月夜裏 野々香 小説の部屋

    

タイムスリップ系架空戦記

『時空巡洋艦 露鳳』

 

 第45話 1985 『空から恐怖の・・・』

 外資シンジケートは、中華民国の行政、交通、通信、生産、市場を利権という形で支配し、

 私兵を保有し軍閥化しつつあった。

 私兵は、収益から経費が賄われるため、収益以上の私兵はあり得ない、

 おのずと私兵戦力は、利権と収益の大きさに比例してしまう。

 当初、日系シンジケートは、最大勢力の資源マフィアだったものの、

 アメリカ系、イタリア系シンジケートのカジノマフィアに追い上げられていた。

 外国資本と結託した中華アウトローの中華民国支配は戦後35年に渡って続き、

 非合法な暴力が社会を覆っていた。

 それで、世相が暗く、閉鎖的になるかというと、さにあらず、

 外資系周辺の治安は総じて、民族資本系域の治安より良く、

 カジノは、資本を還流させ、消費と市場を刺激し、経済を活性化させていた。

 また、外資シンジケート系企業の賃金は、民族資本より上でなければならならず、

 労働者の生活水準は向上し、社会福祉を押し上げ、

 社会資本の増加は、漢民族資本の増加に転化され、

 中華民国のGDPを増加させていた。

 アメリカ、ドイツ、日本、ソビエトは、中国の利権支配を維持し、

 余剰資本で高級品開発の踏み台とするため、

 列強は、大陸の低中級品を生産、海外へと輸入し、

 国内産業を空洞化させ、国際政治力を自ら低下させていた。

 列強権益者の有力者にとって、中国利権は金の生る木。

 国内産業の生殺与奪を握り、国内権力基盤の切り札でもあった。

 そして、海外利権は、自らを聖域化させ、

 傲慢と受け身と消極と保身を強め、癒着体制に向かわせる。

 もちろん、商品を全て大陸に押し付けられるなら、

 労働者の賃金とボーナスは増え、安定収入が得られた。

 しかし、それも労働貴族の層を広げるだけの麻薬に過ぎず、

 国内産業を老害化させる要因ともなった。

 国権の強い日本、ドイツ、ソビエトは、

 低価格の低中級品の輸入を押さえる動きが見られたものの

 アメリカは自由資本主義が強く、

 民族主義、国粋主義の垣根の弱いのか、

 積極的な中華金融支配で利益を上げていた。

 重慶

 ハニカム(ハチの巣)構造のドームがカジノ区画を覆う。

 吸着型除湿チューブで除湿された水は、浄水器を通過した後、飲料水として使われ、

 憩いの場ともなっていた。

 ドーム内は、外界より湿気が薄れ、涼風を求める人々が集まり集客に繋がる。

 外資シンジケートの定例会議。

 「最近、中国人の賃上げボイコットが増えてる」

 「外資系企業のおかげで中華民国の公共福祉と社会基盤と賃金が向上してるのに・・・」

 「民族資本の劣悪待遇から逃げて外資系に来てるのだから、もう少し自重すればいいのに」

 「外資系が消えたら、あっという間に特権階級が強まり、人権が消えると思わないのかね」

 「そういうのがわかるくらいなら中国は、こういう状況にはならないだろう」

 「むかしの封建社会を引き摺ってる国は、大なり小なり似たようなものだが」

