月夜裏 野々香 小説の部屋

 

召喚系火葬戦記 『とある価格と魔術の』

 

 

 第13話 1935年 『おれ、もっと、軍事してぇ!!!!』

 だんだん、戦争が近づいてくるよ。

 マジ不安だって、戦争になったらどうしよう。

 石油消費量が半端ないの。それで、メタンガスに切り替えてるんだけど、

 戦艦10隻とマダガスカル交換がかち合って、さあ大変、

 失敗したかな。失敗したかな、失敗したかな。

 反二宮派と一致した条件が、戦艦10隻とマダガスカルの交換だったんだもん、

 それは、俺のせいじゃないもん、

 やべぇよ 反二宮派は、どんだけ領土欲が強いんだよ。

 それに、アメリカも日中戦争するなら石油をいっぱい売ってやるみたいな感じだしな・・・

 マジ脅しだよな・・・

 くっそぉ〜 人の足元見やがって、くっそぉ〜 くっそぉ〜

 アメリカの経済制裁に脅されて中国を恐喝して侵攻するとか、どんだけ、みっともないんだよ。

 アメリカに石油とくず鉄を分けてもらうために大陸で戦争するとか、もう、茶番劇としか思えないし、

 史実の日本軍の戦略も悪意もない中国大陸進攻とか、

 歴史を紐解くと、クズ過ぎて泣けてくる。

 

 

 

 1月

  国際司法裁判所判事、安達峰一郎博士の葬儀がハーグで挙行

 

 

 企業ってさ、1円でも安く買って、1円でも合理的に加工して、1円でも高く売れたら3円儲けるわけ、

 これを地道にコツコツやって、競争力を上げて、利益を上げていくの、

 日本企業は、ほとんどがそうやって、切磋琢磨してるんだよね。

 でもさぁ こいつら、頭の構造が違うんだよね。

 頭の中を翻訳してやるとさ、

 「日本は、野蛮な中国を討伐すべきだ。中国を沈静化するのなら石油とくず鉄を安く売ってやるよ」

 『石油とくず鉄を売ってやるから、日中戦争で、共倒れしやがれ』

 「そうだ。日本は、もっと、一極集中したほうがいい」

 『地域格差。地域格差・・・内戦しやがれ』

 「ソビエト軍と中国軍が強くなってるし。日本は、もっと、軍事費を増やしたほうがいいんじゃないの」

 『公共投資なんてやめて。軍事費を増やして暴走しないと。中国とソビエトに武器売っちゃうぞ』

 「」

 『』

 目の前にいる相手を商人や紳士と思っちゃいけません、

 軍事力を背景にしたマフィアというか、ヤクザですよ。

 おれもヤクザとパイプあるから、慣れているんですけどね。

 ていうか、権力者で裏社会とパイプのない奴なんて居ないし、まぁ 程度の差。

 国家間交渉で、経済恐喝や軍事恫喝は茶飯事なんで、言わずもがなですが、

 あの人たちのために日中戦争以外の何かをしないといけないのだが

 彼らの権力基盤は、金融、石油なわけだが、

 彼らを結束させる大義名分が利権と関係のないパレスチナ支配にあるのが面白い、

 そのためフランス経済を弱体化させ。ドイツを戦争で負けさせ、

 利己主義と個人主義で、世界中の国民国家を解体し、

 中東に入植する道筋をつけるつもりらしい、

 そんなもののために世界大戦とか非常識なのだが、

 彼らが国民国家を代表するマジョリティでなく、少数派のマイノリティで、

 戦争でマジョリティの国民国家を弱体化させ、

 戦争資金が、そのまま彼らの懐に転がり込み、

 利権買収の軍資金になるのなら、そうとも言えない、

 そして、その戦争相手は、日本も含まれている。

 

 実は、戦艦10隻とマダガスカルの交換も彼らの画策というか選択肢の一つで、

 まさか日本が乗ってくるとは思わなかったとも伝え聞く、

 逆に言うと、連中は、カグツチの工業力がどの程度なのか、知り得ていないらしい、

 どちらにしても日本は、太平洋の本土と、インド洋のマダガスカルに国力が二分され、

 鉄と石油も二分されて、戦争どころじゃない、

 もちろん、彼らも日本の商品を利用してアメリカ国民から資本を吸い上げ、

 代償は、湧き出る石油と露天掘りの鉄鉱石と余った鉄くずで済み、

 大恐慌で底値になった株を買い占めていく、

 日本の商品がなければ、アメリカの製造業が延命するため、彼らの目的は達しにくい、

 そういう内情があった。

 つまり日米取引は行われるが横ばいで、石油とクズ鉄を高騰させている。

 「戦車を作るはずの鉄で、ブルドーザーを作るとは、約束違反だな」

 白人はそう言った。

 「戦車よりブルドーザーに需要があったので」

 「石油とくず鉄が欲しいのなら、中国と戦争したまえ」

 「中国と戦争するには、鉄が少なすぎましてね」

 「南満州鉄道を中国に売るからだ」

 「まぁまぁ そちらも中国人の奴隷を手に入れたじゃないですか」

 「ふん!」

 「アメリカとイギリスが競売で負けたのは、日本のせいでありませんよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「それに・・・戦艦を売って、マダガスカルを手に入れるなど」

