月夜裏 野々香 小説の部屋

    

天ぼた系 火葬戦記 『神火風』

 

 第07話 1951年 『胎動、中規模海軍国群』

 

 自由都市リューベック

 ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の長男ヴィルヘルム市長が亡くなり、

 ヴィルヘルム市長の次男のルイ・フェルディナント・フォン・プロイセン(44)が市長に就任した。

 自由都市リューベックは、増長したドイツ帝国でもなく、歪なナチスドイツでもなく、

 アメリカナイズされた西ドイツでもなく、共産化した東ドイツでもなかった。

 その気風は、ハンザ同盟の時代 バルト海の女王と呼ばれた頃に近い、

 ドイツ人も、その頃の歴史が蘇ったのか、リューベック人としての意識が芽生えつつあった。

 そして、旧同盟国の日本の進出も進み、街で、死神教の教会が建ち、

 港湾は、長門が記念艦として準備されていた。

 どちらも、対アメリカ、対ソビエトに組しないという抵抗の現れであり、

 日本国の意思表示だった。

 日本人たち

 「外の様子は?」

 「西ドイツと東ドイツは、ドイツ人色が減らされている」

 「自由都市リューベックの影響力はないのか」

 「いや、アメリカとソビエトの洗脳教育は、むつかしくなるだろう」

 「東西ドイツの完全独立も早まるかもしれない」

 「どちらにしろ、アメリカの戦争目的は西ドイツにあるのだから監視が必要だと思う」

 「アメリカとソビエトは、日本と自由都市リューベックのせいで、ドイツの独立が遅れると嘯いてるようだが」

 「ふっ 嘘つきが・・・」

 「しかし、日本も大枚かけてドイツまで来たのだから利益があるんだろうか」

 「外交戦略が主目的だからあまり期待は出来ない。しかし、リューベックを経由して西ドイツ、東ドイツへは売れるだろう」

 「欧州にも?」

 「期待したいね」

 「それより、V2ロケット技師が日本に亡命したがってるらしい」

 「本当に?」

 「いまは東ドイツに潜んでるらしいがね」

 「V2ロケット技術は確かに欲しいが罠じゃないだろうな」

 「その可能性はあるが、接触してみたくはある」

 「そうだな」

 

 

 

 日本 陸軍兵力

  樺太州・輝夜州・日満州・和洋州 35万。

  日本・外地日本人町 15万

  扶桑州・大和州・ハワイ・太平洋諸島 20万

 日本の軍事力は、その広大さと、国情に比べ、挑発的なほど少ない編成がなされていた。

 アメリカ、ソビエト、中国が侵略行為を躊躇したのは、死病の正体。神火風の正体が不明だったこと、

 そして、戦後だったことから、戦意を保てないことにあった。

 

 東京

 戦災が薄れ、人々の表情は、平静さと活気さを混在させながら平和を享受し

 街並みと、文化財の再建は徐々に進んでいた。

 街でたまに見かける軍服は、デザインが一新し、以前のような高圧的な存在でなくなっていた。

 警察も戦前戦中のようではなくなっていた。

 両者共、市民に紛れているかもしれない何かに怯えている節さえあった。

 国民も直感的に気づいており、神火風の憶測が話題に登らないことは少なく、

 ある者は妖怪、ある者は新しきモノと隠語を使って、正体を探るような素振りを見せた。

 喫茶 “元禄”

 神火人たちが新聞を見つめ、

 “国防省技術研究本部 主力艦用SK捜索レーダー (277km) 水上射撃用SGレーダー (37km)の量産に成功”

 “国防大綱。対米40パーセント以上。対ソ40パーセント以上。対中60パーセント以上”

 “アメリカ対日方面軍比50パーセント以上。ソビエト対日方面軍50パーセント以上”

