第04話 1948年 『不正腐敗と貧富格差は比例する』
“原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” で、宗教の創設が検討されていた。
宗教を興す上で必要なのは二つ、
1 教理
2 教祖
教理は古今東西の宗教から取り入れ、
健康志向、犯罪に巻き込まれない長寿と繁栄を目的とした教理となっていく、
教祖は、広島と長崎の被災者が選ばれ、
生誕を含め死神からの召命に至るまで、いろんな履歴と奇跡など伝説が考えられた。
関係者たち
「教祖が馬小屋で生まれたは?」
「いや、それはパクリだからダメでしょう。捻らないと」
「じゃ 牛小屋」
「あまりにも芸がないだろう。教義が被っても教祖はオリジナルじゃないとな」
「いや、死神を中心にしてるのだからその時点で、オリジナリティ高いと思う」
「そういやそうだ」
「教祖が長く続く家系というのは?」
「真高君。いいねぇいいねぇ」
「天皇の血統に繋がるとか」
「いやそれはまずい」
「じゃ 陰陽師で賀茂忠行や安倍晴明の系譜は?」
「あ、それいいぞ。城木君。それがいい」
「じゃ 広島の賀茂陰陽衆と、長崎の安倍陰陽衆が核爆発のネルギーの半分を死神に転換させ」
「アメリカとソビエトに向けさせた」
「真高君。それ、いいねぇ いいねぇ 最高だよ」
「そういう自然なストーリーが大事なんだよ」
「でもそうなったら、広島と長崎で違う宗教になってしまうんじゃ・・・」
「確かにそうだな」
「原爆エネルギーで生まれた二つの死神か・・・ 名前をつけないと」
「そう! 城木君。名前! それ大事!」
「やっぱり死をイメージさせるような名前じゃないとね」
「そうそう」
「日本の場合、イザナミくらいしかないし。キリスト教だとサリエルとウリエルか」
「やっぱり対になるものじゃないとな」
「でもアメリカのキリスト教の創造の神と死神の関係は?」
「んん・・・死神は、陰陽で設計され、原爆のエネルギーで生まれたことにしたらいいんじゃないかな」
「じゃ サリエルとウリエルの影みたいな」
「うん、それならキリスト教とかち合わないし、暴走したことにもできる」
「そうだな。無難でいい」
「そうだ。広島の死神はウランで。長崎の死神をプルトにしよう」
「「「あぉおおおお!」」」
「じゃ 死神ウランと、死神プルトの絵を描かないと」
「絵か・・・ 美人がいいよな」
「いいねぇ」
「死神姫ウランはいかにも黒髪で日本女性がいいな」
「いい! 真高君。それいい!」
「じゃ 死神姫プルトは白髪で、闊達な性格で角を生えさせよう」
「いい、いい、いい 城木君。最高!」
「でも怖い死神なんですよね」
「いや、アメリカ人に好かれそうなくらい、美人系がいいと思うぞ」
「あれ、殺されちゃった♪ って思えるくらいの」
「「「「あはははは」」」」
「それで、教祖と死神の関係は?」
「教祖は原爆エネルギーの半分を死神に変えてアメリカとソビエトに送った」
「戦争が終わったから死神たちにやめるように言った」
「しかし、何をしていいかわからない死神たちがアメリカとソビエトに放浪して」
「ほかの国に行ってるかもしれない」
「「「おーーー」」」
「だから二つの宗教は、世界を回って、死神たちが悪さをしないよう生きがいを与えたり」
「どうやって生活していいかを教えていくっていうのは?」
「「「「・・・・」」」」
「でもそれだとアメリカ人とソビエト人は入らないのでは?」
「だから、死神が悪さをしないようアメリカ人は死神を祀る」
「「「「おおおお」」」」
「で、教理はどうしたらいいかな」
「1、早寝早起き」
「2、腹八分目」
「3、和食」
「4、酒は一日250ml以下。タバコは一日3本以下」
「5、一日3時間以上は太陽に当たる」
「6、一日1時間以上は運動する」
「7、規則や法律は守る」
「8、危ないところにいかない」
「9、善良であること」
「10、死神に一日一回水をコップに入れて捧げること」
「長生きしそうだ」
「そんな宗教は、やりたくねぇえ」
「「「「あはははは」」」」
「基本的に内容は同じで、死神が違うだけとか」
「同じ陰陽師の血統だから、兄弟宗教でいいんじゃない。セットで売れる」
「教会員は “長寿と繁栄を” って中指と親指を合わせて、互いに合わせる」
「おおお」
「じゃ 誰か適当な教祖を二人立てよう。賀茂20代目とか、安倍21代目とか」
「当然、力の強い上位者の神火人だよな」
「まぁ 年に一回ぐらい奇跡を起こさないといけないだろうから、そうだよな」
「じゃ 陰陽師と信者さんたちを準備しないとな」
「とりあえず十勇士みたいな感じで広島と長崎で真面目な性格の人を集めて」
