タイムスリップ系架空戦記
『時空巡洋艦 露鳳』
第44話 1984 『時空鳥居』
領土拡大と国民の幸福感の関連性は低い、
才覚や管理能力を超える領土など持て余すだけであり、
貧富の格差の重圧が下層階層に重く圧し掛かるだけともいえる。
日本の総人口は1億3000万に達し、
内地5000万、半島5000万、月巳1000万、満州帝国2000万の分布になっていた。
需要と供給を集約するため気薄な人口は沿線に集まり、
ロボット産業などの効率化と生産で国際競争力を保っていた。
経済傾注主義は、核家族化と少子化に拍車をかけ、
家族の絆や死生観を薄れさせていく。
いくら財政融資で社会基盤、設備投資でピラミッドを大きくし、
国力を増強させても既得権益圏が強まるだけであり、
親方日の丸は、戦前戦中と器が異なっても大本営と似た弊害を見せ、
偏った産業を中心に貧富の格差が広がってしまう。
民間は常に創意を巡らし、競争しなければならず、
下層階級は苦しく、子供を作ることに将来的な不安を感じやすく、
贅沢ができなくなることから、少数精鋭の少子化に向かう。
情報社会と言われるほど、多様な情報が溢れる社会であるにもかかわらず、
子供は、コミュニケーション能力を減退させ、
過保護は、子供の人格を歪め、
ゲーム機械登場は、多数で遊ぶより、一人で遊ぶことを増やしてしまう。
社会は義務より権利を主張する風潮が強まるにつれ、拝金主義が進み、
打算の関係は親子にも波及し、世代間の不信と確執が広がっていく、
この時期、選挙権は20歳以上であり、
当然、最大公約数的に選挙民の利益が優先され、
子供を作ることの有利さが軽視されてしまう。
そして、本筋であれば、老後は、子供がみるが、
世代対立が強まる子供でなく、
行政サービスに求める傾向が強まり、
政府は破綻すると計算できるにもかかわらず、
中央集権と利権構造が魅力的なことから、その風潮を加速させてしまう。
行政関係者たち
「もうそろそろ、子供手当枠を作った方がいいんじゃないか」
「んん・・・」
「このまま少子化が進むとな」
「いくら国力が大きくなっても外国人の子供に全部乗っ取られてしまうぞ」
「んん・・だけど後進国は、ポンポン生んでるぞ」
「先進国は、子育ての経済的な負担が大きいから不利だろう」
「んん・・・・」
地下原子力発電所
石炭火力発電所は、中華民国に依存しなければならず、
石油火力発電所は、中東情勢に国策が誘導される、
雨量依存の水力発電、風任せの風力発電、
対流冷却型の小型原子炉は主力になりえず、
水力発電所は、建設できる場所がなくなり、
火力発電所は、中国情勢、中東情勢からリスク分散が求められ、
オイルショック後の原子力発電所建設は、やむえない選択となり。
賛成派と反対派の衝突と確執の妥協案で、原子力発電所の地下建設が決まる。
建設費高騰は電気代に跳ね返る。
庶民は、高い電気代を支払わされることになるのだが、
電力消費量は着実に伸びていた。
地下発電所
作業員が致死率100パーセントの炉心で働いていた。
「あのが青白いモヤのようなものがオーラーローブかね?」
「はい」
「意外と厚みがあるんだな」
「いえ、オーラーローブは圧縮させて使うので、体表から5cmほどです」
「通常のオーラは身体の3倍くらいの幅ですね」
「彼らは訓練されてるので4倍くらいになります」
「放射能の中でも平気なのか」
「DPPは、電磁波、放射線の類を遮断できますから」
「それに新素材の服も対放射線に強いモノを使ってます」
「例の蜘蛛の糸?」
「はい化学繊維よりDPPと相性がいいので」
「コバルト(5.0)程度の強度に過ぎないのに面白いものだな」
「DPPは、波とか線とか呼ばれるものと、同系統ですから」
「むしろ、DPPは物理的な衝撃に弱いですよ」
「これなら炉心の放射能封じ込めも容易ということか」
「DPPは機械的に発生させるとエネルギーの消耗が激しいですから」
「DPP障壁は、最悪の場合でしょう」
「原子力発電の通常運転は大丈夫かね」
「施設は地下です。地震でも津波でも支障ないでしょう」
