月夜裏 野々香 小説の部屋

    

召喚系火葬戦記 『とある価格と魔術の』

 

 

 第12話 1934年 『おれ、戦艦10隻とマダガスカル交換しちゃった』

 民需か軍需か

 戦争が忍び寄っているのがわかると、軍需の準備をしなければならず、

 かといって、軍需の基盤となる民需もまた拡大しなければならなかった。

 いま生産している民需は、軍需に切り替えられるよう考えてラインを作っていた。

 そのことは、軍官僚も保険として考えている、

 しかし、余計に開発に予算を使うと、眉間に皺を寄せ、目くじらを立て、食って掛かってくる。

 民需のエネルギー消費量は、幅があって、総合するとものすごく大きくなる。

 戦時下で、そのエネルギーを維持しようとするなら、更なる備蓄が必要だった。

 カグツチ産業は、巨大な工場で生産力が大きいのに、エネルギー効率はすこぶる良く、

 関連企業の規格は揃っていた。

 ほかの系列で同じ規模を生産すると、歩留まりが大きく、エネルギー消費が大きくなった。

 そのため、天下りポストに繋がらなくても、戦争準備のため不承不承、カグツチの追加予算に応じる。

 しかし、軍に非協力的なところが強く、悪評と好評が二律背反的に混在している、

 一般的に言うと、出来る奴だが気に入らない、みたいな。

 

 今年は、何が起こるんだっけ、

 かなり正史から逸脱している。

 函館市で大火。東北地方の凶作。ヒトラーが総統と首相を兼任。

 イタリアとエチオピアが武力衝突。

 長征を開始。日本がワシントン海軍軍縮条約の単独破棄を通告。

 防げそうなのは、ワシントン会議の破棄だけ、

 しかし、アメリカが石油をもっと売ってくれるなら破棄してやってもいいかもしれない、

 こういった経済恐喝というか、産業恫喝のような裏舞台は、歴史の闇に隠され知られない、

 こちらも、手を変え品を変え、対処している。

 しかし、日本の成長は、目覚しく、

 反ユダヤ金融政策を執ってるせいか、潰しにかかってくるのも時間の問題に思えた。

 むろん、ユダヤ資本もアメリカ合衆国を飲み込み、消化するまで年月が必要で、

 それまでは、思い通りにいかないはず、

 

  

 1月

   日本共産党内部の裏切り・スパイ疑惑に関する査問事件を「赤色リンチ事件」として公表。

   ドイツ・ポーランド不可侵条約締結。

   スタヴィスキー事件によりショータン仏内閣総辞職。

 

