月夜裏 野々香 小説の部屋

    

天ぼた系 火葬戦記 『神火風』

 

 第14話 1958年 『戦争したいから不況にするの』

 

 “熱い、誰か、助けて、熱い、助けて、誰か、助けて・・・”

 “けいこ、けいこ、どこ? 声を出して、見えない、けいこ、お願い、声を・・・”

 暗がりの部屋の中心で8人の男女がテーブルを囲んで手を繋いでいた。

 テーブルの上で、蝋燭の炎が揺らめき、水の入ったコップと護符が置かれていた。

 “熱い、誰か、誰か、助けて、助けて、熱い、どこにいるの、けいこ・・・”

 霊媒師が日本語で話し、現場に居合わせたような修羅場を感じさせる。

 広島の爆心地に近いホテルの一室

 四隅でカメラが回り、

 部屋全体に不気味な雰囲気を作っていた。

 “けいこ、けいこ、どこ? 声を出して、見えない、けいこ、お願い、声を・・・”

 

 

 隣の部屋

 特高の人たちが隣の部屋に耳をすませていた。

 「また来たのか、あの連中」

 「純粋に降霊術だけをやってるのなら、どうということはないが」

 「営業妨害だな」

 「そうか。とりあえず客だし。客が増えていいんじゃないか」

 「このホテル。幽霊が出ると噂になってるだろう」

 「まぁ そうだが、爆心地に近いからだろう」

 「いるよ。お化け」

 「うそっ!」

 「神火人は、見ようと思えば、常人とちがって、いろんなものが見えるからね」

 「じゃ 降霊術で、本当に呼び出してるの?」

 「幽霊が出やすくなってるし、どうしたもんかね」

 「「「「・・・・・」」」」 ごっくん!

 「まぁ ある種の電磁波で、弱い霊の出現を妨害できるけど」

 「本当に?」

 「まぁ 善霊悪霊に関係なくだから善し悪しだけどね」

 「じゃ その電磁波発生装置で、悪霊スポットを除霊して、大儲けできるじゃないか」

 「・・・・」 苦笑

 

 

 戦後、イギリスは、インド独立で財政の悪化が続いていた。

 インド利権を喪失した富裕層は、減収を取り戻そうと、物価を引き上げ、

 社会資本の流通が減ると、イギリス経済は停滞していく、

 財政の試行錯誤なのか、

 社会福祉を重視する労働党政権と、

 企業により資本集約と雇用を創出しようとする保守党政権の間を行ったり来たり、

 戦中の英雄チャーチルも落選と当選を繰り返した。

 第二次中東戦争でスエズ運河が国有化され、

 イギリスは、スエズの通行料を取れなくなって、さらに悪化し、

 経済は、株価とポンド急落で深刻な不況になっていく、

 チャーチルが政治の一線から退くと、イギリスと日本の交易は増え、

 情報筋の日本人たちも企業活動に紛れ、ロンドンに足場を作っていた。

 通りにこじんまりとした箱店ニューススタンドがあって、

 人々は、そこで、新聞やタブロイド誌を買っていく、

 そして、お気に入りの記事を読んでいく、

 

   冒険家インディと新聞記者ジョンズは松代大本営を見下ろす丘に立っていた。

   「あの一帯が怪しいというのは?」

   「日本政府や軍部のお偉いさんたちが、毎年2度、松代詣に訪れる」

   「何のために?」

   「まぁ 太平洋戦争末期の決戦総司令部を置こうとしていた要衝だ」

   「ただの対外戦略会議かもしれないと思っていたがそうでもなさそうでな」

   「調べてみると、近くのあの皆神山は謎の多い山だそうだ」

   「大本教の出口王仁三郎が神社を作ってる」

   「当然、松代大本営と地下でつながっている」

   「そして、ビルマから妙なモノを持ち込んだ翌年から松代詣でが始まってる」

   「妙なもの?」

   「ビルマに精霊ナッ信仰というのがあってな」

   「その精霊ナッの遺物を松代大本営の地下施設に持ち運んだそうだ」

   「なぜ?」

   「わからんが精霊ナッの遺物と日本の謎の山。神火風と関係があるかもしれない」

   「本当に?」

   「そういう噂が流れている」

   「噂か・・・」

   「噂にしては警備が厳し過ぎるだろう・・・」

   ほとんど使っていない施設を守るには警備が厳重すぎた。

   「ブラフじゃないのか」

   「かもしれない。しかし、違うかもしれない」

   「我々の有力者だって、いろんな名目で集まってる」

   「しかし、大半が実体を誤魔化すためだけのものでしかない」

   「だが日本の権力層で、インドラの炎、インドラの矢という単語が増えてる」

   「ん? じゃ ナッ信仰の元は、古代インドラ兵器なのか?」

   「かもし・・・」

   インディとジョンズは、人影が近づいてくることに気づくと・・・

 

