月夜裏 野々香 小説の部屋

    

天ぼた系 火葬戦記 『神火風』

 

 第09話 1953年 『封禅の儀』

 

 和洋州 (25万ku) 中国京杭大運河東部域は山岳地が少なく広大な平野が広がっていた。

 日本最大の関東平野が1万7000kuしかないことからも食料生産で圧倒的だった。

 この時期、日本帝国で支配民日本人と被支配民の二重制度が暫定的に執られ、

 可能な限り不公平が不公平として目立たず、反発を招かないような政策が取られていた。

 その一つは日本人だけの100円分配で、

 もう一つは・・・・

 日満州と和洋州で経済実験が始まっていた。

 星型要塞の中心に生産物とサービスが集められ、

 生産物を持ち込むとポイントが付き、ポイント分だけほかの生産物やサービスと交換できた。

 貨幣経済に頼らず、生産手段とサービス能力だけで社会が成り立つか模索する。

 その経済システムは幾つかの星型要塞を中心にした街を結んで行われた。

 これは日本人が紙幣を持ち中国人になるべくお金を持たせないようにする政策だった。

 京杭大運河拡張工事もポイントが付き、ポイント分だけ、自由に生活でき、貨幣経済より優れた一面を見せた。

 中国人がリヤカーで大根の山を持ってくると、

 日本人行政官たちが形と色と重さを確認し、中国人に引換券を渡す。

 当初、法幣も使われていたが今では銀行やタンス預金になって、ほとんど使われることがくなり、

 良品で量が多ければ引換券が増え、劣化品で量が少なければ引換券は少なかった。

 ポイントは流通を裁くことを念頭に付けられ、貨幣交換できないようになっていた。

 中国人たちは会場の物品やサービスを選んで引換券を渡し、リヤカーに載せて去っていく、

 「金を介在させなくても意外と上手くいきそうだな」

 「日本でも導入してみるか」

 「だけど、お金配ってるだろう」

 「まぁ そうなんだが金を国民にばら蒔くなんてダメ元の滅茶苦茶だし」

 「いざとなったら、こっちに切り替えないと」

 「それは言えるが、ポイント付け役のうまみが大きい気がする」

 「とりあえず国債償還してからだろうな」

 「いうより、あまり金を使わない制度が合理的な社会だと思うね」

 夕刻過ぎると働けない者たちがやってきて、マイナスポイントで制限付きの物を運んでいく、

 回収は考えられておらず、

 一定量のマイナスポイントを超えると中国大陸へ強制送還となった。

 むろん、強制送還となったら余剰物資が渡され、中国で利益を上げることができることから、

 中国軍閥の誘いで移動していく漢民族も少なくなかった。

 

 

 

 和洋州の最高峰は泰山(1545m)だった。

 大山、太山、天孫、岱山、岱宗、岱岳、東岳など呼ばれ、

 山頂の玉皇頂は、秦の始皇帝、前漢の武帝、後漢の光武帝、章帝、安帝

 隋の文帝、唐の高宗皇帝、玄宗皇帝、宋の眞宗皇帝、

 清の聖祖玄Y、康熙、乾隆が封禅儀式を行った由緒ある山だった。

 日本で由緒正しい血脈の方が山を降りてくる。

 「よかったのかね。これで・・・」

 「まぁ アジアの歴史だから」

 「いいんかな・・・」

 「日本は世界有数の工業国になると思うよ」

 「大陸での封禅は、日本の歴史や文化と関わってくるし。工業力は関係ない気がするが」

 「「「「あはははは」」」」

 「まぁ 天下が太平であることを感謝する儀式だから」

 「問題は、誰が皇帝の即位を天と地に知らせたのかってことでしょう」

 「天皇は、皇帝じゃないのだが」

 「問題と思わなければいいんじゃないの」

 「そういうもんかね」

 「日本人は、もっと精神的なタフさが必要だと思うよ」

 「時に漢民族の追立て政策はどうよ」

 「とりあえず、国土開発で使って、そのまま、熟練工として中国の開発に送って地位に付けるってところ」

 「30年計画で大規模にやってしまえばなんとかなるでしょう」

 「中国軍閥に力をつけてしまうのでは?」

 「その時はしょうがないよ」

 「多分、総合力で勝ってる」

 「問題は、日本側に来たがってる漢民族が多いことだろうな」

 「中国は奴隷制度が強いからね。それに日本は、お金持ちの逃亡先」

 「まともな軍閥だってるだろう。そこに投資すればまともなる」

 「どこか、まともじゃないところに投資して軍閥を転覆させようとしている」

 「アメリカとイギリスか」

 「金融侵略が好きだからね」

 