「津波か・・・」
「まぁ 30m級の防波堤なんて非常識過ぎて、予算が降りようがないからな」
「まだ、原子力発電所を地下に建設する方が予算が降りやすい」
「放熱塔は?」
「河口近くなので運河を分けて水冷で行けるでしょう」
「作業員はDPPに守られてますから列強の原子力発電所に比べたら安全なはず」
「予算配分を考えると地震を何とかしたいがね」
「さすが地震予防は思いつきませんね」
「計画中の日本循環型高温超伝導送電システムに一歩近づけそうだな」
「列島と半島の送電線を融通し合えるのなら、最悪の場合でも電力を安定させられる」
「ですが半島を含めても時差は1時間程度」
「夜の余剰電力を昼の電力消費の足しにするわけにいかないでしょう」
「構わんよ」
「基幹産業は、1995年01月17日の阪神淡路大震災と」
「2011年03月11日の東北関東大震災に備え、内陸に移動させてる」
「しかし、原子力発電所は最悪を考え、沿岸の建設は変わらない」
「立地条件は、津波を避けられそうですし、大丈夫なはずですよ」
「その上、地下ですし。バックアップ用の電源も確保してますよ」
「しかし、避けてた原発に手を出さなきゃならんとはね」
「産業界の圧力ですか」
「空洞化が面白くない人間は多いよ」
突撃銃は、兵士が護身用で携帯するため思い入れが強く、
戦車と並ぶ陸軍兵装体系の中心だった。
56式突撃銃(6mm×45)
重量3500kg 銃身長508/全長1000mm
使用弾薬 6mm×45 初速960m/秒 有効射程500m
仕様AK74、外装M16と言われ、
性能は両方の長所合わせ持つ突撃銃として、日本と満州帝国で使われていた。
この時期、アメリカは、M16A2(5.56mm×45)、
ソビエトは、AK72(5.45mm×39)、
ドイツ帝国は、ヘーネルStG77(7mm×40)を主力としていた。
56式突撃銃は、インド戦争、アフリカ内戦で戦訓を得ており、
性能に不足ないことが確認されていた。
しかし、現状に甘んじ囚われ努力を怠る者は劣化し、いずれ敗北に至り、
足を引っ張るだけの害悪になっていく、
先進国の多くは、決定的な敗北を避けるため、
現状に囚われず努力し、他国より優れた装備を開発しようと躍起になっていた。
そして、56式突撃銃(6mm×45)の更新を検討する時期を迎えていた。
露鳳にあった突撃銃AN94アバカンがテーブルの中心にあった。
6mm×45仕様で製図が引かれ、
ラインさえ、調整できれば試作量産に入ることもできた。
問題になったのは仕様だった。
例え規格製品を寸分違わず量産できたとしても、
“水洗いして、すぐ撃てる” 仕様は、精密な射撃を困難にさせていた。
速い話し、狙撃銃で使えない代物だった。
無論、狙撃銃は狙撃銃で別に製造しているのだが
無い物強請りは、大人も子供も変わらず、
結果的には、兵器は発達していく、
「もう少し、仕様をきつめにして、狙撃にも使えるようにしたい」
「水洗いじゃなくて、埃を払って、油布で拭き取って・・・」
「それは困る」
「・・・用兵側って、いつもそうだよね」
「君たちの言ってることは “正しい” よ。宗教並みに」
「ただ、現実逃避するような要求を出されてもねぇ」
「“正しい” に背を向けてたら “現実” が劣化するだろう」
「現状に甘んじ、怠惰に予算と時間を浪費するのはやめてくれ」
「外国の突撃銃に負けて泣くのは、おれたち用兵側なんだよ」
「そうは言っても、技術的な総力以上のモノは引き出せないよ」
「AN94アバカンを6mm×45仕様で量産することはできるよ」
「しかし、仕様に矛盾があり過ぎるのは困る」
「AN94アバカンに囚われなくても良いが」
「開発予算を増額してくれるのなら考えてもいいがね」
「「「・・・・」」」 ぶっすぅうう〜
“正しい” と “現実” の間には、大きな開きがあった。
「いまのところ、56式突撃銃でも戦える」
「どこかの国がフライングして開発しない限り、2000年頃まで大丈夫だろう」
「逆に言うと日本が開発すれば、他国もそれ以上のモノを開発するだろう」