 和菓子を口にしていた。

 「対米英比7割堅持といった時代に比べると、ずいぶん、殊勝な国防大綱になったな」

 「神火風頼りなんじゃないか」

 「広長閥も、軍拡競争の愚を犯したくないからね」

 「あらら “日本は神の国だから負けなかった” んだと」

 「そういう風潮は、軍を増長させてしまうから嫌だねぇ」

 「しかし、神火風の憶測。ゴシップ記事というか、オカルトだが、かすってるな」

 「むしろ、フィクション小説が積極的に当てに来てる」

 「人員をマスコミにも配置しろよ。直球がきたらヤバかろう」

 「というか、爆心地近くで異常回復した神火人を何人も見てるからな」

 「軍、警察、医療関係者は抑えたんだろうな」

 「権威があるところはなんとかね」

 「しかし、広長閥が強大だからって、合わせても20万人もいないし」

 「神火人のほとんどは下位で、回復力が高いとか寒冷地に強いくらいだし」

 「いくら軍機だからって、守秘義務のない民間人に箝口令なんて、いつまでももたないだろう」

 「だいたい、広長閥だって “原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” で集めてるだけで」

 「千差万別。意思統一と組織化は、進んでない」

 「母体の “原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” が政治的に弱いからだろう」

 「もっと国民を集め易い組織にしないと」

 「じゃ 死神教を使うのか」

 「死神教は、元々 対米英ソ中向け」

 「だいたい死神に殺された日本人が少ない上に、教理が健康管理だから日本人向けじゃない」

 「そうだなぁ 日本人は大乗仏教で団体行動で安心する、軍人気質も多い」

 「だから、理屈をこね回してだな」

 「脅したり、おだてたりしながら、わけのわからないものをやらせてだな」

 「分かった振りをさせて、おだてて、乗せる方があってる」

 「「「あはははは」」」

 「アメリカ人は、そのへんの日本人の性質を上手く利用するからな」

 「アメリカ人というより、ハザール人だろう」

 「まぁ そうだろうが、アングロサクソンとゲルマンも強いからな」

 「問題は、いま落としてる軍事力をどのへんから増やしていくかだろうね」

 「捕獲してる兵器や武器が朽ちるまでは大丈夫だと思うけど」

 「原爆を使われたら」

 「原爆は怖いが、それ以上に日本人に原爆を使うことを恐ると思うぞ」

 「神火風か。確かに怖いな」

 「だが3度起きるとは限らないのでは?」

 「限らないだろうが、やるかもしれないだろう」

 「やはり、未知の第三者の関与があると思うか」

 「そうでなければ、起こり得ないというのが、研究者の意見らしい」

 「「「・・・・」」」

   

 

 扶桑州と大和州の間にベーリング海峡が広がり、

 光のカーテンを幾重にも下ろしていた。

 両岸はアメリカとソビエトの監視小屋のようなものが残っていただけで、いかにも辺境だった。

 そして、両地域とも日本に領有化され、扶桑州と大和州を繋ぐ重要な海峡になっている。

 海峡の最短は126kmほどで、深度は最大で60mもなく、

 その気になればベーリング海峡に地下鉄をほって結びつけることもできるだろう。

 完成すれば、旧大陸と新大陸が結ばれる。

 経済的な理由だけで計算していいものではなく、人類史的な偉業で、

 扶桑州、大和州、日本、輝夜半島、外満州の連結は、安全保障上、有用で現実性が増していた。

 関係者たち

 「トンネルは掘るって?」

 「いずれ、掘るだろう」

 「問題は、それだけの予算があるかだろうけど。せめて、鉄と石油がもっと安ければな」

 「中東の石油を得られるように交渉中だよ」

 「交渉? 強迫の間違いでは?」

 「ふっ 死神はアメリカ人やイギリス人には通用するかもしれないが、アラブ人はどうかな」

 「疑心暗鬼。じゃないか」

 「問題は、科学技術的に精油技術が劣っていることだよ」

 「軍部はぶすくれてるがね。精油所に予算を注ぎ込んでるよ」

 「まぁ ないものはないな」

 「焼け野原からの再建もあるからね」

 「焼け野原はなんとかなってるだろう」

 「まばらに残ってるよ」

 「トンネルは必要だが後回しの公算も立つだろう」

 「中国人に作らせる方法もあるがね」

 「やっぱり、間宮海峡が先かな」

 「でもまぁ 遠大な公共事業より、身近な公共事業優先だよ」

 「開始は10年先くらいか」

 「まぁ そのくらいかな」

 「どちらにしろ、扶桑と大和は、過ごしやすい気がする」

 「神火人はそうだろうが、普通の人間は辛い」

 「だがこれだけ寒いと、攻めて来る国はないと思うな」

 「というか、冬の夜は長いし、霧は多し、吹雪いて雪が積もるし、神火人に有利な場所だな」

 「雪上車やスノーモービルを作ればいいじゃないか」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 

 