「広島長崎出身の特高にも手伝わせるか」
「そうそう、証し部隊がいるよな」
「あと陰陽師に詳しい学者」
「伝統があって敬虔新貴な本殿もいるね」
「とりあえず、どっかの秘境に寝殿造で作っちゃおう」
「あぉおおお〜」
「ある程度、信者が増えたらアメリカとソビエトに死神鎮伏の旅に出る」
「それで奇跡を見せて現地の信者を募ると」
「いいねぇいいねぇ」
「あとは献金を集めて、自給自足」
「「「「おおおお〜」」」」
「でも誰が教祖やる?」
「「「「・・・・」」」」
「神火人に賀茂と安倍っていたっけ?」
「いたような居なかったような・・・」
「探してみよう。居なかったらクジで当たった奴が改名して人生を諦めると」
「「「「あはははは」」」」
日本軍は日本国内だけでなく、
中国京杭大運河東域と東南アジアの主要都市と街道を押さえ、
満州帝国、沿海州、カムチャッカ半島、チュクチ、アラスカ州、ハワイ諸島を支配していた。
わずかな部隊でそれを成し遂げることができたのは “死神” の噂と、
アメリカ軍とソビエト軍から奪った兵器と武器弾薬のお陰だった。
人材不足や心身障害、結核など、最悪の状態が続いたものの、
日本は、爆撃されなくなり、
権力構造が一新し、
毎月、100円が国民に一律配られると消費が増え、
資本投資が活発になり、
ユダヤ人資本の手下である共産主義勢力が日本から消え、犯罪が減少していった。
満州の石油が輝夜(朝鮮)半島から日本へ運ばれてくると、日本経済は立ち直り始める。
工作機械はボロボロだったものの民生品だけならなんとかなりそうだった。
土木建設機械、農業機械、産業機械が細々と作られ、
精度は少しずつ向上していた。
厚木飛行場
ロッキード コンステレーションが着陸すると、アメリカの外交代表団が降りてくる。
「上から見てましたが大変な惨状ですな」
「ええ、まぁ いずれは再建するでしょう」
「海外に有能な将兵を派遣していては、再建もままなりますまい」
「確かにそう言えなくはないですな」
「こちらへ、ホテルに案内いたします」
「・・・時に日本は思い切った金融システムをとってるようですな」
「ええ、国債を返すのにはちょうど良いですよ」
「財源もなくですか?」
「民主主義的な権利と義務なので国債発行する必要はありませんな」
「それでは資本の回収が困難になり政府と資本家の力が恐ろしく弱くなる」
「回収? なぜ? 紙幣は国民の共有資産なのでは?」
「政府や資本家の力が弱くなるからだ」
「国民に価値有るモノやサービスを提供できる者が提供した分だけ力を持つ、それだけでいいじゃないですか」
「金を保証する換金紙幣ならともかく、不換金紙幣ですし」
「紙幣を無理やり回収したり、紙幣を私物化するのはどうかと思いますね」
「「「・・・・」」」
「まして、私物化した紙幣を使いまくって、国民に借金を押し付ける等・・・」
「利権を作って国民を支配し、国家権力を行使すべきだ」
「日本国は単一民族。同胞なので金融支配の必要性は低いので」
「政治的決断は?」
「命で集票しますよ」
「命ですか。怖い力をお持ちのようだ」
「死神の噂だけでも人は震え上がりますからね」
「悪い人間は死ぬかもってね」
「なるほど、是非ともその力に預かりたいものですな」
「あはははは、実はよくわからんのですよ」
「「「「・・・・」」」」
「しかし、早く寝ないと妖怪が引っ張りに来るぞの類と同じで効き目があるわけです」
「アメリカでは、もっと効き目があるでしょう」
「我々の代表は、夜も眠れない」
「お困りですな」
「我々の知人に会いたいのだが」
「皆さん、国体を危機に晒したことで気が引けたのでしょう。御勇退されましたよ」
「そうですか・・・」
大家と在日たち
「今日中に出て行ってくださいね」
スタスタ スタスタ スタスタ スタスタ
「「「「・・・・」」」」
「しょんぼりニダ」
「仕事と住む場所を探すニダ」
「日本人だけお金を配るなんてズルいニダ」
「なんとかしないと生殺しニダ」
「四川盆地行きの便に乗るしかないニダ。あれに乗れば少しお金をくれるニダ」
「酷いニダ。どうしてこんなことになったニダ」
「疫病のせいニダ」
「南朝鮮から疫病が広がって、みんな満州に逃げ出したニダ」
「なんで死んだのかわからないニダ」
「傷もなかったニダ。みな元気だったのに突然死んだニダ」
「日本国内にいた仲間もみんな死んだニダ」
「日本人は、朝鮮人を同胞と言ったのに騙したニダ」
「せっかく、一等国国民になれたのに日本人は酷いニダ」
「日本人は輝夜(かぐや)半島と言って、祖国を盗んだニダ。酷いニダ」
「なんで日本人だけが死なないニダ」