 

 

 

 宝くじ

 中国人が宝くじを買っていく、

 15パーセントを主催が受け取って、37パーセントが公共事業(税金)に使われ、

 48パーセントが当選金になった。

 「例の新型宝くじは売れてるか?」

 「まぁ 宝くじは全部同じだよ」

 「公共工事だろうと、国民に国民全体に均等分配されようと」

 「中国人の狙いは当たりくじにあるのであって、税金がどう使われようと違いはないからね」

 「こっちにしたら、大アリだよ」

 「均等分配は写真と採血と指紋とった人間だけなのだから、犯罪抑制につながる」

 「いまのところ、採血・押捺者はたいして多くはないのだけどね」

 「つまり、少なければそれだけ取り分が多くなるし」

 「多くなれば減るが、みんなもらってるなら自分もってなる」

 「それに採血と指紋をとってるのは日本人が多いから、日本人にお金が流れしまうからね」

 「しかもこのクジは中国だけだし」

 「ふっ」

 「中国人に日本人の生活費を補填させるのはどうかと思うけど」

 「日本国民は社会資本を中国投資にもっていかれてつまらないし」

 「日本人と中国人の賃金格差が面白くないから底上げが必要だろう」

 「まぁ そうだけどね」

 

 

 

 

 

 政官財の癒着が少しずつ作られていく、中央省庁が人材の仲介・斡旋に干渉し、

 公社・公団の退職・再就職者の退職金が重複して支払われ、利権が聖域化していく、

 天下りポストを確保するために関連企業を拡大させ、

 税制を悪化させ、勤労職員の意欲を低下低下させ、

 規制を作って公益性を阻害してしまう。

 とはいえ、広長閥によって、明治維新以来続いた既得権益の多くがリセットされたばかりで、

 健全と言えるものに近く、腐敗に至る年月を数世代ほど先延ばしすることができそうだった。

 この時代、基幹産業、商業、工業、農業を支えたのは、国民にばら蒔かれた紙幣の循環であって、

 国民の消費対象に支持されない産業は育つことが困難になっていた。

 とはいえ、ある種、快楽業は、規制が行われている。

 無論、毎月に賃金にバイする紙幣が配られてくる身分で、自らを貶めてしまうような職業は敬遠され、

 そういった職種は、占領地の異邦人が行うようになっていた。

 

 “原爆を落とされた人々の世界平和を望む会”

 入口には原子爆弾のキノコ雲の写真や被災者の写真が飾られていた。

 受付の女性は被爆したらしい跡が残っており、

 “繰り返してはいけない悲劇”

 などと、書かれた看板が置かれている。

 白人が入ってくると、受付の女性はパンフレットを渡し、

 広島、長崎の写真展示室のチケットを切る。

 白人たちは、焼け焦げや瓦礫や、溶けたガラスを覗き込む。

 「怪しいような。怪しくないような」

 「怪しいと思ったから、ここに来たんだろうが」

 「んん・・・」

 「本当に政治権力の中枢なのか」

 「まぁ 下調べをするとそうなるんだがね」

 「「「「・・・・」」」」

 