 「フランスも国威を回復したいのでしょう」

 「なんなら、日本でユダヤ軍の洋上基地を作ってもいいですが」

 「洋上基地・・・・」

 「ええ、プラットフォームを繋げていくだけですから」

 「鉄と石油があれば建設できますよ。移動もさせやすいですし」

 「治外法権のユダヤの軍隊か・・・」

 「建造したらくず鉄の形で、ユダヤ資本に売ってあげますよ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「「「「・・・・・」」」」 にや

 横ばいだった石油とくず鉄の輸入が増えていく、

 

 

 2月

  菊池武夫が貴族院で美濃部達吉の天皇機関説を反国体的と糾弾

  デュポン社のウォーレス・カロザースがポリマー66(ナイロン)を開発

 

 “二宮を倒せ!”

 “人殺し! お父さんを返して”

 『うーん 俺は悪くない、戦争を回避させようとしたんだ』

 “独裁者の二宮を倒せ!!”

 “二宮。兄を殺したな。許さないぞ”

 『うーん 日本の敗戦を終わらせたかっただけなんだよ』

 “お父さんが自殺して、お母さんは自殺したんだぞ! 殺人鬼の二宮を殺せ!”

 『うーん 国民国家を作ろうとしただけなんだよ』

 “二宮は、魔王だ! 人殺しの二宮を倒せ!!!”

 『うーん 助けて・・・助けて・・・』

 “お父さんは、愛国者なのに 二宮死ね!!”

 『うーん 俺が悪かったよ。悪いと思ってるけど、正当防衛だし、あいつらだって』

 『天下り利権を守るために税金で国民から金を吸い上げて、企業が国民から利益を上げられないよう誘導したし』

 『国民を貧乏にすれば、自分たちだけが財政投資できて、企業の救世主みたいな・・・』

 “なんで、戦争反対して、日本人を殺すの?”

 『うーん だ、だって、あいつら、中国に侵攻しようとか』

 『アメリカに先制攻撃して戦争しようとかいう馬鹿だったし・・・』

 “人を殺して馬鹿だと!!!”

 はっ!?

 はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ

 はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ

 おれってば、最近、この手の夢をよく見る。

 おれが悪いってか、しょうがないじゃん、

 おれ、一人でやってるし、おれが殺されたら歴史を変えられないじゃん、

 だいたい、あいつらだって、おれを殺そうとしたじゃん

 正当防衛じゃん、

 はぁ はぁ はぁ

 文句があるならフラグを教えない×夜×に言ってくれ

 おれだけが悪くないから、おれだけが悪くないし、

 だいたい、×夜×が、ここに送った目的だって、おれが、どうするか面白がってるだけだし、

 はぁ はぁ

 日本がどうなっていくか、楽しんでるだけじゃないか。

 はぁ

 結果がどうなろうと・・・まあ、面白けりゃいいんだろう。

 それで、おれの、メンタルがズタズタになってもね。

 

 

 新聞を読むと

 “なぜマダガスカル? インドシナの方が近くていいのに”

 『バカタレが、フランスが嫌がったからに決まってるだろうが、妥協の産物だってことぐらい、気付け』

 まったくもって、詰まらないことを書く新聞のあると思ったら反二宮系かよ。

 第一回 日本-マダガスカルのヨットレースが始まる。

 日本人の操船技術の強化と、ヨット人口を増やし、

 日本-マダガスカル間の行き来を増やす計画だった。

 ヨットは、カグツチ製でアルミだった。

 軍部は、航空機で使うアルミを勿体無いと煩かったが、

 日本とマダガスカルの航路を繋ぐ民間洋上バスにする計画だった。

 

 

 3月

  アドルフ・ヒトラーがヴェルサイユ条約を破棄し、ナチス・ドイツの再軍備を宣言

  ペルシアが国号をイランに改称

 