 東京湾

 外満州(日満州)、和洋州、中国、東南アジアから膨大な資源が流れ込んでくる。

 慣れないアメリカ船、

 戦争でベテラン船員の多く失い、

 少ない船員を捕獲した大量の船舶に振り分け、

 陸兵上がりや農民で固めた新人船員で商船隊を組織し、膨大な船舶を器用に運用していた。

 リバティ船

 海の交通ルールが書かれた看板が船橋に掛けられていた。

 波にぶつかるたびに、船が軋み音を立てた。

 「夜の海って、不気味だな」

 「田中が夜中に影みたいなモノを見たってよ」

 「なんか怖いな」

 「この船だろう。沖縄から逃げ出そうとしたアメリカ軍将兵が大量死していたの」

 「というか、ほとんどの船が、そうだって聞くけど」

 「T2タンカーに配属されたかったな。少なくとも油送船は死んだ人間が少ないだろうから」

 「海軍はもっとベテランの船員を民間に回せばいいのに?」

 「やってるらしいよ。戦艦、空母、巡洋艦はほとんど動かしてないらしい」

 「それでも、守れるんだ」

 「アメリカ機動部隊はサンチアゴ港に配備されるみたいだけど、機動部隊は2つ」

 「死神を恐れて、ほとんど出てこないらしいよ」

 「やっぱり死神が怖いのか」

 「そりゃ サンチアゴでもかなり死んだらしいから」

 「そうなのか」

 「アメリカは西海岸が取られるかもしれないって、慌てて講和を結んだくらいだから」

 「いっそのこと、西海岸も占領してしまえばよかったのに?」

 「それはさすがに国力不足だと思うな」

 

 

 

 

 バミューダー沖

 45000t級空母ミッドウェイ、コーラル・シー、フランクリン・D・ルーズベルト

 世界最強の機動部隊が遊弋していた。

 飛行甲板にはF3Dスカイナイト、A1スカイレイダーが並び、

 借り物の艦載機F6Fを載せてる日本機動部隊を圧倒していた。

 ミッドウェー 艦橋

 「日本機動部隊は、まともに運用されていないのか?」

 「広長閥が旧態依然とした薩長閥系軍人を嫌って、そう入れ替えしてる節がある」

 「だから古い艦船搭乗員を民間に降ろし。子飼いの将兵を海軍の中枢に配置してるようだ」

 「じゃ 日本海軍は素人集団ということだろうか」

 「広島の呉と長崎の佐世保港は軍港関係者が多いから必ずしもそうとは言えない」

 「まんざら、えんもゆかりもないわけじゃないわけか」

 「それに、人脈を切って出世させてしまえば恩義に感じて、ある程度、言いなりになるだろう」

 「広長閥は、何人もの将校のクビを切ったらしいが?」

 「源田は真っ先に更迭されたらしいが、そのあと百数十人が更迭されたと聞いてる」

 「まぁ 少しくらい頭が良くても経験から学べず精神力とか言い出したら将として失格だ」

 「となると、日本陸海軍は人事一新で、将校の情報はなしか」

 「どんな将校でも神火風の脅威に比べたら大して変わるまい」

 「まだ、神火風の情報はないのか」

 「イギリスは、日本妖怪と言ってる将校が多い」

 「ふっ ばからしい」

 「例の死神教は?」

 「死神教か・・・ 結界も教わったし、式神の作り方も教わったがね・・・」

 艦橋内になぜか。結果札が貼ってあった。

 「教理らしいのは、健康管理だけだった」

 「あと、危ないところにいかないとか。公道では車に気を付けようとか」

 「小学生かよ」

 「そんな窮屈な生き方をしてまで長生きしたくないが、魔除けで入信してる人間は多い」

 「まぁ 日本食は物足りないが悪くなかった」

 「そういや、日本食は、まだだったな」

 「増えてるぞ。死神教信者が日本食レストランをやってる」

 「なんか、結構な浸透ぶりだな」

 「死神教自体には、毒らしい毒はない」

 「しかし、ユダヤ人には嫌われるようだ」

 「献金の半分を再分配してるからだろう」

 「ある意味、本質的な部分で敵対してるからな」

 「それで、死神教に賛同してる人間が逆に増えてる」

 「肉親を殺した日本人の宗教を信じるとか、どうかしてる」

 「日本軍将兵に直接殺されたアメリカ将兵の肉親は少数派だし」

 「大半の戦死者は、外傷なし、薬物反応なしの死病だよ」

 「死因からして、戦死者といっていいものかどうかわからないものだ」

 「日本人が殺したと思ってるアメリカ人は少ない」

 「それに例のフィルムがアメリカに流れ込んでてな」

 「日本軍将兵が紳士に思えるってか」

 「まぁな」

 「日本のジェット戦闘機の噂は聞いてるか?」

 「中国経由だが推力1400kg級ジェットエンジンを開発してるらしい」

 「一回り小さいな」

 「だがいずれは追いついてきそうだ」

 「まぁ それを恐れて、日本を戦争に追い込んだ経緯はあるがね」

 「次は失敗して欲しくないものだ」

 「イレギュラーな超常現象が起きただけだろう。でなければアメリカは勝っていた」

 「日本は、中規模海軍が6ヵ国も増やして国際情勢を混戦状態にしてしまうのだから。イレギュラーは続いてるよ」

 

