月夜裏 野々香 小説の部屋

     

現代小説 『紫 織』

     

第22話 『不良娘もね』

 こもれび商店街で開店したばかりのクレープ屋さん。

 ダブルチョコストロベリーバナナにかぶりつく紫織に声を掛けたのは・・・・

 「紫織ちゃん。何かと話題を振りまいてくれる子ね」 榊カスミ

 「そうそう、儲かってる? 紫織ちゃん」 萩スミレ

 「・・・榊お姉ちゃん。萩お姉ちゃん」

 「わたしも、この子と同じもの」

 萩スミレが店員に頼む

 「あ、わたしも」 榊カスミ

 「ぼちぼちです・・・なんか、忙しそう・・・なのかな?」

 「忙しいよ」 萩スミレ

 「おかげさまでね。休み無しよ。ったく」

 「新聞沙汰になって事件の事が注目されているし、警察も手が抜けないから」 榊カスミ

 「制服着て、クレープ食べて大丈夫なんですか?」

 「クレープくらい食べさせて」 榊カスミ

 「紫織ちゃん、犯人から恨みを買っているかもしれないよ。大丈夫?」 萩スミレ

 「え〜 どうして?」

 「あ、やっぱり気付いてない」

 「警察や市民をたきつけて “犯人逮捕” なんてやったら犯人から恨まれて当たり前じゃない」 萩スミレ

 「げっ!・・・どうしよう〜」

 急にクレープの味が落ちる

 「誰が言い出しっぺなの?」 榊カスミ

 「誰って、なんとなくそういう流れになって、だって、テレビとか、新聞でも、やってるじゃない」

 「大人で組織が大きいと狙い難いけど」

 「子供だけで小さいくやっているところなんだから、気をつけないとね」 榊カスミ

 「しかも、地元だし」 萩カスミ

 「が〜ん」

 「まあ、犯人も危ない橋は渡らないと思うけどね」 榊カスミ

 「美味〜い」

 萩スミレが、もう一つを榊カスミに渡す

 「やばいんだ・・・」

 「一応ね。わたし達が、この辺につくことになったから」 萩カスミ

 「美味しい。クレープなんて久しぶりに食べる」 榊カスミ

 「交通課で、この辺?」

 「本当は、刑事課って話しが、あったんだけど。空いている人間がいないの」

 「それで振り分けられたの。護衛とかじゃないけどね」榊カスミ

 「なるべく、古賀シンペイ君といたら。守ってもらえるよ」 萩スミレ

 「うん・・・でも、今日は道場か」

 「あの子、意外と良い子みたいね。普通は、カツアゲなんて、しないみたいだし」 榊カスミ

 「ていうか、第一印象そのまま。オ・タ・ク」 萩スミレ

 「なに? 調べたの?」

 「だって被疑者を半殺しにして財布奪っているし、それが、別件の事件現場の近くだし」 萩スミレ

 「シンペイちゃんが悪い子だったら、危険なのに女の子を助けたりしないよ」

 「そうね・・・ねぇ〜」

 「紫織ちゃん。けっこう顔が広いみたいだけど事件のことで、何か・・情報知ってる」 榊カスミ

 「警察が知らない情報をわたしが知っているとは思えないけど・・・・」

 「意外とね・・・わからない事があるのよね・・・」

 「特に今回は、タテ割りで組織同士の横のつながりが悪くなっているし、競争しているみたい」

 「競争自体は良いけど、情報の共有とか、非協力とか・・・・スミレ、なに、やってんの?」 榊カスミ

 「・・・もうひとつ、頼もうかなって」

 「デブになるよ」

 「だって休み無いし、少し糖分を取らないと頭回らないもん・・・」

 「ブルーベリー・ティラミス・キウイ」

 「あっ! わたしもそれ」

 「ははは」 紫織

 「この辺も、随分、羽振りが良くなったね」 榊カスミ

 「うん。テナントは全部埋まるから人通りも良くなったの」

 「大きな町に買物に行く人も減ったみたいね」

 「今日は、友達と一緒じゃないの?」 萩スミレ

 「・・・時々ね。塾とか、道場とか。なんでも同好会で、一人になるときがあるから」

 「なんでも同好会?」 榊カスミ

 「虐め報道で中学校で元奈河小がのけ者にされていたから作ったの」

 「まだ引き摺っているんだ」 萩スミレ

 「無責任な報道のお陰でね」