 二宮派と反二宮派は、時々会合を開く、

 互いに私兵を繰り出し、相手を打倒しようとしても、呉越同舟で、

 嫌でも会合を開いて物事を決めなければ国の予算は進まない。

 そして、予算を決めなければ、政治は迷走し、経済が立ち遅れ、国力も失墜していく、

 それが政治だった。

 「な、なんだと」

 「いらないと思うんですよね」

 「それで、戦艦8隻を空母に改造するか。解体するか。植民地領地と交換するだと」

 「二宮君。気でも違ったのか」

 「もう、戦艦の時代ではないですよ」

 「戦艦は、戦争の要だ」

 「模擬演習の結果は、見ているはずでは?」

 「あ、あんなもの、大和魂があれば乗り切れる」

 「乗り切れませんって」

 「メタンガスがあるではないか」

 「石油がなければ、飛行機と船が動かないのですよ。閣下」

 「メタンガス用の自動車を研究しているのではなかったか?」

 「研究しているからといって、量産できるわけではないのですよ。閣下」

 「閣下はやめろ」

 「はい、閣下」

 「黙れ、お互い爵位持ちだ」

 「それより、ワシントン条約破棄の件だが」

 「ワシントン条約破棄は、面白くないですな。軍拡の歯止めが効かなくなる」

 「アメリカとイギリスは、どうせ、破棄するなら、日本から破棄してくれといってきている」

 「やれやれ、せっかく、軍縮条約で米英の軍事力を縛ってるのに、賄賂でも貰ったのですか」

 「誰がもらうか!」

 「では何故不利になるというのに条約破棄などと?」

 「石油とクズ鉄を割引してくれるそうだ」

 「それは、悪くないですな」

 「では、条約破棄でいいな」

 「では、三択を」

 「ふざけるな! どこのバカが軍拡が始まって、自ら戦艦を破棄するか」

 「日本に戦艦がないのに、なぜ、アメリカとイギリスは、戦艦を建造できるんでしょうね」

 「それでも日本が負けてしまうだろう」

 「負けませんよ。むしろ、戦艦を持っている経済的負担に日本は負けますね」

 「「・・・・・」」 ため息

 「仮に破棄したとして、どういう対価があるのだ?」

 「民間が潤います」

 「国家が殺されてしまうわ」

 「同じ鉄量で潜水艦を建造したほうがいいじゃないですか」

 「カグツチ設計の潜水艦は、優秀なはずですよ」

 「ふん!」

 「では、戦艦8隻を空母に改造するとどうなる」

 「どうにも、少なくともアメリカの新型戦艦と撃ち合わずに済みますし、戦艦より使い物になりますよ」

 「わかるものか」

 「・・・・」 ため息

 「では、戦艦と交換してくれる植民地の当てでもあるのか?」

 「あまりオススメではないですが。フランスは、戦艦10隻とマダガスカルを交換しても良いと」

 「「「「「はぁああああああああ!!!!」」」」」

 そう、どう考えても罠だと思うが、それでも魅力的な提案だった。

 少なくとも軍拡しても面白くない、

 戦艦10隻とマダガスカルを交換しても、戦争で負ければすべてを失う。

 しかし、海戦も、航空機と潜水艦の時代になっている。

 そして、陸軍は、組織拡大を望んでいた。

 陸軍は渋る海軍をよそに戦艦とマダガスカルの交換に賛成し、二宮派に寝返って形成が逆転する。

 むろん、海軍にもポストを要求されるだろうが、

 それくらいのことなら我慢できるだろう。

 

 

  2月

   フランスで、アクション・フランセーズなどの国粋主義団体による反政府暴動が発生。翌日ダラディエ内閣総辞職。

   オーストリアで社会民主党支持の労働者をドルフスキリスト教社会党政権が拘束した事をきっかけに両党が軍事衝突。(2月内乱)

  

 “朝刊は、大騒ぎになっていた”

 本格的な交換調印は、1937年で、

 交換の前に日本人のマダガスカル入植と、フランス海軍将校の日本戦艦の運用も始まる。

 フランスは、植民地交換するだけで、世界最強の戦艦2隻と、巡洋戦艦4隻、戦艦4隻を手に入れた。

 日本では、陸軍は、8個師団と、航空隊12個の増設が決まり、

 そして、10年以内に100万人の移民を目指した。

 

 おれは、新聞記者たちに囲まれる。

 「二宮議員が戦艦10隻と、植民地交換の交渉を進めたのは本当ですか?」

 「大恐慌ですし、新しい時代の海軍編成をしなければなりませんし」

 「選択肢の一つとして、話しを進めていただけだけです」

 「賛成が得られたのが、たまたまそれでした」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

  3月

   時事新報社社長・武藤山治、神奈川県大船町(現:鎌倉市)の別邸近くで狙撃される(翌10日死去)。

   友鶴事件。長崎県志々伎岬沖で水雷艇友鶴が荒天下の演習中に転覆。艦長以下100名死亡。

   ムッソリーニ、スペイン王党派と協定。

   函館市で大火。24186戸焼失、2166名死亡。

   東日本で暴風雨。727戸倒壊、50名死亡。

 

 

 神戸港

 日本人のマダガスカル入植船団が出港していく、

 先行は、護衛の守備隊と17個建設大隊で、

 航空部隊12隊(432機)、巡洋艦隊と水雷戦隊も移動していく、

 開発には、膨大な鉄と燃料を消費することになるが、

 マダガスカルは、鉱物資源も石油も発見されていない、

 マダガスカル(58万7040ku)

