月夜裏 野々香 小説の部屋

     

現代小説 『紫 織』

     

第58話 『人の形をしたモノたち・・・』

 奈河中学教室

 当たり前なのだが冷酷な日々が流れていく。

 人が地位、名誉、財産を求め、

 言いなりになる傀儡を得ようとする限り冷酷な社会は続くのである。

 権力と富のある男は、欲望のまま合法的に望むモノを手に入れ、

 中途半端な男は忍従し諦めるか、非合法に手に入れようとする。

 弱くて富のない男は、麻薬的な快楽を求め二次元世界に浸っていく。

 人の私利私欲と強者弱者は関係ない。

 男は、欲望と刺激の捌け口を女に求めているのであり、

 女が望むような、都合のいい男でも男女公平ではない。

 女も公平な関係や尊敬できる夫を求めていない。

 そう、女も夫に使えたいわけではなく、

 自分を満足させてくれる下僕。利用できる傀儡を求めているのであり。

 望む言葉を囁いてくれる都合の良い操りオベッカ人形を求めているのである。

 男と女も、精神的な繋がりを重視するような素振りを見せているが嘘である。

 財力、肉欲、表現、物質的な満足が相手に対し得られなくなった時、

 相手に対して望むのは、早急なる死であり遺産相続と言える。

 人は自由を欲し、他者に対し服従するより、支配者である事を望み始める。

 勝ち組とは支配者なのである。

 それは男女間の闘争でも言えるのである、

 もっとも、幸福な人間が逆説的に謙虚であることはよくあることで、

 長期的な人間関係を保とうとすると、性的な魅力を除いたプラスアルファ。

 逆説的な事に依存する操り人形ではなく、隷属し得ない強い意志が求められる。

 自分で感じ、思い、考え、悩んで、決めて、人生を歩いて行ける力といえる。

 なので人の欲望そのものが矛盾している。

 また高い価値観、温厚、生活能力、規範、知性、教養、品格、品性など問われる。

 とはいえ、自分以上の誠意を相手に無理強いすればヤクザと同じになる。

 女を殴るやつは最低だ、と真に受けている女は殴られ、

 女でも図に乗れば殴られる、と思っている女は殴られないパターンも少なくない。

 平穏で充実した関係は、互いが服従的な柔和さを・・・

 ぱっしぃいいい〜!!!

 ハリセンの小気味良い音が教室に木霊する。

 「痛い!」

 「角浦紫織〜」

 「武藤せんせい、痛い〜」

 「おまえぇ〜 卒業文集に何書いてんだ」

 「だってぇ〜」

 「書き直せ」

 「え〜 せっかく書いたのに」

 「あふぉ! 中学生は中学生らしい卒業文集を書け」

 

 そして、受験を前に荒れている生徒もいる。

 「やったぁ〜! おっ おれ、76点。北村はどうだ?」

 「ふ、ふざけんなよ。吉住」

 「なんだよ」

 「おまえ、これが出そうだとか言ったじゃないか」

 「はぁ?」

 「」

 「」

 将来の不安な者がストレスに負け、イジメたり、喧嘩したり。

 教室で二人の生徒がケンカし、職員室へ呼ばれていく。

 「北村君も吉住君も仲が良かったのに・・・」 

 いつの間にか、阿須サヨコが家来の様にそばにいる。

 まぁ 秘め事を語り合った仲といえる。

 「・・・紫織ちゃん、人生の目的ってなんだろう」

 「さぁ 人間って生きていくだけの機能は最小限与えられているけど」

 「生きる目的は自分で決めないとね」

 「生きる目的で高潔さとか、入れて欲しかったわね」

 「どっちを向いてるか知らないけど、入ってると思うよ」

 「もっと倫理観の強い人類を要求したいわ」

 「自分で生きる目的を考え、選択しながら生きていくから傀儡でも木偶の坊もないのよ」

 「それで力不足だったり、汚い生き方しかできないなら・・・そういう人間ってことね・・・」 自虐的に呟く。

 「紫織ちゃん、って自立しているから、そういうこと言えるのね・・・」

 「まぁ 国が全部、方向を決めてくれると楽ではあるわね」

 「あと、彼氏に人生丸投げで木偶の坊もいいかも・・・」

 「それ、彼氏が頼りになれば、でしょう?」

 「そうだった」

 自立している少女だと、どんなにカッコ良くても好きでも物足りない部分があった。

 同世代でパートナーになりそうなのは、オタクな稼ぎ頭の古賀シンペイだけであり、

 甲斐高校狙いの沢木ケイコ、中山チアキに勉強を見てもらっていた。

 男が二次元世界に浸るのを見て、女はキモイという言葉で表現する。

 これは、支配圏の縮小に対する嫌悪感であり、

 買い手の減少に対する売り手の焦燥感と言える。

 しかし、例外もあるらしい。

 奈河中学七不思議、その一

 美人にモテるオタクがいる。

 オタクでも自立している男に女は惹かれるのだろうか。

 ときめいていたはずの三森ハルキも、少しばかり距離ができたような気がしていた。

 「・・・・」 ため息

 

 