「日本人は裏切ったニダ!!」
「朝鮮人の気持ちを裏切ったニダ!!」
「両班と同じにウリたちを裏切ったニダ!」
「・・・・・」
日本の某訓練室
教壇の前にハリセンを持った白人が立ち、机に生徒たちが座っていた。
『くそぉ せっかく育てて、訓練してきた手下が広長閥のせいで全滅してしまったわい』
『また最初からとは・・・・』
「・・・お前たちに仕事をお与えよう」
「本当ニカ?」
「心配するな。我々が味方だ」
「なぜニダ? どうして? なぜウリ達を?」
「我々 キリスト教徒は兄弟姉妹同士なのだ」
「朝鮮人の安らぎは最初から日本になかった」
「約束しよう。お前たちの朝鮮人の居場所はここにある」
「本当ニカ?」
「お前たち朝鮮人の未来は、我々白人と・・・」
「ほ、本当ニカ?」
「約束しよう」
「あああ、アイゴ〜」
「何としても死神の正体を調べろ」
「わかったニダ」 感激
『ふっ 落ちたな』
『フハハハハハハハ・・・』
『この反日しか取り柄のない火病もちの欠陥民族が。散々使い倒してボロ雑巾のように捨ててやる』
「・・・いいか、日本は戦後復興で忙しい。身寄りのない日本人を殺して成り代われ」
「村ごと全部成り代われるなら全員埋めて成り代わるんだ」
「「「「「あいごー」」」」」
「日本の政治経済軍事の中枢を押さえて日本を支配しろ」
「「「「「あいごー」」」」」
「いいか、世論操作のやり方を教えてやる」
「「「「「あいごー」」」」」
「右翼と左翼の主導権を握れ」
「一方で弱者を攻撃して、一方で弱者を助ける自作自演で勢力を拡大するのだ」
「「「「「あいごー」」」」」
「情報は、5段階に分ける」
「レベル5は我々自身で完全秘匿。レベル4は利害関係者で厳重秘匿」
「レベル3は賛助関係者で秘匿すべし。レベル2は無関係であるため味方に引き込むよう利用する」
「レベル1は敵情報だ。真実ならばよし、偽情報でも真実以上の攻撃を行う」
「「「「「あいごー」」」」」
「大事なのは “何時” “どこで” “誰が” “何を” “なぜ” “どのように” 5W1Hを支配することだ」
「つまり都合の悪い真実を隠し、無害な情報や有益な情報のみを流すことだ」
「それぞれの単語はランクがある」
「Aの超危険、Bの大危険、Cの危険、Dの微妙に危険、Eの無害、Fの有益の6段階にわけられる」
「例えば、×月×日×時、T町で、○○が、△△を、金を奪うため、ナイフで殺した。が真実とする」
「これはオールAで超危険だから、AAAAAAになる」
「×月×日×時がAだから、時間がなければBになる。月だけならC、年だけならDという具合だ」
「お前たちのすることはAをBに、BをCに、CをDに、DをEに、EをFに変えることだ」
「我々にとって無害なE、有益なFの情報に押し下げ、最終的には、犯人を政敵にすり替えてやるのだ」
「「「「「あいごー」」」」」
「いいか、常に新聞、週刊誌、ラジオ、文庫に目を光らせろ」
「我々に都合の悪いことが書かれていたら必ず抗議する」
「そして、無害な情報に落としていく」
「AやBを支持してるやつには嘘を掴ませて、社会的な信用を失墜させろ」
「金を渡して、女を抱かせろ」
「それでも聞かないなら麻薬でもやって、弱みを掴め」
「いいか、日本国民をメクラに、オシに、ツンボにして真実から遠ざけろ」
「ムチで馬鹿な労働者にしてしまうのだ」
「日本の執権者の都合のいいように中央集権を進めさせ。同時に弱みを握れ」
「そして、国民を毎日の仕事と生活だけで精一杯にし、真実から遠ざけさせ」
「執権者を潰してしまえば総バカ国家、総バカ国民の出来上がりだ」
「「「「「あいごー」」」」」
「いいか、我々は、組織的に統一行動し。日本人は、思想的に孤立してると思わせることだ」
「集中攻撃で圧倒し、自身喪失させ、黙らせる」
「「「「「あいごー」」」」」
「それと政府のやってる100円の国民配布をやめさせ」
「企業投資に切り替えさせ、貧富の格差を大きくし、不公平感を増長させ」
「日本人の間に不和と憎しみと闘争を起こさせ」
「犯罪者、アウトロー、左翼、右翼、宗教を連合とした組織を作るんだ」
「言論を支配し、利口なやつを引きずり下ろし、少しでも馬鹿な奴を応援し、豚をおだてて木に登らせろ」
「そして、日本に内戦や革命を引き起こさせるのだ」
「「「「「あいごー」」」」」
「では筆記試験をはじめる」
「さっき教えたように、AをB、BをC、CをD、DをE、EをFに変えていく」
「「「「「あいごー」」」」」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・」
「ちが〜う!!!」
パシン!