 日本人たちは、お気に入りのカフェテラスで、フィッシュ・アンド・チップスを注文し、

 腹を満たしていく、食に淡白なイギリスで、当たりも外れもない無難な料理といえた。

 「今回は、日本のハードミステリーモノか」

 「どこまで本当かな」

 「全部作り話じゃないのか?」

 「まさか、全部作り話しなんていうのは面白くないし売れない」

 「松代大本営と皆神山の繋がりはあるし」

 「ビルマに、精霊ナッ信仰は実在する」

 「そして、マハーバーラタやラーマーヤナの神話で、インドラの炎、インドラの矢を伝承している」

 「そういった組み合わせを展開させる力量が真実味になって人を惹き込む」

 「この・・・ 政府と軍が年2回集まってるというのは?」

 「そういや、たしか・・・ 一度聞いたことがあるような・・・」

 「ほかに、夜は暗いから天体観測所を作ろうとか・・・」

 「まぁ 神火風は、紀元後最大の謎と言ってもいいからね」

 「神火風に注目して下調べしてる作家は多いし、真実味がますほど売れる」

 「神火風の正体が超古代インドの兵器っていうのも・・・ まぁ 面白くはある・・・」

 不意に、通りの店が暴徒に襲撃され、商品が強奪されていく、

 日本人たちは、巻き込まれまいと食事を終え、公道を離れ、路地に入っていく、

 「「・・・・」」

 「植民地経営で成り立っていた大英帝国がこのザマとはな」

 「日本だって、新興の経営者は中国人労働者に頼ってるし」

 「和洋州と日満州の中国人がいなくなったら株価低下と円安になるんじゃないのか」

 「ん・・ 新卒は多いから国内労働者へのシフトはむつかしくないだろう」

 「治安の不安定要素が減って経済が良くなるかもね」

 「親が経営者で子供が労働者は嫌になるかも」

 「そのへんは賃金次第だろう」

 「そんなもんかな・・・」

 「だけど、イギリスが日本に助けを求めてくるとは意外だ」

 「アメリカ経済に支配されるか。リスクを日本経済に分散するかの瀬戸際なんじゃないか」

 「斜陽のイギリス経済に投資するより。独立国や中進国に投資したい」

 「親日の企業家には、投資できるんじゃないのか」

 「“ゆりかごから墓場まで” 政策が続いてる間は、企業収益が得られにくいし、投資しにくい」

 「しかし、もっと紙幣を印刷すればいいんじゃないのかね」

 「イギリスは貴族制が強いし、仲間内でお金を回してる、既得権を守りたいのだろう」

 「誰が、自分たちよりお金持ちを増やすために余計な紙幣をするわけがない」

 「農地の囲い込みで中抜きをするのかもね」

 「やっぱし、インフレで金を貯めて。デフレで企業を潰して利権を買い漁るって作戦か」

 「本当のお金持ちは、インフレでもデフレでも得をする」

 「えげつないなぁ 使いきれないほど金を溜め込んでどうするつもりなんだか」

 「金の権力に酔うと麻薬のように蔓延るらしいよ」

 「日本は少しばかり質素だがね」

 「日本人は人がいいのだろう」

 「というより広長閥が怖くて、インフレ政策を続けてるだけだよ」

 「まぁ 広長閥は、中国の台頭。アメリカとソビエトの報復が怖いからインフレを続けてるのだろう」

 「神火人の正体を誤魔化せそうなのか?」

 「なるべく力を使わないようにしてるらしいが」

 「アメリカとソビエトは死体の状態から放射線らしいと気付いてるらしいから、時間の問題かもな」

 「それで死神教の説得力が強まってるから、痛し痒しなんだが」

 「そういや、北アイルランドと、ケルト系組織が接触を求めてきてるけど、どうする?」

 「政治に関わると痛手が大きいからな」

 「ケルトは魔術関係だそうだ」

 「魔術・・・」

 「まぁ 日本人を入れて、伯付けにしたいらしいが」

 「ふ〜ん」

 「というより、何人か。死神教に潜入させて、結界とか、式神を調べさせてるらしい」

 「イギリス情報部がそう言うの参考にするようじゃ 自信喪失してるんだな」

 「とは言っても、どうしたものか」

 「幾つか傾きかけた炭鉱に出資して信用できるか。試してみては?」

 「お金返してくれるなら信用できる。返してくれないなら信用できない」

 「まぁ それで、いいか」

 「あと中国人労働者も供給できるかも」

 「そういや、使い勝手のいい労働者がいたな」

 

 

 

 