 こもれび商店街

 窓から見える狭い灰色の空は重々しく、人を物悲しい気持ちにさせる、

 荒みそうな気分も白い雪が降れば楽しいだろうか・・・

 人は地位、名誉、職種、貧富、容姿で何枚も壁を作る、

 人と人が至近距離で生活する空間は、どこか張り詰めていた。

 肉食動物だけでなく草食動物も自己のテリトリーを守るために衝突する。

 世界を支配している人間の衝突は、より大きくなるだろう。

 そう、世の中、公平にできていない。

 人は、先天的な出自、資質、容姿、健康で差別され人生が左右される。

 紫織は、いくつかの事柄で凡庸な宿命であると自覚していた。

 もう一つ、離婚とか、片親とか、親なしとか、

 資産、土地柄、近隣住人など後天的な運命要素に影響される。

 まじめに働いても、懸命に働いても、下積みから夢をかなえられる人間は少数派。

 大半は、苦労の割に見返りがない自己犠牲的な奉仕人生。

 いや、それが人の本道なのだろう。

 競合が増えると苦労も増える、利潤も目減りする。

 実のところ愚かモノによって日本経済が支えられていると思い始めていた。

 生産管理能力、処理能力の高い主婦が増えると残飯が減り、

 潰れる食料品店、食堂、商店も増える。

 国全体が損をしても競争しなくて済む、純粋消費者のニートは万歳だったりする。

 まず、世知辛いのは、払うものを払わないといけない。

 政府筋の人間ではなく、その筋の利権者でもないから正直思うことがある。

 何の権利があってとか。寄生虫とか。吸血鬼とか、

 親方日の丸の怠惰なサービス泥棒とか。割損とか・・・

 とかく、まじめな業者ほど、そう感じやすく。

 血税食いの政府・官僚機構が憎々しく感じるのが人情。

 灰色業者のこもれび探偵団も、ブツブツ、ブツブツ・・・

 相手が政府だろうと警察だろうと、

 自分の保身や利権を侵害されていると思えば腹も立つ。

 担保経済で成り立つ日本社会は、実の親がいない紫織に不利だった。

 一つ上の階層の天井を壊す度に訳のわからない法律ごとで行ったり来たり。

 魔法使いの呪文か?