「それに技術革新は露鳳の同時代より進んでいる」
「例えを上げるなら、蜘蛛の糸を使ったスパイダーマーの開発も検討されてるし」
「複合装甲など、露鳳の情報より技術が進んでる」
「それまでに総合的な技術も上がるだろうし、矛盾を克服できるようになるかもしれない」
「今日は、ここまでとしようじゃないか」
「「「「「「・・・・・」」」」」」 こくん
ヴィシーフランス領アルジェリア
アルジェに中華街が広がっていた。
ヴィシーフランスは独立していたものの地中海に閉じ込められ、
ドイツの影響下にあって、主力兵装はドイツ製が占めていた。
ヴィシーフランス財政の多くは、アルジェリア領から得てると言って過言じゃなく、
フランス植民地軍と華漢植民地軍は、
地の利で抵抗するアラブ・イスラム軍と血みどろの戦闘を繰り広げ、
各国の資本家は、幾つものマネーローダリングを繰り返し、
武器商人を通じて利益を上げ、個人資産をスイス銀行に隠匿していた。
ヴィシーフランス領アルジェリアは、南アフリカ、イギリス領アルジェリアと並び、
アフリカ大陸内戦の激戦区となっていた。
しかし、ヴィシーフランス財政は華漢収入に支えられてると言っても過言じゃなかった。
アルジェ
華漢軍がフランスが植民地用に開発したERC90装甲車とAMX10RCで移動していた。
中華風ホテル
日本人たちは、中国と変わらない中華料理と
アルジェリア料理を中華風にアレンジした料理を食べ比べていた。
「ここにいると黄禍論を信じたくなるね」
「少なくともイスラムより中華の方が、わかりやすいけどね」
「しかし、欧州の近くにまで華漢軍が展開してるのを見ると怖い」
「リビア、エジプトは、反華漢同盟を組んで対抗しようとしてるし」
「アメリカも漢民族に脅威を感じて、二階に上げた梯子を降ろそうとしてるし」
「ソビエトもアラブイスラムを支援してる」
「困るのは中華需要と中東石油に依存してる日本か」
「中東石油に依存してるのは、原油が安いからだろう」
「その気になれば、東シナ海のガス油田でも足りる」
「原油が安ければ、利潤を増やせるし」
「その分、公共投資できるだろう」
「それはあるがね」
「しかし、そんなに儲けて、どこに使われてるのやら」
「さてねぇ」
「しかし、この前、3年ぶりに日本に戻ったら随分変わってたよ」
「ふっ だいたい、焼け野原にされたわけでもないのに」
「戦前戦中の建物は、ほとんど残ってなかったからな」
「そういや、土地の広い古い家と、土地の狭い新築の家を交換してたっけ」
「半島、月巳、満州国があるからできることだろうけどね」
「しかし、アルジェリアに中華勢力がこうも広がってしまうと、空恐ろしいね」
「アルジェリアどころか、アフリカ大陸全域がこんな感じらしい」
「経済に引き摺られるのは、考えものだと思うぞ」
「といってもなぁ 儲かって、やめられないは、あるね・・・」
「アフリカ大陸縦断新幹線とか?」
「まぁな」
「アフリカ大陸通信ネットワークとか?」
「まぁな」
「アフリカ大陸に華漢帝国が創建されたら大事だと思うよ」
「それが一番怖いけどね」
「しかし、需要を考えると日本は大助かりなんだよね・・・」
「中華アフリカを見ると、イギリス、フランス、ドイツは失敗したと思ってるんじゃないか」
「それはありそうだ」
「リビアとエジプトがどう出るか、見ものだな」
「イスラエルは、中華勢力と組んでる節があるけど」
「中華の勢いが迫れば変わるから、いまのうちだろう」
「まぁ 欧米諸国も漢民族を移民させたらどうなるか見せつけられたわけだし」
「今後を考える機会にはなるだ・・・」
中国人たちがやってくる。
「ようこそ。よく来ましたある」
「宋大人、お招きいただき、ありがとうございます」
「いやいや、同じアジアの同胞ある」
「異郷の地にあっては手を取り合わなければならないある」
「確かに」
「さっそく、空路を開きたいある」
「空路」
「中華民国から日本経由、アルジェリアへの空路ある」
「以前、中華民国側からそういう話しがありましたね」
「どうある。儲かるある」