 「アメリカ人は、個人主義が行き過ぎなんだよ」

 「というか、賃金ボイコットの半分は、カジノ街の賃金と待遇が上がってるせいだけどな」

 「「「「・・・・」」」」 うんうん

 「儲かってるのだから配当は増えるよ」

 「有能な人材も集まるし」

 「だいたい、穴掘りなんて、疲れるだけだし、地味な仕事は誰もやりたがらないだろうが」

 「あのなぁ そういう華やかな世界に惑わされて庶民が持ち崩してんだろうが」

 「ちったぁ 自重しろよ」

 「カジノ雇用も作ってるだろう」

 「それに中華民国の生産力を押し上げて、強くさせてどうするんだよ」

 「サービス産業で浮かれさせた方が国力比は保たれるし」

 「そうはいっても資源は必要だ」

 「それに海外受注しないと国内産業を保てない」

 「これからは情報産業の時代だよ」

 「製造なんて中華民国にやらせて、開き直れよ」

 「馬鹿言うな」

 「アメリカ人は合理主義と採算性で考え過ぎ」

 「はぁ 日本とドイツは、頭の中、お小遣い帳だろう」

 「あるだけ使えばいいってもんじゃないんだよ」

 「貸借対照表とか損益計算書なんて知らないんじゃないか」

 「合理化と採算性というのは、組織と工程の精悍性を高め、最大の利益を上げる」

 「出来・不出来混在な民族と言語を抱え込むより」

 「出来だけの個人を集めた方が効率いいんだよ」

 「それが資本主義と民主主義ってやつだ」

 「よう言うわ、黒人やフィリピン人を中華に押し付けてる癖に」

 「暑苦しい国だからね」

 「白人は、利益になっても嫌がるでしょう」

 「行くなら満州帝国か、雲南省だな」

 「カジノを公営にするつもりはない」

 「男なら伸るか反るかの賭けだろう」

 「まさか」

 「むかしは、もっと捨て鉢で勇ましかったぞ」

 「思いだしたくない」

 

 

 とある秘密組織

 「重要な話があるニダ、聞いて欲しいニダ」

 「なんだ?」

 「日本人の秘密を掴んだニダ?」

 「ほぉ 日本の秘密・・・」

 「つまり、組織が我々を雇った理由ニダ?」

 「それで、なにがわかったというのだ?」

 「聞いて驚くニダ」

 「実は、日本には、異世界人も宇宙人も未来人も超能力者もいるニダ」

 「・・・ほぉ それで、異世界人は、どこにいる」

 「クレープを焼いてるニダ」

 「クレープ?」

 「そうニダ。実は思ったより、身近にいるニダ」

 「異世界人がクレープ産業に・・・」

 「アルバイトニダ」

 「ア、アルバイト・・・」

 「そうニダ。ポーランド人留学生ニダ」

 「ほぉ ポーランド人留学生で、クレープのアルバイト・・・」

 「そうニダ。日本は、スーパー戦隊を作ってるニダ」

 「ほぉ スーパー戦隊を作ってるのか」

 「そうニダ。スーパー戦隊ニダ」

 「スーパー戦隊か」

 「携帯バリアを使ってるニダ」

 「携帯バリア?」

 「そうニダ。ベルトに仕掛けがあるニダ」

 「日本人は、スーパー戦隊で携帯バリアを持ってるニダ」

 「「「「・・・・・」」」」 

 「それと日本は、隠れてUFOを建造してるニダ」

 「「「「・・・・・」」」」 じーーーー

 

 

 