 すぐに期待できるのは、コーヒー、バニラ、砂糖、ココア、米、キャッサバ(タピオカ)、

 豆、バナナ、ピーナッツ、丁子、牛、エビ、マグロと、農業と海産の島だった。

 しかし、サファイア、ニッケル、ボーキサイト、イルメナイトが噂されており、

 開発しきれば大きな力になると思われた。

 議員仲間と会食

 「函館市で大火。24186戸焼失、2166名死亡に金を出さず」

 「東日本の暴風雨。727戸倒壊、50名死亡に金を出すのはどうかと思いますよ」

 「それはね。男爵。過失100パーセントの自然災害と、過失割引のある人災の違いだよ」

 「納得いきませんな」

 「まぁ そのへんの過失割合の法整備はしてみるべきだろうな」

 「取り敢えず、国債200億と、マダガスカル入植者だけは、10年間の一ヶ月十五円ですか」

 「大卒の初任給の5分の1から6分の1程度ですから、たいしたことないですが」

 「それでも入植が増えるほどマダガスカルは豊かになっていく」

 「戦艦とマダガスカルの交換。罠の可能性があるのでは?」

 「あるでしょう」

 「というよりフランスと結託したアメリカとイギリスの罠ですね」

 「罠と知りつつ乗るとはね」

 「戦艦が主力艦でないからですよ。戦艦が主力なら応じたりしませんが」

 「しかし国内開発に向けるはずの、資源と労力と燃料を取られますな。そっちが重大だ」

 「100年の計で計算するなら、行くべきだと思いますよ」

 「ところで、函館大火。何らかの、処置をすべきだと思うが」

 「下手に助けると、放火を煽ることになりかねないし、火事の援助は・・・」

 「遡って出せとか言われると、問題も大きくなるからな」

 「それはそうと、マダガスカルに生産設備を建設するので?」

 「生産設備を建設しない限り、雇用と収入が少ないだろうし、工場は建設するよ」

 「ところで、アメリカの対日印象は?」

 「悪くないようです」

 「日本映画が効いたかも」

 「映画や音楽の興行収入は、上位を占めてるそうだね」

 「ええ、ポケットが膨らんでいるからね」

 「羨ましいこった」

 「株を買いますか。インサイダー取引しますよ」

 「定期預金より良くても、配当が今ひとつだからな」

 「マネーゲームは、国家を歪にするのでほどほどにしないと」

 

 

  4月

   海軍航海学校開校(横須賀市)

   帝人事件

   忠犬ハチ公銅像除幕式

 

 二宮は、新聞を見比べている。

 マダガスカル移民で、二宮派と反二宮派の対立が収まっていた。

 新聞各紙の論説は、マダガスカル移民の支持で、

 フランスに戦艦10隻を売却したことの不安を煽るような記事は少なかった。

 世界中で、大恐慌で動かせなかった客船が日本のマダガスカル移民船にチャーターされ、

 日本とマダガスカルを往復する船が増えていた。

 日本の造船所で家屋が作られ、マダガスカルに輸送され、現地で組み立てられる。

 現地は区画整理と上下水道と通信網などの土木建設が始まっており、

 日本経済は、戦争状態と言えるような生産態勢に入っていた。

 「あなた。日本は、どうなってしまうのでしょうね」

 妻は3番目の子供をお腹に抱えて不安そうだ。

 「アメリカとイギリスは、生意気な黄色人種の国を叩き潰したいと思ってるかも」」

 「戦艦がないと、負けてしまうのでは?」

 「戦艦は、次の戦争で役に立たないよ」

 「そうかしら」

 「むしろ、航空機と潜水艦で戦争の行く末が決まるんじゃないか」

 「戦争は嫌だわ」

 「そうだね」

 そう、家族がいると戦争なんて、真っ平と思う。

 特に小さな子供を抱えていると・・・・

 

 

 

  5月

   東北地方を中心に冷害と不漁が相次ぎ、その年の同地方は深刻な凶作となって飢饉が発生した。

 