 「でも寄せ書きと関係ないのに良い迷惑ね」 榊カスミ

 「もう、しょうがないよ。最近は慣れちゃったし」

 「強い。紫織ちゃん・・で、事件のことで何か知っている?」 榊カスミ

 「被疑者が決まっているのにトリックが分からないんでしょう」

 「げっ!・・・テレビじゃ そこまで、教えてないよね」 萩スミレ

 「トリックわかるの?」 榊カスミ

 「わからないわよ。そんなの」

 「なんだ」 萩スミレ

 「だいたい、誘拐未遂が軽視されて書いているところなんか、情報持っているとしか思えないもの」

 榊カスミが第七号“温故”の旅行詩を読む。

 「えっ!・・・そうだったの?」

 「報道、見てないでしょう」 榊カスミ

 「・・・・警察に疑われている友達が事件を調べたの」

 「誰?」 榊カスミ

 「安井ナナミ。事件の近くに組があったからって、警察に嫌がらせされているって」

 「安井って。安井ヒロタカの娘」 榊カスミ

 「だれ?」 萩スミレ

 「安井建設会社の社長。表向きは建設会社だけど半分ヤクザみたいなのものよ」 榊カスミ

 「そこの子供と付き合っているの? 紫織ちゃん」 萩スミレ

 「ほら、寄せ書きに書かなかった子供よ。その関係で親しくなったの。悪い子じゃないよ」

 「じゃ そっち側からの情報か」 榊カスミ

 「ヤクザの情報〜」 萩スミレ

 「バカにしたものじゃないのよ。優秀な警察官ってヤクザから情報仕入れるときがあるから」 榊カスミ

 「へぇ〜」 萩スミレ

 「独自の情報網を持っている警察官って強いのよ」

 「拘留中に面会に行ったりして情をつなげておくのね」

 「結局、上司も、その警察官に聞かないと解決しないことがあるから」 榊カスミ

 「じゃ 紫織ちゃん。情報通なんだ」 萩スミレ

 「だから・・・むやみにヤクザをいじめるからでしょう。ナナミちゃんって言うんだけど、ぼやいてたよ」

 「でも・・事情聴取を利用して、恐喝していた二人を別件逮捕できたし」 榊カスミ

 「紫織ちゃん。こういうの、別件逮捕っていうの」萩スミレ

 「・・そ、そうなんだ・・・」

 「でも、そういう情報が紫織ちゃんの方に集まるのって、良いかも」 榊カスミ

 「え〜 婦警が、そういうの知ってたってしょうがないじゃない。警察って男性社会だし」 萩スミレ

 「だから・・・・あれよ」

 「・・・・先輩。本気なの?」

 「ふふふ、やっぱり、実力があれば、独立も考えなきゃ」

 「え〜 先行き不安。実力があるか、わからないし」

 「スミレちゃんは、難があるから、わたしと楠先輩で・・・」

 「え〜 見捨てないで榊先輩」

 「探偵でも、やるの?」 紫織

 「紫織ちゃん」 榊カスミ

 「なに?」

 「紫織ちゃん。探偵しない?」

 「え〜 探偵〜 そんなのできないよ」

 「するのは、私たち。紫織ちゃんは受付だけ」

 「わたし達が婦警をしながらアルバイトで解決するから」

 「紫織ちゃんは、わたしと依頼人の間に入って、こっちが調べた資料を渡すだけ」

 「駄目よ。そんなの未成年のわたしがやって、いいわけないじゃない」

 「法定代理人が駄目って言うにきまっているでしょう」

 「駄目? どうせ浮気調査や経営調査が九割でしょう。警官だと、ちょろいけどな」

 「あのね。そういうのは、元警察とか、元弁護士とか」

 「ハードボイルドなおっさんが窓口だから依頼が来るの」

 「中学生一年生のわたしに依頼する分けないでしょう」

 「それも浮気調査なんて、どの面下げて依頼するのよ」

 「駄目か〜」

 「駄目よ」

 「でもアルバイトしたくなるよね。国家権力って、良いんだけど・・・」

 「官僚的っていうか、事務的で冷たいし、融通利かないし、煩わしいし、虐めもあるし」 萩スミレ

 「どこの組織もそうなの・・・雨にも負けず、風にも負けず。地道に堪えて生きていきなさい」 紫織

 「紫織ちゃんが、それ言うと説得力ないけど」

 「あはは」 力なく笑う

 少なくとも角浦紫織は、表面的に地道でなかった。

  

  