 日本は、年間9000億kwの発電量に達していた。

 水力発電は日本、扶桑、月巳を合わせて、1200億kwで伸び悩み、

 発電の多くは火力発電が占めた。

 しかし、安全保障上から国外の化石燃料に頼る不安は大きく、

 地熱発電の600億5000万kwの発電量を筆頭に、

 風力発電、太陽光熱発電で電力が作られていた。

 ほか、自然対流小型原子炉が孤島に建設されていた。

 安全と引き換えに、規模大きさの割に発電量1万kwにも満たないことから、

 日本本土では費用対効果が得られなかった。

 しかし、他国の原子力開発に遅れを取ってることから、

 日本でも原子力発電所の建設が行われていた。

 原子力発電で費用対効果を得るには、

 膨大な電力と強制的な冷却が要求され、

 1500mの深々度地下に加圧水型原子炉が建設される。

 原子炉で熱された水が蒸発しタービンを回して発電する、

 余剰の熱蒸気は、1200mもの縦穴を昇って冷やされ、

 冷やされた水は、別の縦穴から原子炉に向かって落ちていく、

 自然対流小型原子炉を拡大改良したものだった。

 技術者たち

 「炉心融解の心配はないだろうな」

 「核爆発でも、水素爆発でも、地下は逃げ道がないし」

 「そもそも縦穴の水量容積と空間体積から逆算しても、水が全て蒸発する事はあり得ない」

 「結局、アメリカの加圧水型原子炉をパクって、縦型にしたものなんだろう」

 「まぁ そうなんだけどさ」

 「アメリカは原子力機関艦艇の応用技術で余裕ないけど」

 「こっちは、完全に民間用で地下だから縦型にできる」

 「日本は狭いから縦型の方が丁度いいし」

 「チタン製蒸留塔は、緩衝材を挟んで側壁に囲まれてるから、地震でも怖くない」

 「使用済み核廃棄物は、どうするって」

 「日本海溝からマントルの下に捨てようか、って、話しもあるけど」

 「魚食えなくなるだろう」

 「コンクリート詰めで日本海溝に捨てる」

 「マントルは年間4cmで沈んでいくから、一辺が5mくらいだと125年で海底に埋まる」

 「まぁ 深海掘削艇が完成すれば、穴掘って埋めるけど」

 「深海掘削艇は完成したの?」

 「まだこれから。DPPを使うから他の国より潜りやすいけど」

 「マントルの内側で核爆発起こして地震にならないだろうな」

 「それは、ちょっと心配だけどな」

 「おいおい」

 「このまま、地下を掘り続けて地熱発電所にした方が安全じゃないのか」

 「まぁ そう言えなくもないけど」

 「マントル発電は来世紀ものの技術になりそうだし」

 「「「「・・・・」」」」

 「原子力で、アメリカ、ドイツ、ソビエトに遅れを取り過ぎるとまずいでしょ」

 「まぁ そうだろうけど」

 「いざというときは、DPPがあるから大丈夫だよ。たぶん」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 相模湾

 45000t級若狭型強襲母艦 若狭(わかさ)、

  9000t級相模(さがみ)型巡洋艦

    相模、讃岐、信濃、因幡、近江、但馬、長門、周防、

 

 45000t級若狭型強襲母艦 播磨(はりま)、

  9000t級相模(さがみ)型巡洋艦

    薩摩、駿河、摂津、河内、和泉、上総、陸奥、美濃、

 

 45000t級若狭型強襲母艦 月巳(つくみ)

  9000t級相模(さがみ)型巡洋艦

    三河、尾張、伯耆、常陸、大和、武蔵、甲斐、伊勢

 観艦式が披露され、

 各国の来賓や好きな人々が集まっていた。

 航空機や潜水艦も現れるが主役は、水上艦艇だった。

 