 冷害に際し、三ヶ月二円の支援金が議会で採決された。

 そして、農業テナントビルの追加建設が決まっていく。

 南満州鉄道を中国に売って得た鉄がなかったら危なかった。

 そう思うほど、マダガスカルの開発は、日本の資本、資源、労力を消耗させる。

 それでもマダガスカルに移民した東北地方の小作人たちは、熱帯域での農作を喜んでると聞く、

 もっとも現地民と交渉は、軍隊に任せるよりなく、

 現地民の居留地への移動を推し進めた。

 この手口は、アメリカ合衆国のやり方だった。

 

 そうそう、おれ、三式指揮連絡機をパクって自主開発して陸軍と海軍に売り込んでやった。

 この時代でも余裕で、開発製造できたよ。

   自重1110kg/1540kg 

   全長9.56m×全幅15m×3.3m  翼面積29.40u

   280馬力  速度178km/h   航続距離750km

   乗員3人   7.7mm機銃1丁  爆弾200kg

 陸軍と海軍は不承不承に買ってくれて、量産契約を結んだ。 

 

 

 

  6月

   独・ユーゴ通商協定調印

   南京で蔵本書記生失踪事件

   東京・台北間に海底電線電話開通

   築地本願寺完成

   レーム事件。ヒトラーがレーム、シュライヒャーらを粛清。

 

 楽×天でクリーンルーム用の器機を調べていく、

 相変わらず高い、

 政商だからって、おいそれと買えない金額で、インフレにしないと手が出せない、

 しかし、基礎的な構造は、わかっていて、

 室内に清浄な空気と、工業用H2Oを作ればいいだけといえる。

 この戦争は、トランジスターでも負けない気がするが、

 どの道、クリーンルームは、トランジスターの不良品。歩留まりを下げてくれる

 戦後、列強の追随を許さない程度、電子技術を底上げするならICまで持っていきたい、

 そして、後継というか二宮一族には、LSIを含め可能な限り未来情報を伝えておくべきだろう。

 それが役に立たない情報でも、経験則は国防に繋がる。

 しかし、これだけ技術格差が大きいと、情報漏れには細心の注意を払うべきだし、

 朝鮮系と中国系は、排斥しないと、とんでもない事になりそうだ。

 設備が先端であるのに開発と量産の技術が押さえられているのも、情報が漏れを恐れての事で、

 戦争が始まれば、もう少し、開発を引き上げるにしても、もう少し、様子見が必要だった。

 

 

 空母赤城の改装計画が決められていく、

  改装前

   排水量 基準26900t/公試34364t

   全長261.2m×全幅29.0m×吃水8.1m

   ロ号艦本式専焼缶11基 ロ号艦本式混焼缶8基

   技本式タービン8基4軸 131200hp

   最大速力32.1kt  航続距離8000海里 / 14kt

   乗員1297人

   50口径20cm連装砲2基4門  50口径20cm単装砲6基6門  45口径12cm連装高角砲6基12門

   艦上機60機

  

 改装後

  排水量 基準36500t/公試41300t

  全長艦体270m×全幅42m

  160000hp  最大速力32kt   航続距離18200海里/18kt

  乗員1630人

  25mm連装機銃 14基28門

  艦上機100機

 基本的には、加賀と同じように エンクローズドバウ、バルバス・バウ、アングルド・デッキとなる

 戦艦の売却が決まると、空母、赤城、加賀、蒼龍は、日本海軍の主力艦となった。

 

 

 第2回FIFAワールドカップ 17チーム

 日本は4位だったし、

 ちくしょうめぇえええええええ〜〜〜〜!!!