 ヒットラーとの文通が続いている。

 ほとんどは、絵画のやりとりだが、

 ヒットラーも自分の描いた絵のほとんどが日本にあって、あまり無碍なこともできないと考えてるようだ。

 退廃芸術展のあと、退廃絵画を安く売ってくれるそうだ。

 そして、退廃と名付けた手前、高く売ることができないのだから、よほど嫌ってると見える。

 そうそう、ドイツがマダガスカルに必要な物資や機械類を売ってくれるらしい、

 輸送コストの関係で難航しているので助かる。

 

 

 新潟 大工場地下

 そうそう、日独の間に工業的な格差は、ほぼない、

 というより日本は、カグツチが精鋭化して、

 ドイツは総合力で高い、

 カグツチの地下の工作機械は、楽×天召喚で購入した旋盤とフライス盤と溶接機だった。

 新潟の大工場で工作機械を製造し、日本中に出荷している。

 その工作機械は、ドイツの工作機械の精度を超えている。

 欧米諸国は、日本の工業力の変化に混乱し、関東、大阪、愛知を捜索したが、

 マザーマシンは、新潟にあった。

 そして、カグツチの工作機械が戦艦を売らせる決断をさせたのも

 海軍の専門家だからこそ違いがわかったって話し。

 

 

 4月

  満洲国皇帝溥儀が来日。靖国神社参拝 

  美濃部達吉が天皇機関説のため不敬罪で告発される

  美濃部達吉の「憲法概要」など著書3冊が発禁となるも買手殺到し書店で売切れ

  ストレーザ会議(〜14日)

  ブリュッセル万国博覧会開幕(〜11月6日)

 