 法律使いの良くわからない日本語を分かった振りして頷いたり。

 かなり危険な気がする。

 犯罪が増え世知辛い世の中になると良いのか、悪いのか、

 本人確認とか社会的信用で杓子定規な手続きも煩わしくなったり。

 ちょっと弱ったりするとハゲタカとか、ジャッカルのような連中が、

 私財を再分配させようとしやがる。

 とかくこの世は住みにくいと高校受験を控える少女は思ったりする。

 「あのぉ・・・」

 「あっ はい、出来ています」

 紫織は、慌てて調書を手渡す。

 毎度お馴染みの浮気調査。

 この手のクライアントを何人も見ていた。

 小心で利己主義の強い人間は、敵を作りやすく、被害妄想に陥りやすい、

 育児が大変とか、炊事掃除洗濯が大変とか、夫がわかってくれないとか、

 古本屋をやっていると分かる、

 自分を改めさせたり、向上させる自己改革な本は売れない。

 あなたは正しい、こうあるべき、相手を自分の都合の良いように変えてくれる。

 自分を気持ち良くさせてくれる。

 自分の思い通り、都合、良い相手に変えてくれる。

 そういったファンタジー本を読み漁る。

 悪貨は良貨を駆逐し、そういう本ばかり書かれ、印刷されて並んで行く。

 どんな主婦層が読んでいるか考慮されておらず、

 自分は正しいと悦に入って喜ばせる本ほど良く売れる。

 自分の過ちを気付かず、もちろん変わる事もない、

 他力本願で教条主義に陥り、

 ただ相手を顎で変えようとする人間は死んでいるのと変わらない。

 これでは夫に嫌われていくだけだろう。

 現実に突き飛ばされるのである。

 亀裂を広げて墓穴を掘って玉砕している主婦層・・・

 逆に夫の保険金を狙って早く死ぬ事を願うようになったり、

 夫を脅迫したり、子供を人質にとったり、

 傍若無人、悪魔のような妻・母もいる。

 保身や我田引水が過ぎれば自分を守るため相手を傷つけてしまう。

 年齢を重ねるごとに容姿、性格(SEX)、生活能力、人格と価値の比重が移行していく。

 それに対応できなければ、夫婦の亀裂が深まっていく。

 少なくとも30代を通過なら生活習慣の問題になりそうだった。

 旦那が体面を気にしてとか、惰性とか、子供がいるからとか離婚できず、

 40も過ぎれば熱愛なんて気持ち悪いだろう、

 両者の写真の目を見ただけで分かる。

 女は違うらしい。

 むかしは美人だったかもしれないが・・・

 虫唾が走るが残念ながら興信所は、正義の味方でなく “金” クライアントの味方、

 傲慢、嫉妬、自己主張、不従順な悪妻がクライアント・・・

 夫も “結婚する前に見抜け” なのだが閨閥(けいばつ)の弊害そのもの。

 利己主義の強い人間に子供が生まれると、さらに不幸。

 客観的な判断が失われると醜悪の権化。

 悪妻は60年の不作と、よく言ったもの。

 もう少し守るべき体面があっても良さそうだが・・・

 もうすぐ家が滅ぶだろう。 

 子供が二次元世界に希望を見出したくなるもの頷ける。

 一部、家庭に問題がなくても二次元に浸るやつもいるが・・・

 旦那の浮気の相手は小料理屋の女将さんだった。

 美人ではないが気立てが良さそうに思えた。

 性格判断をしなくても三者の性格と経緯まで思い浮かぶ。

 慣れは怖い。

 新妻が付け焼刃で簡単料理を覚えるのは弊害に思えた。

 気持ちが離れれば簡単料理を手抜きするのも時間の問題。

 さらに殺意を込めた料理を食えば寿命も縮む。

 日本人男性の平均寿命が女性より短いのも頷ける。

 不信と不和の相乗効果が溝が広がり、双方で権利を主張し始めたら末期。

 浮気もしたくなるだろう。

 あとは、自分本意な権利の主張で子供を巻き込んで離婚までまっしぐら・・・

 最後は、財産の争奪戦で憎み合い。

 保険金殺人に至る事もある。

 これも経験上、だいたい予測がついた。

 配偶者も老いてしまえばボロ雑巾なのだろうか。

 余生を楽に過ごせる金さえ入るなら簡単に見限る。

 それとも堪え性がなくなっているか飽きっぽいのか。

 簡単に結婚して簡単に離婚してしまう。

 自然界の雄と雌は、互いに優れた因子を持つ異性を探し交配する。

 人間社会は、良しに悪しきに付け、モラルが求められる。

 女は扶養能力のある男に嫁ごうとし、男は助けになりそうな女を選ぶ。

 扶養能力のない男、助けにならなそうな女は、排斥されていく。

 仮に結ばれたとしても自己主張が愛情より強くなれば仇同士になり。

 夫婦としての結束が失われ、家庭ごと社会から淘汰されていく。

 老いた旦那を面倒見るより始末して第二の人生だろうか、

 壁の鏡で顔を確認する。

 思っていることを表情に出なさなくなって、どれくらい経つだろう。

 見栄っ張りそうなおばさんが書類に目を通すと微笑み・・・

 一瞬、魔物、妖魔、魔女に見え、帰っていく。

 「ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします」

 自分が腐っていくような気がしないでもないが世の中、金だった。

 「ええ、またお願いするわ」

 人の不幸で食っている少女が思うのも変だが、

 お幸せに・・・

 

 

 奈河市の駅ビル開発が進んでいた。

 こもれび商店街、せせらぎ商店街の相乗効果で新規参入が増えると居住者も増加する。

 街は人口と商店が増え、華やかになって売り上げが分散されていく。

 実力がない商店は生き残れず盛者必衰。

 売り上げ低下で合法的に殺されるくらいなら非合法でも生き残りたくなるのも人情。

 家族を養っている者ならなおさら犯罪紛いのことも起こしたり。

 裏稼業が儲かる下地が大きくなり、

 事実、紫織の裏稼業は儲かっていた。

 この種のサービス産業は、依頼料を払える、お金持ちの味方で正義の味方でない。

 実のところ、下層階層に向かわない、富裕層を回遊する金の流れがあって、

 こもれび探偵団は、その富裕圏とも言うべき層に入り込んでいた。

 弱者の味方をしても、金にならないのが世の中の辛いところ。

 犯罪を暴いたりも適当な口実を付けて正義の味方と言い張れば正義かもしれない。

 もっとも、それも需要しだいで被害者に正義があるわけでもない。

 無色透明で陽のあたる健全な世界だと収入が目減りしてしまう。

 庶民が公共賭博で金を賭けるように、悪党は人生を賭けるから始末におえず。

 闇世界に近づくほど栄養価が高くなる。

 国にピンハネされて社会福祉が進んでも、自分の面倒は自分でみろが自由資本主義。

 食いぶち分以上に働けと偽善を強いられる社会。

 しかし、一旦信用が付くと・・・

 ばさっ! ばさっ! ばさっ! ばさっ! ばさっ! ばさっ! ばさっ!