 

 

 

 樺太州

 ドイツ人自治区はドイツ独立までの期間として、50年更新の租界で内陸に作られた。

 ドイツ人は、本国で不可能なドイツ人教育を日本のドイツ人自治区で行い、

 成長すると自由都市リューベック (3000ku)に国籍を置いたまま、

 西ドイツ、東ドイツ、日本、あるいは外国で働く、

 ドイツ人自治区

 ドイツ風の建物が街並みが作られ、日本人が時折、観光で訪れた。

 ドイツ人の入植は増え、自治区は徐々に広がっていた。

 カフェテラスではドイツ人の学生がアルバイトしている。

 「ずいぶんドイツ人が増えてるな」

 「日本人の干渉が少ないから信用されたのだろう」

 「西ドイツと東ドイツの主権は少しずつ回復しても歪められてるし」

 「自分の子供にはドイツの教育を受けさせたいだろうから当然と言えば当然じゃないかな」

 「スパイはいないだろうな」

 「自由都市リューベックで管理してるんじゃないか」

 「まぁ 租界と言っても教育都市に毛が生えたような工業区画があるだけだ」

 「ドイツ人の工業製品は?」

 「んん・・・ 出来がいいよ。マイスター制度は総合性で劣るが専門性で優れてる」

 「やはり、ドイツ人の資質のなせる業なのかね」

 「しかし、なんで、八頭身ばかり歩いてるんだか」

 「ドイツ人は八頭身が多いですよ」

 「ドイツが再興してくれるなら、日本の負担は減るだろうけど、見込みがあるかどうか」

 「三度目はないと思うが、欧州に足場は必要だよ」

 「そして、足場を守るためのドイツ人教育の場か・・・」

 「なんとなく日本が損してるような気もするがね」

 「生憎、日本のは支配地が多いが後進国ばかりで先進世界から孤立している」

 「自由都市リューベックは、小国とはいえ、欧州で適当な先進国だからね」

 「損しても維持したい」

 「白人を信じすぎると痛い目に遭うかも」

 「黄色人種も信用に足らないし。少しくらいは恩に感じてくれるだろう」

 「だといいけど」

 

 

 

 オアフ島

 無傷のドック設備と工業設備が丸々日本軍に占領され、日本再建の原動力の一つとして産業基盤を支えていた。

 滑走路には緑色に塗られたムスタングとB29が並び、港湾には潜水艦隊、水雷戦隊、護衛艦隊が配備されている。

 アメリカ人は、死病を恐れてアメリカ本土へ引き揚げ、日本人ばかりが残っていた。

 白レンガの日本人たち

 死神教幹部がアメリカ本土から戻っていた。

 「アメリカ人の様子は?」

 「アメリカは神火風の研究を進めている」

 「やはり、気になるか」

 「気になるもなにも明治維新以降の日本近代化を恐れての反日外交でしたから」

 「神火風を日本の新兵器と考えてる節がある」

 「そんなに日本の近代化が恐ろしいものなのかね」

 「有色人種を猿のように扱っていた白人が急速な日本の近代化を恐れたとしても仕方がなかろう」

 「じゃ 日本は猿の代表なのか」

 「日本猿を野放しにしていたら世界中の猿が進化して世界が猿に支配される」

 「白人世界がそう思ったとしてもおかしくない」

 「だが、アメリカは中国と手を組んでる」

 「日本を滅ぼせば、中国人は何とかなると思ったのだろう」

 「とんでもない勘違いだ」

 「清国が滅びたのは白人の浸透と清王朝末期が重なっていたからなのにな」

 「日本が清国の滅びを加速させた」

 「中華思想とは相容れないし。清国艦隊の横暴もあったからね」

 「まぁ 日中は歴史的な経緯もあるし、お互い様だろう」

 「現状の日中関係は良くないと思うが」

 「だが支配の手を緩めると、中国は欧米と組み、反日に転向するのでは?」

 「黄色人同士で醜い主導権争いか」

 「白人同士の主導権争いも相当なものだがね」

 「白人世界は反日で結集すると思うか?」

 「白人世界を反日で結集させないよう、死神教を作ったのだろう」

 「その肝心の死神教は、上手くいってるの」

 「ぼちぼちかな」

 「なんか、心もとないな」

 

 

   

 

 