 “原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” 最上階の一室

 「アメリカとイギリスの中国軍閥投資が増大してるようだ。軍事を中心に」

 「実にわかり易い構図だな」

 「まぁ 戦争が終わって役に立たない兵器は売ってしまえというところなんだろうが」

 「アメリカとイギリスの中国軍閥贔屓は額が多過ぎるな」

 「あまり怖いとは思えないが」

 「我々とて、直撃で致命傷を受けたら死ぬよ」

 「確かにそうだがね。我々の秘密が内外に広がらなければいいのだが」

 「憶測は広がってるだろう。的を突いたのもあるが証拠はない」

 「ところで、アメリカが原爆実験を行なってるようだけど」

 「人体実験を含めて、規模が大きくなってきている」

 「日本でも核開発はやらないとな」

 「進んでるのか?」

 「まぁ 進んでるとは言い難いが、神火人は放射線に耐性があるから軌道に乗れば早いと思う」

 「欧米の学術研究の翻訳と洗い直しを急がせて欲しいな」

 「翻訳ミスのまま、前例主義を続けられては、国が低迷するし」

 「太平洋戦争でもえらい迷惑を被った」

 「州制を進めてるから東大中心にならずに済むし、前例を翻すような学閥も育ちやすいよ」

 「正直、国民に金をばら撒いてるから権威に媚びない体質は強まってるし」

 「正道をいう人間も増えてる」

 「まぁ それはそれでうるさいがな。この会や死神教や。特に神火人について勘ぐられると・・・」

 「興味は尽きないか」

 「だって、神火風って言ったって。不自然すぎる天変地異の神風だぜ」

 「なんで起きたのかって、常人なら気になるだろう」

 「魔女狩りはごめんだから、なるべく、表から引っ込んでいたいがな」

 「救国の融資を魔女狩りとは非人道的な」

 「まぁ 畏敬が恐怖になって憎しみに変わるのは人間の性だよ」

 「我々の世代が居なくなるまで現体制は持つだろう。たぶん」

 

 

 

 

 西ドイツと東ドイツは、自らの国がドイツ人の伝統を継承していないことを知っており、

 何かと口実をつけては、自由都市リューベック (3000ku) に便宜を図っていた。

 その一つ、西ドイツの沖合に近い海底に、自沈していた潜水艦がリューベック海軍によって引き揚げられた。

 リューベック海軍 2100t級XXI型潜水艦ヴィルヘルム・バウアー(U2540)

 日本人とドイツ人の海軍関係者たち

 「なかなかいい潜水艦だな」

 「221隻は自沈してるので有望な潜水艦は引き揚げられますよ」

 「なるほど」

 「伊400やテンチ型潜水艦と比べて、どうかな」

 「設計作戦思想はUボートが優れているようだ」

 「次期主力潜水艦は、どうしたものかね」

 「潜水艦は大型が居住性がいいでしょう」

 「通商破壊をやるならドイツUボートの設計思想でしょうし」

 「製造構造はオーソドックスなアメリカ製が優れてるかもしれませんね」

 「では日本はいつものようにいいとこ取りか」

 「なんにしても自由都市リューベック海軍の再建はめでたいよ」

 日本人造艦技師たちはXXI型潜水艦の設計思想を学んだだけでリューベック海軍に引き渡した。

 そして、リューベック海軍による自沈潜水艦の引き揚げは続き、XXI型潜水艦40隻が再就役し、

 20隻が維持できず国際オークションで売られてしまう。

 

 

 日満州 (100万ku)