 マダガスカルの情報が伝わってくる。

 河川沿いの広い平野部に17都建設を計画し、17個の建設大隊に競争させていた。

 十二干支市(近衛師団建設大隊)、

 因幡の白兎市(第01師団建設大隊)、鶴の恩返し市(02)、カチカチ山市(03)、

 花咲爺さん市(04)、金太郎市(05)、浦島太郎市(06)、桃太郎市(07)、

 舌切り雀市(08)、かぐや姫市(09)、猿蟹合戦市(10)、一寸法師市(11)、

 こぶとり爺さん市(12)、笠地蔵市(14)、わらしべ長者市(16)、牛若丸市(19)、力太郎市(20)、

 財閥系民間建設業者も入り込んで、縄張り争いをしている。

 建設人員の規模は85万人を超え、土木建設は機械化され、

 開発事業に日本人の土地なし小作人が数多く携わっていた。

 情報規制があって、新聞はマダガスカル開発を10分の1以下で公表し、

 実情は、十倍ほど、進んでいる。

 日本人が入植して働いてるため、現地人との関係は、それほど悪くないらしい、

 現地民は、メリナ人26パーセント、ベツィミサラカ人15パーセント、

 ベツィレウ人12パーセント、ツィミヘティ人7パーセント、他サカラヴァ人と複雑な様相を有していた。

 人口は300万もおらず、人口密度は、少なかった。

 そのせいで、地主は、広大な農地を運営するため農業機械をカグツチから購入するよりなかった。

 そして、それは、マダガスカルにおいても同じで、

 新潟の大工場は、土木建設機械だけでなく、農業機械も大量に生産されていた。

 あとバイオ燃料精製機械も劣化物が生産され、ディーゼルエンジンくらいなら動かすことができた。

 楽×点召喚の殆どは、産業機械や新商品の購入で、その額は5億を超え、

 その多くは、国家予算から引き落とされ、外貨で補填されている。

 大蔵省は、外国に消え、銀行や市場に出回ない闇資金5億を不審がりながらも紙幣を刷るよりなかった。

 実のところ、外国人に渡った日本円が外国に持ち出されて使われることは少なく、

 基本、日本国内にとどまる、

 大抵、日本国内で物品が買われて国外に流れる。

 あるいは、議員、官僚、資本家の買収。私兵作り、世論操作。

 人事の裏工作、産業利権の買収や荒事に使われる。

 そういった形跡がないのに戦艦5隻分の紙幣5億が消えていた。

 外資で稼いだ金を使ったトリックなのだが、

 おれが動かした紙幣だから、疑われても仕方がないだろう、

 しかし、大蔵省もアメリカに工作資金を渡して石油とくず鉄を買うより、

 二宮に開発資金を渡して、商品で外貨を稼いでもらい、

 その外貨で石油とくず鉄を買う方が有効と気付いていた。

 とはいえ、それが原因で嫌われていることに違いない、

 それでも大蔵省が税関の査察を送らず、黙っているのは、国益と深く関わっているからだろう。

 ぶっちゃけた話し、国債と関係なく紙幣を刷らないと、日本経済は貧血で倒れてしまう。

 そして、刷っても刷っても楽×天召喚で消えた紙幣は市場に流れず、闇資金になっていると疑われている。

 なんにせよ、インフレが起こりにくい状況が作られていた。

 そのための国民一人一月五円なのだが、

 もっと目立たず買い物をするなら、もっと紙幣を増刷してもらうよりなかった。

 「いい加減、信用創造で紙幣を作る馬鹿げた発想を捨ててもらいたいものだ」

 「紙幣を得る代償で国債が増え、国債の利子を払うために国債を発行するなど、どんな罰ゲームだ」

 「「「「・・・・」」」」

 「自縄自縛も甚だしいし、そんなもののために貧富の格差を広げてどうする」

 「し、しかし、インフレになると困る」

 「インフレになって困るのは、誰がお金持ちになるかわからない。既得権が脅かされて困るだけだろうが」

 「いや、それが大事・・・」

 「領土が増えて、国家を成長させなきゃならないのに足の引っ張り合いで、生かさず殺さずか」

 「まるで、キチガイの集まりだな」

 「しかし、あなたは5億近い金を動かして、機械を買ってるが、誰なのかわからないのが不思議だ」

 「現実に新しい機械や商品を得て、生産性は向上し、国際的な競争力が強くなってるだろう」

 「しかし、その外人に渡った日本円が日本国内で使われた形跡がない」

 「モノを買ったあとの金がどうなろうと知ったことか」

 「だいたい外国製というが、外国でも公表されていない機械が日本に優先的に回ってくるのがおかしい」

 「おれの外交パイプは、太いんだよ」

 「しかし・・・」

 「いいからお金を刷れ、商品開発で遅れるだろうが」

 「しかし、カグツチばかり儲けてる」

 「だったら国民にばら蒔けばよかろう。国債も消える」

 「「「「・・・・・」」」」

 「あのねぇ マダガスカルをもうひとつの日本にするなら」

 「人口も倍。紙幣も倍。公共投資も倍。いまの倍は、必要なんだよ」

 「「「「・・・・・」」」」 憮然

 

 

 5月

  米国で公共事業促進局発足

  フィリピンが独立協定を批准

  ロシアで初めて地下鉄開通(モスクワ)

  初のアウトバーン路線、フランクフルト・ダルムシュタット間開通

 

 

 某大学

 “18世紀以降、穀物生産の増大と人口増加により、王国は、富国強兵を目指した”

 “しかし、人口が増えるほど軍隊を増やせるが、民主主義の台頭を押さえられなくなっていく”

 “封建社会が崩れ、人民が積極的に政治に参画していくと、国民国家が形成されていくが”

 “人に内在する個人主義と利己主義も大きくなり、格差が広がっていく”

 “個人主義と利己主義を最も発揮するのが常に競争を強いられる、資本主義で”

 “資本主義は、生産力と市場支配。なにより紙幣の回収力で国家支配を容易にさせた”

 “しかし、その性質上、利害に一致しないなら国民でさえ排斥し、外国人でさえ組む事が多々ある”

 ”そして、国民国家の規制を瓦解させ、国外へも食指を伸ばす意図と力も秘めている”

 “ここで、一つの思想が現れるが、それが共産主義だ”

 “共産主義は、労働価値説を基準にしているが”

 “これは、見方を変えると、労働者と農民を労働以外の選択肢がなくなるため”

 “労働に縛り付ける手法に過ぎないことがわかる”

 “そして、この国家の一側面しか見ていない思想は資本主義も共産主義も同じで”

 “国民国家を代表しているとは言えない”

 “王国以外で、国民国家を代表しやすいのは、国家社会主義であるが”

 “問題は、資本の海外移動が制約されやすく”

 “資本の移動は、領土の移動に近いものになり、帝国主義へと移行しやすい”

 “そして、国民国家を代表していない資本主義と共産主義は、国境の垣根を越えやすい性質があり”

 “軍隊ありか、シロアリのように繁殖し”

 “私利私欲と階級闘争で他国の屋台骨を破壊してしまう可能性を秘めている

 “そして、国民国家を守ろうとする国家社会主義の敵になりやすい・・・・”

 “そうそう、アメリカは大恐慌で格差が広がっている”

 “物価が上がるとインフレーションで。物価が下がるとデフレーションなのだが”

 “世襲や既得権が強くなり累進課税の比率が低くなり、逆進課税が大きくなると貧富の格差が広がっていく”

 “そして、モノを買いサービスを受けられる平民層と”

 “モノ買えずサービスを受けられない奴隷層に二極化すると、スタグフレーションになる”

 “なぜ、二極化させるかというと、最も支配しやすい構造だからだ”