 厚木基地

 ジェットエンジン装備の震電改が飛び立っていく、

 機尾のプロペラがなくなったことから全高は低く抑えられ、

 機首の主脚は短く、

 両翼の垂直尾翼と一体となった脚は、着陸時にカバーがせり上る仕組みになっていた。

 ジェットエンジンは一番進んでいた直径80cm級蒼星エンジンが採用され、

 推力1400kg2基。推力2800kgで、速度は1200km/hに達していた。

 「ジェット機化したと思ったら下駄履きに逆戻りか」

 「カバーは車輪全部を覆ってるし、着陸時にセリ上がるから空気抵抗は小さい」

 「あと、サンダーボルトのキャノピーを使ってる」

 「レーダーは?」

 「二人乗りは、操縦とレーダー航法分担しやすいからな。一人乗りより有利かもしれない」

 「上位の神火人ならレーダーどころか、機銃や無線機すらいらないのにな」

 「国軍は、常人の軍隊であるべきだと思う。魔法使いに合わせられるか」

 「とはいえ、レーダーのせいで、機首が太くて長いのはバランスを崩す」

 「だから機体の全長を伸ばしただろう」

  震電改

   4000kg/6000kg/6500kg

   全長12m×全幅11.12m×全高3m  翼面積21m

   推力1400kg×2  速度1200km/h  航続距離2000km

   20mm×110mmRB ×2丁 初速820m/s  連射450発/分

   爆弾/ロケット弾/増槽 500kg

 「問題はエンジンの耐久性かな」

 「耐久700時間じゃ 1人分の訓練時間でお釈迦」

 「もっと長くならないの?」

 「金さえかければ長くなるだろうが」

 「そういや、金なかったな」

 「量産は?」

 「研究費はもらってるけど、量産する予算はもらってない」

 「神火風を少しでも疑われたら、アメリカとソビエトが参戦してくるって思わないのかね」

 「そんときは西海岸を占領できるとか思ってるんじゃないか」

 「まぁ あの連中は、それくらい、やりかねんが・・・・」

 

 

 

 

 日本で不要になった武器弾薬が後進国に輸出されると、軍事力が向上していく、

 アメリカとソビエトは現状兵器が対日戦で役に立たないとわかると輸出規制を引き上げて売却し

 第三世界は利権や資源と交換に武器を得ることができた。

 そして、日本は神火風で余裕があるのか、先手を取った。

 インド

  空母エセックス、 軽空母インディペンデンス、モンテレー、

  大巡アラスカ、グアム

  重巡ポートランド、

  軽巡クリーブランド、コロンビア、フリント、ツーソン。デトロイト、リッチモンド、

  駆逐艦14

  

 サウジアラビア

  空母イントレピッド、レキシントンU、  軽空母カウペンス、

  戦艦ワシントン、ノース・カロライナ

  重巡ウィチタ、

  軽巡アストリア、アトランタ。サンフアン。コンコード、トレントン、  駆逐艦12

 

 イラン

  空母ワスプU、ベニントン、  軽空母ラングレー、バターン、

  戦艦サウス・ダコタ、インディアナ、

  重巡ピッツバーグ

  軽巡モントピリア、デンバー。セントルイス、サンディエゴ、   駆逐艦13

 

 ブラジル

  空母ヨークタウンU、  軽空母サン・ジャシント、ベロー・ウッド、

  戦艦アラバマ、マサチューセッツ、

  重巡ボルチモア、

  軽巡サンタフェ、バーミングハム、デイトン 駆逐艦14

 

 インドネシア

  空母フォーミダブル、ヴィクトリアス、インプラカブル、インディファティガブル、

  戦艦キング・ジョージV世、軽巡6、駆逐艦18 

 

 イラク

  ペンサコーラ、ソルトレイクシティ、チェスター

  ポートランド、ニューオーリンズ、ミネアポリス、タスカルーサ、サンフランシスコ

  ナッシュビル、モービル、トピカ、ビロクシ、ヴィックスバーグ

  駆逐艦12隻

 

 