 広大な大地で産出する油田、鉱物、穀物などの資源が日本経済を潤していた。

 自由都市リューベックに本社を置く工場を中心にドイツ人町が建設され、

 ドイツ人が入植すると、工業部品の生産が増え、日本企業と競争が始まる。

 ハルピンのビアガーデン

 日本人たち

 「ドイツの地ビールに、ヴァイスヴルストか。悪くないな」

 「なんでソーセージが白いんだ。食欲減退だよ」

 「ヴァイスヴルストはバイエルン特産らしいよ。皮を剥いてタレをつけて食べる」

 「もっと肉らしい色にしないとな」

 「それは言える」

 「ドイツ人をかなり自由にさせてるみたいだけど、大丈夫なのか?」

 「ドイツ人は伝統的な教育を子供に受けさせたいっていうのが本当のところだろう」

 「工場は、その維持費を賄うため。日本占領なんて考えてないだろう」

 「だがリューベックを経由して西ドイツと東ドイツから100万人くらい来たがってるらしいぞ」

 「西ドイツと東ドイツの偏向教育のせいだろう。いつまで支配したがってるんだが」

 「アメリカ軍とソビエト軍を排除しようと思えばできるけどね」

 「神火人はなるべく使わないほうがいいよ」

 「神火風で最大最強のイニシアチブは正体不明なんだからさ」

 「そうなんだけど、外傷がたちまち直っていくフィルムとか」

 「焼け爛れた死体の山から五体満足で出てきた人々とか・・・ 危なかった」

 「とはいえ、物証を押さえても人の口は押さえられないからな」

 「まじ口封じしたい」

 「知ってる人間が多過ぎて、逆効果になるよ」

 「薩長閥の生き残りか。徳川の流れを汲む旧華族。学閥、閨閥、省庁財閥関連企業も絡んでくる」

 「あと、山窩(サンカ)。部落。左翼」

 「古代、中世、近代の流れを汲む大陸系と半島系が、ごちゃごちゃといる」

 「野党が国民へのバラマキをやめて生活保護にしたほうがいいと言ってるらしいけど」

 「生活保護か。働くと支援を受けられなくなる制度は、怠け者を作るんじゃないのか?」

 「本音は、弱者支援じゃなく、組織作りに利用したいってところだろう」

 「組織?」

 「生活保護は身元を詳しく身辺審査することになるからね。いろんな人材を発掘できる」

 「ああ・・・ 身寄りがなければ、人に言えない仕事とか。暗殺部隊とか?」

 「まぁ 用途に応じていろいろ。仲介できて口封じもしやすいだろうよ」

 「神火人でやると足がつくかもしれないし、それはそれで便利なんだろうけど」

 「戦後なんだからさ、黒いのは、やめて欲しい」

 「そういうの、神火人で独占したいからね」

 「まぁ 恐怖が先行して自制してくれる人間が多いし、警告だけで済むことも多い」

 「「「「「・・・・」」」」」 ふっ

 数組の白人たちが町に入ってくる。

 何人かが気づいて警戒する。

 旧ソビエト領ユダヤ人地区の代表がドイツ人地区に来ると事前通知があったからだ。

 マイノリティは少数でありながら結束が強く、強い連携があった。

 

 

 

 