 和洋州

 山が刳り貫かれ、巨大な空間が作られていく、

 国防と基幹産業は深く関わっており、

 これらの空間は、基幹産業の要地となっていった。

 初期投資は莫大だったものの、

 国防省は戦略拠点防衛に必要以上の戦力を割かれずに済み、

 柔軟な国防計画を立てることができた。

 関係者たち

 「しかし、狭いな」

 「贅沢な。軍より広いじゃないか」

 「天井が落ちてきたら困りますし、トンネル状なのはしょうがないでしょう」

 「まぁ 幾つもの入口から加工しながら合流させて、最終的に組み立て反対側から出せばいいのか」

 「問題は、理想的なかたちで合流させられないのが辛いし」

 「入口をそうそう増やせないのがな」

 「民間は施設を取り過ぎだろう」

 「まず地上の工場で建設して、地下工場を設計してみては?」

 「まぁ それはありだな」

 「しかし、性能が向上すると工程が短くなるかもしれないしな」

 「そんときは、多少余裕を持って長めに建設すればいいんじゃないかな」

 「つか、幾ら使う気だ。軍によこせ」

 「とりあえず、部品とか、新・旧・休で更新していくから3つ」

 「一つの工場で10万u〜30万uくらい欲しい」

 「信じられん」

 「爆撃されても安全に生産できるから、戦力は落ちない」

 「軍によこせば爆撃なんてさせない」

 「しかし、地震が怖いからな。地震兵器とかあるし」

 「地震が少ないのは輝夜半島、日満州・和洋州なんだけどな」

 「本拠は日本だろう」

 「だけど、格安の労働力でドバ〜とやれるのは大陸なんだよね」

 「そうそう」

 「山東半島が守りやすいかな」

 「本州が軍事政治経済の中心であるべきだ」

 「やっぱり半島と大陸に大工場を作って生産を増やさないと」

 「「「うんうん」」」

 「人の話しを聞けよ!」

 

  

 

 

 国防装甲車両は、規格上、最大16両編成。人員80人ほどで、

 迎撃指揮車2両、迎撃ミサイル格納車2両。迎撃砲車2両。

 発電車1両、兵料車1両、先頭後尾兵舎装甲車2両の10両が核になり、

 連結する戦闘車両

     対地指揮車2両、対地ミサイル格納車4両。

     対空指揮車2両、対空ミサイル格納車4両。

     対艦指揮車2両、対艦ミサイル格納車4両。

     機甲指揮車2両、車両搭載車4両で、

 対空列車、対地列車、対艦列車、機甲列車の4つに分かれ、

 その統制火力は、1個連隊を超えるといわれていた。

 ミサイルは、格納庫の高さ制限があって、垂直発射であれば全高2mで、

 車内に寝かせた状態なら全長23mのミサイルでも搭載出来た。

 国防省は、第一次計画で対空装甲列車100個、対地装甲列車80個、

 対艦装甲列車20個、機構装甲列車40個を整備する計画を立てていた。

 