 日本は、インド、サウジアラビア、イラン、イラク、ブラジル、インドネシアに艦艇を売り渡し、

 地下資源利権と交換してしまう。

 軍事力が国家の独立と外交力を深い関わりがあることから

 国力があっても軍事的な工業力に低い国、

 独立を果たしたばかりの国は、軍艦売却攻勢を拒むことができず、軍拡競争が起こった。

 サウジアラビア ジッタ港

 紅海に面した漁村は、浚渫され港湾設備が作られていく、

 サウジアラビアは軍事的な独立と引き換えに、他の列強を排斥することに成功し、

 有望な油田採掘地が日本に引き渡された。

 そして、近代的な艦隊を維持するため港湾施設と建設、訓練施設とノウハウ、

 維持機材、補給品など日本に依存するよりなく、

 日本に資源を売り渡し、さらに市場を開放しなければならなかった。

 利権は、金のなる木で、カンフル剤の如く、日本経済を豊かにし、科学技術を加速させていた。

 日本軍軍事顧問団

 「内地の再建や復興も進んでないのに資源欲しさに中東まで来ないといけないとはね」

 「だけどまぁ 軍事教練してやって、お金を稼がないと、国防予算がピンチというのもあれだな」

 「中国でやったら儲かるのに」

 「中国はアメリカとソビエトが肩入れしてるし」

 「下手に支援して中国を軍事的に強化したくない」

 「それは言える」

 「しかし、空母機動部隊を丸ごと売って大丈夫なんだろうか」

 「今は、国家再建で、石油と鉄鉱石と石炭と希少金属なんじゃない」

 「まぁ そうだけどさ」

 「とにかく、目先の軍事力より、資源を集めて原爆を作りたいらしい」

 「アメリカは、原爆開発に用心深くなってるみたいだけど?」

 「神火風のせいで慎重になってるだけだろう」

 「多分、核兵器の開発は止めないと思うな。開発が鈍ってるなら、いまのうちに追いつかないと」

 「だけど、アメリカの側で、神火風起こされたらかなわないけどな」

 「まぁ それは言える。流石に神火人同士の殺し合いに巻き込まれたくないからな」

 

 

 

 

 アメリカ合衆国海軍

  大西洋艦隊

   第1任務機動部隊

    空母ミッドウェイ、フランクリン・D・ルーズベルト、コーラル・シー

    重巡フォール・リバー、ルイビル、ブレマートン

    軽巡フレズノ、ファーゴ、ハンティントン  駆逐艦18隻

   

   第2機任務動部隊

    空母バンカー・ヒル、エンタープライズ、サラトガ、

    重巡オーガスタ、キャンベラ、クインシー、

    軽巡リトルロック、ポーツマス、ウィルクスバリ  駆逐艦18隻

 

   第3任務機動部隊

    空母ホーネットU、フランクリン、オリスカニー

    重巡コロンバス、ヘレナ、メイコン、

    軽巡スプリングフィールド、ヒューストン、プロビデンス、マンチェスター  駆逐艦18隻

   

  太平洋艦隊

   第4任務機動部隊

    空母ボクサー、レイテ、キアサージ、

    重巡トレド、ロサンゼルス、シカゴ

    軽巡ホノルル、リノ、ジュノー、スポケーン、  駆逐艦18隻

  

   第5任務機動部隊

    空母プリンストン、レイク・シャンプレイン、タラワ、

    重巡オレゴン・シティ、オールバニ、

    軽巡メンフィス、ブルックリン、フィラデルフィア、サバンナ、  駆逐艦18隻

 

   第6任務機動部隊

    空母ヴァリー・フォージ、フィリピン・シー  軽空母カボット、

    重巡ロチェスター、ノーザンプトン

    軽巡ヴィンセンス、フェニックス、ボイシ、オークランド  駆逐艦18隻

  

      

 

 ネバダ核実験場

 閃光と衝撃波で広がりきった爆発が収束するとキノコ雲が発生する。

 爆風の中、うずくまっていたアメリカ軍将兵たちが爆心地に向かって進んでいく、

 ネバダ核実験場

 将校たち

 「本当に神火風のようなことが起きるのだろうか」

 「学者たちは懐疑的だ」

 「しかし、日本では起きた」

 「推測では、広島と長崎の原爆投下が原因で神火風が起きてる」

 「だが、計算上、起こり得ない」

 「将兵たちは、危なくないだろうか?」

 「んん・・・・聞かないでくれ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「ところで、日本は機動部隊を後進国に売ったそうだ」

 「神火風という強みがあるならいくらでも売れるんじゃないんですか」

 「たとえ、日本が全艦艇を売り払っても日本を攻撃する気になれませんね」

 「アメリカは半減した機動部隊でようやく、国を守ろうとしてるのに、日本はいい気なもんだ」

 「問題は日本が莫大な利権を追加で得たこと、そして、我々が利権から排斥されたことでしょうか」

 「んん・・・・ やっぱりまずいか」

 「アメリカは旧大陸に対するイニシアチブの保持で、両洋艦隊を手放せないことを知っていますからね」

 「神火風に勝てないと知っていてもかね」

 「たとえ、知っていても手放せないでしょう」

 「だいたい、後進国が戦艦や空母など運用できるわけがない」

 「当然、日本の軍事顧問団が教育しますし。港湾施設も日本に発注するのですから」

 「後進国が運用できず持て余すと知ってて売ったのでしょう」

 「そして、後進国が艦隊を国内運用できる頃には旧式化してる」

 「しかし、その頃には、国産で建造できるようになるので?」

 「艦隊運用や修復を教えても、建造に至るノウハウは教えないと思いますよ」

 「なるほど、そうなると、また日本から軍艦を購入しないといけなくなるな」

 「それに肝心の潜水艦は売ってませんし」

 「後進国は機動部隊保有の魅力に負けるでしょう」

 「じゃ 後進国は高くて維持費の高いものを買わされ、運用するため日本に設備を作ってもらい」

 「持続的に必要物資を買わされるわけか」

 「その上、我々は利権から排斥される」

 「ムカつく話しだな」

 「とはいえ、神火風をどうにかできない限り、どうしようもないですよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「将軍! 第1小隊から第13小隊まで交信がありません」