 アメリカ

 白い家

 報告書が山となってテーブルの上に置かれていた。

 CIA、FBIの諜報活動の費用半分は、神火風関連に使われ、

 3分の1のソビエト関連より低くかった。

 支配層にとって、力の根源が不明瞭な敵は、それほど驚異だった。

 「日本の金融システムは、我々への挑戦だ」

 「しかし、いきなり最底辺賃金の5倍近い国民補償など」

 「だが対象外の中国人を抱えて重労働をさせることができるし」

 「借金返済の目処が立ってることがカンフル剤のように効いて、日本経済は好調に向かってる」

 「仕事をしない日本人が増えてるのでは」

 「いや、人間の信用価値が貨幣価値より大きくなって、仕事量が減って雇用は増えてるよ」

 「あと、犯罪が低下している」

 「拝金主義な世界でないと我々が困るのだよ」

 「確かに」

 「ほかに動きは?」

 「日本の扶桑州、大和州への移民は急増中ですね」

 「年内に100万を超える勢いですよ」

 「あんな極寒地に移民してなにをするんだ」

 「投資に誘われたのでしょう」

 「それでも移民が多過ぎるだろう」

 「日本人は寒さに強いのか?」

 「さぁ 資源を求めてだと思いますが」

 「それなら日満洲か和洋州に移民する」

 「日満州と和洋州も増えてますよ」

 「神火風の情報は?」

 「最新は、ゴシップ的なものが一つ」

 「サンフランシスコで死病が流行った時、少年少女が生き残った例が多いのですが」

 「それで、7歳の少女が日本人らしき、民間人に助け起こされたと」

 「なぜ、日本人と思う。中国人や朝鮮人だっている」

 「中国人は人が見てないところで助けたりしないでしょうし」

 「朝鮮人は助け起こしたあと何をされるかわかったものじゃない」

 「7歳か」

 「今は、13歳です」

 「当時のことを忘れてるだけでは?」

 「いえ、いつどこで、まで、鮮明に覚えてますし」

 「そのあと、白人の大人にひどい目に遭わされたことも覚えてますよ」

 「やれやれ」

 「似顔絵を作ってますが、日本人が侵入した可能性は否定できないでしょう」

 「似たような証言は、幾つもありますし。似顔絵が似てるのもあるようです」

 「なにか、即効性の毒物を運んだ形跡は?」

 「いえ」

 「しかし、個人が放射線障害を起こせるようなものを持ち運ぶのは不可能だ」

 「確かに」

 「それに。こちらが調べた限り、日本の核開発は未熟なレベルだ」

 「戦前戦中にかけて、日本が放射性兵器を開発した証拠は一切ない・・・」

 「「「「「・・・・・」」」」」 こくん

 「しかし、死病の症状は放射性障害」

 「我が国の原子爆弾の実験は?」

 「中国人を雇ってやってますよ」

 「特異な現象は?」

 「広島と長崎で伝えられてるような現象は起こっていない

 「何かフィルムがあったと聞いたが」

 「それが感光して、なにがなんだか」

 「まったく、何やってるんだ」

 「ガセネタを掴ませた朝鮮人は始末しました」

 「リューベック経由で情報は入ってないのか?」

 「我々は西ドイツの統治で妥協したはず。少しは情報が入ってきてもいいだろう」

 「今のところ、ないようです」

 「ですが、日本人の何人かは、アメリカやソビエトに対し、それほど脅威を感じてない風で」

 「ふっ 神火風効果か」

 「かもしれませんが、ある種、ふてぶてしさがあります」

 「情報不足だ。だいたい、死神教など聞いたことがないぞ」

 「あれは欺瞞かと思われます」

 「本当に?」

 「確かに陰陽道で安倍家と賀茂家は名家です」

 「ですがその系統は切れてますし。陰陽師は事前の確認で力はないと」

 「その情報がブラフでないとなぜ言える?」

 「ふっ どうやら、原爆投下以降、我々は疑心暗鬼に陥るような未知の世界にいるのでしょうか」

 「アメリカは99パーセント勝っていた」

 「あと数日で日本は無条件降伏したのだ」

 「それがいきなり150万も死病で死なされて敗戦だ。誰だって、そんな気分になるだろう」

 「日本妖怪の実体を何としても調べるんだ」

 「死神教の説明では、陰陽師が広島と長崎に結界を張っていたと」

 「通常の焼夷弾などの物理攻撃には無力でも」

 「原爆のような心霊世界にまで影響を及ばせる兵器は結界に影響があったと」

 「神火風の正体は、陰陽師の呪詛返しで送り返されたサリエルとウリエルの影」

 「死神ウランと死神プルトと言ってましたが」

 「そんな。敵の言い分を真に受けるなど、庶民か、マヌケだけでいい!」

 「だいたい、なんだ。この死神ウランと死神プルトの想像絵は、馬鹿にしてるのか」

 「なかなかアニメチックですな」

 「むしろ、殺しに来て欲しいような・・・」

 「「「「「・・・・」」」」」

 「だいたい、陰陽道を辿ればカバラが原点なのではないのか?」

 「我々が調べたところ。カバラにそのような力もなければ呪法もないぞ」

 「しかし、日本は、アークの所有や10支族直系の疑いもあるし」

 「カバラといっても、アブラハムやモーセが直接伝承した業があるのかもしれないが」

 「それがどんなものであれ、古代のものに過ぎない。我々を脅かすようなものではなかろう」

 「それはそうだ・・・・ しかし、死神教に献金してる富裕層が多いようで・・・」

 「「「「「・・・・」」」」」 むっすぅ〜

 「あれは、身代金みたいなものだ」

 「入信していなくても殺されないようですが」

 「庶民はな」

 「誰かお仲間が殺されたので?」

 「殺されてなくても誰だって用心するだろう」

 「まぁ 確かに・・・」

 「時に、どなたか、健康を害した時、彼ら陰陽師に助けられたと聞きましたが」

 ゴホン! ゴホン! ゴホン!

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

  

 

 荒涼としたアメリカ軍外人訓練基地

 白人将校たち

 「朝鮮人の潜入訓練も一通り終わったし」

 「いよいよ。日本潜入、中国潜入か」

 「その前にやることは済ませとかないとな」

 「そうだな」 にや〜

 

 カメラが回り、写真が撮られていく、

 上官の黒人士官たちが、黄色人たちに迫った。

 「や、やめるニダ! な、なにをするニダ!」

 「ま、間違えてるニダ!!!」

 「ウ、ウリたちは、男ニダ! 女じゃないニダ!」

 「ふ、服を脱がしてはいけないニダ!!!」

 「「「「「アッーーーーーーー!!!!!」」」」」

  

 白人将校たち

 「これで朝鮮人の弱みは握った」

 「ふっ 1年ぐらいかけて黒人に抱かれないと生きていけない体にして、逆らえば証拠をばら蒔く」

 「男に陵辱された男。男に征服された男は、命令に従順に従うか。自殺するか」

 「命令しなくても日本社会や中国社会を蝕んで。国家や社会を道連れに滅ぼすだろう」

 「「「「・・・・・」」」」 にや〜

 

 コード名 “ナカ” “ハト” “ノタ” “カン” “コイ” “タケ” “シラ” “イケ” “ブン” は、泣きながら

 「「「「「「あいごーーーーーー!!!!!」」」」」」

 尻から白いモノを垂らし、夕陽に向かって内股で走った。

 「「「「「「あいごーーーーーー!!!!!」」」」」」

 どこまでも、どこまでも内股で走り続けた。

 