「“何を” と “どのように” が逆だ!」
「ニダ?!」
「なんで、5W1Hから教えなきゃならんのだ」
パシン!
「ニダ!」
「もっと、日本語を勉強しろ!」
パシン!
「ぐすんニダ!」
復員船が到着すると将兵たちが降りてくる。
焼け野原となった我が家の再建と身内の弔いを済ませると内地の仕事についていく、
土木建設事業、農産物生産、漁業、発電所建設の仕事は多く、
一律国民に渡された月100円で資本家層にも余裕があるのか、
負傷した将兵や民間人にも何がしかの仕事があった。
復員兵士たち
「強制的に徴兵して、負傷したら使い捨てか。国も軍も冷たい」
「仕事の斡旋だけでもめっけもんだろう」
「片腕で出来る仕事で、残りの人生をやっていくしかないのか」
「毎月の100円と慰謝料と見舞金がもらえるのならなんとかやっていけるだろう」
「しかし、見舞金より、国民一律の100円が大きいのが納得できないな」
「国を守るために戦ったというのに、民間人は冷たいし」
「そりゃ 冷たいだろう」
「どこの馬鹿に唆されたのかわからんが、軍官僚で日本を支配し、暴走した挙句、予算の殆どを奪い」
「外国に戦争仕掛けて負けて、日本国内を焼け野原にされて、民間人で死んだ人間も多い」
「それで借財を国民に押し付けたんだからな」
「おれら徴兵はともかく。職業軍人は針のムシロだな」
「民間人に哀れみを貰おうって、虫がよ過ぎるだろうさ」
「そういや、アメリカ資本が広告代理店をやらないかって言ってたぞ」
「広告会社?」
「軍の復権と再興で、実権を取り戻せって」
「んん・・・ しかし、あの連中に一睨みで殺されちゃかなわんし、勝てんと思うぞ」
「もう、お金とかの問題じゃないしな」
「はぁ・・・ じゃ このまま、一生慣れない仕事をやっていくわけか、しまらないな」
「民間人と同じだろう」
「「「「・・・・」」」」 ため息
100円の一律紙幣の国民分配により所得が倍増し、
消費増大によって、経済活動は、一気に加速していく、
国債発行は公共工事と比例して増えてインフレも大きくなり、
国民への分配金も200円となり、500円となり、1000円となる趨勢があった。
そして、新札1000円札が現れた。
政府は、さらに天文学的な赤字国債と軍票の償還のため
高額紙幣発行と、戦時国債と軍票の償還を急ぎ、
100万円札、1000万円札の高額紙幣が印刷された。
高額紙幣は保有者と通し番号が銀行で控えられ、
本人が他人名義に移籍させない限り所有者が移動しなかった。
この手法で国債と軍票を処理してしまうと、
焼け野原からの再建のため建設国債を新たに発行した。
行き場を失った高額紙幣の大半は、もう一度、建設国債に切り替えられ、
緩やかな利息で日本再建が始まる。
日本領 大和(アラスカ)州
天宮(アンカレッジ)
白人はアメリカ本土へと移動していき、日本人入植者は極寒に震える。
神火人にとっては、何ら不都合のない世界が広がっていた。
航空基地にLa7、Yak9、シュトゥルモヴィークが並び、
陸軍駐屯地にはT34戦車が配備され、
天宮港にはギアリング型駆逐艦が浮かんでいた。
しかし、アラスカを本当の意味で守っているのは死神といえた。
市庁
「いいねぇ アメリカに近いのは面白くないが」
「アメリカは仕返しに来るだろうか」
「仕返しは考えてると思うけど、原爆は使わないと思うな」
「死神の正体がバレなければね」
「というより、あの現象が解明がされない限り原爆による攻撃は無理だろう」
「神火人でさえ、なんで神火人が生まれたのかわからないのだから」
「神の悪戯?」
「まぁ 何らかの意図がない限り、そういった現象や力は働かない」
「大意があると、そう思いたいものだ」
2900t級アレン・M・サムナー型駆逐艦峯雲(ウォレス・L・リンド)
乗員全員が原因不明で死んだ駆逐艦。
縁起が悪い艦と言われたが、それを言うなら日本が保有する艦船のほとんどが縁起の悪い船だった。
当直の海軍将兵たちは不安なのか時々後ろを振り返る。
おっ! × 2
「き、急に出てくんな。びっくりした」
「心臓に悪いぜ」
「夜中に影みたいなモノを見かけると心臓が凍りつくからな」