「しかし、アルジェリアは、リビアと戦争になる可能性が」
「日本と空路が繋がっていたら戦争は避けられるある」
「国際平和のためある」
「「「「・・・・」」」」
「アルジェリアの利権も日本に分けて上げられるある♪」
「し、しかし、漢民族は、アルジェリア人と紛争・・・」
「あれは不幸な事故ある」
「アルジェリア人がベルベル人を虐めていたある」
「中国人は、ベルベル人がかわいそうに思って助けたある」
「それで、紛争が起きたある」
「悲しい、行き違いある」
『『『『なにを、いけしゃぁしゃぁと・・・・』』』』
「人類、皆兄弟ある。きっと、理解し合えるある」
『『『『・・・・・』』』』 ため息
満州帝国
ハルピン
姫路城に似た紅杏城は、紅葉と銀杏に囲まれ、
競争と繁栄していく社会は活気に満ちていた。
日本語と北京語はほぼ拮抗し、
日本人と漢民族は、時に警戒し合い、
時に友好的に生活を共にしていた。
荒涼とした大地は徐々に開発され、
ハルピン旧市街も洗練された和洋中建築の集合体へと昇華していく、
開発は広大な土地を必要とする、
しかし、満州帝国でも民権派は強くなり、国権派は弱くなっていた。
中華民国のような国家権力を背景にした土地収用は不可能となり、
開発規模は小さくなっていく、
それでも中華民国の開発に負けまいと土地収用しなければならず、
急先鋒を活用するよりなかった。
どん! どん! どん!
「借金は返さないといけないニダ」
「駄目ある。ないある」
「みんな迷惑してるニダ」
「借りた物かは返すって、親に言われたはずニダ」
どん! どん! どん!
「駄目ある。ないある」
「借りた物を返せないのは泥棒ニダ」
「学校の先生に教わってるニダ」
「警察に言っちゃうニダ」
「さっさと、土地を明け渡すニダ」
どん! どん! どん!
「駄目ある。ないある」
「」
「」
彼らは執拗に妨害を繰り返し、営業を困難にさせ、
警察官のように正義感を振りかざし奪っていく、
彼らの背後には、開発に関わる勢力が介在していた。
クレープ屋 “シルクウィート”
ポーランド人留学生がクレープを作ってると
「マロン生クリーム頼むわ」
「はい、いらっしゃい」
「景気はどうや?」
「良いようですよ。バイト代は変わりませんけど」
「さよか。店長に口聞いてやろうか」
「結構です」
「まぁいい、あんたの世界にもクレープはあるんかな」
「ええ、小麦科とキジ科はありませんが、似たものがあります」
「味は少し違いますがね」
「さよか・・・」
「刑事事件もありますよ」
「そうやろう、そうやろ」
「毒入り菓子事件解決したそうですね」
「おぉ 内定が大変やったからな」
「“日本人全部人質ニダ”」
「“政府も企業も言うこと聞かないと酷いニダ” って、騒いでたがな」
「ふっ」
「政官財30人くらい巻き込んでな。まったく、迷惑な連中や」
「それで、儒陀本国は?」
「知らぬ存ぜぬを押し通したわ」
「ふっ」
「それはそうとな、異世界に行けそうやで」
「それは、それは・・・」
「まずは、あんたんとこのジュラ紀分岐や」
「それじゃ保健所に知らせないといけませんね」
「そな有害扱いしなや。短期滞在や」
「そうあって欲しいですね」
「本当は、免疫法が確立してるんやろう」
「ええ、もちろん、教えてあげられませんが」
「まぁ 気長にやるわ」
未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)
横向きだった筒状の次元カタパルトが縦向けにされていく、
「“鳥居” 固定完了・・・」
『次元カタパルトを “鳥居” と呼んでるのかね』
『はい、総理。防諜上の対策でして』
『なるほど』
筒の中に被験者が降ろされる。
「大丈夫、山吹少尉?」
“ええ、覚悟は決めてきましたから”
「大丈夫よ。人間は初めてだけど」
“ふっ”
「所長。準備完了しました」
「では始めてくれ」
「次元空芯式共振コイル及び次元スパークギャップスタンバイ」
「次元テスラコイル移送器共振モード準備完了」
『本当に上手くいくんだろうな』