 対地装甲列車 “十六夜” が、時速200km/hで疾走している。

 装甲列車にしろ、駆逐艦にしろ、数が多いと名称に困り、不吉な名称が回ってくることもある。

 十六夜は “ためらい” “躊躇” と軍人にあるまじき意味を含むため、上層部のイメージ受けが悪い、

 当直で待避線配備が回ってくると、ああ、あの装甲列車か。と一段低めの扱いを受ける傾向がある。

 もっと勇ましい名称がよかったとお思う将兵も少なくはないが、気に入る者もいた。

 そして、言霊というべきか、名が体を作るのような気風が将兵のあいだに育つから不思議だ。

 司令塔

 「あと5分で待避線に入ります」

 「最近、忙しないな」

 「路線が延長してないのに車両が増えて、ダイヤが過密になってきていますからね」

 「支線と待避線をもっと増やさないと、息苦しくなるばかりだ」

 「装甲列車は、鉄道省が利益を上げようとするほど、除け者扱いですからね」

 「中国人の乗客も増えてるそうじゃないか」

 「ポイント通貨でも乗れるそうですから」

 「じゃ それだけの労働をしたということか」

 「ポイント通貨の方が楽という噂もありますがね」

 「本当に?」

 「大陸じゃ 日本人もポイント通貨を使うときがありますし」

 「相場と、日本人係官の匙加減で、そういうこともあるようです」

 「まぁ 俺も利用したことがあるからな」

 「競争力ないサービス、バチもん、出来損ないが、ポイント通貨市場に流れてしまうし」

 「金にはならなくてもポイントが付けば生きていけるし、贅沢できる」

 「実力不足や学生が働くにはいい場所だよ・・・」

 「少佐。待避線に入りました」

 「そうか。周囲の安全の確認。僚車との戦術計画を確認してくれ」

 「はい」

 対地装甲列車 “十六夜” は待避線に入ると位置を確認し、

 味方の基地や僚車と相互支援体制を取った。

 装甲列車は、場所が変わるたびに作戦計画と作戦目標が変わる。

 標的は北京で、情報に従って、目標の座標と弾道がミサイルに組み込まれていく、

 中国軍は、日本の装甲列車がどの支線、待避線に配置されたのか気になるのか、

 無線が増える傾向にあった。

 神火人は、無線に独特の感受性を持つのか、アジトを突き止め、

 特高は、別件逮捕で工作員を捕まえ、無線機を押収し、

 何がしかの取引した。大半は資源と交換なのだが中国軍に引き渡した。

 中国が取引に応じなければ本国は、工作員に価値を置いてない、

 と現地諜報組織が判断したことから活動が一気に衰退した。

 そして、公開したことから、日本人の対中警戒が増し、安易な取引をしなくなっていった。

 「警備隊に挨拶に行ってくる」

 モニター越しで挨拶しても直に交流したほうが安心する。

 地上の待避線は見晴らしの良い場所が選ばれやすかった。

 田舎になると山腹ということもあり得た。

 待避線近くは、ビルが一つ建てられ、

 装甲列車が駐留すると警備隊も配置された。

 街は、堡塁と湖水に囲まれた世界最大級の星型城塞で、中国風と和風の街並みが雑ざっていた。

 と言っても日満州・和洋州は近代的な交通通信システムを取り入れて、城塞都市を設計することが多く、

 土木建設力と人海戦術で、必然的に世界最大級になった。

 看板は、日本語と漢語が併記されていたが、漢民族は圧倒的に多く、

 治安は安定し、活気があった。

 ショーウィンドウにはテレビ、冷蔵庫、電子レンジなど流行りのものが置かれている。

 テレビは、ケーブルテレビが多く、テレビ線が街の地下を張り巡らされ、

 町ごとに支局があって、金次第で自由に放送していた。

 これは、戦時下、妨害電波で通信不能になることが予想され、

 有線が有利になると判断されてのことだ。

 日本風の城郭も建設され、神社や仏閣も作られていた。

 日本文化が優勢かというと、そうとばかりも言い切れず、中国風家屋に住む日本人もいる。

 日本人が封禅の儀で、天皇が中国の皇帝も兼ねたと思ってるのに対し、

 中国人は、天皇が中国皇帝となったと思う者が多数を占めている、

 大陸の支店を中国人に任せることが多く、

 中国人はポイント通貨を紙幣に変えると、自由に紙幣を使える中国に行く者も少なくなかった。

 

 

 

 

 大和州デナリ山 (6194m)

 最大最強要塞が建設されていた。

 地下鉄の路線が花崗岩の中を蟻塚のように基地を拡大していく、

 「放射線が高いようだ」

 「花崗岩は放射線が強いよ」

 「それを利用して掘削しやすくしているがね」

 「でなければ硬度6の花崗岩なんて掘り進めない」

 「人体に悪いような気がするが」

 「いや、丁度いいくらいの放射線量で健康になるらしい」

 「そうなの?」

 「本当は神火人ぐらいの調整力なら理想なんだが」

 「神火人の神火核は、そんなに凄いのか」

 「核爆発と被爆で死にかけていた人間を生き返らせるくらい凄いんじゃないの」

 「しかもいまじゃ超人」

 

 

 

 アメリカ合衆国

 白い家

 “けいこ、けいこ、けいこ、どこにいるの? 声を出して お願い声を出して・・・”

 映写機が周り降霊術の様子が映されていた。

 「霊らしきモノが映ってるな」

 「助けを求める霊ばかりか」

 「怨霊はいるのか?」

 「霊媒師は、なるべく遠ざけてるそうです」

 「死神ウラン姫と死神プルト姫は、出てこないのか」

 「霊媒師は、死神がウリエルとサリエルの影では、普通の霊のように呼び出せないとのことです」

 「護符や結界は使えないのか」

 「なにぶん、陰陽道と性質が違うらしく」

 「最悪でも仮名でなく、真名がわからないと積極的に呼び出しをかけられないとのことです」

 「真名は、まだわからないのか?」

 「調査はしてますが、未だ・・・」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「しかし、死神教は、信者に真名を教えず鎮伏させてるそうじゃないか」

 「霊媒師によると、護符に真名が描かれていれば、真名がわからなくても鎮伏出来るかもしれないとのことです」

 「日系人に護符の解読をさせてないのか?」

 「それが日系人の中に陰陽師はいませんでした」

 「暗号解読班を増やしてもいい、なんとかして探ってくれ」

 「はっ」

 「霊媒師は、結界や護符に効果があると言ってるのか」

 「一定の効果は認められると」

 「また、同業同士の相互補助で信憑性を高め、自分たちの格をあげようとしてるんじゃないだろうな」

 「常人にはわかりかねますがね」

 「映像を見る限り・・・ 霊がいそうですよ。映ってますし」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「もういい、止めてくれ」

 かしゃっ!

