月夜裏 野々香 小説の部屋

    

R18 魔法少女まどか☆マギカ 二次

『さいてぇ漢(おとこ)の参戦』

 

 第04話 『厄病神 VS 死神』

 地方の寂れた旅館の一室、

 嫌悪していたはずの少年に肩を抱かれていた。

 むしろ、ゾンビであることを忘れさせてくれる少年のそばにいることが好ましく、

 一度、関係を持ってしまうと、なぜ嫌っていたのか、

 嫌っていた事すら忘れる。

 テレビの映像で無残に引き裂かれた見滝原市が映されていた。

 ヴァルプルギスの夜の出現と厄災は、結界内に留まらず。

 第10師団と見滝原市警察・機動部隊は、ヴァルプルギスの夜を倒したものの、ほぼ壊滅し、

 奇跡的に生き残った住人たちは、数千人ほどしかいない、

 そして、魔女から街を守るはず魔法少女が、

 ヴァルプルギスの夜に街一つ丸ごと生贄に捧げ、

 魔女の好きにさせた結果でもあった。

 「第10師団もやるね。ヴァルプルギスの夜を倒してしまうなんて・・・」

 「酷い・・・」

 「まぁ 個人の魔女より、8000人規模の軍隊の火力投射が上だからね」

 「これで、よかったっていうの?」

 「わたしたちが戦って街を守るべきだったんじゃないの?」

 「魔女候補の君たちを殺そうとする人たちを守ろうって?」

 「・・・・」

 「・・・・」

 「それが使命なのよ」

 「それは、きゅうべぇの押し付けだろう」

 「・・・・」

 「魔女の脅威は、世界全体に知られたし」

 「少なくとも魔女と戦える君たち魔法少女は、頼られる存在になるだろうね」

 「でも、こんなにたくさんの人たちが・・・」

 「これぐらいの犠牲がないと、人と社会は動かない」

 「小さな犠牲だけだと、ただ、不幸な人たちがいた、という認識しかしない」

 「原因すら考えない」

 「これだけ犠牲を出せば、人と社会と予算が動く」

 「魔女の対抗処置も取るだろうね」

 「きゅうべぇがどう思うかは知らないけど。この問題はね」

 「社会全体が負うべき問題であって、さやかちゃんが処理していい問題じゃないよ」

 「・・・・」

 「さてと・・・」

 「なに?」

 「取り敢えず、ヴァルプルギスの夜のグリーフシードは、拾いに行くべきだろうね」

 地方からの救援物資と一緒に避難させていた資産を戻し、

 手に入れていた再建機材で利益を上げていく、

 見滝原市の下条屋敷は、頑丈なだけあって破壊を免れていた。

 セキュリティーは万全で、侵入されていない。

 バブルのころ建てられた大屋敷は、自家発電で照明を起こすことができ、

 保存していた食料で凌ぐこともできた。

 

 暁美ほむらと佐倉杏子は、ヴァルプルギスの夜の出現地点でグリーフシードを拾う。

 「あったわ」

 1・・2・・・5・・6・・7・・8・・・10・・12個、

 「一つじゃなかったのか」

 「ヴァルプルギスの夜の名は伊達じゃなかったということね」

 「まともに戦ってたらヤバかったな」

 「これが軍に回収されなかったということは何か分からなかったみたいね」

 ヴァルプルギスの夜が倒されても、魔女の呪いは次の魔女を生む、

 廃墟の見滝原市で生まれたての魔女が暴れ出していた。

 暁美 ほむら、美樹さやか、佐倉きょうこは、魔女狩りを開始する。

 

 魔法少女戦隊の撮影隊がイリュージョンに巻き込まれ、

 「あ、あれはなんだ」 撮影隊

 「あわわわ・・・」 撮影隊

 「行くわよ」

 「ええ・・・」

 魔法少女3人のコンビネーションに勝てる魔女はいなかった。

 銃器を使った戦闘は磨きがかけられ、

 魔力消費は、これまでの半分以下になっていた。

 損益分岐点は黒字となり、グリーフシードの山が作られていく、

 