 

 

  7月

   齋藤内閣が帝人事件により総辞職。

   元老西園寺公望が後継首班を推す重臣会議開催(後継内閣決定の先例)

   岡田啓介内閣発足

 

 

 帝国議会

 議員仲間たち

 「函館大火と東北の飢饉は、マダガスカル入植の弾みになったな」

 「しかし、赤字国債が大きくなりすぎてないか」

 「国民に配る金を増やせばいい、あれは、赤字国債を消してくれる」

 「まぁ たしかにそうだが」

 「あまり大きくすると労力が得られにくくなる」

 「それはそうだが、赤字国債の利子で国家財政が火の車になるよりいい」

 「マダガスカルの黒人とは、上手くやっているのか」

 「今の所はな・・・ていうか、いろんな人種がいるようだが、褐色に近いようだ」

 「しかし、マダガスカル開発で鉄と石油が今の2倍から3倍はいるのだが、どうしたものか」

 「いや、往復分の燃料を含めて、4倍から5倍は欲しいですな」

 「外貨は、結構、入ってきてるではありませんか」

 「二宮君は、いったい、どれだけ多彩なのだ」

 「君一人で、艦隊数個分を作れるほど稼いでいるんだが」

 「わたしが、殺されずに済んでよかったですな」

 「ふん!」

 「ディーゼル帆船の建造も進めているので、そのうち、個人船でも往復できるようになりますよ」

 「よくそんなに金が続くものだ」

 「実は、軍事費は、国家予算比で下がりっぱなしで、8パーセント台ですし」

 「戦艦の維持費がないと意外に浮きますからね」

 「戦争になったら、どうなることやら」

 「航空機は優秀ですよ」

 「だといいがな」

 

 

 

  8月

   独ヒンデンブルク大統領死去

   独大統領選挙にてヒトラーが当選、総統と首相を兼任( - 1945年)

 

 毎日のようにマダガスカル開発の様子が新聞に載る。

 マダガスカルに入植した建設大隊17個が港湾・河川都市17個を建設していた。

 そして、建設大隊は、大嘘で、

 1個大隊どころか3個大隊規模で、建設旅団と言えなくもなかった。

 そして、港湾だけでなく、水力発電所と、50000kmの鉄道網の建設が進められていた。

 

 

 日本海軍

  空母 赤城 加賀 蒼龍

  重巡洋艦

    古鷹 加古 青葉 衣笠

    妙高 那智 足柄 羽黒  高雄 愛宕 摩耶 鳥海

    最上 三隈 鈴谷 熊野

 

  軽巡洋艦

    天龍 龍田

    球磨 多摩 北上 大井 木曾

    長良 五十鈴 名取 由良 鬼怒 阿武隈

    川内 神通 那珂

    夕張

 

   吹雪 白雪 初雪 深雪 叢雲

   東雲 薄雲 白雲 磯波

   浦波 綾波 敷波 朝霧 天霧 狭霧 夕霧  

   朧  曙  漣  潮  暁  響  雷  電

   睦月 如月 弥生 皐月 卯月 水無月 文月 長月 菊月 三日月 望月 夕月

   神風 朝風 春風 松風 旗風 追風 疾風 朝凪 夕凪

   峯風 澤風 沖風 島風 灘風 矢風 羽風 汐風 秋風 夕風 太刀風 帆風 野風 波風 沼風

   1768t級伊号第121潜水艦 第122潜水艦 伊号第123潜水艦 第124潜水艦

   2300t級第61潜水艦 第162潜水艦 第164潜水艦

          第156潜水艦 第157潜水艦 第159潜水艦 第60潜水艦 第63潜水艦

          第153潜水艦 第154潜水艦 第155潜水艦 第158潜水艦

   2330t級第165潜水艦 第166潜水艦 第67潜水艦 

   2440t級伊第168潜水艦 第169潜水艦 第70潜水艦 第171潜水艦 伊号第172潜水艦 第73潜水艦

   伊1 伊2 伊3 伊4

   伊5

 

 新聞に日本海軍の陣容が載せられていた。

 慣れ親しんだ戦艦の名称が消えていたのは、フランス海軍将兵が訓練しており、

 既にないものとして、計算していたからだ。

 日本海軍は、弱体化している。

 最大の原因は、戦艦とマダガスカルの交換より、

 二宮派が海軍予算をケチったため、予算不足で訓練が進まなかったことにある。

 そのせいで軍隊内の自殺が減ったという統計もある。

 いまは、1隻の軍艦を3交替で訓練しており、海軍将兵は地上勤務で時間を持て余している。

 海軍と陸軍は、戦艦10隻とマダガスカル交換により、大規模な予算増加が認められている。

 もっともワシントン条約破棄は、これから仮に戦艦を建造しても1937年に間に合わない日本でなく、

 1937年に戦艦を引き取るフランスの役割となりそうだった。

 