 カーテンが開かれ、部屋に陽の光がさした。

 何人かが、気分を変えるため、コーヒーに手を伸ばす。

 「・・・日本の状況は?」

 「公共事業を中心に国力が増大しています」

 「日本国軍は?」

 「空軍と陸軍の比重が増えていますが、質量とも低く抑えられ」

 「GNPでいうなら2パーセント弱なので、至って低調です」

 「本当なら攻撃したいところなのだが・・・」

 「神火風の正体が不明ですからね」

 「神火風の本体が不明でも、手段は放射線なのだろう」

 「対放射線は、予算を割けば可能です」

 「しかし、危険なことに変わりないですよ」

 「中国の反日勢力は?」

 「現在、増大中ですが、親日勢力も少なくないですし」

 「何より国内も、我々に反発してる勢力が死神教を利用して結束を強めています」

 「再分配をやめさせろ」

 「そうでなければ、国民の敵意が我々に向く」

 「アメリカ合衆国の資本主義にとっても日本の国民基礎所得は猛毒ですからね」

 「国民の間でジワジワと広がっていますし。賛同者も増えている」

 「外敵を作って誤魔化したいな」

 「適当な国がアメリカを攻撃してくれるのならいいのだが」

 「ブラジルは?」

 「反米は強いですがね。戦争しかけてくる国ではありませんよ」

 「むしろ、アメリカ経済の方が不調だ」

 「賃金上昇は大きいからね。このままだと日本商品に負ける」

 「日本は国民基礎所得で負担が大きいはず。逆に賃金が上がるのではないか」

 「逆だよ。国民基礎所得で富裕層に資本を滞留させず、無理やり還流させてる」

 「金融資本の回転が速いから信用創造で紙幣が少なくても貨幣価値を保ち易い」

 「できればアメリカもそうしたいがね」

 「そんなことをすれば高給取りの多い大企業が不利になるだろう」

 「そういや、日本は大企業が小ぶりだったな」

 「そのくせ、生産力が高いから厄介だ」

 「最近は、死神教で人脈を増やしている」

 「外国でも人気があるのか」

 「対核防衛では有用だよ。やはり、躊躇するからね」

 「俺は信じないぞ」

 「ああ、真実を隠すブラフの宗教。嘘だと思うがね」

 「少なくとも死神ウラン姫と死神プルト姫を降霊させるまではな」

 「だが、安易に核兵器を使うのは危険だよ」

 「時に、松代大本営の噂は、本当なんだろうか」

 「ああ、何かあるような気もする」

 「神火風と関係があるのか?」

 「さぁあね なんとも言えんが日本の情報筋は、それらしく振舞ってる」

 「じゃ 真実って可能性もあるわけか」

 「日本人の旧友は権力に復権できないのか?」

 「利権から排斥されて、口止めされている」

 「特高に監視されているから何も出来ないだろう」

 「んん・・・」

 「韓国人は四川盆地に追い出されてるし」

 「中国人労働者は、移動を制限されている」

 「白人は日本に足場を作りにくい状態だ」

 「代理人のリューベック人は?」

 「我々より内側に潜り込めるが、それでも限度がある」

 「なんとか、日本列島の地下に核爆弾を50個くらい埋めて、沈没させられないだろうか」

 「ふっ それができれば楽しいだろうな」

 「朝鮮人なら喜んでやるだろうが・・・」

 

 

 60000t級空母フォレスタル、サラトガ、レンジャーが就役し、洋上機動部隊の増強が進み、

 同時に艦上戦闘機の開発も進む、

 滑走路からF4ファントムが飛び立っていく、

 見かけの評価はともかく、空母艦上機だけでなく、戦闘爆撃機としても優れ、

 量産が進むなら中国へも輸出される予定だった。

 アメリカ軍将兵たち

 「まぁ 侵攻作戦向きの戦闘爆撃機ではあるな」

 「日本は、小型エンジン4発の戦闘機を開発している」

 「小型でもエンジン4つは、コストと燃費が悪かろう」

 「2発で通常飛行。4発で戦闘飛行のようだ」

 「アフターバナーはないが、燃費を気にすることはないだろう」

 「日本人も、いろいろ考えるもんだな」

 「と言っても、機体数はまだ150機程度らしい」

 「ずいぶん、なおざりな国防だな」

 「焼け野原からの再建だし。日本の軍人は政治権力を失ってる」

 「捕獲兵器の売却でもそうだが、そうそう、軍事費を増やせないのだろう」

 「だが中規模海軍国が乱立は、面白くない」

 「大戦中の建造艦艇とはいえ、最新鋭の艦隊を維持するとはな」

 「日本が維持させている。それで日本は大儲けらしいが」

 「それだけでも日本が神火風を制御してると考えられなくもない」

 「しかし、神火風に、どんな力なのかわからないのだろう」

 「アメリカは科学技術で日本に勝ってるはずなのだがな」

 「日本の近代化の勢いから、追いつく気配はあったよ」

 「物真似だろう」

 「理解していなければ真似できないレベルだから、追いつく可能性は高い」

 「不思議な力もあるしね」

 「放射線を操る機械でも発明したんだろうな」

 「それとも、プロパガンダの通り、拾ったか・・・」

 「どちらにしろ、戦闘爆撃機を中国に輸出すれば、日本の反応も変わるだろう」

 「どうかな。中国軍閥はソビエト製のMiG21バラライカを買いたがってる節がある」

 「F4ファントムの方が強い」

 「中国軍閥連合と和洋州軍の戦力比は1対10以上」

 「総力戦になればもっと差が広がる」

 「中国人は、日本を侵攻することより、防空を重視するだろう」

 「当然、侵攻戦闘機より、迎撃戦闘機が欲しいだろうさ」

 「こちらとしては、中国軍閥の侵攻戦闘機配備で、日本の反応を見たいのだが」

 「確かに・・・」

 