 42000t級原子力自走型ドック巡洋艦ワルプルギス

 来賓の人たち

 「日本の戦後艦隊が勢ぞろいか」

 「よくもまぁ ここまで揃えたものだ」

 「だが、日本の造艦速度は鈍化している」

 「たぶん、今後は代艦を揃えるだけじゃないかな」

 「平和だからな」

 「いや、ほかが金を欲しがって、そっちに取られただけだろう」

 「日本経済はいいと思ったが」

 「どうかな。中華民国が低中級品で追い上げてるから利潤は落ちてるはず」

 「内情は苦しいはずだ」

 「いつまでもつかな」

 「日本は国内需要もあるだろう」

 「まぁ 開発の余地は残されてるが、不公平感が強まるし」

 「大規模な財政投資は、難しくなってる」

 「それと、軍国主義への警戒感だろうな」

 「これ以上はやめた方がいいというラインがあるからな」

 「だから、ほとんどの国は、先端技術や宇宙開発で、高度な技術を蓄積して」

 「軍事技術に転用する」

 「そして、戦争の勝敗を決するのは、目に見える軍艦じゃなく」

 「目に見えない技術になってる」

 「日本の軍事技術がどの程度なのか気になるところだ」

 「アメリカのイージスシステムと同等以上と聞くが」

 「それはどうかな」

 「露鳳の未来軍事技術で底上げしていたとしても、あと10数年分だろう」

 「日本の軍事開発予算比であり得ないと思う」

 「ドイツは想像力と開発力に力を入れるが」

 「アメリカは成功報酬が大きな加点方式で、上昇志向で成果主義と採算性で上だ」

 「日本は、成功報酬が少ない減点方式で、保全志向で組織力と運用力が強くなる」

 「社会基盤と工業力で遅れていた日本人向きの政策だとは思うね」

 「いまは、社会基盤と工業力でドイツとアメリカに並んで、追随ではなくなってる」

 「ローリスク・ローリターンの投資からハイリスク・ハイリターンな投機だろう」

 「どうかな。土木建設関連の既得権は強まってるし。開発の余地は残ってる」

 「まともな勢力は、遅れてる分野で追い付こうとバランスを変えつつあるようだが」

 「むしろ、軍事関連で手抜きした分で、公共投資してるのでは?」

 「そういう節は、ありそうだが・・・」

 「日本が未知領域科学で進んでいるのは、本当なんだろうか?」

 「そうなんだが情報源がな・・・」

 「マシな情報でも?」

 「儒陀人が日本人は異世界人と交流があって、特高がUFOと超人を作ってるとか・・・」

 「ふっ どこかのSFオカルトゴシップでも読んだような荒唐無稽ぶりだな」

 「ああ、大枚をドブに捨てさせられて頭に来たから、やっちまった」

 「むかしから、アレな民族だと思ってたが真性だったんだな」

 

 

 右翼の宣伝車が路上を走る。

 普通の人たち

 「なんか、騒がしい」

 「儒陀の連中だろう」

 「威勢がいいな。黒幕でも付いたかな」

 「そういえば新しい工場を建てるとか、地下原子力発電所を建設するとか」

 「既得権益者が儒陀と組んで箱モノ聖域を広げてるわけね」

 「相変わらずか・・・」

 「中華民国の工場は、日本の工場より大きくなってるというし」

 「低中級品産業で追い詰められてるのは事実だからね」

 「権力層の一部は、儒陀のワクチン代わりに中国人を入れようかって・・・」

 「それ、もうワクチンじゃないから」

 「普通の国民が地位と財産を奪われて搾取されて、嫌な目に遭うだけだから」

 「上にいる人間は権力に目が眩んでるか、守られてるから、わからないんだろうよ」

 「まぁ 警察や軍じゃ できないことがあるからね」

 「ていうか、法は公平とは言うけど、儒陀もよくやるよ」

 「民族的に事大主義と成り済ましが得意だからね」

 「既得権と相互保障で国民を騙して搾取」

 「対外的な敵意を煽って、攘夷論に持ち込んで日本を孤立化させる」

 「それでもって、権力層と組んで国民から吸い上げる非国民で」

 「逆らう者は、売国奴で非国民扱いで誹謗中傷と暴力で淘汰」

 「日本の利権を奪って儒陀に横流し」

 「日本を孤立化させ、戦争で滅ぼそうとしてる勢力を何と呼べばいいのだろうね」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 未来科学研究所 (Future science laboratory : F・S・L)

