦術なんて、庶民レベルで、お見通し」

 「儒陀人が喚いても空振りしてしまうのさ」

 「耐性が付いてるわけね」

 

 

 

 アフリカ権益を制する勢力は、次々世代の世界の主導権を握ることができると囁かれていた。

 とはいえ、黒人も漢民族も一般人は関係なく、

 反目しながらも同じ街に住み、同じように生活していた。

 とはいえ、華漢植民地軍とアフリカ民族独立戦線は日増しに対立を強め、

 漢民族の流入に比例してアフリカ全域に内戦が広がっていく、

 特に南アフリカ、ナイジェリア(英)、アルジェリア(仏)は、

 アフリカ大陸の総生産の半分を占めることから、毎日のように銃撃戦が繰り広げられてた。

 夜な夜な各国の輸送機がアフリカ大陸を飛び回り、

 自国権益の代理人に武器弾薬を投下していく、

 そして、人々は不公平で理不尽な社会で懸命に働き、

 日常の生活を送っているにもかかわらず、

 不意に大義という名の災難に巻き込まれる、

 どかーん!

 中華風のビルが爆発で吹き飛び、周辺に被災が広がる。

 一般人の黒人と漢民族が巻き込まれ、阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

 次なる爆発を怯え、遠くに逃げ去ろうとする者、

 好奇心に負け、爆心地の様子を見ようと近付く者、

 そして、救助しようと危険を顧みず近付く者、

 ケープタウンは騒然とした空気に包まれていく、

 土砂を被った日本人たちが噴煙の中から出てくる。

 「あいたたぁ」

 「もうキンキンする。難聴だよ」

 「取り敢えず、少し離れよう」

 「酷い目にあったわ」

 「怪我は?」

 「あっちこっち打撲・・・」

 「そっちは、血が出てるだろう」

 「さっき、瓦礫が飛んできて肩をかすめた」

 「もう、最低な国だな。死んだらどう・・・」

 どかーん!

 別の中華風ビルが吹き飛び、

 人々は右往左往しながら逃げまどう。

 

 

 

 アメリカ合衆国 カリフォルニアのモハベ砂漠

 モハベ空港

 湿気のない砂漠は、野晒しでも保管しやすく、

 使われなくなった航空機が予備機として並んでいた。

 そして、需要の大きなアフリカの戦場に部品が抜かれ次々と送られていく、

 日本人たちがジープに乗って下見に訪れていた。

 「航空機の墓場か・・・」

 「日本のジェット機も持ってくるんだろう」

 「まだ利益は上げられてるがね」

 「利益を維持しようと思ったら中華民国との航路を増やすしかないな」

 「シンジケート関係者は金を落としていくからな」

 「嫌がってる勢力も多いが航空機会社を潰すわけにはいかないし」

 「観光業宿泊業の後押しもある」

 「航空業界は、もっと贅肉落とせとも言われてるぞ」

 「まぁ それができれば組織悪は無くなるな」

 「しかし、どうしたものかな」

 「日本機は改良してるからな」

 「支障のない部品を集めて、輸送機で持ってきたほうがいいかもしれないな」

 「747機は、徐々に部品として売った方が良いような気もするね」

 「双発の737機が使いやすいうえに燃費もいいし」

 「乗客待ちも少なくていいからな」

 「だいたい、日本人が飛行機に乗らないから中華航路増便なんだし」

 「賃金増やさないと」

 「国際競争力を一気に失うよ」

 「やれやれ、裕福になって賃金格差で追われる立場になると辛いねぇ」

 オイルショック後の民間航空業界は、利益を上げられず苦戦しており、

 高い賃金と維持費は航空産業企業の足かせとなっていた。

 

 