 

 大和(アラスカ)州 (171万7854ku)

 日本人移民は少しずつ増え、資源開発を中心に街が栄え始めていた。

 雪が吹き荒ぶ中、日本人たちは毛皮を着込んで歩いていた。

 「アメリカ軍は赤外線スコープを開発している」

 「ある種の日本人の体温が、平均より高いことが見え見えになるだろう」

 「上位者、中位者はある程度制御できるが下位者はそういった制御能力で劣ってる」

 「赤外線スコープで見ればバレバレだろうな」

 「体温が表に出ない衣服を開発すべきだろう」

 「ナイロンがいいと思うが」

 「研究開発はしているが量産に至ってない」

 「保温で外に熱を放出させないとしたらアルミの方がいいと思うがね」

 「アルミは着込めないだろう」

 「アルミ箔があるよ。材質の柔軟性が欠けるがね」

 「ナイロンとアルミ箔を重ねたら、体温の放熱を遮断しやすいから赤外線スコープを誤魔化せる」

 「価格的なものはあるが」

 「軍隊だけではアラスカ州を守れない」

 「とにかく、移民を増やして産業を大きくし、大和州の自衛力を強化すべきだよ」

 「1000万くらいにしないと」

 「1000万か。オランダくらいだな」

 「それで予備役50万。小銃50万丁を保管しとけば侵略してくる気になるまい」

 「楽観的だな」

 「寒冷地の地の利は大きいよ」

 「特に我々は人の利も大きい」

 「我々の世代だけはな」

 

 

 

 

 霧の中、1740t級バックレイ型護衛駆逐艦 松 が流氷を避けながら航行していた。

 流氷を避けられるのはレーダーの性能で、レーダー以上に見える将校も客将として乗艦していた。

 艦橋

 「本当にレーダースコープより外側が見えるので?」

 「ああ、2時方向に大きな流氷がある」

 「「「「・・・・」」」」

 「しかし、戦艦を降ろされて、護衛駆逐艦に乗ると流石に狭く感じるな」

 「230人で済みますからね」

 「しかし、この揺れはさすがに嫌だな」

 「神火族も船酔いは苦手で?」

 「まぁ あんまり気分のいいものじゃない」

 「設計中の新型艦は全長160mほどなのでピッチング防止になるでしょう」

 「そうして欲しいね。いつになるのかわからんが」

 「自動化を進めて、可能な限り人を減らすらしいですよ」

 「一発食らったら、いきなり戦力ダウンになりそうだな」

 「平時運用を主任務にするのでしょう」

 「戦時下を考えない用兵は問題ありですよ」

 「まぁ 戦争が始まれば、乗員を増やすだろうし」

 「軍は、仮想敵国の付き合いでいい、どうせ、主役は我々になるよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「艦長。2時に流氷です」

 「取り舵20度だ」

 

 