 道場で組み手が行われ、

 運用者と研究者たちがモニターを覗きこんでいた。

 「・・・打撃が皮膚に達していないか」

 「空気の壁で叩きあってるようにも見えるな」

 「直撃は受けてないけど、衝撃は伝わってるよ」

 「数センチ厚のコバルト(5.0)の塊で打ったり受けたりだから常人なら死んでる」

 「手の甲と肘。足の甲と膝の硬度を強く」

 「他の部分は、衝撃を緩和させるような柔らかさでいいんだよな」

 「それでいい」

 「しかし、何十年も鍛錬してる格闘家以上か」

 「関節補正もあるから、格闘家でさえ、舌を巻くだろうね」

 「技術レベルが硬度5のコバルトなら、オーラーの量で優劣が決まりそうだな」

 「いや、格闘センスもあるよ。2、3cm差ならどうにかなる」

 「理想的な体術移動と動作をコンピューターで算出できるがね」

 「用兵の個性と、好き嫌いで変わるからな」

 「模範用の格闘ロボットでも作ってくれ、経験しないとわからないだろうし」

 「DPPを使えば質量を浮かせて、やれないことないけどな」

 「しかし、DPPを使える人体と違って、機械は、大量の電力を必要とする」

 「消費電力量を計算するとクビが飛ぶよ」

 「あれは? 蜘蛛の糸」

 「DPPを帯磁しやすいだけで発生と違うから」

 「んん・・・・」

 「それはそうと身体的な異常はないか。皮膚が弱くなるとか?」

 「DPPはスイッチを入れない限り発生しないから任務中以外は使わないようにしてる」

 「それでも一日8時間は使ってるだろう」

 「いまのところ感じないがな」

 「皮膚を過保護し過ぎて。皮膚が弱く無能になったら元も子もないからな」

 「人間ドック入りの期間を縮めた方がいいか」

 「そういう可能性もあるのか、難しいもんだな」

 「可能性もなにも外界の刺激は、人間の思考や行動様式に大きな影響を与える」

 「腸は第二の脳。皮膚は第三の脳っていうくらいだ」

 「気付かないうちに無能になりたくないだろう」

 「そ、それは困る」

 「だが、軍部は、DPPが硬度6だと心もとないそうだ」

 「DPP制御は電子機器だから新しい工場を建てないと難しいよ」

 「工場は、この前、建てたばかりじゃなかったっけ」

 「大手企業10社は、工場を新・旧・次世代改装で回転させたがってる節はあるけど」

 「5社にしてくれよ。機密が増えると採算性が低下するらしいから」

 「自前でオーラーローブ装備の警備員を欲しがってる」

 「それは、ちょっとなぁ」

 「しかし、基幹産業でも政府と軍の干渉を嫌うからな」

 「ソビエトみたいな秘密主義まで行くと収益が見込めない」

 「アメリカまでいくと収入は得られても漏洩が大き過ぎる」

 「ドイツ程度は、機密を守らないと」

 「国内資源がないのに、それだと海外利権の依存が強まって反発をくらう」

 「それを避けようとすると貿易収支で利潤が得られず、投資ができなくなる」

 「結局、貿易収支で稼いだ利潤で社会基盤を大きくしていくしかない」

 「アメリカ、中国、ソビエトは、国内資源と市場で経済を賄えるから国情が違う」

 「真似はできないよ」

 

 

 

 アフリカ大陸

 イギリス領ナイジェリア

 機銃掃射が木々の合間を飛び交い、

 ロケットランチャーが爆発する、

 街で漢民族と黒人は混在し、生活していた。

 しかし、採掘権を巡る戦いは、血塗られた戦いによって決まる。

 植民地軍と民族独立軍の戦いは漢民族と黒人の生殺与奪権を巡る戦いであり、

 植民地軍の主力は華漢軍だった。

 漢民族は、莫大な資源を宗主国に送ることで地場を広げ、

 そこに華僑資本が参入し、社会基盤を作り、

 さらに利権を拡大させるため海外投資が集まる、

 投資家にとってアフリカ大陸は、金の生る木であり、

 大陸の港から積み出される資源は、高く買ってくれる国か企業に輸出され、

 代価の多くは、武器弾薬になってしまうという。

 列強にとっては、おいしいことこの上なかった。

 戦争反対とは言うものの、安い資源は、魅力があり、

 幾つものマネーローダリングが行われ、

 戦争と全く縁のない法人でさえ、

 アフリカ大陸の紛争によって収益を上げていた。

 沿岸の都市ラゴスに近代的な中華風ホテルが立っていた。

 列強は、利益率の良い華僑と組むことが多く、

 独立勢力に武器を横流してるロシア人でさえ、華僑系のホテルに宿泊している。

 代理人たち

 「このままだと、アフリカ大陸が華僑に取り込まれてしまうぞ」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「そうはいってもな」

 「資源が安く入る。武器やモノを買ってくれる」

 「さらに公共工事を発注してくれるのだから止められないよ」

 「単一なのが大きいよね」

 「中国大陸の収益とも連動してるし」

 「華漢帝国の対抗馬は、リビアから東方のアラブ・イスラム勢力か」

 「アラブの石油は大きいから、どっちに付くか割れそうだな」

 「イスラエルは、アラブ憎しで、中華と組み始めてるよね」

 「どちらにせよ。アラブイスラム勢力が負けると、欧州は直撃だよ」

 「「「・・・・」」」

 「わかっちゃいるけどね」

 「そうそう、ここまで中華に地盤を作られたら・・・」

 「空から恐怖の大王が来るだろう。アンゴルモアの大王は悪夢だね」

    “1999年7の月 空から恐怖の大王が来るだろう”

    “アンゴルモアの大王を蘇らせ”

    “マルスの前後に首尾よく支配するために”