 「第14小隊から第17小隊までから救難信号です」

 「医療部隊を出せ。もし特殊な回復力を見せたらすぐ報告しろ」

 「はっ」

  

 

 

 釜山から杭州まで新幹線建設が計画され、

 樺太州南端から北端まで伸びて、海底トンネルで外満州の日満州と繋ぎ、

 ハルピンから和洋州の南端の杭州、輝夜半島南端の釜山まで伸ばされていく、

 漢民族は、日満州と和洋州の公共投資を推し進め、

 その最大は、中国京杭大運河の拡張工事だった。

 中国京杭大運河の平均水深は3m、平均川幅9mだった。

 しかし、日本は、人海戦術で和洋州側の陸地1kmを水深12mほどを浚渫し

 高さ100m幅100mほどの堡塁堤防を建設していた。

 川岸の中国の歴史的な仏閣、遺跡は、内陸側へと移され、

 和洋中折衷の建物が建設されていた。

 和洋州 (25万ku) 

 中国京杭大運河の南端は杭州であり、北端は通州にあった。

 和洋州で生産したものが中国へと流れ込み、中国の資源が和洋州へと入ってくる。

 和洋州の近代化は徐々に進み、

 大運河の対岸は貧しさが増し、和洋州側は、豊かさが増していた。

 中国人は徐々に貧しい中国側に移動させられ、列島から日本人たちが和洋州に移民してくる。

 

 この時期、日本人の平均的な所得は13000円ほどだったが、

 中国人との賃金格差を埋めるため労働組合を廃止し、

 国民一人一人に一律10000円を分配し、国民所得の底上げしていた。

 税収と法人税と所得税によって、戦前戦中の軍事国債償還をしつつ戦後の建設国債を発行し、

 和洋州側には星型要塞に似た街並みを作っていく、

 日本人たちが大運河を見下ろしていた。

 「海水が運河に移動してるような気がしてるんだが」

 「運河を広げたからだろう、河水量が足りなければ深く掘らないといけなくなるし」

 「海抜より浚渫すると、自動的に海水が運河に上がる」

 「問題はないの?」

 「そうだな。淡水魚が生きにくくなるんじゃないか」

 「代わりに海水魚が運河を昇ってくる」

 「もう、和洋州は島になるな」

 「そのつもりでやってるのかも」

 「なんか気が引けるな」

 「点と線の支配なんて犯罪と隣り合わせだし」

 「それが嫌なら、切り取って支配地にしてしまうほうがいいじゃないか」

 「まぁ そうだろうけどさ」

 「こうやって断崖を見下ろせるほど断崖なら、流石に攻めて来れないだろう」

 「侵入するのも交通網を使うしかない」

 「アメリカ、ソビエト、イギリスが中国に肩入れしてるときたけど?」

 「肩入れしても大動脈の揚子江は押さえてるし」

 「福建省や広州から入り込んでも簡単には近代化しないだろう」

 「それにアメリカ、ソビエト、中国は、神火風を恐れてるから、すぐに対日戦を仕掛けてくるようなことはしないはず」

 「しかし、今にも負けそうだった日本が、随分な大国になってしまったな」

 「だよねぇ」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 

 

 第01機動部隊

  空母 白鳳(ランドルフ)、海鳳(ハンコック)、雷鳳(タイコンデロガ)