「死神がまだいるんじゃないかって思うよな」
「原因不明なのが怖い」
「アメリカの軍医に聞いたら、死体に鎌で切られたような赤い線の跡があるって、聞いたことあるぞ」
「それは怖すぎる」
「日本人で死んだやつは少ないらしいよ」
「それだけが救いだけど、自分たちが違うって誰が言える」
「そういや、死神教ってできたって聞いたぞ」
「「あはははは」」
古くから居たイギリス子飼いの権力層は消え、反日運動は沈静化していた。
元々 植民地独立は、日本軍が主体で行なったことであり、
東南アジアの独立国が、独立未満の日本自治区(1000ku)を認めるだけなら
植民地時代よりはるかにマシだった。
フィリピン バターン・コレヒドール島 日本自治 “桃太郎” 区
マレーシア ブルネイ 日本自治 “金太郎” 区
インドシナ ダナン 日本自治 “舌切雀” 区
インドネシア パレンバン 日本自治 “浦島太郎” 区
ビルマ ヤンゴン 日本自治 “因幡の白兎” 区
シンガポール 日本人自治 “鶴の恩返し” 区
日本人は、日本自治区に城郭神社仏閣など日本風社会を作り、
総合大学を創設し、資源を得ること、作った物を売ることに集中する。
シンガポール 日本人自治 “鶴の恩返し” 区
「もっと、資源のある場所を押さえればよかったのに。せめて水を自給できる地域」
「シンガポールはイギリスの直轄地だからそのまま取れるよ」
「まぁ 工業の基礎があるし、海峡を抑える要地だから」
「それにどうせ、日本で作ったものを置いとく市場みたいなものだし」
「まぁ いいけど」
「そういや、軍がもう少し、融通を利かせてくれって、ブスくれてたけど」
「ふん! 戦時でもないのに、いきなり、演習で鉄道使わせてくれとか、冗談じゃない。ダイヤなめんな」
「私利私欲に走ってるくせしやがって公人ぶりやがって、だんだんムカついてきたわ」
「死んでもらうか」
「「「「「あははは・・・」」」」」
「軍と戦争はまずいよ。流石に知ってる奴は知ってるからね」
「勝てたとしてても身の置き所を失う」
「大半は、本当に神火風と思ってんだろうな」
「当たらずとも遠からずだよ。俺たち自身、なぜ、こうなってしまったのか理解不能だし」
「どうせ、意図してやったんなら、理由ぐらい説明すりゃいいのに」
「人類発祥の理由も知りたいね」
「理由なんてないんじゃないか。ただ生まれただけ。どうするかは自分で決める」
「とういうより人間が作られた存在というのは、聖書的な発想だよ」
「それなら、俺たちの存在だって、自然が成した現象と思うことにすればいい」
「たいした違いはないのだから」
「ていうか、この手の情報を知った人間は有利になるんじゃないか」
「まぁ 確かに・・・」
工場
アルミで窓の小さい車体と車尾に出入り口のあるやや車高の低いボンネットバスを作り、
屋根の上に捕獲した12.7mm機銃を置くと、簡易兵員装甲車になった。
エンジンは、満州戦で捕獲したトラックのエンジンなど2基が使われた。
関係者たち
「見た目より重量が少なく。馬力が倍だぞ。凄いだろう」
「ずいぶん、安直な作りだな」
「中国や南洋域じゃ こういうのじゃないと身を守りにくいらしい」
「攻撃されてるのか」
「いや、攻撃はされてないが、見た目は大事だろう」
「正直、本土を焼け野原にされてるのに、外地駐留は嫌だろうし」
「軍上層部の総入れ替えで、戦意低下が激しくてね」
「国内が悲惨な状況なのにな」
「総入れ替えといえば、権力構造も総入れ替えらしいが」
「もう、政府と官僚は、あらかた広長閥と、入れ替わってんじゃないかな」
「残ってるのは皇族だけ」
「やれやれだな」
「まぁ だから金を国民にばらまくなんてデタラメができたんだろうけど」
「経済崩壊してないのか」
「いや、お金持ちの資産が目減りしてるだけで、好調だよ」
イギリス
ロンドンダウニング街10番地
日英講和でインド独立が約束させられ、
東南アジア諸国独立も承認させられていた。
「状況は?」
「インド独立は止めようがありませんし」
「アメリカは西海岸を守るため、妥協せざるを得なかったようです」