 「アンゴルモアというくらいだから、中国人のことだろう」

 「いやいや、黄色人種で日本人も含んでると思うね」

 「まさか、そんな」

 「「「「・・・・・」」」」 じー

 「や、やだなぁ あんな予言は嘘ですよ」

 「日本が何かを隠してるのは事実だね」

 「そうそう、日本は秘密が多過ぎる」

 「X艦とか」

 「まさか、あははは・・・」

 「そ、それなら、ロズウエル事件とか。ナチスがUFOを作ってるとか」

 「誤魔化すな」

 「まさか、あははは・・・」

 「「「「・・・・・」」」」 じー

 「こ、この場合、恐怖の大王の出どころである “空” に着目すべきなんですよ」

 「空だろう」

 「ぶ、仏教には色即是空、空即是色というのがありまして・・・」

 「ほぉ 日本人が珍しく、反論か」

 「“空” とは、目に見えないもで意思とか精神世界を表し」

 「“色” は、目に見えるもので物質社会を表しているんですよ」

 「それで」

 「つ、つまりですね」

 「目に見えない意思と、目に見える現実の物質とは、相互関連がありまして」

 「この場合の “空” とは、我々の意思を表しているのではないかと・・・」

 「「「「・・・・」」」」

 「つまり、我々の欲望と意思が “恐怖の大王” の正体であり」

 「我々の利益誘導がアンゴルモアである中華圏の勢力を蘇らせてるんですよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「う、上手く逃げたな」

 「あははは・・・」

 

 

 

 インド大陸

 インド藩王諸国空軍基地

 日本人とドイツ人の技術者が機材を持ち込み、

 滑走路に併設された二つのハンガーで、MiG21FLバラライカの戦闘力を向上させていた。

 どちらも民生用機器を改良したベンチャー企業の武器輸出で、国の規制を逃れていた。

 改良を終え、最終確認を終えた2機種のMiG21FLバラライカが次々と離陸していく、

 インド空軍将校たちは、真剣な面持ちで、模擬空中戦を見守り、

 日本人とドイツ人は、戦闘結果で売れ上げが変わるのか、さらに真剣な表情で見守る。

 ドイツ人と日本人

 「儒陀は、来年あたりF5EタイガーUをライセンス生産出来るようになるらしい」

 「インドは、既にMiG21をライセンス生産させてますよ」

 「ちっ ドイツ製戦闘機を買えばいいのに」

 「ドイツ製は工業的なハードルが高いですから」

 「どのみち、電子機器が外国頼りなら変わらないだろう」

 「機体とエンジンさえ国産化できるなら、電子機器は選択できますから悪くない方法ですよ」

 「まぁ レオパルド1が売れたのなら悪くない」

 「そういえばレオパルド2に更新していたんでしたね」

 「日本と満州ならレオパルド2を売って上げてもいいが」

 「ソビエト陸軍は、T80を量産してるし。中華民国もレオパルド1とM60を購入してる」

 「74式じゃ対応できないだろう」

 「そうですね・・・地上戦は、核地雷が主戦力ですからね・・・」

 「コンクリートの蓋を被せて、ロシア側国境側に向かって爆発するやつかね」

 「よくご存じで」

 「ふっ 情報網があってな。面白そうなので我が国も採用したよ」

 「是非、出所を知りたいですな」

 「あははは・・・」

 「・・・・」

 「ま、いまどき戦争なんて、よっぽど、困窮してなきゃやらないか」

 「そうですよね」

 日独ソがインド藩王諸国を軍事的に支援し、

 米英が儒陀、ハイデラバード藩王国、パキスタンを軍事的に支援する図式はいまも続いていた。

 しかし、民生部門は金次第だった。

 発注や受注があれば、どこの国でも出かけて、商品を届け、公共事業ができることは変わらない、

 

 