 

 ハルピン

 松花江の中洲、太陽島(88ku)の中心に6重7階の天守閣を持つ太陽城が建立し、

 太陽城を中心に最大直径は40kmにも及ぶ、近代的な都市城塞が建設されていた。

 外郭堡塁は、戦車の侵攻を防ぐのに、十分な規模になっていた。

 日本人移民を足したのは、目に見えて広がる城塞都市の防衛力と、

 毎年のように建設されていく日本風の城郭神社仏閣と、治安の良さにあった。

 

 日本人は銀行に行くと国民基礎所得を受け取った。

 10年建設国債の5分の2が国民所得として、10年後、人口分の1が分配される。

 1948年、1兆円規模だった建設国債の5分の2は、4000億で、

 当時8000万だった人口で割ると一人5000円となった。

 受給者たち

 「5000円か。10年前だったら賃金3ヶ月分くらいなんだけどな」

 「今じゃ 1ヶ月分の収入にもなならない。インフレには泣かされるよ」

 「来年は、もっと増えるんじゃないか」

 「んん・・・ 単純計算で毎年10パーセントずつ増えて行ってるからな」

 「6000円くらいだが、来年のインフレを考えると怖い」

 「インフレ率が下がれば楽なんだけどね」

 「だいたい、受け取りが10年後だと、どう考えてもゼネコンが有利だ」

 「だからゼネコンばっかりがズルいってことで、国民基礎所得が始まったんだろうが」

 「建設国債を増やして大丈夫なんだろうかね」

 「今年、分配する4000億で。発行する建設国債2兆6千億円だから6分の1だろう」

 「これを繰り返していく単純な錬金術だからバカでもできる」

 「いつか破綻するんじゃないだろうな」

 「さぁ 破綻しそうな要素は今のところないがね」

 「だといいが・・・」

 「そういや、臨時国民基礎所得で5000円が追加発行されるらしい」

 「まぁ 平均賃金の1ヵ月分は欲しいというのが、国民感情だろうからね」

 「産業格差を是正しつつ、建設国債を続けるなら、推定1ヵ月は落としどころだよ」

 「しかし、国土の大きさを考えると、もっと紙幣量を増やすべきなんだろうが」

 「中国人は法幣からポイント通貨制に移行させたからな」

 「多少歪だけど、もつよ」

 「そのうち、紙幣の絶対量が足りなくなると思うぞ」

 「だよねぇ」

 「まぁ 気前良く日本人にばらまいてるからなんとか足りるだろう」

 「だといいけど・・・」

 「不況なんていうのは、貧富と地域の格差を広げた結果だし」

 「外国戦力にしたら、反政府勢力を武装化させて内戦させるか。全体主義化させて戦争させるか」

 「あるいは、革命で共産化させるチャンスだし、内患と外患が作為的に起こすものだ」

 「まともな政治力があるなら、生産力に見合った紙幣量を偏らせず、淀ませず強制的に流せばいいだけだし」

 「不公平を是正していれば、革命はないから共産主義を恐ることもない」

 「貧富地地域の格差から起きた反政府勢力の革命や内戦の矛先を戦争に変える必要もない」

 

 

 

 

 国防省技術研究本部

 航空機は、有視界を超えた水平線の果てを探知圏になした。

 トランジスターの発達は電子戦能力の発達につながり、

 V2から発達したミサイルは

 対空ミサイル 全長8m×直径34cm 発射重量1200kg 弾頭80kg M3 高度25000m 射程30km

 対艦ミサイル 全長8m×直径34cm 発射重量1200kg 弾頭300kg M1 射程180km

 対潜ミサイル 全長8m×直径34cm 発射重量1200kg 弾頭100kg M1 射程40km

 と、射程、命中率、破壊力を技術向上させつつ、艦艇艦載ミサイルとなり、

 艦の側面二重隔壁内に配置されたミサイルが主力兵装となっていた。

 そして、それまで主兵装だった火砲と魚雷は補助兵器と化し、

 艦砲は

  日本製60口径150mm砲。56口径120mm砲。50口径127mm砲。

  捕獲品を改良したアメリカ製47口径152mm砲。ドイツ製61口径128mmFlaK40

 の選択肢の中から61口径128mmFlaK40が決まった。

 