「一体何が起きたんだろうな」
「米軍兵士の間に死病が広がり撤退せざるを得なかったのでしょう」
「日本妖怪が反撃したという噂もあるが」
「噂だけはありますが証拠と言えるものは・・・」
「キングジョージ五世の防御力は最強でしょうが、対日本妖怪を検討してませんし」
「じゃ なにも分からず、機動部隊を失ったのか」
「沖縄の港に停泊中のことでしたが、次々と乗員が倒れたという報告を残して・・」
「全部死んだと?」
「日本側の報告ではそうです」
「認識票はすべて返還されましたので、死亡は確実でしょう」
「計算違いが起きたわけだ」
「問題は、アジアにおける我々の支配力が大きく後退したことでしょう」
「まだ、アメリカとヨーロッパが残ってる」
「中央銀行を押さえ、資本主義を加速させればいい」
「弱者は、現物資産を売却し紙切れに変える」
「単純計算するなら公定歩合分の現物資産が毎年、銀行に転がり込んでくる」
「大衆の多くが紙幣をただの紙切れと気付いたとき、全ての現物資産が銀行所有となっている」
「利権を確保すれば自動的に金は吸い上げることができる」
「やり過ぎると労働意欲が失われるぞ」
「その傾向は強くなってるな」
「日本は、国債と軍票を回収するため紙切れを国民の権利として、ばら撒き始めた」
「これでは銀行が現物資産を回収などできないし、我々の介入も及ばなくなる」
「日本型金融システムがほかの国に広がるとまずいし」
「我々にとって、危険な兆候だな」
「しかし、イギリス本土は疲弊し、国民も戦意を失っている」
「戦っても日本妖怪に勝てそうにないし、一旦、情報収集すべきだろう」
「しかし、本当に日本妖怪なのか?」
「何かわからんから、日本妖怪と仮称にしてるんだろうが」
「諜報組織を総動員して、妖怪の正体を探れ」
「正体がわからない限り、手の打ちようがない」
「最悪ですが、日本がアメリカにメートル法を押し付けたのは人類史・世界史的な大貢献ですよ」
「「「「「・・・」」」」」 にゃぁ〜
日本は京杭大運河を浚渫し、堤防をさらに高めていた。
最終的に大運河は1000m幅となり、堤防は高さ100mとなる計画だった。
上海
日の丸をつけたBT7戦車が並んでいた。
日本軍将兵が飛び出した。
「暑い・・・」
「戦車にはクーラを付けて欲しい」
「ていうか、車外に出ても蒸し暑い」
「ふっ 蒸し饅頭になった気分だ」
「今度、アルミ製箱型装甲車を作るからガンバレだと」
「アルミ製・・・」
「飛行機用だろう」
「意外に金あるんだな」
「というより、日本製の飛行機は怖くて乗れなくなったが正解」
「よく勝てたな、そんなんで」
「だから神火風って言うんだろうが」
「神火風の正体は?」
「師団長も知らないそうだよ」
「なんじゃそりゃ!」
「だから、師団長も参謀もぶすくれっぱなしだろう」
「いやだねぇ そのしわ寄せが、こっちに来るんじゃ」
「なんかもう、全部、放り出して、里で農家したいぜ」
「ふっ 無条件で金をばら撒いたら、生きていくためなら仕方なくっていうのがなくなるな」
「まぁな」
日本の広島の過疎地
宮大工たちは守秘義務にサインすると
“賀茂陰陽衆 天光主教” と看板を掲げた寝殿造りを作っていく、
「焼け野原が残ってるというのに、いったい、なんだろうね。この変な仕事は」
「実入りいいし、やってもいいんじゃないか」
「あの木陰に隠れてるの特高だろう」
「だよな。胡散臭さ一杯」
「守秘義務も気になる」
「まぁ いいじゃん、自分が入信するわけじゃないなら・・・」
戦艦長門は、修復を終えると、船団を率いて、
シンガポールに向い、
その後、インド洋、南大西洋、北大西洋と補給と給油を繋ぎながら北海からバルト海に入った。
長門 艦橋
「艦長。リューベックのトラフェミュンデです」
「やれやれ、老体にムチ打っての大航海も終わりか」
「ワザワザ、長門を出さなくても」
「リューベックを確保できたのは神火人だとしてもだ」
「日本海軍も面子がある」
「アメリカとソビエト側には通達しているだろうな」
「既に先遣隊がリューベックを接収して、アメリカ軍とソビエト軍を追い出しているそうです」