 日本は、中東油田権益の半数を新たに押さえていた。

 無論、ただではなく代償があり、

 その代償も金を生む木だった。

 イラン海軍

  空母ワスプU、ベニントン、  軽空母ラングレー、バターン、

  戦艦サウス・ダコタ、インディアナ、

  重巡ピッツバーグ

  軽巡モントピリア、デンバー。セントルイス、サンディエゴ、 駆逐艦13

 修理用ドックが建設されると日本回航が減って海軍として自立していく、

 イスラム連合艦隊は、インド洋の制海権を支配し、

 日本海軍軍事顧問団たちは、そのイスラム海軍を育てていた。

 「なかなか、いい動きをするようになってきたじゃないか」

 「そのうち、イギリスと日本の関係みたいになるかも」

 「イランは、石油があるけど、製鉄所から発展した製造施設がなくてな。その辺は調整しているよ」

 「中東諸国が製造施設を欲しがっても。それは自力でやってもらわないとな」

 「留学生を日本に送ってるだろう。そのうち、自力でやれるんじゃないか」

 「中東最大の問題は、宗教、部族派閥、言語、貧富の対立だろうな」

 「海軍が強力になったところで、歪な世情は変わらないし、外征できるような国にならないと思うね」

 「さあて、国内の不公平や軋轢を誤魔化すため外敵を作るのが政治だよ」

 「それは言えるがね。それもできないくらいに国内が分裂してるのさ」

 「次期主力艦の建造も日本に発注してくれそうなの?」

 「せっかく育てた海軍力は捨てられないからね」

 「石油と海軍費用を相殺してしまうと、ほとんど無料になるか赤字になってしまうだろうな」

 イラン機動部隊は、アラビア海を行き交う日本のタンカー群を避け、インド洋を南下していく、

 水平線の彼方に点々と艦影が現れた。

 「大佐。サウジアラビア艦隊です」

 「中東諸国で合同演習ができる程度になったんだな」

 「衝突せずに、無事に終わって欲しいものだ」

 「そのうち、インド艦隊やイラク艦隊も合同訓練になるかね」

 「高い予算を振り分けて維持すると負担になってしまうからな」

 「インド洋全域が中規模水準海軍を保有してもらいえると、日本経済は助かる」

 「ますます、イギリスと日本の関係になってしまうな」

 「取引の対象が増えてるのはいいよ」

 「日本政府が軍事予算出してくれなくてもインド洋諸国が軍事費出してくれるかもしれないし」

 「作れと言われたら艦隊を作ってあげられるし・・・・」

 

 

 

 

 国防省技術研究本部

 ジェットエンジンは小型であればあるほど推力重量比が大きくなった。

 そして、小型エンジンを多数使うと燃料消費が大きく、コストが上昇する。

 日本は、アメリカとソビエトに比べてエンジン開発出遅れを取っており、

 燃費とコストを代償に、小型エンジンを採用した。

 直径40cm級流星ジェットエンジン8基を上下2列4並列で並べ、

 推力1000kg8基で推力8000kgとなった。

 吸気口は胴体後方左右にあって、開閉型になっていた。

 「重量180kgのエンジン8基で重量1440kgか。大型エンジンの半分以下だな」

 「燃料消費も倍以上だろうな」

 「通常飛行中はエンジンの半分しか使わなければ燃料消費を最小限に減らせるだろう」

 「エンジン関連部品も8倍になりそうだし、そう一概に考えていいものじゃない」

 「吸気口の開閉でエンジンが回るのか」

 「開閉でタービンが回るとエンジンが動く、ワンテンポ遅れるがそうなるな」

 「もう少し、エンジンを少し軽くしたいものだ」

 「チタン製を増やせば軽くなるでしょうが」

 「価格を考えると難しい」

 「しかし、上の意見は、就労人口を民間に振り分けてもらわないと、国家再建で話しにならないそうだ」

 「多少兵力を減らしてもスペックを高めたほうがいいような気がする」

 「それはいいとして、広長閥になってから、どうも利権が潰される」

 「基本的に後方だったし、被爆者は老人女子供が多いからね」

 「国民バラマキが通ったのも、軍部への不信と反感が大きいから覆すのはこんなんだろうな」

 「守れるのに守れないふりして予算増額を狙ったりするのも命懸けだしな」

 「そういや、天下って死んだのがいたな」

 「おっかねぇ」

 「やっぱ、殺されたんだろうな」

 「神火人は、一般人に手を出してないから俺たちの方が孤立してるし」

 「完全犯罪だし」

 「政府や議会どころか。軍、警察。新聞社やラジオ社も怖気づいてるからな」

 「やっぱり、広島や長崎の出身が入ってくると怖いよね」

 「いや、半分くらいは普通に被爆しているけど」

 「だけど核になってるのって3万人くらいらしいけど」

 「20万人は、寒さに強いって言うけど」

 「生殺与奪権を握ってる核の3万人は怖いよ」

 「一番強いって、どのくらいなの?」

 「1人で戦艦の乗員1900人を全滅させたって聞いたことあるけど」

 「1人で50000t級客船に乗った10000人を、とか」

 「1人でソビエト軍師団司令部を全滅させたとか」

 「「「「「・・・・」」」」」

 「・・・まぁ 彼らがいないと、日本の国防は成り立たないからな」

 「そうそう」

 

 

 神火人用フロア

 電波

   極超長波  超長波  長波  中波  短波  超短波  極超短波  センチメートル波  ミリ波

 光、

 放射線は、粒子線と電磁波に分かれる。

  粒子線(高速粒子線)

   アルファ線(α線) ベータ線(β線)  陽子線   重荷電粒子線

   電子線(原子核崩壊によらず加速器で電子を加速するものを指す)  中性子線

 電磁波(高エネルギーのもの)

  ガンマ線(γ線)   エックス線(X線)

 上位神火人は、神火核同士で増幅させられるらしく、電波や放射力が中位神火人の数十倍に跳ね上がり、

 さらにこれら特定の放射線を使い分け、量を加減することができた。

 放射線や電波の知識が増し練度が上がるうち・・・

 わっ!