 天涯孤独になってしまったのは、運命といえる。

 奈河小の襲撃事件と虐め事件も巻き込まれ型。

 商店街の改装は、紫織が言い出しっぺのように思われていた。

 しかし、実は、品質のいい商品を増やし、質の悪い客を排他しようという刺されそうな意見。

 それが、いつの間にか商店街改装になってしまう。

 商店街の改装を木との花テーマパーク型にすることと、

 こもれび商店街という名称は、紫織の提案。

 これは、センスでヒットといえる。

 担任の住宅侵入と暴行未遂事件は、逆恨みと用心深さが招いた珍しい事件。

 古本屋の改装は、生存権の確立で選択のひとつ。

 東口商店街の改装に影響を与えた“せせらぎ”商店街の名称は、紫織のセンスでヒットだろう。

 駅ビル再開発計画で修正案を出したのは、ただ単に不便だと指摘したに過ぎない。

 佐藤エミの強姦未遂事件は偶然の行き合わせ。

 こもれび小旅行本の発刊は、大規模古本チェーン店の進出に対抗するために考えたもの。

 よくよく考えれると消極的ながら、いつの間にか、地道な生活から随分、遠のいている。

 自分から積極的に運命を切り開いたのは、こもれび小旅行本からだろうか。

 残りの南興系と北奉系の派閥抗争と離合集散で紫織が影響を与えたのかは、不明。

 実際のところ、紫織は小石程度の波紋で、

 水面下の金の動き、脅迫、裏切り、癒着、収賄など。

 シビアな計算の結果といえる。

 紫織が、受け取ったお金も、そういうお金で、

 発覚すれば、ただでは済まない可能性もある。

 紫織が、もし、自伝を書くなら

 “最初に渡った危ない橋は小学校の古本マンガの売買ね” だろうか。

 これっきりにしようとか思いながら、

 ある種、感覚の麻痺があるのは、仕方がないことだろう。

 小旅行本にトライアングル殺人パズルのプログラムを入れたのは、売れると判断したから。

 広告媒体がないのは、スポンサーがいない。こういう決断は内部だけの処理で済む。

 ホームページでは、第七号“温故”の問い合わせと注文が多く。

 第一号から第七号まで編集したCD版の郵送を発注数も少なくない。

 印刷機と製本機械のホームページを覗く。

 結構な金額だったが広告代が入らないことから外注するより、

 費用対効果で優れているような気もする。

    

 トライアングル殺人パズル事件は、全国的に有名だった。

 その小旅行本は、売れに売れ、

 観光客が、増加すると “こもれび” “せせらぎ” の商店街は、集客数が急増する。

 紫織は、9月一杯で辞めてもらうはずだった二人の雇用を延長。

 杉山キョウコと鴨川ヒトミに印刷と製本に集中してもらう。

 真新しい印刷機と製本機械が二階に運び込まれ、

 支払いは、例のお金で十分に足りる。

 古本屋だけでなく、小規模な出版編集印刷製本業務までこなすと、

 小旅行本の売り上げも、本業の古本売買の売り上げと並ぶ。

 佐藤エミは、強姦されそうになったところを助けられた礼もあるのか、積極的に働いてくれる。

 自称、弟子入りの安井ナナミもそうだった。

 沢渡ミナも、売り上げが増えると懐が増えると単純な理由で働いたため、

 印刷製本も、できるようになっていた。

 「紫織ちゃん。奈河市に探偵が何組も入ってきているんだって」 安井ナナミ

 「へぇ〜 なんで?」

 「トライアングル殺人パズル事件」

 「注目を浴びているし、解ければ、一躍、一流探偵でしょう。宣伝目的ね」 佐藤エミ

 「ふ〜ん。まだ、トリックが解けないんだ」

 「みたいね」 安井ナナミ

 「なんか。ここも狭くなっちゃったね」 沢渡ミナ

 「外注すると分け前が減るでしょう。高い機械を買ったんだから。元取らないと」

 「わかっているけど。ナナミちゃんが手伝うのはなぜ?」 沢渡ミナ

 「“こもれび” のファンだから。元取らないと駄目でしょう」

 「そうなんだ」 沢渡ミナ

 「労働法違反なんだけどね」 佐藤エミ

 「子供にだって働く権利はあるわよ。それともカツアゲや援助交際しろって言うの」 沢渡ミナ

 「ミナちゃん。カツアゲが援助交際より、先に出るのは性格?」 紫織

 「だって、キモイより絞めたほうがいい」

 「まず腕っ節を鍛えないとね」

 「沢木さんや中山さんみたいに?」 沢渡ミナ

 「・・・あの2人も、ついにシンペイちゃんと一緒に合気道か。鎌ヨ、ピンチ!」 紫織

 「中山さんの方が才能ありそう」

 「長身で性格がきついからね。ふっ」

 「でも、塾を止めて古賀君に付き合うなんて・・・・女ね」 沢渡ミナ

 「紫織ちゃんは三森君とデートしないの?」 佐藤エミ

 「・・・時間無いし。三森君。勉強しているし」

 「キャリアウーマン化しちゃって。男より仕事に興味が行くようになったんじゃない」 佐藤エミ

 「どきっ!」

 「勿体ない。あんなにカッコ良いのに」 沢渡ミナ

 「環境が悪いのよ〜 働かないといけなくなるような環境が」

 「養護施設に行きたいの?」 佐藤エミ

 「いや」

 「大丈夫? 紫織ちゃん。未成年の労働で目をつけられているみたいだけど」 佐藤エミ

 「えっ!」

 「収入が大きいでしょう。勉学が阻害されているんじゃないかって」

 「鈴木のおじさん、労働基準監督署の署員と話していたよ」 佐藤エミ

 「偽善者ぶった役人が出てくると、ろくなことがないから」

 「あそこも、働くと嫌われる部署ね。生かさず殺さずだから」 安井ナナミ

 「杓子定規の人殺しよ。税金泥棒の癖に未成年から税金取って」

 「そのくせ勉強しないで稼ぎ過ぎだから、おかしい? むかつく」

 「じゃ 勉学が阻害されていないって証明しないと養護院行きね」 沢渡ミナ

 「確かに義務教育をなめない方がいいわね」

 「大義名分があると平気で人権蹂躙とか、人権侵害するから」 佐藤エミ

 「わたし・・・勉強するから」

 紫織が抜ける。

   