 スーパーコンピューターの計算力と解析力が軍事、気象、海流、

 市場、科学、開発に及ぼす影響は大きく、

 日本、アメリカ、ドイツとも多大な予算を振り分けていた。

 例えば始まったばかりのフォークランド紛争も

 精密なデーターを打ち込めば現実に近いシミュレートが成された。

 イギリスは、国際社会で反アルゼンチン外交を推し進めてアルゼンチンを孤立させ、

 機動部隊による奪還作戦を開始する。

 研究員たちがテレビで戦場の様子を見ていた。

 「・・・だいたい、推測通りに進んでるような気がするね」

 「戦端を開く勇気があるなら、後は、数字の問題だろう」

 「イギリスの練度は、もう少しプラスさせた方がよくないか」

 「あと、ゼロ・コンマ・プラス2くらい」

 「そうかな・・・」

 「しかし、ハリアーもやるねぇ ミラージュの艦隊侵入をよく防いでる」

 「ハリアーか。結局、Yak38、Yak141は作らず仕舞いだったからな」

 「予算を瑞燕と瑞鶴に集中させたからだろう」

 「若狭型強襲母艦は垂直離着陸機の離着艦が可能だし。予算不足が悪い」

 「結局、朱雀と海燕の優位性で後回しされたからな」

 「攻撃を受けるとしたら奇襲だし、飛行場は巡航ミサイルで真っ先にやられる」

 「瑞鶴、瑞燕が飛び立てる滑走路があるとは限らないよ」

 「とはいってもな。次の予算もステルス重視で、垂直離着陸機じゃない」

 「ヘリの優位性なんて電子能力に頼ってるだけだし、いつまでも続かないと思うけどね」

 「開発は建設難と技術面の両方で頭打ちだよ」

 「貿易黒字で儲かってんじゃなかったのか」

 「社会資本増やして、みんなお金持ちになりたかったんだろう」

 「シミュレーションによると」

 「護送船団方式で一億総中流は、なんというか、多様性と抗体性を失いやすいし」

 「非下積みで無個性な若者を大量生産するだけな気がするが」

 「国民の総意には勝てませんな」

 「しかし、日本は温室育ちでガラパゴス化した体制だし」

 「さらに核家族化で、おんぶに抱っこのツケが子供たちの世代に行く」

 「そして、子供の分母が不足気味なのがいただけない」

 「それでもって、この年代で国内開発が頭打ち・・・」

 「海外需要も伸び盛りの中進国に利潤を削がれて・・・」

 「なにもなかった時代から高度成長を支えた熟練工もこの辺で、豊かなインスタント世代と交代・・・」

 「年金の支払いと・・・物価指数と・・・クラッシュか・・・」

 「もう少し、赤字国債を減らさないとな」

 「産業基盤と公共設備が必要だったといっても、特定産業ばかり懐が暖まってる」

 「だいたい夢がないと希望が湧かないからね。希望が湧かないと活力が生まれない」

 「その上、日本人は諦めがいいし、自殺が多い」

 「だけど、後進国は負の遺産や絶望から人生が始まることも少なくない」

 「親に保護されず子供の頃から命がけ」

 「生き残った彼らのタフさは、憧憬に値するね」

 「どっちの気質も求めるのは無理だと思うけど」

 「満州国の日本人は、ちょっと島育ちの日本人と毛並みが違うし」

 「まだ半島と大陸は開発の余地もある」

 「あと、月巳も小回りが利いて、伸びるかも」

 「面倒な問題は先送りできるとは思うがね・・・」

 

 