 また、海中を走る潜水艦の性能も向上し、戦争の勝敗を左右しかねない戦力と化していた。

 海戦の様相は、平面的な海上戦から、空と海中を含めた立体的な戦闘へと変化し、

 それに対応し得る対空レーダーと対潜ソナーが艦艇に求められていた。

 軍艦を建造する製造部品は、天文学的な設備投資の対象となり、

 経済的な理由から少人数化も進められていた。

 国防省は、最上型改やクリーブランド型軽巡洋艦の艦体を参考に次期巡洋艦を設計していた。

 しかし、歩く早期警戒管制人間でもある神火人は、レーダー反射率の特性に気付き、

 レーダー探知を低減させる構造が兵器設計に取り入れた。

 むろん、そういった特性は、平時に隠蔽され、戦時に発揮されるべきで、

 レーダー反射率が低い構造体にもかかわらず、

 レーダー波を余計に反射する反響板を取り付け誤魔化すことになっていた。

 関係者たち

 「艦舷を三角形型にするのは船の安定性を欠くような気がする」

 「イギリス型の逆三角形はまず駄目だろうな」

 「海面に乱反射させることができるから、アメリカ型の垂直艦舷よりいいのでは?」

 「わからない程度、艦舷を三角形型にした方がいいだろう」

 「対艦ミサイルは高々度探知しながら飛来し」

 「迎撃ミサイルを避けるため、艦隊を発見すると低空で接近する」

 「そして、低高度からレーダーで観測しながら標的にぶつかる」

 「それを考えるとある程度の反射を減らすには角度が必要になる」

 「垂直艦舷なら体積を有効に使えるし、アメリカ艦艇の影響を受けたでいいじゃないか」

 「三角形は不自然じゃないのか」

 「やりすぎると敵にレーダーの性質を教えてしまうのでは?」

 「金がない状況で、それは最悪だな」

 「しかしまぁ 軍艦は建造しないとな」

 「砲雷撃戦を後回しにした艦となると」

 「電子戦能力と、ミサイルのプラットフォームとしての安定性と、経済性かな」

 「防御は?」

 「127mm砲弾に耐えられる程度でいいと思う」

 「むしろ、装甲列車に搭載してる2m級の迎撃ミサイルを配置した方がよくないか」

 「迎撃できるならいいけど、今ひとつ精度に欠ける」

 「ミサイル弾頭は、成形炸薬弾を使うはず」

 「技術が進めば、成形炸薬弾自体、2連弾、3連弾になってもおかしくない」

 「いったん、装甲が貫通されたら艦内は破壊されるだろうし」

 「核弾頭の出現は予測されるから、装甲で防御しようとしても不可能に近い」

 「しかし、携行兵器で艦体に穴を開けられては将兵の士気を保ちにくい」

 「それを言われると機関砲で穴があく駆逐艦は、なんだったのってなる」

 「どちらにしろ、装甲による防弾は、絶望的だよ」

 「こうなったら、成形炸薬弾を艦の周囲に配置して、外壁が破られたと同時に爆破させては?」

 「ミサイルを格納してる外壁と、内壁の二重に配置すれば高確率で防げると思うが」

 「スラグが僚艦に当たるってことはないか」

 「可能性は低いだろう。それに回転してるわけでもないから飛翔距離なんてたかが知れてる」

 「んん・・・ 最悪の場合、適当な選択かもしれないが・・・」

 「核時代だし。国防省が地下に隠蔽しやすい装甲列車と、海中に潜ませやすい潜水艦に傾注するのも必然か」

 「とはいえ、他国に見せつける看板は必要だよ」

 「だよねぇ」

  黒龍型巡洋艦 (仮)

   排水量10000t/14000t

   全長186m×全幅20m×吃水7.5m  

   ディーゼル・エレクトリック 100000hp  32kt  15kt/11000海里  450人

   全周レーダー  水上レーダー 射撃レーダー  対空レーダー 対空射撃レーダー 

   ソナー

   対艦ミサイル20基  対空ミサイル40基  対潜ミサイル40基

   61口径128mmFlaK40砲×2基  71口径40mmガトリング6連砲×2基

   ヘリコプター

 

 日本のヘリコプター開発は、カ号観測機を基礎に、

 フレットナー Fl 282を参考にしていた。

 しかし、大きく飛躍したのは、ソビエト製Mi4を購入してからだった。

 Mi4を小型改良させながら艦載機用ヘリを開発していた。

 二重反転プロペラになったのは、全長を短かくするためで

 その分、全高が高くなってもやむ得ない判断とされた。

 対潜/対空 哨戒ヘリ 鴎

  自重5t/運用9t/最大11t

  全長10m×3.6m(幅回転翼直径15m)×全高5.2m

  hp1800×2基 航続距離1000km 速度260km/h

  積載2t

 