 政府は、爆破予告事件に続く、街全体の殺戮で頭を悩ませており、

 たまたま、発見された ”魔女の卵” に飛び付き、研究を始める、

 偉い人の執務室に少年が通された。

 「これをどこで?」

 「街の工事現場で魔法少女の映画を撮ろうとして」

 「そこで、たまたま、黒い石を見つけて拾いました」

 「たしか、原因不明のイリュージョンに巻き込まれる映画だったな」

 「魔法少女戦隊ですから」

 「それは原因不明のイリュージョンに巻き込まれる理由にならんだろう」

 「たまたまだと思います」

 「そして、魔法少女たちは敵を倒して脱出した」

 「運が良かったようです」

 「本物の武器を使ったのじゃないのかね」

 「まさか、玩具です」

 「本物と玩具の両方を持ってる」

 「まさか」

 「・・・そこで、拾った黒い石を調べた、わけだ」

 「面白そうなので、大学に分析を頼んでみました」

 「君は、その医学大学の株主だったね」

 「たまたま」

 「そのお金は、宝くじで当てて?」

 「たまたま」

 「そして、君名義の資産は、住んでる見滝原市ではなく。見滝原市の外にある」

 「そして、君の買ったホテルで平日の家族連れのレジャー中に、たまたま爆弾事件が起こり」

 「さらにたまたま大災厄が訪れ」

 「今度は、映画を撮ろうとして、たまたま、この “黒い宝石” を見つけた」

 「凄い偶然です」

 「あはははは・・・自伝映画でも撮ったらどうだ?」

 「きっと誰も信じないぞ」

 「ふっ」

 「まぁいい、本当はよくないがね」

 「この “黒い宝石” は本物だったよ」

 「本物と言いますと」

 「ニューロン、視神経など、人の精神活動を扱う構造の部分がそっくり記録されている」

 「それもナノレベルなんてものじゃない、ピコ以下だ」

 「どうやって?」

 「わからんね」

 「君には不審なモノを感じる。しかし、味方だと思いたい」

 「中学生を味方にしても何も出ませんよ」

 偉い人は、グリーフシードを振って見せた。

 「これが我々のところに届けられるまで、全く、対処不能だった」

 「そして、君は、あの大災厄で利益を上げた僅かな人間の一人だ」

 「予兆のようなものを感じられるなら教えてもらいたいね」

 「・・・・」

 「わたしは庶民に馬鹿にされているが、政治権力を維持するのは大変でね」

 「対応をミスったら倒閣だし、できるだけ延命させたい」

 「そして、対応を上手く処理できれば、盤石な権力基盤を構築できる」

 「当然、君には地位と名誉と財産が転がり込むだろう」

 「」

 「」

 

 

 “僕と契約して、魔法少女になってよ!”