 どこかの喫茶店

 「今度は大丈夫なんだろうな」

 「何度も言うようですが、勝率が高くなるだけで、必ずということはありませんよ」

 「わかったわかった。取り分は3対1だからな」

 「はいはい・・・」

 例えばスーパーコンピューターの比較で勝ち馬当てがあり、

 蓄積されたデーター量と解析力に比例して勝率が高まり、

 予算不足のためか、極めて高い的中率情報として一般に流れてしまうケースもあった。

 これは国家機密で得た有力情報の流用と売買に当たるため、

 背任罪なのだが、行われることがあった。

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 「今回の時空シミュレーションの結果」

 「露鳳の時間移動は、玉突き事故のようなものだと判明した」

 「玉突き事故?」

 「露鳳を時間を移動させるための電力エネルギーが不足していたのは確かだ」

 「しかし、露鳳とその一帯が時空潮流上、アイドリング状態にあったのは事実であり」

 「本来なら素通りするはずの時空衝撃派が露鳳を中心に干渉し」

 「時間軸上、70年ほど押し流してしまったというものだ」

 「こういう事故は度々おこると困りますね」

 「まぁ 普通ならやらない実験ではあるし、無知の結末といえるがね」

 「米独ソが時空関連研究予算を投じていることから警戒は必要だ」

 「危険性を知らせては?」

 「危険の裏付けになる根拠を要求されるだけだ」

 「出せないこともないが、そうなると十数年はその研究が進んでしまう」

 「米独ソが異世界人と接触してる可能性は?」

 「そういった節は、あると仮定した方がいい」

 「事故とはいえ、露鳳の時空潮流は、時空世界で注目を集めてるらしいからな」

 「来訪者が増えるのでは?」

 「可能性は高い」

 「「「「・・・・」」」」

 「さて、これまでの研究で得られた情報は価値のあるモノが多い」

 「生態系分岐世界のシミュレーションは、我が国の地球シュミレーションの精度も高めてる」

 「今後とも、異世界のデーター収集と解析を継続すべきだろう」

 「事故を事前に知るため、時間軸上の未来情報を取り入れるべきでは?」

 「それは生態分岐世界の発生に繋がり」

 「時空潮流の勢いを衰退させてしまうと、ジュラ紀の彼からの情報だ」

 「時空潮流の低進は自殺というわけではないが、他の世界に対して劣勢になる」

 「まぁ 裏付けも取れてることから気が進まないし」

 「異世界交流における一般通念になってる」

 「つまり、未来や過去への干渉は、可能な限り控えるべしと?」

 「分岐が発生しない抜け道がないのなら、やめるべきだろうな」

 「道理で我々の前に未来人が現れないと思いましたよ」

 「まぁ 未来を知るより。未来を当てる方が射幸心が満たされて楽しいですがね」

 「時空巡洋艦 春日 の開発は進んでるのですか?」

 「3000t級の葉巻型になる見込みだ」

 「次元モーター推進は、エネルギー(E) = 質量(m) × 光速度(c)2乗」

 「を質量(m)=光速(c)2乗に展開するものであり」

 「対消滅させた質量分が光速の2乗分の距離となり」

 「3000tの総量で光速度の2乗を割ることになる」

 「限界速度はともかく、制御で間に合わないし、船体は限界速度に堪えられない」

 「そのため時空巡洋艦の性能は」

 「処理速度を高める電算技術力とDPP障壁の強化にかかっている」

 「そして、時空移動の場合、距離の概念が消え」

 「周波数系の計算式が使われる」

 「こちらも電算処理能力と時空探知能力が問われる」

 「できるなら次々世代型の電子装置を搭載し、DPP障壁ももう少し進んだモノにしたい」

 「やはり、大規模な次世代電子製造工場が必要になりますね」

 「そうなのだが、土地収用で外国人の力が強まっている」

 「まぁ 日本人は、その種の仕事をしたがらないという裏返しなのだが・・・」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「なので、こちらが思うようには、開発が進まなくなってきてるらしい」

 