『総理。動物実験は成功してるので大丈夫です』
『そう頼むよ』
『政治家なんて、人間が腐ってきそうな仕事をしてるのに』
『この上、人の生き死に直接関わらせられたくないからな』
『最初の事ですので・・・』
『・・・・』
「原子共有結合のサーチに入ります」
「原子軌道及び分子軌道の変数は、許容範囲内です」
「次元探知機の固有振動数と原子共有結合を一致させます」
「価電子波長の同調性は、80パーセント」
「原子軌道誤差0.01パーセント。分子軌道誤差0.006パーセント」
「重力計数は正常」
「目標座標、月巳研究所に固定」
「共有結合オールグリーン」
「分子軌道オールグリーン」
「空間軸±0.5、時間軸±0.01、重力変動±0.02、最終調整確認」
「次元磁石ローレンツ力安定しました。転移可能です」
「総理・・」
「あ、ああ・・・転移スタート」
“鳥居” の中の被験者が青白い光に包まれ、一瞬にして消え、
モニターの月巳研究所実験室の “鳥居” の中に被験者が出現する。
「山吹少尉。大丈夫なのか?」
“はい、異常は無いようです”
「医務室には行くのよ」
“わかってますよ”
「・・・被験者に異状なし」
歓声が上がり、
その日、人類初、人工的な空間転移に成功した。
中華民国 雲南省
昆明から北西340km、
山がちな大地で、氷河に覆われた一際高い玉竜雪山の峰々が広がり、
寒気の塊が頂から転がり落ちて山裾を冷やしていく、
東欧諸国人は、心地良い冷気を好み、
郷愁は、東欧風ゴシック・ロマネスク様式の城郭を作らせ、
人々をスキー場へと誘わせる。
有力者は雲南省だけでなく、中華民国の利権を握り、
ポーランドに居た頃より優雅な生活をしていた。
城塞の周辺を外資シンジケート私兵が警備し、
城塞の一角には、日系シンジケートの代表者たちもいる。
暖炉で石炭と木片が燃やされ、
テーブルはポーランド料理と雲南料理が混ざったモノ並び、
窓の外は、白雲海が漂い、白銀に覆われた森林が広がる、
日本人たち
「沖縄の北端ほどの緯度と思えん光景だな」
「標高5596mは伊達じゃないよ。ここも3000m級だしね」
「暖房利かせるくらいなら、もっと、下に住むことだってできるだろうに・・・」
「好きなんじゃないか、こういう景色」
「真冬に暖房利かせた部屋でアイスクリームを食うような・・・まぁ 嫌いじゃないがね」
「ぅ・・ぅぅ・・これなんだ・・・」
「世界最強の酒。ポーランド産のスピリタス」
「たまらん・・・」
「アルコール度数96パーセント」
「煙草厳禁。焼身自殺したくなかったら暖炉に近づくな」
「スピリタスを飲み過ぎてポーランド人は馬鹿になったんじゃないのか」
「それほど酷いわけじゃないよ。むしろ頭はいいかもしれない」
「そういや、近くの漢民族もポーランド語を話してたし、広がってるようだな」
「雲南省じゃ一番強い言語だよ。覚えないと・・・」
「白人世界も雲南省とアフリカ大陸の交換じゃ割が合わないと思うがね」
「少なくともアフリカ大陸で独立ラッシュになるよりマシ」
「アフリカ大陸が華漢帝国になると思ったら、マシかどうか、わからんね」
「どちらにしろ、外資シンジケートの中国支配は強まるし」
「オイルショック後でも諦めていた公共工事の上位3分の2が予定通り」
「日本経済は中国とアフリカの需要があるなら助かるよ」
「首つり用の紐を作ってるような気分だだけどな」
「誰だって、未来の脅威より、年末のボーナスだからな」
「子供不幸なことだ」
「子供たちは子供たちで何がしか、考えるだろう」
「何がしかか・・・」
「日本人は保守的事勿れ、なるようにしかならない諦め観があるからな」
「少なくとも雲南省がジムニーやパジェロを買っても、日本が危機に落ちることなんてないよ」
「国民総生産で自動車の与える影響って大きいと思うぞ」
「だからって、売れるモノは売れるんだからしょうがないよ」
「それに雲南省の白人世界が強い方が満州帝国を利権も守りやすい」
「しかし、漢民族の識字率は上がってるし、地位も民族資本も増えてる」
「この状態がいつまで続くか不安だよ」