 札束を扇状に広げ、金の数え方も慣れてきた。

 計算ミスもほとんどない。

 身元保証が確かなら銀行に就職できるかもしれない。

 しかし、もう少し札束が増えると、自動お札数え機が欲しくなる。

 もっとも、紫織の取り分は少ない。

 必要経費を差し引いて・・・

 取り分が一番多いのは、初動捜査のベクトルを決めてしまう古賀シンペイ。

 ウィザード級ハッカーの茂潮カツミの2人。

 人格と収入は比例しない。

 その下は団子

 奈河市の豪族娘、佐藤エミ。

 奈河市のヤクザ娘、安井ナナミ。

 紫織は、二人と同じか、その下だったり。

 そして、幸城ショウタ、富田サナエ、鹿島ムツコ、婦警の榊カスミ、萩スミレ。

 生活に困らないほどの収入になる。

 世知辛い世で収入が増えて、それなりに満足だったり。

 強くなる規制の皺寄せで不満だったり。

 現金を振り分けて手渡すと、

 「みんなで、カラオケでも行こうか?」

 「カラオケか、6時から空くんだけどね」

 「紫織ちゃんは?」

 「5時かな」

 「じゃ 6時に集まろうか」

 「うん」

 「紫織ちゃん、また “遠くへ行きたい” を熱唱するの?」

 「マ、マイ・ブームだから・・・」

 各々、去っていく。

 なんとなく、お金持ちな “必殺モノ” という感じ

 はした金じゃ やらんだろうと思ったり。

 ため息・・・

 中学まで義務教育。

 高校は、自主教育で本人しだい。

 「エミちゃん。どうしようか・・・」

 「紫織ちゃん。まだ悩んでいるの?」

 「んん・・・昼、なに食べる?」

 「きゃ〜♪ 雑炊、雑炊」

 お金持ちの娘は、安上がりな性格だったりする。

 庶民の食事が珍しいのだろう。家で昼食を食べれば、もっと、おいしいはず。

 出し汁を作って、余った材料と、昨日の残りのご飯を入れて煮込む。

 薬味を入れて出来上がり。

 その日の気分で雑炊になったり、焼き飯になったり、

 手馴れると、それなりに美味くできたりする。

 「・・・紫織ちゃんて、残り物で簡単に作っているのに美味しいのよね」

 「それは、どうも。下ごしらえで手抜きしなければ、それなりになるよ」

 「午後は、私の家で紅茶にしようよ。ケーキが来るから」

 雑炊より、はるかに高価な茶菓子。

 孤立していたり、探す気がなかったりの人間は、いざ贅沢しようとしても情報が少ない。

 美味しい物がどこにあるのか、どこに売っているのかも知らない。

 出たとこ勝負だと失敗する確率も高くなる。

 美人で、お金持ちな、お友達を持つと、この種のことに詳しい階層のネットワークがある。

 成功例の情報が集まりやすく、失敗のリスクが小さくなる。

 失敗したくなければ、有力な友人で有益な情報ネットワークを作れということになる。

 あまり媚びる気にもならないが一緒に道を歩くと、

 お嬢様の付き人気分を味わえたりする。

 

 