 生体フロア

 蜘蛛の糸は、ケブラほどの剛性はないものの、

 強度は鉄の5倍、柔軟性が高く、

 引っ張り度40パーセントと驚くべき、性質を有していた。

 このことは古くから知られており、

 蜘蛛の糸を利用した製品が製造されないのは、大量に蜘蛛を飼育すると共食いするなど、

 ひとえに量産性が悪いことがあげられる。

 DPP障壁はオーラーと関連付けられ、

 露鳳の技術を利用して育てた蜘蛛は、さらに強靭な性質を発揮する、

 ケブラの倍の剛性と引っ張り度50パーセントという驚くべき、性能を見せ、

 さらに少ないエネルギー消費でDPP障壁を展開しやすいため、最高の防護素材といえた。

 軍はスパイダーマーと名付け、

 量産性の悪さに目を瞑ってでも欲しがり・・・

 研究者たち

 「・・・また、共食いしてるよ」

 「餌が足りなかったか」

 「だけど、この糸を使えば、軍艦や戦闘機をDPP障壁で覆いやすくなるらしいよ」

 「そうはいってもな、こいつら、やたらと獰猛だからな」

 「しかし、ナノマシーンで蜘蛛を操作できたら蜘蛛に船体を作らせることもできるけどね」

 「取り敢えず、四角面の敷き物でもいいけどな。加工すれば良いだけだし」

 「いったい、何匹飼うことになりそうなのかね」

 「最低でも1億匹くらいじゃないのかな」

 「どんだけ大きな養蜘蛛場だよ」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 歯舞諸島 水晶島

 瑞鶴が奇妙な方向を向いたまま飛行を続けていた。

 この時期、各国でアビオニクス、運動能力向上機(CCV)、フライ・バイ・ワイヤなどの初期型が研究され、

 軍事費の少ない日本の軍需技術に迫っていた。

 日本軍将校たちがCCV試験飛行中の瑞鶴を見上げる。

 「やれやれ、手抜きしていたからアメリカとドイツに追い付かれそうじゃないか」

 「露鳳は同世代の西側艦艇より一・五世代は遅れてるからね」

 「秘密主義の国は、資本を集中しにくいし。国際市場で競争している国に負ける」

 「日本もそうだよ」

 「そうは言われても公表できるものじゃないよ」

 「だよねぇ」

 「だいたい、産業を大きくするということは、国外市場に依存しなければ潰れるってことだろう」

 「その余剰の産業と利益で瑞鶴を飛ばしてるようなものじゃないのか」

 「国内需要だけの産業と利益だけじゃ瑞鶴は開発できないだろうし、配備まで扱ぎ付けそうにない」

 「次期主力戦闘機の開発は?」

 「たぶん、ステルス型戦闘機になると思うけど、露鳳にはなかったよ」

 「PAK FAというのは?」

 「ああいう形状になるだろう、だけの概略図だけじゃね」

 「じゃ 暗中模索の手探り開発というわけね」

 「の割に予算がねぇ」

 「日本が侵略される可能性なんて、ほとんどなさそうだし」

 「軍事費が伸び悩むのはわかるが戦力比は、外交の場で出るからな」

 「少なくとも民間が勝ち過ぎてたり、負けない間は、軍の出番なんてないよ」

 「いまじゃ 資源と市場の大きな国の言い分が強いらしいけど」

 「中華民国か・・・」

 

 

 

 地下工場

 航空機並みの軽量化、軍艦並みの強靭性、

 宇宙船並みの対減圧構造、潜水艦並みの耐圧構造、

 時空巡洋艦に要求される特性は矛盾することが多く、多岐にわたる。

 製造されてきた部品が組み上げられていく、

 「製造畑の連中に、なぜ、凹凸構造でなく、格子構造なのかしつこく聞かれたよ」

 「宇宙に行ったり、海に潜ったりなんて普通は言えないからね」

 「まして、時空の狭間なんて・・・」

 「将来的には、蜘蛛に船体を作らせたり、木を利用したりって聞いたけど?」

 「DPP障壁は生体が割安だからね」

 「でも、いまの防御レベルじゃ対電磁波、対放射線がいいところだからメインになり難いけど」

 

 

 

 九十九里沖

  45000t級若狭(わかさ)型強襲母艦

    若狭、播磨

  9000t級相模(さがみ)型巡洋艦

    摂津、河内、伯耆、常陸、 近江、但馬、和泉、上総、

 朱雀と海燕の編隊が深夜の海面スレスレを飛行し、内陸へと侵入していく、

 海燕が着地すると15〜16名ほどの部隊が散開して広がっていく、

 この日、強襲母艦 若狭、播磨は対潜装備から対上陸作戦用の装備に切り替え、

 強襲輸送用の海燕を合わせて50機搭載し、

 一度に歩兵部隊750人以上を往復3時間で6波、

 目標地点に4600人を18時間で送り込むことができた。

 若狭 艦橋

 “第05空挺小隊、予定ポイントに到達しました”