「取り敢えず、ネットワークシステムで先行してる日本Webを雲南省で採用してもらわないと」
「雲南省を押さえることができたら、中華民国もいける」
「中華民国を押さえれば、アメリカも折れるだろう」
「しかし、中華民国の通信はアメリカ系シンジケートが押さえてるからな」
「技術的には、こちらの方が優勢なんだから」
「まぁ 会議次第かな」
自由資本主義を謳う封建主義国、揚子江⇔雲南省の通り道、
アメリカに一票の国、アメリカ製中古兵器が集まる国、
アメリカ合衆国の金の生る木&ゴミ箱、
東アジアにおけるアメリカ資本の牙城、
そして、アメリカ合衆国が東アジアで唯一、駐留軍を置き、
軍事力を発揮し得る拠点。
蜀華合衆国
国際情勢が安定し、
漢民族の地位と識字率が高まり、民族資本が増大するにつれ、
在蜀アメリカ軍駐留軍は不評を買う存在でしかなく、
アメリカ軍駐留軍将兵にとっても降雨、高温、高湿の気候は不人気となっていた。
そして、中華民国の外資シンジケート支配と利権が強まり、
雲南省の白人社会の定着していくにつれ、
蜀華権益は、相対的に魅力が小さくなっていく、
重慶
巨大なビル群が建ち並び、
人々は、エネルギッシュに動いていた。
物欲、色欲、出世欲、功名心を煽り労働意欲を高め、
欲望が経済を動かし社会を活性化させる、
欲望が叶えられないのなら労働意欲は減退し、
経済は停滞し、社会資本は還流することなく経済不況となる、
逆に考えるなら社会資本さえ、循環させられるなら経済は活性化する。
手段を選ばないのなら生産主導でなく、娯楽と射幸心を煽る手法もあった。
そして、中華民国と同様、蜀華合衆国も経済の牽引は射幸心であり、
カジノによって社会資本は激しく還流し、
結果的に中華経済圏は、活性化していた。
その活気のあるカジノ街も不意に人気のない時間帯が生まれる。
深夜の路地裏で男たちが暗躍する。
『キム。誰もいないニダ』
『パク。よくやったニダ』
男たちは、人通りを見渡し、
『行くニダ』
計画を実行する。
翌朝、日本ロボットアニメの看板がズタズタに引き倒され、
男たちが儒陀製ロボットのチラシを配り始めていた。
「宇宙黒騎士ニダ」
「安いニダ。とっても面白いニダ」
「ロボットアニメの元祖ニダ」
「店はすぐ近くニダ」
「とっても面白いニダ」
「模造品に気を付けるニダ」
中華料理店、
火鍋は、鶏、豚骨、ネギ、生姜を入れた白濁の白湯(パイタン)スープと、
唐辛子と山椒を入れた麻辣の紅湯スープを二つに仕切った鍋に分けて入れ、
しゃぶしゃぶの要領で具を入れ、煮込んで食べる。
具は薄切りでないことから食べるまで時間がかかる。
日本人たち、
「黒人が増えてるな」
「海外赴任手当で800万人くらい蜀華に移住させている」
「金持ちだな」
「この蒸し暑さは、白人に辛いんじゃないか」
「日本人も辛い」
「白人は、雲南省に行くか、満州帝国に行きたがるよ」
「しかし、これだけ発展させられるなんて、カジノ産業は凄いな」
「何かを生産してるわけでもないのに」
「生産はしてるよ」
「カジノ収益を上げるため国家を上げての公共事業とサービスだ」
「アメリカの投機産業も一種の賭けだしね」
「日本人には向かない」
「おかげで儲けられてる」
「馬鹿な日本人が散財してるのは見てられないけどな」
「それはそうと、諜報組織を拡大するって?」
「アメリカが反日勢力とのパイプを強めてるからな」
「日本も反米組織とパイプくらい作っておかないと」
「アメリカと敵対するのは不味くないのか」
「いざというときは、反米組織を切ればいいだろう」
「欧米諸国がよくやる手だし、それで何度も煮え湯を飲まされた」
「でもなぁ 波風立てなくても」
「だから外交の手札として使うんだって」
「外資シンジケートとの付き合いが長いと碌な事考えないな」
「“やられたらやり返す、そうすれば、向こうも紳士的になる作戦” だよ」
「紳士ねぇ」
ドイツ帝国
ドイツ軍は、内線の小さな欧州圏を守るため航続距離の比重が小さく、
数に任せて押し寄せるソビエト軍に備え、軍の密度を省くこともできず、
こじんまりとした兵器体系になりやすかった。