 “そして、中央銀行の国家支配が始まる”

 “なので、安易に富裕層が有利な所得税の減税や貧困層に不利な間接税の導入は、気をつけなければならない”

 “常に既得権を警戒し”

 “マスメディアが努力と運で成功する夢を強調するようになったら注意したまえ”

 “現実は、コネ社会なのだから、合法的に殺されないようにな”

 大学の講義もたまには悪くない、

 ドイツも日本も、国民を丸抱えにしている。

 アメリカのように資本家と労働者の二重構造でなく、

 ソビエトのように共産党と労働者の二重構造でもない。

 驚くべきことに、どちらも一旦、カーストが作られてしまうと、その垣根を超えることは至難の業だった。

 日本も閨閥利権の確執と、封建的な人脈と金脈が強く、貧富の格差はあるが、

 アメリカやソビエトより、多様に思えた。

 実のところ、大学教授を味方につけることは、世論形成で役に立つ、

 日本人は、特にそうで、少数の肩書きか、声の大きなやつが強く、そっちに流れる、

 馬鹿なの、頭が悪いの、なんで他人の言うことを真に受けるの、

 そんな気になるのだが、

 教授が言うと、それがどんなに嘘くさくても、うなづく奴が増える。

 まぁ 頷くことで、おれ、教授並みに頭がいいんだとか、思っちゃうんだろうか、

 その教授が、金もらって、我田引水してるとも知らずに・・・・

 教授に封筒を渡し地位を約束すると、

 そちらに近い方向の論文が増え、新聞もそちらになびき始める。

 もちろん、反対意見を出す大学教授もいるが、そっちも金が動いており、

 大学内の派閥抗争も激しくなっていく、

 取り敢えず、ラジオに出演し、

 大学教授と中国にいると邦人の犠牲が大きくなるから撤収すべきと放送を流した。

 

 

 

 6月

  NHKが国際放送を開始

 フランスがワシントン・ロンドン条約の破棄を宣言する(2年後の1937年6月に失効)

  英独海軍協定調印(イギリスがドイツ海軍の拡張を認める)

 

  

 朝鮮半島の台湾自治区にきた。

 家が中国化していた。

 話す言葉は、中国語訛りの日本語だが、

 長城に囲まれた内側は、朝鮮自治区より発展している。

 何のかんので、朝鮮人は、朝鮮自治区へと追い出してしまったらしい。

 森林が少ないのを憂いてはいたが、成長の兆しがあった。

 たぶん、台湾人との間の長城は、それほど高くする必要はないだろう。

 

 

 呉

 潜水艦の建造の様子を見ていた。

 新型の空気清浄機は、日本潜水艦の居心地を改善できるだろう。

 ちなみに軍機なので、基幹産業の地下に備え付けになっている。

 しかし、日本に資源をだしに軍縮脱退要請がきたと思ったら、

 ドイツの再軍備と、英独海軍協定が原因らしい、

 やれやれ、日本に泥をかぶせて、軍拡開始は困るが、

 米英両国が歴史観が国民に与える影響を大切にしているのはわかる。

 対して、目先の資源に鼻薬を嗅がされて、条約破棄とか、馬鹿げた話しだ。

 まぁ わからん、こともないが・・・・

 しかし、条約破棄の泥を被ってくれたのがフランスなら悪くない。

 

 

 7月

  船橋・千葉間省線の電化完成(東京・千葉間全通)

  フランス人民戦線結成

  揚子江氾濫(死者二十万名)

  ペンギン・ブックス発売開始

 

 

 新卒者の職業訓練を見ていた。

 企業目標や生産目標は明確にされ、

 組織と個の成果配分は、8対2ほど、

 カグツチ系企業でしがらみは、省庁の天下りか、妻の閨閥血縁しかなく、

 こいつは、駄目と思ったら窓際へ追いやっていくせいか、敬遠されがち、

 省庁や閨閥を怒らせても、それができるのは、外貨収入の大きさと、

 おれオリジナル製品の数と量が大きいためなのだが、

 系列外にも株利権を持っていて、

 カグツチだけを乗っ取っても逆襲されてしまう相乗効果な構造も作られている。

 社員は、勤労勤勉が成功に繋がり、成功が昇給か昇格に繋がると気付くと、飢餓状態で情報を集め、

 人脈と金脈を繋ぐなど組織力が強まり、業績を上げていく、

 企業体質は、ムチの実力本位と、飴の家族社風がブレンドされ、課閥競争が行われている。

 その中で、秘密を守れそうで、私兵になりそうな新卒者を何人か選抜し、子飼いにしていく、

 他系列企業の人事・教育課がカグツチ社の成功の秘密を探ろうと見学に訪れていた。

 しかし、秘密の解明は、難しいだろう。

 商品開発は、自分が手掛け、楽×天で召喚した書籍と現物が元になっている。

 おれが出したアイデアを社員が形にし、停滞したら時折、助けているに過ぎない、

 おかげで、発言力は、おれに集中し、人事昇格や昇給もほとんど不満がない、

 ある意味、理想的なピラミッド構造が形成されている。

 もっとも、電子装置など、全く違う方向に向かう動きもあるが、

 そのへんは妥協すべきだろう。

 