 佐藤家の豪邸

 オイルヒーター特有の輻射熱が室内をやんわり暖めていた。

 壁が厚く断熱効果の高い家に適していた。

 「紫織ちゃん。高校どこにするの?」

 「エミちゃん。頭が良いんだから、無理に付き合わなくてもいいのに・・・」

 「お金持ちは、そういうの、どうにでもなるのよ」

 苦笑い

 「道善高校にしようかな。エミちゃんに教わって、勉強すれば、何とか入れそうだし」

 「じゃ わたしもそこにする」

 「エミちゃんなら、光誠高校とか、甲斐高校でもいけるのに・・・」

 「気にしなくてもいいわ。成績上位なら、それほど不利じゃないもの」

 「ハードル高くなりそう」

 「何とかなるわよ、佐藤家も裏で手を回せるし」

 「げっ!」

 「反骨精神の強い人間もいるけど、何とかなったりするし」

 「へぇ いるんだ。反骨精神の強い人間」

 「そりゃ お金持ちは有利だけと全知全能じゃないわ」

 「大義名分が貧弱で正当性がないと思い通りに行かない」

 「ふ〜ん」

 「だから世の中、面白いと言えなくもないわね」

 「あと、ナナミちゃんも道善高校にするから、ちょっとしたラインができるわね」

 「ラインか・・・」

 甲斐高校に行く古賀シンペイ不在の非効率を補えそうだった。

 「でも古賀君は沢木ケイコと中山チアキの陰謀で甲斐高校行きか、残念ね」

 「仕方ないわよ、いくら私でもシンペイちゃんの人生で足を引っ張りたくないし」

 「結構、やっているから、良心が痛む?」

 「第三者が金儲けで正義感ぶって、犯罪者の人生を潰しているようなものだし・・・」

 「でも、古賀君の足を引っ張っても補填できるものがあれば、十分、取引になるのに・・・」

 「それは、シンペイちゃんが決めることだもの」

 「一応、滑り止めを道善高校にするらしいけど」

 「なんか、沢木さんと中山さんに恨まれそうだから」

 「もう、紫織ちゃん、人が良いのね」

 「孤児だもの、顔見知りくらい良くしないと、罰が当たりそう」

 「そうね。お祓いにでも行った方が良いかも」

 「お祓い?」

 「成功している人間は、嫉まれやすいから、呪詛返しのお祓いくらいしておくものよ」

 「気休めにはなるかも・・・」

 「でも呪詛返しで苦しむの・・・身内だったり、仲間だったりするから」

 「あはは・・・」

 「・・・紫織ちゃん。あれ引き受けるの?」

 「楠おねぇちゃんの仕事?」

 「うん」

 警察所門外不出の機密書類がなぜか、紫織の手元にあった。

 悪用しないという前提条件がなければありえず、

 発覚すれば、どっちもこっちも命取りで人生と出世を賭けた大博打・・・

 「どうしよう・・・被害者から犯人像も特定しにくいかな」

 「茂潮さんが探しているらしいけど、その手のハッカーが防いでいるらしいの」

 「オレオレ詐欺に才能を無駄に浪費する人間って、いるのね」

 「でも、ボケ老人だけを狙っていないところもあるわね」

 「そっち系に縁があるのか、怨恨か、社会を憎んでいるか、性格か・・・」

 「結構大きな組織かもしれない。組織犯罪に手を出すな、でしょ」

 「そうなのよね。でも、被害者側も強面なのかな、なぜか、強気な有力者が揃って・・・」

 ため息

 「犯罪者を追い詰める方が寄って集って弱い者イジメするより気分が良いけどね」

 「数年で出てきて、逆恨みされそうね」

 「詐欺で捕まるのも自業自得なら、金もらって犯罪者の人生を潰して恨まれるのも自業自得ね」

 「警察も何で振り込め詐欺集団が生まれるのか考えないで、結果だけを摘み取ろうとするから」

 「競争が激し過ぎてズルしたくなるのも無理ないけど」

 「豊かな国とは思えないわね」

 「でも弱者救済も活力を削いで自堕落にするから限度があるよ」

 「弱肉強食は弱者切り捨てで経済で弾みが付くし」

 「人口が減って一人当たりの富が増えるのに、貧富の格差が広がるって、どこか違う気がするわね」

 「権力者は富を手放さないし、もっとも儲けたいと思うもの、当然よ」

 「はぁ どうしよう」

 「取り敢えず、長いモノに巻かれるなら、警察側ね」

 「警察も、こっちは女子供ばかりなんだから少しは遠慮すれば良いのに・・・」

 「引っ込みの付かないようなグレーゾーンに来ているからよ」

 「配信だから警察経由の仕事が減ると下請けに逆恨みされるわよ」

 「ぅぅ・・・あっちも、こっちも、立てようとすると身が立たなくなりそう」

 「古賀君、金融関係って、大丈夫だっけ?」

 「まずい・・・」

 こもれび探偵団が得意なのは古賀シンペイで殺人系とか、茂潮カツミで電子系だった。

 振り込み詐欺系は、オーラを見ても分かりにくいだろう。

 「どうせ騙し盗るならヤクザから騙し盗ればいいのに。そうすれば見逃したくなるけど」

 「そんなこと言ってると、ナナミちゃんに刺されるかも」

 「ぅ・・・そうだった」

 「しがらみね。振り込め詐欺の背後にヤクザありだから・・・」

 「でも、暴対法で追い詰められているんじゃない?」

 「元々、非合法な地下経済は大きいから、でも社会保障を得られないから末端は悲惨みたいだけど」

 「闇社会の活路を塞いでも、ヤクザは堅気から排斥されてしまう」

 「ヤクザ社会もシノギで厳しいのね」

 「厳しいのは、ヤクザだけじゃないから同情はしないけど」

 「一般社会でも、一度レッテル貼られると村八分でいびられる」

 「だから弱い者の味方ができず、臆病で閉塞的な社会を作ってしまう」

 「それでいて、競争に勝つため大きな資本投資と成果を求められる」

 「不況で採算が苦しくなれば詐欺まがいでも資本を吸い上げたくなるし」

 「まっとうな人間でも不況になると定職に就き難くなる」

 「それで少なくなったポストを巡って争ったり。リストラで蹴落とし合い」

 「それで善人から悪人まで階層や貧富に関係なく非合法スレスレの灰色が広がって、裏稼業も儲かる」

 「でも善人ぶりたがりが増えると、私たちも、悪人側にされるかも」

 「げっ」

 

 

 紫織、シンペイ、富田サナエは、配信側として興信所、探偵事務所の検分にもいく。

 無能でも働きが悪くても金さえあれば生きて行ける社会。

 常に向上心を必要とする加点制でなく、

 失敗さえしなければ良い減点性であるため、利権に頼ってしまう傾向にあった。

 無理な投機で大失敗することはない。

 しかし、いつの間にか、収支計算でマイナスになっていることに気付かなくない事もある。

 監査などしたくもないのだが時折、引き締めをしなければならなかった。

 木々森探偵事務所

 「どうぞどうぞ」

 「ありがとう」

 大学生1人、中学生2人が最上級の接待で扱われ、職場を案内されていく。

 よいしょ よいしょ よいしょ

 適当に褒めたり、素っ気なくしたり、貶してたりは、人の成長を促すため良いのだが・・・

 上手く使うと人を駄目にする凶器になった。

 方法は、飴と鞭があり、

 誹謗中傷の限りを尽くして貶し、相手を自信喪失に追い込み潰す方法。

 これは、余裕のない素人がよくやる。

 称賛絶賛の限りを尽くして褒め、自信過剰にさせ、暴走を誘い自滅させる方法。

 こちらを多用している者は根腐れ狙いの危険人物であり、

 余裕があり海千山千で警笛が鳴り響く。

 オーラの読めるシンペイがいると目くばせで褒めて殺しと分かるので便利だった。

 ヨイショとオベッカで相手の向上心や改革の芽を潰してしまう。

 あと審査の時間を潰したり、誤魔化すためだったり・・・

 一般社会は、犯罪未満、犯罪スレスレ攻防が行われており、

 水面下で目立たない利己主義を追求している。

 殺人やら程度の低い蛮行より、

 はるかに高度で技巧に富んだ世界が繰り広げられる。

 こちらの冷めた表情に気付いたのか、所長は少しトーンダウンしていく。

 人が失望してみせる表情にも慣れ、軽蔑するような視線も身に付けてしまう。

 まったく嫌な人間だと自覚する。

 「・・・こちらの事務所が、ほかより、安い依頼料で引き受けているので気になっていました」

 「節約するところは節約していますので」 手もみ手もみ

 比較的若い人間が多く、賃金は、最低賃金とプラスアルファらしい。

 社員の表情を見て社風の検討を付ける。

 上層部、中間管理職、平、客、同業など、

 どこに無理が掛っているかも見当が付いてくる。

 そして、蛇の道は蛇だった。

 電話の応対が聞こえてくる。

 “・・・オレオレ詐欺にあった?”