 “第07空挺小隊、予定ポイントに到達しました”

 図面上に降下部隊の駒が置かれ、

 目標地点を圧迫していく、

 「・・・イギリス海軍並みの事ができるかというと、この陣容ならできるだろうね」

 「ハリアーがなくても?」

 「ハリアーは有用だよ」

 「若狭だって、無理をすれば、瑞燕を運用できる」

 「しかし、こちらの対空ミサイルはシステムで数世代進んでる」

 「海燕を艦隊上空に上げて対空管制できたら」

 「接近してくる航空機は水平線の向こう側で艦対空ミサイルの餌食にできるよ」

 「アメリカ機動部隊でも?」

 「核攻撃でもしない限り、後悔することになるだろうね」

 「核攻撃は怖いな」

 「DPP障壁をもっと強めてくれるなら放射線の浸透を鉛以上に防げるよ」

 「DPP障壁か・・・」

 「エネルギー消費を考えるなら、オーラーと混ぜ合わせて展開できる携帯用が安上がりなんだけどね」

 「電子機器を守りたいのだけど」

 「樹木で覆うか?」

 「樹木?」

 「樹木もオーラーを出していてね」

 「DPP障壁で安上がりな生体型船体の研究もされてる」

 「本当に?」

 「まぁ 物理的な攻撃に弱くても、対電磁波じゃ DPP障壁が上だからね」

 「問題は青白い膜で艦が覆われてしまうこよかな」

 「潜水艦はともかく、水上艦艇は、その辺を偽装しないとバレる」

 「んん・・・しかし、さすがに木造艦は、いただけないな」

 「ふっ 日本の森林を禿山にする気もないしね」

 「しかし、オーラが強く、いい木材があるのも事実だけどね」

 「それにDPPを仕込むのは、簡単なのか?」

 「人間と同じ摂取方式だよ」

 「害は?」

 「いまのところ、無害」

 「じゃ DPP障壁次第では、木製の逆転もあるわけか」

 「あるだろうね」

 

 降下部隊、野営地

 日本の戦闘糧食は世界でもTOPレベルだった。

 その野営食は別に現地調達のサバイバル食がつく、

 なにを採取してくるか運任せで、とにかく捕れるモノだった。

 小隊長がにやにやしながら、

 緊張する兵士の戦闘糧食の上に揚げられた黒いモノを乗せてく、

 「クロコガネ・・・」

 数人の兵士が泣きそうな顔をする。

 こいつは食いものじゃないだろうと思うのだが

 戦場で補給が絶たれることなどありがちで、

 取り敢えず生き残る手段として、食べられるモノが教えられる。

 もっともクロコガネは、サバイバルメニューの一つで上位。マシな方だった。

 「ミミズよりましだと思うよ」

 「あれは、死にたくなったね」

 「「「「・・・・」」」」 こくん、こくん

 

 

 ポーランド人留学生ヤン・シェリングは、同級生たちとハルピンの街を散策していた。

 雲南移民のドサクサで人間に成り済まし、

 成績優秀な特待生で満州帝国に留学生になっていた。

 満州は農業国から工業国へと変貌し、近代化で人々の生活様式も変わってきていた。

 満州皇帝は、華族との縁組が進んで日系皇帝といってよく、

 表に出ることは少なく、日本の傀儡であり続け、

 日本支配は、満州帝国の隅々にまで及んでいた。

 漢民族は、自分たちの生活が満足なら、統治の仕方がどうであれ気にしておらず。

 ポーランド人留学生のヤン・シェリングも、日本人の満州帝国統治は些細なことに過ぎず、

 たまに現れる特高は、煩わしいといえたが束縛される事も少なく、遠くで監視されてる程度だった。

 これは人類種が異世界に行く意思表示であり、

 平行次元世界に向かう船を建造してるため、荒事を避けているだけといえた。

 「ヤン・シェリング。今日はこれで勝負だ」

 ドイツ人留学生トリスタン・バルドはモグラ叩きの前に立っていた。

 特待生は幾つか特典があって、一定以上の成績を求められる、

 当然、競争しなければならず、ライバル心を燃やしてくる者が現れる。

 トリスタン・バルドの場合、ポーランド人に負けたくないという感情が強く、

 これまた、異世界人なのでどうでもいいことだった。

 ぴこっ! ぴこっ! ぴこっ! ぴこっ!