 

 おれのところに世界各国の情報が集まってくる。

 アメリカは、需要があっても金がなければ労働者に賃金を払えず、消費者も金がなくて物を買えない、

 モノが売れないため企業が傾いて、労働者をリストラし、生産が縮小していく、

 製造業の生産が減り、就労者と非就労者に二極化し

 商品が高騰していくと、スタグフレーションと、なってしまう。

 この負のスパイラルは、アメリカの産業を縮小させていく、

 FRBが紙幣を印刷しないのでは、紙幣不足に陥ったアメリカの各企業は生き残るため、

 労働者をリストラし、紙幣を溜め込もうとするが、それでも足りず、

 詐称し増税してでも国民から紙幣を奪うよりなかった。

 どう見ても戦争する前準備で、

 金持ち喧嘩せずだが、貧乏人は戦争してでも生活していくしかなかった。

 なにより貧乏過ぎてアメリカ人が凶暴化している可能性もある、

 アメリカに難癖つけられ、アメリカ軍の矢面にたったら泣きたくなるだろうが、

 アメリカは民主主義国家であり、直接アメリカを攻撃しなければ戦争に至らないと思える。

 そうそう、この頃、ソビエトと日本は、アメリカの大恐慌を利用し、緑色の紙幣を作っていると噂されている。

 ソビエトは、同じ白人であることをいいことに政治中枢への浸透を狙い、

 日本は、黄色人であるため、政治中枢に行くことができず、石油とクズ鉄狙いだった。

 東京湾の酒場

 アメリカ代理人は、タンカーや輸送船で、石油、石炭、鉄鉱石を日本に運んでくると、

 日本の代理人と取引を開始する。

 その光景をクライアントたちが離れてみていた。

 ドキドキ ドキドキ ドキドキ

 ドキドキ ドキドキ ドキドキ

 「なんか緊張するね」

 「緑色の紙幣は、本物より本物だよ」

 「まぁ 非ユダヤ系資本も生き残るためなら、なんでもするでしょうね」

 「それに、彼らに延命してもらったほうが、戦争に至らずに済むし」

 アメリカの代理人数十人は、スーツケースの中身を確認すると、

 何も言わずに緑色の紙幣が入ったスーツケースを持ち帰っていく、

 ほっ!

 

 

 

 8月

  警視庁で無線自動車が登場

  中国共産党が抗日救国統一戦線を提唱(八・一宣言)

  国体明徴声明発表

  永田鉄山暗殺事件(相沢事件)

 

 

 ソビエト製と日本製の緑色の紙幣は、アメリカの大恐慌を緩和させ、

 アメリカ国内にソビエト派と日本派を形成しているようだった。

 石油とくず鉄の輸入量は確実に増えている。

 ユダヤ人用洋上プラットフォームの建設が関心を持たれたのかもしれない、

 一方、彼らの工作員も、朝鮮自治区と台湾自治区に入るといろいろ画策して去っていく、

 こちらがやってることは、向こうもやっているかもしれない、

 朝鮮人や台湾人に工作紙幣をばら撒いてる可能性は常にあった。

 朝鮮紙幣も台湾紙幣もそれほど強くない。

 自治区間の行き来は制限してるが、台湾や朝鮮でも日本紙幣は、人気があった。

 日本人が偽札で買収されると困るので国民一人一月七円政策に移行しようかと検討する。

 そうそう、日本が国民一人一月七円に移行すると、

 台湾と朝鮮も自動的に国民一人一月七元に移行する。

 きちんと配られているかは、わからないが、

 日本紙幣と台湾紙幣と朝鮮紙幣の交換比は、100対5対1の力関係になっていた。

 同じ国のように見えて、全く別の国だった。

 7円でも大卒の初任給の10分の1にも満たないが、確実に赤字国債を消すだろう、

 

 そう、こういった非公式な取引は、時々行われる。

 例えば、スペイン人が石油とくず鉄を持ってきて、武器を買って行く、

 マダガスカルでもイギリス人が石油と鉄鉱石を横流しして、ポンド紙幣を持っていく、

 いくら国家が規制しようとも生きてる人間は、いろんな方法で、生活の糧を得ようとし、

 隠れてひと稼ぎしようとする。

 