 “はぁ どちらの銀行に?”

 “母親が14時に××銀行××支店の×××に送金・・・”

 “取り敢えず、お話を伺いますよ”

 

 

 喫茶モンタージュ

 「・・・繋がっているような気がする」 シンペイ

 「やっぱり、木々森探偵事務所は、枯草不動産が作ったダミー会社みたいなものか」

 「やっぱり、情報漏洩?」

 「茂潮さんに、もう少し、調べて貰う方がいいわね」

 浮気調査中の人間に離婚が有利とそそのかし、家を転売させ、荒利を得る。

 建物・土地で一割の手数料が入る、

 転売先とも結託していれば、さらに利益になった。

 探偵事務所と不動産が結託している場合もあれば結託していない場合もある。

 夫婦を疑心暗鬼にさせる不和工作も難しくなかった。

 この種の犯罪は隣人、出会い系、ヤクザ、水系とも繋がっていたり。

 漏洩は明確な証拠がないと守秘義務違反を立証し難くかった。

 誰にでも人権があるため、警察に言っても埒が明かない事が多い。

 仮に犯罪を立証しても偽証、詐欺、嫌がらせでは大した罪にならず、

 リスクが少ない割に儲けが大きかった。

 既に亀裂が入り、憎み合う夫婦関係を修復させるのは稀であり、

 ちょっと、突かれたくらいで壊れる夫婦が悪い、ことにもなりかねない。

 それどころか拗れると妻が金欲しさで他人と共謀し、保険金殺人も辞さなくなっていた。

 そんな事で壊れてしまう夫婦なら家ごと壊してしまった方が世のため、人のため、

 という理屈もまかり通る。

 それほど儲かり、離婚させた家が一等地であれば需要があった。

 家を守るのも戦いと言えなくもない。

 こもれび探偵団も誘惑に手を染めたくなるのだが、そこまで行ってなかった。

 探偵モノ、刑事モノで扱われない殺人未満の犯罪は殺人事件よりはるかに多く。

 人の不幸は蜜の味だったり、面白がる第三者も後を断たず、

 金に目の眩んだ亡者が社会を蝕んでいく。

 こもれび探偵団も、浮気調査で消極的ながら家庭崩壊を助長させている。

 とはいえ、積極的に家庭崩壊を目論見。

 家を転売させ荒利を上げるは不本意であり。

 仕事を配信した興信所、探偵事務所が不動産と結託していると、

 こもれびまで追及される可能性もあった。

 当然、配信を打ち切るのが無難で賢明に思えた。

 木々森は、採算割れ確実な低価格でも引き受けたがり・・・

 不動産と組んでいると教えているようなもので墓穴を掘ってしまう。

 先行き不安な社会になるほど金にしがみ付き、倫理観が弱くなっていく。

 「とにかく、外道なところは、外していきたいわね」

 「世知辛いから、外道じゃないと生きていけなくなっているのが問題なのよね」

 「サナエ。他に誘われてないでしょうね」

 「匂わせていた事はあるけど、木々森より遠回しだったわね〜」

 「それに、わたしは、配信が多いし、調査内容は、ほとんど知らないでしょ」

 「ったくぅ〜 木々森も善良そうな顔しやがって、とんでもねぇ」

 「どうせ不動産と組んだの方が利益が大きいだろうし、警告しても止めるタマじゃなさそうだし」

 「まぁ 大人な解決で見ざる言わざる聞かざるで続けるのもありだけど・・・」

 「・・・配信は中止よ。泣いて馬謖を斬る」

 「それ、そういう、使い方だっけ?」

 「金の成る木を捨てる気分だわ」

 ばれた時の痛手を考えて手を退く。

 こんな社会に誰がしたと思わないでもない。

 「それと、あの所長。オレオレ詐欺も知ってるみたいだね」

 「なに? あの所長。そんな事もやってんの?」

 「直接じゃないけど、知り合いじゃないかな」

 「さっき、送り先の銀行支店名を聞いたとき。顔 “色” 変わったし」

 「例のところかも・・・茂潮さんに木々森所長のコンピューターを調べてもらおうかしら」

 

 

 

 荒んだ気持ちと世相は、潤いと心の平穏を求めさせた。

 そういった集団も作られる。

 某宗教団体

 「・・・人は、美しいモノ、利益、自由、創造を愛し求めます」

 「損益収支で黒字である。また将来的に黒字である間は愛情を注げます」

 「しかし、醜いモノ、不利益、束縛を憎み淘汰し、破壊します」

 「損益収支で赤字である、また将来的に赤字になる場合も憎み始めます」

 「このように人は、有益なモノを生かし利用する、有害なモノを排除していく特性を持ちます」

 「ここで問題になるのは、社会倫理、治安維持能力、モラル。そして、個人の倫理観です」

 「神に対する認識に誤りがあることも大きいようです」

 「特に一神教では、己と神との関係が重視されがちで他者を軽んじやすいでしょう」

 「入れ込み過ぎると視野が狭まり社会から孤立を招きやすい傾向にあります」

 「権威主義に陥りやすく、己が欲望のため教義や神すら利用し、私腹を肥やすでしょう」

 「偽善を利用して現実逃避したり、教会を避難所にする卑劣な人間になることもあります」

 「また、傲慢になり、現世御利益どころか、百害あって一利なしという事もなります」

 「自助努力と自浄能力を怠れば、家族にとっての怠け者、厄介者に成りかねず・・・」

 “・・・シンペイ・・・本当にここで、オレオレ詐欺をやっているの?”