「まぁ 無事にヨーロッパにまで航海できたのは助かるがな」
「アメリカとソビエトもこれ以上、日本と事を構えたくないのでしょう」
「だといいがね」
ドイツ帝国はアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、ソビエト軍に占領され、
東西に分割されていた。
日本は講和条件で、アメリカ、イギリス、ソビエトに対し、ドイツの足場を求め、
西ドイツ側リューベックと東ドイツ側シェーンベルクを合わせた3000kuを譲渡させ、
ドイツ人に統治させた。
ベルリン封鎖が行われ、アメリカとイギリスの輸送機が西ベルリン市民に生活物資を空輸していた頃、
第三勢力の自由都市リューベック (3000ku)の市民は冷めた目で見ていた。
ドイツ人ヴィルヘルム・フォン・プロイセンと、日本人
「本当に、我々に統治を任せていただけるので?」
「同盟国ですから、せめて、ドイツ人主権を回復させたいと思いましてね」
「とはいえ、日本は、まともに艦隊を動かすこともできませんし」
「アメリカ軍とソビエト軍が動いた場合、救援は不可能でしょう」
「ルクセンブルグより大きいですが、狭い地域しか主権を回復させることができず、申し訳ない」
「いえ、アメリカとソビエトの干渉を3000kuだけでも排することができたことだけでも僥倖です」
「リューベックで必要な物資は可能な限り運び込めるでしょう」
「しかし、自由都市リューベックは講和条約で守られてるだけということを忘れないように」
「いえ、それでも十分です」
自由都市リューベックは政治経済軍事で独立している。
国境線は、西ドイツに対しても東ドイツに対しても鉄条網が敷かれ、
ドイツ人であれば自由都市リューベックに入国できたが人口上限があった。
しかし、自由都市リューベックに国籍を置き、日本に移り住むことは可能だった。
気骨のあるドイツ人は、アメリカやソビエトの干渉を望まず、日本ドイツ人自治区へ移動していく者が増えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
気づく人は気づく、シンジとルルを混ぜました (笑
史実の日本は、戦中戦後にかけて、インフレが進みました。
5円50銭だった二等兵の給与は、戦争末期に20円に跳ね上がり、
慰安婦の200円の5分の1に迫るほどでした (笑
換金紙幣は金との交換を保障しているので紙幣自体に価値があるものなのですが、
不換金紙幣は紙幣に数字を印刷し、日本政府の印鑑を押してるだけ
代替のものがないので、子供銀行とたいして変わらないものです。
そのへんを理解してる資本家は子供銀行券を金、現物に変えつつあるようです (笑
戦記では、終戦間際、国民に一律100円を配りました。
史実の戦後は、国債と軍票が紙屑になる500倍から1000倍の物価上昇なので、
一律100円を配っても、あっという間に生活が困窮してしまいます。
なので、5円50銭の1818倍。20円の500倍の10000円を配ることになります。
この時代だと、平均給与と同額ぐらいでしょうか。
無茶なようですが、史実でもそれくらいの紙幣を印刷してるということですし、
戦記日本では、日満州と和洋州に漢民族を抱え込んでます。
さらに日本人の生活を底上げをしないと、
10000の1以下の賃金で済む中国人労働者と競争できなくなるでしょう。
まぁ 無理に競争する必要もないで、趣味で働いてくださいみたいな感じでしょうか。
ちなみに生活必需品を国内で作れる国は、紙幣を印刷してもスーパーインフレになりにくく、
生活必需品を国外に頼る国は、紙幣を印刷した瞬間、輸入品が高騰し、スーパーインフレになるわけです。
史実の日本は、資源を買わないといけませんが、
曲がりなりにも生活に必要な最低限の工業力があるので、スーパーインフレになりにくいというわけです。
しかし、TPPが進み、民族資本の国際化が進むと怖い、
日本と、日本人と、日本の民族企業の利害が切り離されてしまうので、
日本の民族企業が日本や日本人と敵対するような思想と行動が取れるわけです。