 きゅうべぇの勧誘は、街の裏々で行われていた。

 契約した少女は魔法少女となり、

 魔女を退治してグリーシードを回収し、

 自らのソウルジェムを清めなければ魔女化する。

 魔法少女は魔女に孵化する前の全段階に過ぎなかった。

 そして、呪いを願う少女たちも少なからず存在する。

 「あいつが許せない、わたしを裏切ったあいつが・・・」

 「君の願いは、叶えられるかもしれないよ」

 「なに? この黒い生き物」

 「ぼくは、きゅうべぇ」

 「僕が白く見える人と黒く見える人がいるんだ」

 「だからなに?」

 「それは重要なことじゃないけどね」

 「僕と契約すれば、どんなことでも一つだけ願いが叶うよ」

 「本当に? どんな契約よ」

 「魔女になるんだ」

 「魔女?」

 「本当だよ。君は魔女になるんだ」

 「そして、魔法少女と戦うんだよ」

 「魔法少女?」

 「君が憎む人を守ろうとするのが魔法少女さ」

 「いいわよ。魔女になってやるわよ」

 「だから、あいつ人を殺してよ。それが私の願いよ」

 「その願いは君にとって、魂を差し出すに足る願いかい?」

 「ええ。魂だって、なんだって差し出すわよ!」

 「君の願いは聞き届けたよ」

 「はっ・・・おうcヴひぃcvひぃxcfryzxれzzr〜!!!」

 彼女たちから希望と絶望の落差を利用した高いエネルギーは得られない、

 絶望だけでは高低差が足りず、回収エネルギーも半分以下だった。

 それでも、魔法少女の魔女化を足す魔女として、勧誘される。

 「魔法少女は魔女に変わるとき、僕が黒く見えるらしいけど」

 「彼女たちは、いつになるかのな」

 「かなり粘ってるようだけど・・・」

 

 

 夜の営み

 「下条君は、わたしたちと居て怖くないの?」

 「なんで?」

 「いまわたしたちが魔女になったら、あなた、わたしたちに殺されるのよ」

 「暁美 ほむら」

 「ん?」

 「ほむらちゃん」

 「なに?」

 「ほむほむ」

 「な、なによ」

 「僕は・・・」

 「・・・・・」

 「僕は、ほむほむと・・・」

 「・・・・・」 ぽっ

 「腹上死が先か、ほむほむに殺されるのが先か、ギリギリまで試したい」

 「「「・・・・」」」 脱力

 「ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ」

 「ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ」

 「ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ」

 「ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむほむ ほむ・・ほむ・・ぅ・・ぅ・・」

 

 

 見滝原中学が再建されていく、

 「あっ さやか」

 「上条君。なに?」

 「今度、市のヴァイオリンのコンクールがあるんだけど・・・」

 「本当。でもアルバイトがあるから行けるか、わからないよ」

 「そ、そうなんだ・・・」 しょんぼり

 「でも、チケットは受け取っておくね。行けたら必ず行くから」

 「うん」

 「下条と同じアルバイト?」

 「うん」

 「そうなんだ・・・」

 「じゃあね 上条君」

 さやかは、まどか、ほむらとつるむとさっさと帰っていく、

 「さやか、元気みたいね」 志筑 仁美

 「そうだね」

 「失敗したと思ってない?」

 「そんなことないよ」

 「でも、わたしの家・・・」

 「僕は、君の家が好きになったわけじゃないよ」

 「ありがとう。上条君・・・」

 

 

 機動戦闘車、82式指揮通信車、軽装甲機動車、

 87式偵察警戒車、96式装輪装甲車が街を巡る。

 82式指揮通信車の中で、ほむらは、軍人と地図を見つめ、

 さやかときょうこは、席に座ってポッキーを頬張っていた。

 「つまり、その敵生体を倒して、写真にあるような小さな石を手に入れるわけですね」

 「ええ、阿室少尉」 ほむら

 「どうやったら、敵生体の位置が、わかるのでしょうね」

 「これで・・・」

 糸に垂らされたソウルジェムを見せた。

 「ダウジングですか。随分、キワモノな方法で・・・」

 「効果はあります」

 「まぁ いいでしょう。上の命令ですから」

 「敵生体を倒せたら、異空間から脱出できるのですね」

 「はい」

 「敵生体を放置しておけば育って、見滝原市の様に壊滅する」

 「おそらく」

 魔法少女が次元の裂け目を開くと異空間が現れ、

 完全武装した対魔女機動小隊が突入していく、

 扉が閉じると、3人の魔法少女が取り残された。

 「なんか、意外と楽ね」

 「そうね」

 「最初は一緒に行ってあげた方がよくない」

 「下条君が力を出し惜しみしろって、余計なモノは見せるなって」

 「何人生き残るかしら」

 「わたしたちは怪我してもソウルジェムで回復しながら戦える」

 「あの人たちは、怪我をすると痛みで戦闘力だけじゃなく戦意も失う」

 「なんか、人を騙してるみたいで気が退ける」

 「わたしたちが騙されて人を呪うより百倍はマシよ」

 

 

 