 “茂潮さんが言った範囲が広過ぎて・・・”

 “木々森所長が何でオレオレ詐欺の人間を知ってるのかしら”

 “ったくぅ〜 情報集めじゃないの”

 “んん・・・一番上じゃなくて、幹部かな・・・あの人が怪しそうだ”

 人の良さそうな40代男が壁際に立っていた。

 “うそぉ〜 信じらんない・・・”

 

 一般社会の攻め受けというやつで誰かが得をし、誰かが損をする。

 そして、立場の弱い者が割損する。

 これは、別段珍しいことでなく、犯罪未満で良くある事だった。

 むかしのヤクザは、任侠、義憤で暴力をチラつかせ、稀に弱者の味方をした事もあったらしい。

 いまは、誰もが金の味方、体制の味方でリスクを避けるのが常だ。

 結果的に貧乏人も弱者も排斥され、

 権力や金を得れば死ぬまで手放さない世界になっていく。

 犯罪未満の加害者が犯罪で被害者になったという構図だった。

 被害者が弱者なら泣き寝入りでも、

 強者だと警察を動かして反撃する。

 「なるほど、元々、オレオレ詐欺の人で、いまは宗教的な義憤私刑人・・・」

 「半分は自分のポケットに入れてるから偽善も微妙だね」

 「どちらにしろ、木々森所長が見て見ぬ振りしていたのは、そいうことね」

 「どうする?」

 「立場的には、警察の味方で得点稼ぎしたいけどねぇ〜」

 「でも、楠のおねえちゃんも渋々って感じだったよ」

 「ちっ 下駄を預けた。そういうことか・・・」

 「手柄に出来ても良いし、出来なくても構わない?」

 「偽善者って嫌よね。有力者を怒らせて波風立てるから・・・」

 「でも、被害者が有力者ならいい格好できるよ。受けも良いし」

 「だいたい、この手の情状酌量って裁判所がやるのよねぇ」

 「うん」

 「もう、最近、こういうのばっかり、サナエ。あんたどう思う?」

 「わたし、タダの店員だから・・・」

 「ちっ」

 翌日、偽善者たちの一覧表と住所氏名が警告文付きのメールが、

 オレオレ詐欺集団に送られる、

 

 

 メール

 “紫織ちゃん、あなたには失望したわ” 楠カエデ

 “もうちょっと、良心の呵責無しにやれる仕事がしたいな”

 “ええ格好しいのコメンテーターじゃあるまいし”

 “みんな脛に傷を持つ人間ばかりなのに、そんな美味しい仕事があるわけないでしょ”

 “わたし、美人薄倖なのね、苦労の人かも・・・”

 “紫織ちゃん、引き返せないところにいるんだけど”

 “あ〜〜〜ん”

 “泣いて誤魔化すな”

 “えへへへ”

 

 