  戦艦 薩摩(ミズーリ)、駿河(ウィスコンシン)、

  重巡 穂高(セントポール)、

  軽巡 八瀬(ダルース)、黒部(サンタフェ)、白萩(モービル)、河津(ビロクシー)  駆逐艦18、

 サウジアラビア、イラン、イラク、インドネシア、ブラジルなどに艦隊を売却し、

 資源、市場等の利権を得ることで、少しずつ艦隊を動かすことができるようになっていた。

 ミズーリ

 「なんか、揺れる船だな」

 「細長いからでしょう」

 「スタビライザーが弱いんじゃないか」

 「一応、付いてますけどね」

 「大和はよかったな」

 「沈んだ船をいつまでも・・・」

 「本当にいい戦艦だったんだよ」

 「戦艦なんて、役に立たないんですから」

 「エセックス型空母か、クリーブランド型巡洋艦と交換すればよかったんですよ」

 「戦艦をもっていたかった」

 「そんな。くだらない理由で2000人近い将兵を・・・ クリーブランド型巡洋艦なら1400人なんですよ」

 「もう、時代の流れってやつかな」

 「艦政本部は、真空管を山のように使ってでも10000t級の軍艦でも400人以下の人員に押さえたがってますからね」

 「というより神火人の意向のようですが」

 「建造は本決まり?」

 「人件費を考えると、記念艦にするか。解体でしょう」

 「惜しいなぁ」

 「そういや、長門を自由都市リューベックの記念艦に取られたのがショックだ」

 「噂ではV2ロケットやジェットエンジンの技術が手に入るとか」

 「ほぉ・・・」

 

 

 ブラジル

 三式指揮連絡機が飛ぶと利権の範囲を決めていく、

 上位の神火人はX線や赤外線。あるいは磁場などを見ることができ、鉄鉱石の鉱脈を見つけることができた。

 「こんな。遠い国の利権が必要になるのかね」

 「鉄がなければ何も出来ないからね」

 「それよりブラジルで三式指揮連絡機が売れるらしい」

 「へぇ 意外に人気?」

 「というより反米意識が強いからどうせ買うなら日本製ってさ」

 「対日参戦したのに?」

 「ブラジルだって、好きで参戦したわけじゃないだろう」

 「道徳・倫理・正義に付くのは馬鹿。単純に強い側につくのは国際常識だからね」

 「それは言える。日本もイギリス側についてたら焼け野原にならずに済んだ」

 「しかし、神火風で生存圏を広げることはできなかっただろうけど」

 「それは・・・ちょっと、悩むとこだな」

 「ここが、一番強いぞ」

 神火人が指示すと、航法士がコンパスと太陽の位置を確認し、

 地図に印を書きこんだ。

 鉱山の発見だ。

 

 

  

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 月夜裏 野々香です。

  

 日本・輝夜 (72万ku) 日本・半島

 和洋州 (25万ku) 中国京杭大運河東部域 

 日満州 (100万ku) 外満州 

 扶桑(カムチャッカ・チュクチ)州 (121万ku)

 大和(アラスカ)州 (171万7854ku)

 南洋 (ビスマルク・ソロモン諸島) (78150ku)

  フィリピン バターン・コレヒドール島 日本自治 “桃太郎” 区 (1000ku)

  マレーシア ブルネイ 日本自治 “金太郎” 区 (1000ku)

  インドシナ ダナン 日本自治 “舌切雀” 区 (1000ku)

  インドネシア パレンバン 日本自治 “浦島太郎” 区 (1000ku)

  ビルマ ヤンゴン 日本自治 “因幡の白兎” 区 (1000ku)

  シンガポール 日本人自治 “鶴の恩返し” 区 (1000ku)

 

 

 日本海軍

 第01機動部隊

  空母 白鳳(ランドルフ)、海鳳(ハンコック)、雷鳳(タイコンデロガ)

  戦艦 薩摩(ミズーリ)、駿河(ウィスコンシン)、

  重巡 穂高(セントポール)、

  軽巡 八瀬(ダルース)、黒部(サンタフェ)、白萩(モービル)、河津(ビロクシー)  駆逐艦18、

 

 第02機動部隊

  空母 蒼鳳(アンティータム)、幻鳳(シャングリラ)、慶鳳(ボノム・リシャール)、

  戦艦 因幡(アイオワ)、播磨(ニュージャージー)、

  重巡 蔵王(ボストン)、

  軽巡 天白(オクラホマシティ)、三原(アムステルダム)、日高(マイアミ)、天神(パサデナ)  駆逐艦18

 

 2410t級ガトー型潜水艦46隻

 2424t級バラオ型潜水艦26隻

 2424t級テンチ型潜水艦8隻

 

 1360t級エヴァーツ型護衛駆逐艦(21)  1740t級バックレイ型護衛駆逐艦(44)

 1240t級キャノン型護衛駆逐艦(23)  1250t級エドサル級護衛駆逐艦(24)

 1450t級ラッデロウ型護衛駆逐艦(4)  1350t級ジョン・C・バトラー型護衛駆逐艦(24)

 

 

 “原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” 

 広島  賀茂忠行  天光正教  ウリエル  死神ウラン

 長崎  安倍晴明  聖炎主教  サリエル  死神プルト

 

 

  

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第06話 1950年 『長寿と繁栄を・・・ それとも・・・』

第07話 1951年 『胎動、中規模海軍国群』
第08話 1952年 『下手は作物を育て。上手は土壌を育てる』