 

 9月

  ナチス・ドイツにおいてニュルンベルク法制定(ユダヤ人公民権停止・ドイツ人との通婚禁止)

  ハーケンクロイツ旗が正式にドイツの国旗とされる。

  第四艦隊事件

 

 

 大工場・大店舗テナント法が施行された。

 財政投資で箱モノテナントビルを建設し、保証金をとって、抽選で賃貸する。

 平屋の店舗を売却させ、数倍の床面積のテナントビルへと誘導するためで、

 財政投資は、増大したが、町工場が次々とテナント入りし、効率的な工業ビルへ変貌するハズだった。

 カグツチ社が土地の安い新潟でやっていた手法だったが国策となった。

 おれは、反二宮派の意図を知ろうと偵察に来ると、楽×天召喚で姿を隠した。

 国会議事堂のどこか、関係者たち

 「上手くいったな」

 「ああ、二宮派は気づかなかったようだ」

 「このままだと、カグツチ社が零細企業を取り込んで、労働力を手に入れてしまうからな」

 「ムカツクが、カグツチの真似をするしかない」

 「しかし、入札が抽選だとカグツチに負けるのでは?」

 「カグツチは、企業だから人選できるけど。国策でやると抽選にしないと不公平感が強まる」

 「それでもカグツチに優良零細企業を持っていかれるのは癪に触る」

 「だいたい、カグツチというか。二宮が次から次へと新商品を出せるから悪い」

 「それを提携企業に作らせて傘下にするとか、利益を独り占めしやがって」

 「それより、第四艦隊は、大変らしいぞ」

 「カグツチに修復させたいって?」

 「カグツチ製の装甲が強いからしょうがない。部品も精度がいいし」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「そろそろ、飯でも行くか」

 「そうだな」

 関係者がいなくなると、

 おれは、楽×天召喚を解いて、さっさと脱出する。

 

 

 

 

 

 10月

  イタリアがエチオピアへ侵攻開始(第二次エチオピア戦争)

  ナチス・ドイツが国際連盟を脱退

 

 マダガスカルは、エチオピア侵攻に介入できる場所にあった。

 もっとも巡洋艦2隻、駆逐艦8隻、潜水艦4隻が配備されているだけで、

 イタリア軍と事を構える戦力ではなかった。

 むろん、そのことで日本の国会が大きな影響を受けるわけもなく、

 むしろ、日本とマダガスカルの国内問題にかかりっきりになっていた。

 料理屋 あやなみ

 「世相は、どんな感じ」

 「戦争が近づいてるって事はないですよね」

 「そう感じるか」

 「戦艦10隻がなくなるし、軍縮条約破棄で、軍拡になるのだから不安になりますよ」

 「戦艦は建造できるが。マダガスカル島は建造できなからな」

 「まぁ そうですけどね」

  

 

 11月

  汪兆銘狙撃事件

  国民政府が幣制改革を実施

  上海で日本人水兵が殺害さる(中山水兵射殺事件)

  