 新しい計画書が内定している。

  昭和37年度より同42年度までの6ヵ年計画

   艦艇建造予算   8億円  艦艇38隻建造

   航空隊整備予算 10億円  航空隊166隊整備

   海底電線整備予算 1億

 二宮派が海底電線費用を増額させたのは、情報重視のためで、

 無線暗号ではいずれ情報が筒抜けになると、投資させたものだった。

 おかげで主要作戦島礁は内地と直通の海底電線が敷かれ、

 無線を使うとしたら、艦船と島か、艦船同士の通信になっていた。

 議員の集まり

 「52000t級瑞鶴型空母1隻。10000t級最上型6隻。4150t級伊9号型30隻・・・・」

 「艦隊はともかく、航空部隊は、海軍予算を超えて、大増強か」

 「航空機なら対地対艦の両方に使えますし条約で規制されてませんからね」

 「海軍は、トン数あたり価格と予算の大きな潜水艦の建造をよく思っていないようだが」

 「次のディーゼル機関は、もっと性能がいいですよ」

 「海軍将兵が殺気立ってるが」

 「ポストは、用意してますし、天下った元上官達が上手く抑えてくれるでしょう」

 「だといいが、君と違って、我々は、神の加護がないと思うからな」

 「護衛は付けてるでしょう」

 「それでも安心はできんだろう」

 「それは、反二宮派も同じですよ」

 「彼らだって護衛を引き連れて歩くなんてしたくはないはずだし」

 「それに家族まで狙われては、やってられない」

 「殺伐としてきたな」

 「一方的に殺されるよりマシでしょう」

 「それに実質的に増額増強ですからね。それが航空隊166個のポストでも・・・」

 「むしろ、予算増加のほとんどを建設部隊と守備隊に取られた陸軍が怒ってるかもな」

 「陸軍にマダガスカルに都市を建設してもらわないと、民間だと不安ですから」

 

 

 

  9月

   ソ連が国際連盟加盟

   日本・南沙群礁に海底電線電話開通

 

 メタンハイドレートは、水分子の中にメタン分子が含まれたまま

 海底奥底の重圧と冷却により、凍った氷にメタンが閉じ込められている。

 メタンハイドレートを海上に引き上げると、圧力減少と温度の上昇で気化が始まる。

 そのため凍らせたままでなければ、輸送の途上で気体となってしまう。

 気体のエネルギー効率と燃費は悪かった。

 メタンガスを液化すると600分の1の容積で済み、エネルギー効率もいいが、

 液化のために膨大な燃料を消費するので、うまみがない。

 メタンハイドレートのままだと、容積170分の1で済むが

 圧力をかけたまま−20度の氷のまま輸送しなければならず、重量の8割は水となった。

 

 そのため、洋上メタンガス発電プラットホームが建設され、

 プラットホームで発電した電気を送電線で陸地まで送る計画だった。

 これが成功するならメタンを燃やす洋上発電だけでなく、

 石炭を運び込み、洋上人造石油精製所も悪くないだろう。

 少なくとも日本の工業産業を守る程度の燃料と電力だけは手に入れられる。

 しかし、それは、洋上プラットフォームを建設するための莫大な鉄と燃料が必要で、

 どちらも投機に思えた。

 「二宮議員。なんとか、メタンガスを600分の1の液化にできればいいのですが」

 「なんでもかんでも頼られても困るよ。ちったぁ 自分で考えたらどうですか?」

 「「「「・・・・・」」」」 むっすぅ〜

 「せいぜい、発電機を回して、日本産業を電化するよりないですね」

 「アメリカが対日石油輸出を渋りだしているのですが」

 「洋上人造石油精製所プラットフォームを建設できるなら、石炭のほとんどを液化できるでしょう」

 「それと、一応、フランスから石油を購入できるよう協定を結んでるはずです」

 「それは、1937年までですよ」

 「その頃には、洋上メタンガス発電所も増えますし、日本の電化は、もっと進むはずです」

 「問題は、重油なのですがね」

 「ソビエト、中国、オランダから購入してますよ」

 「それだって、アメリカに圧力をかけられたらどうなることやら」

 「組織的にマダガスカルへ移民を進めていくのが吉ですよ」

 「たとえ一時的に公務員にしたとしてもね」

 大慶油田を中国にくれてやったのは、失敗か。

 いや、大陸で、戦争に巻き込まれるよりましな気がする。

 中国に大慶油田の存在を教えてやるか・・・

 少なくとも中国から買うことはできるだろう。

  