  

 紫織の少女期

 勉学が著しく阻害されていたのは事実。

 しかし、社会生活に必要な資質は、並みの中学生よりは上。

 「こんなの必要なの?」

 と、紫織は、教育綱領の根幹に疑問を挟むようなセリフをぼやきつつ、

 全科目の先生から不評を買う。

 「後ろ向きな人ね」 と、中山チアキに言われ。

 「学んだことを生かせる職業に就ければ良いんだけどね」 と、沢木ケイコに言われ。

 「紫織ちゃんは、わたし達と違う高校ね」 と、沢渡ミナに言われ。

 集中力を欠きながら、ヨタヨタとついて行くような中学生だった。

 それでもテスト結果は戻ってくる。

 

 

 テストの順位が並べられ、

 下の方から見ていく紫織がため息をつきながら立ち止まる。

 なんと古賀シンペイに負け、思わず引きつる。

 「げっ! だいぶ落ちてる〜」 鎌田ヨウコ

 「鎌ヨ。まだ、大丈夫じゃない」

 「んんん・・・・平均切ったら塾行きよ」

 「・・・・鎌ヨも厳しいじゃない」

 「でも・・・紫織ちゃんの低空飛行も芸術的じゃない。先生が点数で、おまけしているの?」

 「スレスレだよ〜」 紫織、泣き

 「紫織ちゃん。クラスメートから睨まれているよ」

 「A組に競り負けちゃったから?」

 「一〇点差だもの。不登校生徒が多い割に大健闘じゃない」

 「沢木さんも、中山さんも、道場に行き始めた割には点数落ちて無いし」

 「エミちゃんも相変わらず上位だし」

 雲の上を見るように上位点数側を見る

 「それより、シンペイ君に負けているのって・・・・紫織ちゃん・・・・」 ヨウコ

 「シンペイちゃんが平均に達しているなんて・・・・」

 「道場が終わると中山と沢木が交替で勉強見ているから」

 「シンペイちゃん。もてるわね」

 「悔しいよ〜」 ヨウコ

 「道場で虐めてない?」

 「虐めたいけど、そういうところ、シンペイ君に見られたくないから」

 「あはは」

 「しかも、シンペイ君の学力アップに真剣になっているし」

 「文句をつけるわけに行かないか」

 「わたしも、もっと顔が良くて頭が良かったらな〜 スタイルも」

 「沢木さんや中山さんみたいに?」

 「・・・うん」

 「先天的にスキルが違うのって不公平よね」

 「・・・うん」

 「でも、シンペイちゃんとも違う高校になるの〜 わたし」 紫織、泣き

 「あはは」

 「誰から、何を言われるより辛いわ」

 後ろに気配を感じた。

 「・・・みっともない人間に訪問されたものね。わたしも」

 不良の鹿島ムツコは、ヨウコと並んで中の上に食い込んでいる。

 不良のくせに頭がいいのは頭にくる。

 「・・・・・・・」 紫織、引きつる

 「紫織ちゃん。学校は、参加することに意義があるのよ」

 「鎌ヨ・・・フォローになってないよ〜」

 「バカでも学校に来たくなるなんて変わってるね」

 「紫織ちゃんに絡まないでくれる」

 「鎌田。随分、強気になったじゃないか」

 「・・・・・・」 鎌田ヨウコ

 「・・・・・・」 鹿島ムツコ

 「か、鎌ヨ。駄目だって」

 「一対一なら、負ける気がしないもの」 ヨウコ

 「ふん」

 鹿島が去っていく

  

  

 学校の帰り道

 シンペイと鎌田ヨウコ、沢木ケイコ、中山チアキが一緒に道場に行く。

 そして、佐藤エミ、沢渡ミナが石井ショウヘイを連れ第8号の小旅行本のため一緒に帰る。

 「襲われそうになったら。お前が人柱になって、死ねよな」

 と、女の子二人に言われ、青い顔をしながら石井ショウヘイがトボトボついて行く。

 紫織は、三森と学校内を回り道。

 特に会話らしい会話はない。

 なんとなく離れていく気持ちを一緒にいることで補おうとする。

 互いに惹かれていた魅力を “住む世界と感覚が違う” という溝が押し分けようとしていた。

 学校を一回りして三森と別れてる。

 なんとなくホッとする。紫織。

 

 