日本企業が日本人から収奪するような商売が可能になるわけです。
利益を追求する企業が日本の紙幣増量を当て込み、
日本のインフレを加速させる可能性があるでしょう。
この戦記の日本は、占領地の資源があって、生活必需品を作る程度の工業力があるので、
大日本経済機は、よたよた、よろよろ、と騙し騙し離陸していけるわけです。
札束で人の頬を叩くような人は、人間を金で動く木偶みたいに思ってるので、
木偶に金が配られてしまうと言う事を聞かなくなり、
権威失墜の悪夢です。
破綻と言ってる人たちはそっちが怖いのかもしれません。
しかし、予算を超えた積極財政策は、国防や基幹産業を除けばですが、
国債を発行しなければならず、国債で国債を償還するようなブラックジョークな財政に陥ってしまいます。
また政官財で踏み倒した借金を国民に押し付けなくてもいいですし、
国が破綻した大企業を助けるため人事刷新もせず、税金で助けるのも不公平なものです。
国民へのバラマキは評判悪いのですが、
貨幣経済は
消費者(紙幣バラマキ) → 企業(生産、消費)、銀行(預金・投資) → 国(所得税、法人税、間接税) → 国債償還
↑ ↓ ↓
労働(収入) ← 企業、銀行、国(賃金、給与)
といった形で国民、企業、銀行、国が繋がっていて
自然と、赤字国債を償還できてしまえるので、健全だと思われます。
基本的に不正腐敗と貧富の格差は比例します。
貿易赤字で紙幣がないとか。
外国に貸したお金が戻ってこないから増税するしかないとか、
日本の借金を踏み倒したいから日本に滅んで欲しい外圧とか、
企業、銀行、国の間ばかりで金が行き来して国民に落ちないとか、
金が富裕層に淀んで税金で取れないとか。
金の価値を引き上げて、誰かを殺したい時とか。
支配権を強化するため言いなりになる木偶が欲しいから中間搾取するとか、
対外戦争したいとか、
そういった意図があると、紙幣の印刷をやめてトンデモ増税で貧困層を増やさないといけませんが (笑
新自由主義は、資本家同士の内戦状態と言えるものですし、
TPPになると国境を越えた戦国時代突入なので、
余剰資本のない弱者はどこまでも悲惨になっていきそうです。
広島死神ウランと長崎死神プルト
日本鬼子に鎌を持たせたような感じで想像してください (笑
神火風 = 原爆投下以降起きた現象
神火人 = 神火風を起こした張本人たち
神火核 = カーボン・シリコンのフラーレン構造に包まれたナノ重金属構造体
YAP因子を鍵にDNAを取り込み、
中枢神経系や末梢神経系の働きに呼応して、放射線を操作する機能を持つ。
日本・輝夜 (72万ku) 日本・半島
和洋州 (25万ku) 中国京杭大運河東部域
日満州 (100万ku) 外満州
扶桑(カムチャッカ・チュクチ)州 (121万ku)
大和(アラスカ)州 (171万7854ku)
南洋 (ビスマルク・ソロモン諸島) (78150ku)
フィリピン バターン・コレヒドール島 日本自治 “桃太郎” 区 (1000ku)
マレーシア ブルネイ 日本自治 “金太郎” 区 (1000ku)
インドシナ ダナン 日本自治 “舌切雀” 区 (1000ku)
インドネシア パレンバン 日本自治 “浦島太郎” 区 (1000ku)
ビルマ ヤンゴン 日本自治 “因幡の白兎” 区 (1000ku)
シンガポール 日本人自治 “鶴の恩返し” 区 (1000ku)
“原爆を落とされた人々の世界平和を望む会”
広島 賀茂忠行 天光正教 ウリエル 死神ウラン
長崎 安倍晴明 聖炎主教 サリエル 死神プルト
2410t級ガトー型潜水艦46隻
2424t級バラオ型潜水艦26隻
2424t級テンチ型潜水艦8隻
1360t級エヴァーツ型護衛駆逐艦(21) 1740t級バックレイ型護衛駆逐艦(44)
1240t級キャノン型護衛駆逐艦(23) 1250t級エドサル級護衛駆逐艦(24)
1450t級ラッデロウ型護衛駆逐艦(4) 1350t級ジョン・C・バトラー型護衛駆逐艦(24)
第04話 1948年 『不正腐敗と貧富格差は比例する』 |
第05話 1949年 『悪魔教 VS 死神教』 |