 新潟工場 会長室

 比較的広く贅沢な室内にいる。

 たまに秘書や部下が報告書を持ってくるが、

 各フロアにある盗聴器の方が便りになった。

 一人で産業と市場を守りながら、日本の歴史を変えるのは大変だ。

 例え終身の勅任議員でも、一票でしかなく、

 緩い形での大同小異で派閥が作られるが、権力に近づくにつれ、離合集散しやすくなる。

 さらに権力が目的だと思想信条は関係なくなり、

 利権有りきだと、もはや、国益と国民を代表すらしておらず、内憂外患の源になりかねない、

 派閥を維持するにもポストや資金を準備できなければ強制力は小さく、

 むしろ、生殺与奪の秘密を握っている方が強制力を発揮できる。

 幾つかの省庁を超えて役員になっていても全権を持っているわけではない、

 とはいえ、金と人脈に任せて、工作の限りを尽くした結果、

 戦艦10隻とマダガスカル島を交換し、軍縮条約破棄を半年遅らせている。

 日本とマダガスカルを防衛できるかというと、

 日本の海軍航空隊は200隊。陸軍航空隊は100隊で、合計300隊。

 軍用飛行場は、日本とマダガスカルに総数100ヶ所を建設している。

 通常、海軍航空隊2個と陸軍航空隊1個が飛行場を共有し、

 重複する機体は、共通規格で融通が利く、

 マダガスカル専有後は、日本に200隊。マダガスカルに100隊を配備することになっている。

 1個航空隊は予備機を含めた50機程。

 300隊50機なら15000機に達している。

 輸送が完了すれば、日本に10000機。マダガスカルに5000機を配備することになる。

 史実の開戦前の海軍航空隊が2900機。陸軍航空隊が2500機だから、総数5400機。

 これを1935年の段階で3倍を超えている。

 しかし、航空機の6割は、旧式の練習機、輸送機、哨戒機、連絡機で、

 戦場で使える一線級の機体は15000機の4割で6000機ほどしかない、これは、史実と同じ比率だ。

 そう考えると、日本を守る航空機は4000機。マダガスカルを守る航空機は2000機になる。

 防衛できるかといえば、防衛できそうな気がする程度だ。

 機体の性能は向上し、高騰しているので、現状の予算配分だと、この機数が続く、

 第二次世界大戦が航空戦の勝敗が大きいことを知っているなら、

 軍部と国民が思い込んでるような不安は少ない、

 むしろ、高性能の大型輸送船が役に立つ、

 まぁ 戦争に備えて建造してるけど、

 どうやって建造したかって言うと、大型貨客ディーゼル船を格安巡回させたの、

 いっぱい建造して、ちょっとした港なら毎日出航・毎日入港だから、競争力のない船会社は潰れてしまう。

 おかげで、すげぇ〜 恨まれてる。

 しょうがないよね。

 

 

 

 12月

  澄宮崇仁親王に三笠宮の称号

  第二親王が義宮正仁と命名

  大本教教祖出口王仁三郎と幹部三十余名を不敬罪・治安維持法違反で検挙(第二次大本事件)

  北平の学生1万名が抗日・華北分離工作反対デモ(一二・九学生運動)

  天理教本部が脱税で捜索

  ダグラスDC3初飛行

  アンソニー・イーデンが英外相に就任

  望月圭介逓相ら政友会脱退派が昭和会を結成

  第68議会召集

  牧野伸顯内大臣辞任(後任齋藤實)

 

 

 日本石炭産出5000万t + 輸入1000万t

 日本の石油生産量50万t + 人造石油1基10万t / 石油消費700万t / 石油備蓄量1000万t

 日本の発電生産量2270万kw

   = 水力1800万kw + 火力発電420万kw + 洋上メタンガス発電プラットフォーム 5基50万kw

 

 石油消費を抑えるため電化を広げている。

 電化を広げれば、電気自動車を増やせるし、工場の機械化や電動機械も増えていく、

 もっとも、電化するために大量の石油と鉄を消費してしまうジレンマは大きく、

 開発が日本国内にとどまらず、マダガスカルにも配分されていく、

 これがマダガスカルを罠だという意味で、3倍に生産品を増やしても、日本国内は2倍程度になる。

 弱小工業生産国家の日本の辛いところ、

 大型土木建設機械が量産され、マダガスカルへと送られていく、

 カグツチ製の軍用ブルドーザーとシャベルカーは、列強のそれより優れ、燃費も良かった。

 マダガスカルは、30万人級の計画港湾都市で、区画整理を先に行い、

 日本から持ってきた木材を組み上げていくだけで家が完成した。

 水力発電所を建設し、上下水道を作り、通信網と送電線を敷いていく、

 鉄道建設は、過酷だったものの標準軌で行われ、

 道路建設もコンクリートが敷かれていく、

 マダガスカルは、お金を刷るほど街が大きくなり、

 製鉄所や石油精製所や工場などが建設されていく、

 日本でもお金を得るため産業基盤が大きくなっていった。

 映写機で撮影され、

 何百枚もの写真が撮られ、

 マダガスカルの開発状況が国民に知られると、更にマダガスカル行きが増えていく、

 満州国の二の舞にならなきゃいいと思うが、

 マダガスカルの周囲にソビエトや中国に当たるような国は存在しなかった。

 しかし・・・・フラストレーションが溜まる。

 もっと、戦車作りてぇ!!!!!

 もっと、戦闘機を作りてぇ!!!!!

 もっと、軍艦作りてぇ!!!!!

 もっと、軍事してぇ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

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 二宮勇太(7)

 二宮由紀(4)

 二宮翔太(1)

 

 

 洋上メタンガス発電プラットフォーム 5基 

 洋上人造石油精製プラットフォーム 1基

 

 

 史実 日本人総人口6925万

 戦記 日本の総人口7533万  (敷島6万8000人)

 

 

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第12話 1934年 『おれ、戦艦10隻とマダガスカル交換しちゃった』
第13話 1935年 『おれ、もっと、軍事してぇ!!!!』
第14話 1936年 『おれ、2・26事件防いだ』