 帰り道

 紫織は、先を歩く鹿島を見つける。

 なんとなく、寂しそうな背中に気付く

 「鹿島さん。今日は、一人?」

 「角浦・・・」

 「・・・・・」

 「内申書は、良くなりそうか?」

 「うん、三田先生が期待して良いって」

 「ふっ 良い子ぶって」

 「良い子ぶらないと養護院行きだもん」

 「へぇ」

 「鹿島さん。わたしの内申書のために学校に来てくれたんだ」

 「・・・・別に」

 「意外と、やさしかったりして」

 「・・・わたしといても評判落とすよ」

 「わたしといたら鹿島さん。殺されるかも」

 「無理するからよ・・・あっち、こっちから脅されているんじゃない」

 「そ、そういうのも、あるかな」

 「わたしに学校でマンガを売り買いさせられたこと、まだ言われているんだろう」

 「あんなの・・・たいしたことないよ」

 「死線を潜り抜けた強さってやつ?」

 「・・・やっぱり、殺されそうになったことって、忘れないよね」

 「わたしは、あの時、逃げ回っていた。仲間もバラバラになって」

 「向かっていくのは、シンペイちゃんみたいな、タイプだけよ」

 「古賀。あいつ、強いだろう」

 「かなりね」

 「大人二人の腕と足を圧し折ったの、見てたよ」

 「その後、2人から財布まで奪ったのを見たときは、しびれたけどね」

 「・・・いたの? あの場所に?」

 「ち、ちょっと、事情があってね。誰にも言うなよ」

 「い、言わないけど、そのとき、誰かとすれ違ったとか、何か会ったとか、見たとか、なかった」

 「・・・なに。興味があるのかい?」

 「そ、そういうわけじゃないけど」

 「こもれび小旅行本?」

 「出版したから責任がある」

 「・・・・知っていると言えば・・・・・・・・・」

 鹿島ムツコの話しは、

 “それほど疑わしいことはなかった。それを疑わしいと思わなければ・・・・”

 何かの推理小説に使われていた文句が浮かぶ。

 