 巨大な蟹の化け物を中心に異空間が広がっていた。

 回遊していた怪魚の群れが機動小隊を襲撃する。

 「撃て!」

 96式装輪装甲車4両は、90口径35mm機関砲で援護射撃を繰り返し、

 小隊(4両×7人)が降りると、89式小銃 (5.56mm×45)で、怪魚の群れを撃ち抜いていく、

 26t級機動戦闘車は、蛇行しながら砲身を魔女に向け、51口径105mm砲を撃ち出していく、

 血みどろの歩兵部隊が魔女本体の蟹に近付き、

 「うぁ あああ〜!」

 「おれが援護する。速く、発射しろ!」

 魚の群れが機銃掃射されて砕かれ、

 06式小銃擲弾と01式軽対戦車誘導弾が魔女本体に向けて発射されていく、

 

 

 見滝原市に超常対策研究所が作られていた。

 フロアの一つに独立した権限と予算を持つ、第03資料室が作られ、

 その中心に下条少年と少女たちが居座っていた。

 “あの子たちはなに?” ひそひそ

 “この研究所の地主だった人よ” ひそひそ

 “土地を売るから、フロアと仕事をくれって、それで、あそこに・・・” ひそひそ

 “あの少女たちは?”

 “お友達でしょ お金持ちみたいだからモテるのよ” ひそひそ

 “政府も甘いわね”

 “でも例の石を拾った子らしいの”

 “そうなの・・・”

 

 第03資料室

 まどかは、いつものようにお茶とお菓子を運んでテーブルの上に並べる。

 まどかを雇ってるのは、きゅうべいに勧誘され、世界を滅ぼさせないためだった。

 逆にいうなら彼女さえ、きゅうべいと契約させなければ世界を守ることができた。

 研究所の情報を全て閲覧できるコードも打ち込むと、

 モニターに最新の解析データーが流れてくる。

 「黒い宝石の解析は順調」

 「だけど、どうやって、作られてるのか、皆目不明らしい」

 「解析がわかっても、作り方がわからない?」

 「例えば、このコンピュータはCPUとメモリーと記憶装置で組み合わされてる」

 「しかし、それを理解するのと、作るのとでは、全く違うということかな」

 「グリーフシードは、どういうものなの?」

 「グリーフシードなんて言わない方がいいよ」

 「研究所の人たちが名前を決めるまで “黒い宝石” を使った方がいい」

 「「「・・・・」」」

 「グリーフシードは、コンピューターだよ」

 「コンピューター?」

 「そう、ソウルジェムもね」

 「コンピューター・・・」

 「君たちの魂を “黒い宝石” というフェムトコンピューターに移しているだけかな」

 「フェムト?」

 「ナノが十億分の1。ピコが一兆分の1。フェムトは千兆分の1だからかなり小さい」

 「だから、三人の魂のネットワークを形成することも可能だったらしい」

 「さらにこのシステムは、ドーピングのようなもので魂のエネルギーを増幅させ」

 「エントロピーを超える魔法を発現させる」

 「そして、ドーピングは魂を癌化させ、魔女化を促進させる傾向がある・・・」

 「“黒い宝石” は魔力のケガレ。まぁ 腫瘍をダウンロードできるけど」

 「魔女にエネルギーを与え、復活させてしまう」

 「「「「・・・・」」」」

 「困ったなぁ・・・」

 「なにが困るの?」

 「ほむほむ、きょうこちゃん、さやかちゃんの3人を失うのはとても困る」

 「きゅうべぇは、世界が滅びるまで魔法少女を勧誘し続けるわ」

 「下条は、もっと世界の事を考えたら」

 「世界は、僕の夜の相手をしてくれないから、どうでもいいや」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 良い人間は騙されて人を呪い、悪い人間は人を騙して人に呪われる。

 社会の構造というやつでしょうか、

 人がたくさん死ぬと政府が動いて予算も動きます。

 イカレタ、下条 現也(しもじょう げんや)少年に

 地位、名誉、財産が転がり込みます、わーい わーい

 

 

 

 

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第03話 『外道 VS 邪道』

第04話 『厄病神 VS 死神』

第05話 『下条現也の愛のレッスン 1』