 ぴこっ! ぴこっ! ぴこっ! ぴこっ!

 パンパカパーン!

 「なんでだー!!」 トリスタン・バルド

 「勝ったら、どら焼き驕ってもらえるんだよな」 ヤン・シェリング

 「・・・・」 しょんぼり

 人間の能力範囲で僅差で勝つことには慣れた。

 

 

 インド大陸

 儒陀藩皇国

 儒陀情報局 対日作戦部 訓練場

 エノコログサ(猫じゃらし)を持った儒陀情報部員が猫を囲んでた。

 「これは、新型戦闘機ニダ。新型戦闘機ニダ」

 ふるふる ひょいひょい くるくる ぽいっ! だーーー!!

 「走ったニダ〜♪」

 「日本人は馬鹿ニダ」

 「「「「ウェー ハッハッハ!」」」」

 「これは、新工場ニダ。新工場ニダ」

 ふるふる ひょいひょい くるくる こてん!

 「転んだニダ〜♪」

 「日本人は馬鹿ニダ」

 「「「「ウェー ハッハッハ!」」」」

 「発電所ニダ。発電所ニダ」

 ふるふる ひょいひょい くるくる ぴょ〜ん!

 「飛んだニダ〜♪」

 「日本人は馬鹿ニダ」

 「「「「ウェー ハッハッハ!」」」」

 「平和ニダ。平和ニダ」

 ふるふる ひょいひょい くるくる ころん

 「また転んだニダ〜♪」

 「日本人は馬鹿ニダ」

 「「「「ウェー ハッハッハ!」」」」

 「日本の組織操作は大きくなるほど視野が狭くなっていくニダ」

 「日本人は馬鹿で小心だから箔を付けて集団で罵倒したら、すぐ凹んで折れるニダ」

 「邪魔したり、応援したりして、日本での地位名誉財産を築いてやるニダ」

 「日本人は夢を見ながら足元をすくわれて自滅するニダ」

 「そして、全部、奪い盗って殺してやるニダ」

 「「「「ウェー ハッハッハ!!!!」」」」

 「今日は、もういいニダ。猫は踏み殺して、食べてしまうニダ」

 どかっ! どかっ! どかっ!

 どかっ! どかっ! どかっ!

 どかっ! どかっ! どかっ!

 

 

 新・儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「早く、日本と世界を戦争させるニダ」

 「日本人が異世界人と通じて世界征服をしようとしてると喧伝してやるニダ」

 「そして、世界に対日包囲網を作らせるニダ」

 「皇帝。アメリカ、ドイツ、ソビエトは、儒陀の情報を信用しなくなってきてるニダ」

 「なぜニダ!! 本当のことニダ!!! 真実ニダ!!!!」

 「この前、捏造した異世界人の写真がよくなかったのでは?」

 「高く売れたニダ〜♪」

 「アメリカは、もう、同盟割引をしないと」

 「なんでニダ。あの写真は日本の陰謀ニダ」

 「日本人に騙されて掴まされたものニダ」

 「全部、日本人が悪いニダ」

 「アメリカが恨むのは日本のはずニダ」

 「捏造写真をばら撒いて儒陀に恥をかかせた日本に謝罪と賠償を要求するニダ」

 「日本の謀略に騙され、同盟割引をしないアメリカにも謝罪と賠償を要求するニダ」

 「全部、日本と日本人が悪いニダ〜!!!!」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 魔業は、周期的に訪れる平行次元トンネル。

 露鳳は、科学技術で平行次元世界を移動します。

 

 未来の時空巡洋艦は、本能を改竄された蜘蛛によって建造されてしまうのでしょうか (笑

 

 

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第41話 1981 『全力で抵抗するニダ!!!』

第42話 1982 『蜘蛛の糸と猫じゃらし』
第43話 1983 『死に至る心』