 

  10月

   陸軍省がパンフレット「国防の本義と其強化の提唱」を配布、社会主義国家創立を提唱

   カタルーニャが独立宣言、まもなく鎮圧

   ルイ・バルトゥ仏外相とユーゴ国王アレクサンダル1世が暗殺される(日本でも号外)

   中国工農紅軍が瑞金を脱出し長征を開始

   日本・蘭印間に国際電話開通

 

 

 この頃、カグツチ社は、磁気テープレコーダーの製造に成功する。

 ちなみに軍機扱いになった。

 磁気テープレコーダーが何に使えるかというと、

 これを潜水艦に装備すると潜望鏡カメラと合わせて、戦果確認に使うことができた。

 魚雷が狙った獲物に命中し、撃沈したかハッキリしなくても、

 被雷と圧壊だけなら、素人でも分かるため、

 無理をして浮上し、戦果を確認しなくても良くなった。

 そうそう、トランジスターを使ってボイスレコードを作ろうとしたらトンデモな値段になったんでやめた。

 早く、IC時代になーれ。

 

  

 庭に咲く、花を一輪、

 戦争になる、

 戦争にならない、

 戦争になる、

 戦争にならない、

 戦争になる、

 戦争にならない

 ・・・・・・・

 ・・・・

 「・・・・・・」 ため息

 日本は、史実より国力が増強されていた。

 逆に言うなら使うエネルギーは倍以上になって、

 省エネタイプのディーゼル機関を楽×天召喚し、劣化物を量産しているが、

 それでも重油の消費は早い、

 どうしたらいいんだ〜!!!!!

 電化が間に合わないよ〜!!!

 おれ、間違ってる。おれ、間違ってる。

 こらっ! ×夜×なんとか言え!!!

 

 

  11月

   東北地方の冷害凶作被害に対し、昭和天皇と香淳皇后から50万円の救恤金が下賜される。

   群馬県桐生市で昭和天皇誤導事件

   陸軍士官学校事件

   東海道新幹線の開通

   第66臨時議会召集

   藤井真信蔵相が病気辞任(後任高橋是清)

 

 久しぶりに東京に来た。

 五重環状線と放射線状に伸びる100m道路は、圧巻で気分がいいものだ。

 道路の地下に地下鉄も建設されている。

 車は、ほとんどが電気自動車と木炭自動車で、少しばかり心もとないが、

 それでも区画が整理され、再開発が進んでいた。

 だが、石油がなければそれも止まる。

 今のところ、1937年までは、必要とする石油を購入できる目処が付いていた。

 しかし、アメリカを怒らせていることに変わりなく、

 金を出しても石油を買えなくなる可能性が強まっていた。

 むろん、日本でも石油は取れるが、産業を維持できるほどではない、

 電気自動車や木炭車がアウトバーンを走っているのも道理といえる。

 ヤバい、本当に戦争になるかも・・・

 

  PS 3番目の子供次男の二宮翔太(♂)が生まれました。

         おれ、一生結婚できないと思ってたのに てへっ♪

 

 

  12月

   ワルワル事件。イタリアとエチオピアが武力衝突。

   日米間に国際無線電話開通

   東京・樺太間に電話開通

   第67議会召集

   ヨシフ・スターリンの大粛清が始まる。

 

 