 夜中に警察官が歩いていても珍しいことじゃない。

 それがたまたま、事件現場の近くであっても。

 おばあちゃんを殺したと思われているのは、虚偽誘拐した嫁だったからだ。

 「鹿島さん。夜中にそういう場所を歩いていたと言うのは、デートの帰り?」

 「違うよ!」 鹿島ムツコ、怒る

 「ご、ごめん」

 「・・・・・・・・」 鹿島ムツコ

 「・・・・・・・・」 紫織

 「・・・お姉ちゃんが苦しめられたから。むかついてね」

 「五里ヘイハチと武蔵野コウゾウのせいさ」

 「あの時は武蔵野コウゾウのことを知らなかったから」

 「五里ヘイハチのところに行ったけど。いなくて」

 「ムシャクシャしていたから。その帰りにカツアゲでもしようとしたけど・・・」

 「古賀のカッコ良いところを見たというわけ」

 「それ、警察知っているの?」

 「いや・・・別に関係ないだろう。その時、五里のやつは河川敷で第一発見者なんだろう」

 「まあ・・・そうだけど・・・でも・・・危なく被害者になるところだったんじゃない」

 「夜中にカツアゲするんだよ」

 鹿島は、ポケットからスタンガンを取り出した。

 「そ、それ使うの?」

 「用心のために持っているだけさ。使わずに済むから使ったことはないよ」

 ポケットに戻す。

 紫織は、ゾッとする。

 こういう、警察も知らない穴がいくつも集まって迷宮入りになっていく。

 「誰にも言うんじゃないよ」

 「・・・うん・・・ねえ、こもれび商店街でクレープ食べない?」

 「新装開店したんだ。奢るよ」

 「・・私に奢っても良いことないよ。疫病神だから」

 「じゃ わたしは、死神ね。死にかけるもの」

 「・・・そういえば北島は、通院できるようになったんだろう」

 「なんか、怖いな」

 「完治してないから、まだ、何もできないよ」

 「完治したら何かするってことじゃない」

 「ふっ やっぱり、死神ね。やっぱり一人で帰るよ」

 紫織が分かれて歩き始める。

 「待て。クレープ奢れよ」

 鹿島ムツコが追う

 「巻き込まれるかもしれないよ」

 「少しくらい緊張感があるほうが、やせられていいよ」

 「・・・鹿島さん。スタイルとか気にするんだ」

 「なんだと!」

 「ご、ごめん」

 「気にするに決まってんだろう」

 「へぇ〜 好きな男子でもいるの?」

 「い、いないよ」

 「三森君。進藤君。高見君。久保木君」

 「田城君。太田君。石井君。古賀君・・・」

 「はぁあ〜 進藤君だ〜 対抗が、シンペイちゃん」

 鹿島ムツコが赤くなっていく

 「角浦! お、おまえ! おまえ!」

 鹿島ムツコが焦って、紫織の胸倉を掴む

 「い、いわないから」

 「・・・・」 鹿島ムツコ

 紫織が、なんとなく微笑む

 「誰にも言うなよ。言ったらただじゃすまないからな」

 「うん。言わないよ」 にま〜

 「・・・・」 脱力。

 「・・淡い秘めた恋って、切なくて、良いよね」

 「おとなしい顔しやがって、やることが汚ねぇよ」

 「・・・気持ちを伝えないんだ」

 「・・・・・」

 「・・・良いよね、そういうの」

 「秘めた気持ちが初々しくて、恋焦がれて気持ちが高まっていくのよね」

 「なに先輩面して」

 「でね・・・お互いに惹かれるようになるとね」

 「話しをしたり、手を繋いだりするとね。雲の上を歩いているような気持ちになるの」

 「・・・・・・・」

 「・・でも・・・いつの間にか、雲の上から、わたしが降りていたの・・・」 ため息

 「上手く行ってないのかい。三森と?」

 「わたしが勝手に雲の上から、降りてしまっただけ」

 「勉強しないといけないんだけど・・・三森君より、ほかのことばかり気になって・・・」

 「わたしが悪いよね」

 「三森君に悪いことしている・・・恋が、一番じゃなくなっているもの・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 鹿島ムツコが紫織の肩を組む

 「角浦・・・この件に関しては、おまえが先輩だよ」

 なんとなく、クラスで一番怖いスケ番型の鹿島ムツコと仲良くなっていた。

 「・・・紫織ちゃん。学校、終わったのかい。お帰り」 すし屋のおばさん

 「ただいま。水戸のおばさん」

 紫織が“こもれび”に入る前からいろんな大人たちと挨拶し、

 受け答えしている姿は、鹿島ムツコに新鮮な衝撃を与える。

 「紫織ちゃん。一号は、まだ印刷してないんだろう」 おじさん

 「ごめんね。米田のおじさん。今日一杯、7号製本しないと明日には、1号を製本するから」

 同世代で頭一つ小さい角浦紫織が商店街の名士。

 クレープ屋さんに入る。

 ダブルデラックススペシャルとコーラを二つ頼む。

 ガシャリ!

 「し・お・り・ちゃん。逮捕!」 楠カエデ

 と、紫織の両腕に手錠がかかる

 「楠お姉ちゃん。官給品で遊んでたら怒られるよ」

 「へへ。紫織ちゃん。何か悪いことしてない」

 「寄り道と間食」

 「微罪ね」 榊カスミ

 「榊お姉ちゃん。無罪だって」

 楠カエデがカギで手錠を開ける。

 「ふっ 女子寮でカギがみつからなくなって大騒ぎしたことがあったよね」

 「あの時は、焦ったね。スミレと紫織ちゃんで丸一日、繋がっていたもの」 楠カエデ

 「あれは、スミレの管理が悪いのよ。ドジなんだから」 榊カスミ

 「逮捕ゴッコに問題は、なかったの?」

 「あのね。練習しておかないと、いざという時、緊張して困るでしょう」 榊カスミ

 「カギが見つけられなかったら、ジャンケンで負けた方の腕を切ろうとか言わなかった?」

 「じ、冗談だって・・・あら、新しいお友達? 随分、毛並みが違うじゃない」 楠カエデ

 「逮捕!・・」 榊カスミ。

 ガシャッ!

 !?