この兵器開発コンセプトは欧州の立地特性に合わせたもので、
他の欧州諸国も大同小異な兵器体系として現れる。
ドイツ空軍省
「次期主力戦闘機は、双発戦闘機Meツィクロンと3発戦闘機Taモーントリヒトか・・・」
「エンジンが少し小振りなのが不安だな」
「ユンカース・ユモ600は、小型ターボファンエンジンだが小型単結晶タービン」
「粉末金属焼結ディスクで推力重量比と燃料消費率が優れてるはず」
「3発戦闘機Taモーントリヒトは、F15イーグル、瑞鶴、Su27ジュラーヴリクに負けないし」
「Meツィクロンは、F16ファイティング・ファルコン、瑞燕、MiG29ラーストチュカに勝てるだろう」
「たぶん、米日ソの次期主力戦闘機に対しても支障ないだろう」
「瑞鶴と瑞燕の電子機器は二世代先を行ってるらしいが?」
「噂だけならな」
「しかし、機体設計はこちらの方が進んでるし」
「エンジンが更新されない限りは、大丈夫だろう」
「エンジンか」
「そういえば、日本の新型エンジン開発はトーンダウンしてるようだ」
「予算不足で苦しんでるのだろう」
「どこの国も同じだな」
「「「「・・・・」」」」 苦笑
インド大陸
インド藩王諸国連合 首都ニューデリー
スモッグが空を覆い、埃が舞い、人々はカレー臭を漂わせる。
総人口7億人、多様な民族が混ざり700種の言語が使われる社会が広がっていた。
インド市場と資源は、潔癖な日本人を誘う魅力があり、
交流と近代化が進むにつれ、日本人ビジネスマンも増えていく、
日本人とインド人が調印を済ませて握手すると、会場は拍手に包まれる
日本人たち
「日本のアニメ映像を流すだけなのにえらい騒ぎだな」
「インド人もいい加減、儒陀人に怒ってるんじゃないか」
「日本人も儒陀人には、かなり怒ったけどな」
「それで、日本製のアニメと特撮で嫌がらせか」
「まぁ 少しは金になるしね」
「インド人が勝手にコピー商品を作りそうな気もするが」
「儒陀起源でパクリモノが広まるより、インドと契約を結んだ方がマシだと」
「「「「・・・・」」」」 ため息
新・儒陀皇帝府
ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!
ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!
ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!
「暑いニダ〜」
「皇帝。関係者が逮捕されました」
「ま、まだ大丈夫ニダ」
「日本の国家権力、基幹産業の味方をするニダ」
「国権を強めて日本人の大衆を虐めるニダ」
「虐めていけば庶民息切れして子供を作れなくなって、自暴自棄になるニダ」
「そして、事大作戦とカッコウ作戦で日本の中枢に食い込んで、日本を支配するニダ」
扉が開く、
「・・・皇帝大変です。日本が今回の事件で遺憾の意を・・・」
「違うニダ。日本人が儒陀人を差別したからニダ」
「日本人が悪いニダ。儒陀人は全然、悪くないニダ」
「日本と日本人は国際社会で儒陀を悪く言ってきたニダ」
「日本に儒陀に対する誹謗中傷の謝罪と賠償を要求するニダ」
「皇帝。日本は今後、儒陀からの発注を受けないと・・・」
「それと日本のアニメと特撮がインド藩王諸国でも配給されると・・・」
「あれは個人が勝手にやったことニダ」
「個人の犯罪と国際関係は関係ないニダ」
「国家間の付き合いとは、別の次元ニダ」
「日本人の陰謀ニダ!!!」
「儒陀を国際的に貶めようとする日本の陰謀ニダ!!!」
「日本人が憎いニダ!!」
「日本人が憎いニダ!!!」
「日本人が憎いニダ〜!!!!!」
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月夜裏 野々香です
いよいよ、人工的な時空転移の幕開けです。
時空カタパルトは防諜のため通称 “鳥居” になりました (笑
第44話 1984 『時空鳥居』 |
第45話 1985 『空から恐怖の・・・』 |