 生産の三要素は、土地、労力、資源。

 3つがあればモノを生産でき、一つ欠けても生産できなくなる。

 資本は、生産の三要素を活用する対価で。電力と燃料は、動力源として設備や機械を動かす。

 日本の土地と労力と資源は、史実と、それほど変わらない、

 しかし、半島の反日分子、不穏分子を切り離すことで、治安と国防が安定し、

 資本が潤沢であれば、土地と労力と資源を潤沢に活用しやすくなった。

 能力や実力がある者に資本が渡れば、膠着した不正腐敗や金融支配から逃れやすくなり、

 下克上に似た競争社会が形成され、国家全体でみれば効率的な成長が望める。

 国民一人一月五円政策は、そういう政策で、

 国債で作った赤字と格差も解消しやすかった。

 1923年以降、軍部と軍部に連なる勢力を陥れ、軍事費を押さえるだけ押さえ、

 生産力を上げた結果、

 石油とクズ鉄の輸入量が増え、

 石油とくず鉄を加工した製品の輸出が増え、さらに電力と石油が必要になった。

  日本石炭産出5000万t + 輸入1000万t

  日本の石油生産量50万t / 石油消費700万t / 石油備蓄量1000万t

  日本の発電生産量2240万kw

    = 水力1800万kw + 火力発電400万kw + 洋上メタンガス発電プラットフォーム 4基 40万kw

 メタンガス発電は、石炭の消費を減らし、

 建設中の洋上人造石油精製プラットフォームは、軌道に乗れば1基年間石油10万tが見込め

 人造石油精製プラントの建設は、石油購入を減少させると思われた。

 ちなみに史実

  石炭産出5000万t

  石油生産量40万t/ 石油消費400万t / 石油備蓄量600万t

  発電生産量1590万kw   = 水力1380万kw + 火力発電210万kw

 もう、大変でした。

 

 

 経済戦略会議

 「石油とくず鉄が欲しかったらワシントン条約を破棄しろだと」

 「あと3年待てないってか」

 「戦艦は簡単に建造できないからね」

 「というより、日本に条約破棄の汚名を着せたいのでは?」

 「条約破棄を断ったらどうする」

 「石油価格が上がるよ」

 「マジむかつく」

 「まぁ 戦艦の燃料が消えたのは救いだけど、民間が使う分が増えてるからね」

 「なるべく電化させて産業で、燃料を使わないようにしないと」

 「武器の輸出は?」

 「商品や武器と交換に石油を売ってくれる国はあるけどね」

 「どうしてもマダガスカルの開発で石油とくず鉄を使うから」

 「気合入れて水力発電所を建設したのに、日本経済は苦しくなるな」

 「人造石油は?」

 「洋上プラットフォームで、メタンガスを燃料に石炭を石油にする」

 「これなら、石炭を消費せずとも、メタンガスを燃やすだけで、石炭を石油にできる」

 「もっとも、洋上人造石油精製所を建設するのに莫大な燃料と鉄がいるけど」

 「八方塞がりだな」

 「地熱発電は?」

 「18ヶ所53万kw分は、場所がわかってるから掘ってる」

 「よくわかるもんだ」

 「探せば100ヶ所2000万kwは、いけるはず」

 「・・・・・」

 「人造石油は、多少、工期が遅れ気味になるとしても、年月をかければ完成させることができるよ」

 「もっと、外資を稼いでもらいたいものだ」

 「わかってる。なんとか、海外に売れそうな新商品を幾つか考えている」

 「しかし、その工場を動かすのにも、石油と鉄がいるけどね」

 「「「「・・・・・・」」」」 どんより

 

 

 

 

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  二宮勇太(6)

  二宮由紀(3)

  二宮翔太(♂)

 

 洋上メタンガス発電プラットフォーム 4基 

 

 

 史実 日本人総人口6830万

 戦記 日本の総人口7424万  (敷島51000人)

 

 日本49万8177ku。台湾自治区56283ku。朝鮮人自治区120540ku。

 関東州3462ku。南洋諸島2475ku。

 

 

 楽天市場

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第11話 1933年 『おれ、男爵位もらっちゃいました』
第12話 1934年 『おれ、戦艦10隻とマダガスカル交換しちゃった』
第13話 1935年 『おれ、もっと、軍事してぇ!!!!』