 鹿島ムツコは、茫然と掛けられた手錠を見つめる。

 「名前は?」 榊カスミ

 「・・・か、鹿島ムツコ」

 「鹿島ムツコちゃんは、何か悪いことしてない?」 榊カスミ

 「・・カ、カツアゲ・・・万引き・・・」

 鹿島ムツコは、真っ青で掛けられた手錠を見つめる。

 「「・・・・・・・」」楠カエデ、榊カスミ

 「じ、冗談だから冗談。鹿島さん。冗談ばっか!」 汗

 「へっ」 鹿島ムツコ

 「・・・面白い冗談だから、しばらく、手錠をかけたままにしようか?」 榊カスミ

 「まあ・・・冗談には、冗談と言うことで」 楠カエデ

 鹿島ムツコは、手錠をかけられたまま、

 ダブルデラックススペシャルを食べることになった。

 「ごめんね。鹿島さん。楠お姉ちゃんと、榊お姉ちゃん。ちょっと不良だから」

 「・・・・・」

 「そ、そのうち良い思い出になるから」

 「気にしてないよ」

 「鹿島ちゃんか・・・意外とかわいいじゃない。紫織ちゃんのお友達?」

 「そうよ」

 「取り調べコースもあるんだけど、今回は止めとこうね」 榊カスミ

 「・・・・」

 「紫織ちゃん。探偵さんと会った?」 楠カエデ

 「まだ。会ってないよ」 榊カスミ

 「3つのグループが動いているのよね」

 「警察でも動きを押さえておきたいみたいで、会ったら教えてね」 楠カエデ

 「探偵さんに手柄を取られたくないんだ」

 「紫織ちゃん。個人的にもコネクション作っておきたいから交換で名刺受け取ってくれる」

 楠カエデが紫織に数枚の名刺を渡す。

 「ふ〜ん。情報交換でアルバイト?」

 「でもさ、依頼人なしで動かせる余力があるなんて、随分、大きな探偵さんたちね」 紫織

 「それがね。依頼人のいる探偵事務所もあるみたい」

 「資金力が、どの程度か、分からないけど酔狂なことする人間がいるのね」 楠カエデ

 「・・・どこかのマスメディアが予算枠作って調べさせているとか?」

 「まさか、フリーの記者が身銭磨り潰して、探偵紛いしているのに予算組んだりしないよ」

 「問題起こしても切り捨てれば良いし」 楠カエデ

 「・・・楠お姉ちゃん・・・・・あの動きは、ある? 大型店の?」

 「まだないかな〜」 楠カエデ

 「そ、そう・・良かった」

 「こもれび屋。そちも悪よの〜」 楠カエデ

 「いいえ〜 お代官様も、お人が悪い〜」

 3人組は、なんとなく、いやらしく笑う

 「じゃ 鹿島ちゃん。悪いことしたら駄目よ。じゃね、紫織ちゃん」 楠カエデ

 「じゃね。紫織ちゃん。鹿島ちゃん」

 榊カスミは、鹿島の手錠を外す。

 「うん」 紫織が手を振る。

 楠カエデと榊カスミが出て行く。

 「・・・角浦。あんたって大物なの?」

 「ち、違うけど。ただ、あの婦警さん達と仲が良いだけ」

 「でもさ、商店街の顔なんだろう」

 「顔にされているだけ、田奈城水路とか、ススキ神輿とか、良くやったとか言われるけど」

 「一緒にトライアングル殺人パズルを載せたからいろいろ言われるし」

 「“親がいないから仕方がない” とか、無神経なことも言われるけど」

 「良くしてもらったりもするし。良いことも悪いことも半々かな・・・」

 「・・・・・」

 「ほら、大人同士でも話題に困ると、憂さ晴らしで私の名前を出して、言いたいことを言うのよ」

 「それで、スムーズに会話が続くじゃない。そういう人間がいると便利でしょう」

 「ははは」

 「そういうものよ。人生なんて」

 「・・・・・」

 「普通さ、親がいて守ってくれるんだけどさ」

 「私の場合、話題にされていることで守られている部分ってあるの」

 「いてもいなくなっても分からないって、怖いじゃない」

 「本当は、いてもいなくても変わらないことは、多いけど」

 「親がいても、そう思うことあるよ」

 「お父さんとか、お母さんに甘えたりしないの?」

 「甘えるような年じゃないよ」

 「じゃ 反抗しているんだ・・・」

 「良いよね。甘えたり、反抗したり・・・」

 「突然、いなくなったら。甘えることも反抗することもできないし」

 「・・辛かった?」

 「辛かったけど、良くしてもらったこともあるし。鹿島さんにお小遣い稼がせてもらったし」

 「顔に泥を塗って悪かったね。まだ言われているだろう」

 「生きていくってさ。綺麗なだけじゃないもん。あれ、良い経験になったんだ」

 「ほら、善悪のバランスがあるっていうか」

 「やり過ぎると日陰者になって顔じゃなくなるけど・・・」

 「顔じゃなくても、手でも、足でも、良いし、泥パックみたいなものね」

 「・・・・・」

 「家によっていく? コーヒー入れるよ」

 「・・ああ・・・」

 途中、肉、野菜、魚を買う。

 紫織は、どこに行っても声をかけられる。

 「安いモノしか、買わないんだ」

 「だって、大型古本チェーン店がきたら、お客が半分以上取られて廃業だもの」

 「現金を残しておかないと、潰されちゃうから」

 「へぇ〜」

 「鹿島さんのレストランも、そういうの大変だと思うよ」

 「でも、ムカつくの、現金持っていると税金かけてくるじゃない」

 「仕方がなくて、何か買って経費にしてしまったり」

 「借金をわざと作ったりすると。現金がなくなるじゃない」

 「潰れやすくしようとしているんじゃないかしら」