 こもれび古本店

 同じ西口にある大規模古本チェーン店は集客率が良かった。

 対する小規模古本店こもれびは善戦。

 損益収支で何とかプラスで駅の反対側東口のせせらぎ古本店の方が苦戦している。

 二つの小規模古本店は互いの種別本を教え合って共闘していた。

 おかげで、本の交換も、せせらぎ側が積極的になっていたりする。

 それまで文庫本・専門書ばかり分けていた。

 しかし、いまではコミック本まで分けたがり客層が分かれる。

 密度は増えて明暗の別れどころ。

 こもれびが強いのは、自費出版している小旅行本によるところが大きい。

 客は、暇になったとき、どうしていいのかわからず情報を求め小旅行本を使うのだろう。

 それとも手軽に行ける距離でも、読んで行った気分になるのだろうか、

 広告がないせいか、古さを感じさせず、

 気が向いたコースを選んで一日潰して楽しむ人間が多い。

 紫織がハルとのジョギングから戻ってくる。

 「さむぅ〜 ナナミちゃん、石焼きイモ買ってきたよ」

 安井ナナミが背景色と文字のズレを確認していた。

 無地の紙に情報が印刷されると途端に価値が生まれる。

 もっとも需要と供給が採算以内か、相乗効果でプラスでなければならなかった。

 「うん・・・紫織ちゃん。また増刷って電話があったよ」

 「えっ!」

 「全部、100部ずつ」

 「はぁ〜 挿し返って、面倒なのに・・・総集編を作る?」

 「総集編か・・・クリスマス・コースもあるのに・・・」

 「休み前になると増えるのよね」

 「10冊ずつまとめる方法もあるけど、おみくじシールをメインにしている客もいるのよね」

 「それにネタ切れ・・・熱ッ!・・・」

 「買ったばかりよ」

 「エミちゃんも時々手伝ってるけど、クミコちゃんとミナちゃんも、そろそろ限界かな」

 「受験前だしね・・・」

 「奈河市の一日県内は、もう無いわね」

 「それも、あったか・・・」

 「まぁ 他の駅を基点に作ってくれって来ているけどね」

 「ノウハウがあっても地元じゃないから弱いよ」

 「受験前にクミコちゃんとミナちゃんを回らせるのも不味いし・・・」

 「考えたんだけど、一泊二日圏内に広げるとか」

 「そういうの需要がありそうなの?」

 「ホテルがね」

 「なるほど、大人の関係ね。安井組絡み?」

 「えへへぇ 美味しい〜」

 「ったく〜 成功報酬はいくらよ?」

 「さぁ〜 おやじに頼まれただけだから・・・」

 「人の労力と知力を略取して・・・とはいえ、風が吹けば桶屋が儲かる」

 「一泊二日も、やむなしかな・・・」

 「中流が増えているから、需要はあると思うよ」

 「んん・・・そろそろ、一泊二日圏内かな」

 「そういえば、せせらぎ古本屋が同人誌を入荷したがってたけど」

 「実力がないところは、Hを描きたがるからロクなのないよ」

 「実力なくて売ろうとするとコアか、H物になるのよね」

 「H物は、やりたくないな。トライアングル殺人事件のとき、白い目で見られたし」

 「そういえば、現場が近かったから安井組も睨まれたっけ」

 「安井組は大丈夫そう?」

 「んん・・・あまり押さえ付けられると、中国系か、新参の朝鮮系に奈河市を支配されるかも」

 「う・・・ただの縄張りの取り合いじゃない・・・でも・・・なんか、まずそうね」

 「当たり前よ。ワルでも古いヤクザは日本に家族を抱え込んでブレーキがかかる」

 「でも新参の朝鮮系や中国系は日本にシマ作って居着いても守るべき家族がいない」

 「つまり、失うものがない」

 「毒を以て毒を制すなのに潔癖症の代償で守る毒が消えたら・・・」

 「ぅ・・・」

 「警察や官僚だって家族や身内を守れなくなる」

 「結核殺して癌細胞を入れるようなものね。中国人に集団強盗されちゃえばいいんだわ」

 「政官財と暴力は癒着しやすいから、犠牲になるは庶民」

 「日本社会は、そのうち中国マフィアの暴力に屈して言いなりよ」

 「げっ! この前の製薬会社は?」

 「あんなの氷山の一角じゃない」

 「むっ ナナミちゃん、最後、逃げたくせに・・・」

 「だ、だって、ロン・ムーロンって、超危険人物なんだから」

 「・・・そ、そうだったの?」

 「刑事殺すなんて、あの時は、マジヤバかったのよ」

 「紫織ちゃん。知らないって、幸せだわ」

 「・・・・」 ひくひく

 「まぁ そっちの世界じゃ 紫織ちゃん。一目置かれてしまったけどね」

 「げっ」

 「もう片足どころか両足突っ込んでるわね」

 「ま、まだ、やり直せる歳よ」

 「くすっ♪」

 「ナナミちゃんはヤクザの親でも大丈夫なの?」

 「もういいわ。大人も子供も人を自分の肥やしにする時があるから」

 「少しぐらい苗床が悪いからって、いちいち、むくれていられないし」

 「ナナミちゃん。つよい〜」

 「てか、親無しで頑張っている少女に泣きごと言えない」

 「ナナミちゃん、えらい」

 「楽に金になる犯罪集団を暴くのをやめて、こういうコツコツ労働するし」

 「ぅ・・・なぜ知ってる・・・」

 「組員が話してた」

 「どういう繋がりよ。安井組の人。いなかったのに・・・」

 「んん・・・斜め横・・・とか・・いろいろ・・・」

 「はぁ〜」

 「まぁ 世の中って面倒なのよねぇ でも紫織ちゃん。そっち系の人の間で話題騒然」

 「ぅ・・・」

 「手下を増やすつもりなの?」

 「し、しまったぁああ〜!!! 何でそうなる〜」  orz

 「あははは・・・」

 「もう、なんか早く売れて、楽になりたいような、なりたくないような」

 「そうねぇ わたしが美人なら、年上で頼り甲斐のある男を捕まえて楽したくなるよ」

 「ふ 女の理想形ね」

 「男にとってもでしょうね」

 「男も、年下の娘なら可愛がりたくなるし、年上ってだけで自動的に尊敬されるから」

 「男は、老後を考えると若妻を貰った方がいいし、女も老後を考えると年上がいいわよ」

 「でも美人から外れ組は、どうしたものかしら」

 「年の差が、もっと離れていくんじゃない」

 「うぅ・・・それ、なんか、いやね」

 

      

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 月夜裏 野々香です

 なんとなく、組織犯罪が相手に・・・

 女子中学生なので警察を背景にしても、ちょっと、ビビったり、

 なぜか、そっち系に誤解されたり。

 やっぱり、冬は石焼きイモでしょうか。

 

 

 ヤクザ社会の構成は8万から9万人。

 半島系3割。

 同和系3割。

 あと資質と縁があった系4割でしょうか。

 

 

  

 上の上の宗仙高校。上の中の光誠高校。上の下の甲斐高校。

 中の上の道善高校。中の中の奉山高校。中の下の奈河高校。

 下の上の比叡高校。下の中の聖心高校。下の下の純清高校。

 

    ※ 捜査第一課 (殺人、強盗、凶悪事件、窃盗事件など犯罪捜査)

    ※ 捜査第二課 (知能犯罪、金融関係犯罪及び選挙犯罪捜査)

 

 

  

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