 エジプト

 中東諸国は、工業力が総じて低く、列強から最適な兵器を購入し、

 軍隊に配備することが多い、

 そのため中東戦争が一段落すると、

 ソビエト製、フランス製だけでなく、

 日本製、ドイツ製、アメリカ製の兵器・武器弾薬が混在しはじめた。

 アラブ・イスラム諸国は、イスラエルと緊張関係が続いていた。

 しかし、アフリカ植民地の守護者ガーディアンである華漢勢力が増大するにつれ、

 脅威はイスラエルや北だけでなく、南からも台頭すると予測される。

 問題は、アラブ・イスラム勢力が一枚岩ではなく、

 近代国家の指標の一つ、工業力を有する国が皆無なことであり、

 懸念すべき潜在的な大きさはイスラエルを超えていた。

 カイロにアラブイスラムの代表が集まっていた。

 「漢民族の人口は、アフリカ大陸全域で増えている」

 「このままでは、中国人がアフリカ大陸を支配し」

 「我々は、南から圧力を受けることになるだろう」

 「列強は、我々御石油に頼っている。我々の側に付くはずだ」

 「石油はな」

 「しかし、市場規模と生産力の大きさは断然、中華圏が強い」

 「我々の石油がなければ、石油は高騰し、採算性は低下する」

 「利潤が得られない企業は潰れる」

 「さらに東アジアとアフリカ大陸に広がる中華圏は、米英ソ日独にとっても脅威のはず」

 「我々が見限られる可能性は低いと思うが」

 「そもそも、東アジアの中華圏は、外資シンジケート支配に甘んじているし」

 「我々の資本も中華民国に及んでいる」

 「それにアフリカ大陸の華僑勢力は、植民地ごとに利権が独立している」

 「アフリカの華漢勢力が統合できるか、疑わしいと思う」

 「それにアフリカの石油需要は年々増加して、原油の高騰を足す気配を見せている」

 「我々にとっても、良い顧客だよ」

 「今のところはな。しかし、対抗処置を取らなければ、華漢帝国に制圧される可能性も出てくる」

 「「「「・・・・・」」」」

 アラブ・イスラム勢力とアフリカの華漢勢力は、互いに相手を利用しながら自勢力拡大を目指していた。

 

 

 イギリス ロンドン

 日英国交正常化で乗り越えないければならないハードルの一つに皇室外交があった。

 日英貿易は、戦後徐々に増加し、

 訪英は、良好な関係が作られてからとなっていた。

 イギリスの女王は、既に来日しており、

 日本の天皇も、この日、訪英し歓迎式典が開かれていた。

 ロンドン港

 50000t級客船 “かぐや姫”

 日本の外交関係者たち

 「どうやら、訪英行事は、ほとんどこなせたようだ」

 「イギリスとの、わだかまりが無くなると、ほっとするね」

 「右翼が騒いでいたようだが」

 「右翼といっても儒陀だろう」

 「あいつら、旧敵性国家と友好関係になろうとすると足を引っ張る習性があるからな」

 「ふっ」

 「あいつらの言うことを真に受けてると日本は、もう一度、四面楚歌だ」

 「そういうのはやめてもらいたいね」

 「ていうか、本気で軍拡で、もう一度、日本発の世界大戦を望んでるのかね」

 「他力本願での望んでるだろうよ」

 「真に受けてる馬鹿な日本人もいるらしいがね」

 「軍事力だけで国防ができると思い込んでる連中もいるだろう」

 「国防は必要だよ」

 「しかし、国防力を増やすため連中に地位と金を渡していったら日本人は、ずっと日蔭者だよ」

 「まぁ 腕っ節が強いのが好きな連中はいるからね」

 「それはそうと、ドイツ人の観光客も結構いるな」

 「対立を利用して身堅めできても、貿易収支にならないからね」

 「フォークランド紛争で、ドイツがイギリス側に付いて、英独交流が増えたようだ」

 「何にしてもこれで英国投資も増えるだろうし」

 「中華民国での諍いも緩和するだろう」

 

 

 

 新・儒陀皇帝府

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ! ぱたっ!

 「暑いニダ〜」

 「皇帝。インド市場で儒陀玩具の売り上げが落ちているニダ」

 「どうしてニダ」

 「日本がインドの会社と提携を結んで、玩具を販売し始めているニダ」

 「許せないニダ」

 「偽物で本物を貶めるなんて、日本企業は卑怯ニダ」

 「インドの玩具メーカーに圧力をかけて潰してやるニダ」

 「皇帝。儒陀藩皇国国民が兵役逃れのため、ハイデラバード藩王国、パキスタンに逃げてるニダ」

 「卑劣な犯罪者ニダ。即刻引き渡しを要求するニダ」

 「やり過ぎると、インド藩王諸国に政治亡命されて国際的に恥をかくニダ」

 「ゆ、許せないニダ」

 「富裕層は、満州に逃げてるニダ」

 「そ、そっちはしょうがないニダ」

 「日本をもう一度、世界と戦争させるニダ」

 「今度こそ、日本を戦争で滅茶苦茶に踏み潰して、逆支配するニダ」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 特にないです。

 

 

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第45話 1985 『空から恐怖の・・・』
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