 「・・・・・」

 「あ・・・商店街の組合会議に行くとそういう話しになるから」

 回転焼き屋の前に来る

 「紫織ちゃん」 山下のおばさん

 「山下のおばさん」

 「新しいお友達かい」

 「うん。鹿島さんって言うの」

 「へぇ〜 よろしくね。鹿島さん」

 「よ、よろしく」

 「最近、お見限りでしょう。紫織ちゃん。クレープ屋さんで浮気してない」

 「そ、そんなことないよ。山下のおばさん」 紫織、苦笑い

 「紫織ちゃん。口元にクリームがついているよ」

 紫織が慌てて口元を拭く、

 「やっぱり。浮気者〜」

 「あ、おばさん。二つ。頂戴!」

 「サービスするから・・・広告載せるときは、お願いね」

 山下のおばさんが回転焼きを二つ入れて紫織に渡す。

 「あ、ありがとう。あ、おばさん。この回転焼きね。桜の焼印入れたらどうかな・・・」

 「ほら、こもれび商店街らしくて良いじゃない・・・桜焼きとか・・・」

 「んん・・・・考えておくよ」

 「じゃ・・・・」

 紫織が古本屋に入るとアルバイトに古本の売り買いの様子を聞いて、いくつか質問する。

 質問という形をとった指示。

 年上の相手に対する適当な言い回しだろうか。

 その後、アルバイト二人と一緒に二階に上がり、

 ひとつの部屋に入ると、そこで印刷と製本を始める。

 「ごめんね。少し、落ち着かないけど、すぐにコーヒー入れるから」

 「・・・働いているんだ」

 「うん・・・最近は、人に働いてもらう方が多くなったの」

 「時給当たりの利益を計算しないといけないから、結構、面倒」

 「儲かっているのかい?」

 「うん・・・いまはね」

 しばらくすると安井ナナミが来る

 「紫織ちゃん。来たよ〜・・・・あれ〜・・・不良の鹿島さんだ」

 「・・・あんた誰?」

 鹿島ムツコ、むっとする

 「咲中の安井ナナミ。元四組」

 鹿島ムツコも、安井ナナミを知っているのか、なんとなく険悪。

 「ナナミちゃん。ソフトにね、ソフト」

 紫織がコーヒーを持ってくる。

 「はいはい。さてと」

 安井ナナミが製本の作業を手伝い始める

 そして、沢渡ミナと佐藤エミが入ってくる

 「・・・・鹿島さん」

 沢渡ミナが警戒する

 「・・・・」 佐藤エミ

 「あんた達も手伝っているんだ」

 「こもれび旅行本の編集責任者だもん。いま、第8号の作成」

 「ふ〜ん・・・・邪魔したら悪いから帰るよ」

 鹿島ムツコは、一口飲むと言った。

 「あ、ごめんね。バタバタしちゃって」

 「いや、いいよ。楽しめたから」

 鹿島ムツコが帰っていく

 「なに? 紫織。お友達になったの? 鹿島さんと」 沢渡ミナ

 「成り行きでね」

 「鹿島って、結構、悪党よ」 安井ナナミ

 「でも、極悪でもないでしょう」

 「中学生で極悪なんていないわよ。聖人もいないけど」

 「石井君を引っ張りまわして、こき使っているのと悪党の度合いは変わらないような気がするけど」

 「そんなことないよ。ちゃんとジュースと、お菓子を奢っているし」

 「かわいい女の子二人に挟まれて、喜んでいるんだから」

 「そう? 青い顔してた気がするけど」

 「シンペイちゃんと違って、普通のオタクなんだから」

 「んん・・・シンペイ君が使えるのが一番良いんだけどな」

 「最近、道場行きが多いから」 沢渡ミナ

 「冬にも大会があるんだっけ?」 紫織

 「大会といっても小さいみたい」

 「でも、沢木さんと中山さんも合気道の道場に行くなんて」

 「よっぽど、シンペイ君が好きなのね」 沢渡ミナ

 「・・・あれだけ強ければ、普通、憧れるよ」 紫織

 「紫織ちゃんは、そうじゃないんだ」 沢渡ミナ

 「なんか・・・恋愛に向けるエネルギーが足りなくなったっていうか・・・」

 「余裕ができたら・・・そういうのにも、いけるかも」

 「ふ〜ん。少し、間を置くのも良いかもね」 沢渡ミナ

 その夜、紫織、佐藤エミ、沢渡ミナ、安井ナナミは、遅くまで仕事をすることになる。

 佐藤エミは、仕事の合間で紫織に勉強を教えたため、効率は悪い。

 「ヘヴィーだ」

 沢渡ミナが疲れて、一息つく

 「中学生で印刷、製本を一通りこなせるのって悪くないわね」

 「ヤクザを解体して印刷業をしようかしら」

 「自社出版で売れる商品と市場があるからよ」

 「無かったらヘイコラしながら仕事を探して、良いように買い叩かれて、生かさず殺さずで、疲労困憊。一寸先は闇経営よ」

 「そのうちH本しか印刷できなくなって、かたぎに相手にされなくなって、ヤクザに逆戻りね。ふっ♪」 佐藤エミ

 「あんたね。子供の夢を壊すようなこといって、むかつく」

 「現実よ。現実」

 「もう寝ようよ」 沢渡ミナ

 「賛成」 紫織

 「「・・・・・・・」」 佐藤エミ、安井ナナミ

   

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

HONなびランキング に参加

Wandering Networkランキング に参加

よろしくです

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第21話  『ヤクザの娘もいるよ』

第22話  『不良娘もね』

第23話  『あれもこれも、あっちもこっちも』

登場人物