 神火人がミリ波を当てると、屈強そうな対象者がその場から逃げ出した。

 研究者たち

 「ミリ波から、潜水艦同士で交信可能な極超長波まで出せるとはな」

 「無敵だな。なんでもありだ」

 「でもよく無事でいられるな。情報過多でノイローゼになりそうなものだが」

 「基本アクティブだし」

 「神火人が自ら認識しようと思わない限り認識できないよう神火核が上手く制御してるのだろう」

 「良く出来たナノマシンだ」

 「神火核の複製は?」

 「現時点では不可能だ」

 「しかし、科学、工業、化学、医療、鉱山で積極的に働いてもらえたら進展があるかもしれないな」

 「少なくともある種の放射線が健康にいいことはわかるし」

 「神火核は無理でも、そういった室内環境を人工的に作り出すことはできる」

 「しかし、ずいぶん、扱き使われてる気がするぞ」

 「そう思うなって。今の神火人世代が消えたら日本は守れなくなる」

 「それまでの間に格差を広げるか。国際関係を改善するかだ」

 「そりゃ アメリカやソビエトに媚びたくないが」

 「痛い目にあったからな」

 「あいつら女子供まで機銃掃射しやがって、まじで許さねぇ」

 「まぁ そうだろうな」

 

 

  

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 月夜裏 野々香です。

  

 日本・輝夜 (72万ku) 日本・半島

 和洋州 (25万ku) 中国京杭大運河東部域 

 日満州 (100万ku) 外満州 

 扶桑(カムチャッカ・チュクチ)州 (121万ku)

 大和(アラスカ)州 (171万7854ku)

 南洋 (ビスマルク・ソロモン諸島) (78150ku)

  フィリピン バターン・コレヒドール島 日本自治 “桃太郎” 区 (1000ku)

  マレーシア ブルネイ 日本自治 “金太郎” 区 (1000ku)

  インドシナ ダナン 日本自治 “舌切雀” 区 (1000ku)

  インドネシア パレンバン 日本自治 “浦島太郎” 区 (1000ku)

  ビルマ ヤンゴン 日本自治 “因幡の白兎” 区 (1000ku)

  シンガポール 日本人自治 “鶴の恩返し” 区 (1000ku)

 

 

 日本海軍

 第01機動部隊

  空母 白鳳(ランドルフ)、海鳳(ハンコック)、雷鳳(タイコンデロガ)

  戦艦 薩摩(ミズーリ)、駿河(ウィスコンシン)、

  重巡 穂高(セントポール)、

  軽巡 八瀬(ダルース)、黒部(サンタフェ)、白萩(モービル)、河津(ビロクシー)  駆逐艦18、

 

 第02機動部隊

  空母 蒼鳳(アンティータム)、幻鳳(シャングリラ)、慶鳳(ボノム・リシャール)、

  戦艦 因幡(アイオワ)、播磨(ニュージャージー)、

  重巡 蔵王(ボストン)、

  軽巡 天白(オクラホマシティ)、三原(アムステルダム)、日高(マイアミ)、天神(パサデナ)  駆逐艦18

 

 2410t級ガトー型潜水艦46隻

 2424t級バラオ型潜水艦26隻

 2424t級テンチ型潜水艦8隻

 

 1360t級エヴァーツ型護衛駆逐艦(21)  1740t級バックレイ型護衛駆逐艦(44)

 1240t級キャノン型護衛駆逐艦(23)    1250t級エドサル級護衛駆逐艦(24)

 1450t級ラッデロウ型護衛駆逐艦(4)   1350t級ジョン・C・バトラー型護衛駆逐艦(24)

 

 ジェットエンジン

 流星:直径40cm。彗星:直径60cm。

 蒼星:直径80cm。紅星:直径100cm

 

 “原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” 

 広島  賀茂忠行  天光正教  ウリエル  死神ウラン

 長崎  安倍晴明  聖炎主教  サリエル  死神プルト

 

  

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第08話 1952年 『下手は作物を育て。上手は土壌を育てる』

第09話 1953年 『封禅の儀』
第10話 1954年 『捏造、神火書記』