 「巡洋艦より。空母型巡洋艦がいいという話しもあるようだが」

 「空母型か。単純に考えるなら艦上機を載せたり、ヘリを載せたり、巡航ミサイルを載せたり」

 「柔軟性でいうと空母型巡洋艦は、悪くない」

 「問題は、大型化とコスト増しだろう」

 「Mi4をそのまま載せられたら有利だろうな」

 「エレベーターが大きくなるのは反対だな」

 「そうそう、艦艇は、数を作らないと、トコロテンじゃないが、人事替えが早すぎる」

 「組織肥大も考えもんだな」

 「海軍より、装甲列車の車長の方がなれそうだしな」

 「兵学校を縮小するのは嫌だし。艦を大きくし過ぎると競争が醜くなるし」

 「何より中途半端な汎機能より、単機能の方が専修を生かしやすいと思うぞ」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 車両開発局

 標準軌鉄道規格に合わせた戦車開発が進んでいた。

 成形炸薬弾に対抗しうる装甲が開発されていなかったことから戦車に重きを置くことができず、

 仮に量産したとしても、ミサイル発射まで、敵軍を食い止める防波堤。

 あるいは突破されそうな前線の穴埋め、

 そして、核戦争後、唯一の地上機動戦力となる公算が強く、

 地上戦の雌雄を決するような大規模な戦車戦を考えていなかった。

 また、シミュレーションでも、戦場の様相が大戦からかけ離れ

 戦車の生存性は、強力な防弾より、機動性が求められた。

 もっとも、神火風の恐怖と核開発により、

 戦車開発の遅延を許す国際情勢が形成していたのも事実だった。

 とはいえ、旧式化していく捕獲戦車の更新も最低限必要だった。

 戦車乗車用ホーム

 軟鉄製試作戦車が特注列車車両に乗車し、固定されていく、

 試作戦車

  A車 全長9.80m(車体長7.55m)×全幅3.40m×全高2.30m  50t

      砲塔型   63口径105mmFlaK38砲

      無砲塔型  61口径128mmFlaK40砲

  B車 全長9.42m(車体長6.6m)×全幅3.24m×全高2.30m  45t

      砲塔型    55口径105mmFlaK38砲

      無砲塔型   三式56口径120mm砲

  C車 全長9.41m(車体長6.7m)×全幅3.18×全高2.30m   40t

      砲塔型    51口径105mmFlaK38砲 

      無砲塔型   63口径105mmFlaK38砲

 「A車は、寸法がギリギリで載せるのに時間がかかり過ぎるな」

 「性能重視だとどうしてもそうなるよ」

 「スムーズに乗り降りさせるならB車か、C車にしないと」

 「問題はB車、C車というより、無砲塔戦車はどうかと思うがな」

 「無砲塔と言っても機銃掃射用小型砲塔が付いてる」

 「歩兵が携帯する対戦車砲が怖いからカメラ付きの掃討機銃砲塔を付けたけど評判はいい」

 「結局、どれにするかだけど、対成形炸薬弾対策がな」

 「もっと軽量にするか。エンジンを強化して逃げやすくしたほうがいい」

 「冶金技術は向上して丈夫になってるから、あっちこっち軽くできるだろうけどさ」

 「小型化すると対成形炸薬弾が期待できなくなるよ」

 「戦車開発しました。でも対成形炸薬弾に耐えられませんじゃな」

 「いや、小型化しても装甲を厚くするといいわけだから」

 「だけど車内が狭くなる。車内が狭くなると当然、装備品が減る」

 「装備品もだけど、狭いと用兵側のクレームがあるよ」

 「Strv103戦車みたいに車体の前にエンジンをつけるか」

 「エンジンがやられると逃げられなくなるんじゃない?」

 「侵攻用戦車は、逃げられなくなると敵中に残されやすいけど」

 「迎撃用戦車なら地の利があるから動けなくなっても戦車兵は逃げやすいと思うがな」

 「それに、アメリカは52t級M60パットン戦車を開発しているし。ソビエトは36t級T55戦車だし」

 「正面切って戦車戦で戦うつもりはないとしてもだ」

 「味方の戦車が敵の戦車に勝てないと軍の士気に関わる」

 「そうそう、なんも開発しないのはさすがにまずいだろう」

 「だよねぇ」

 「とりあえず・・降ろして、次の試作戦車を載せてみよう・・・」

 試作A戦車が台車から降り、少し小型の試作B戦車が台車に移動していく、

 どれも運用研究のためだけに作った簡易試作戦車だった。

 

 

 

 真高と城木は、友好的な中国軍閥将校に案内されながら青海省を歩いていた。

 「日中戦争が起きた原因は、崑崙にあるというのは、どうだ?」

 「崑崙か・・・」

 「日本軍は、戦争末期、伝説の崑崙山に辿り着き。敗北寸前の日本を勝利に導いた」

 「話しは面白いが、説得力にかける」

 「だから中国の崑崙。欧米のシャングリラと、日本の高天原を関連付ける」

 「その崑崙の秘密を日本軍が手に入れて、死病を広めたと?」

 「そうそう」

 「しかし、理想郷のイメージが強いし。地域色だけだと弱いと思うな」

 「中国は、八仙という仙人がいてな、一人一人が裏八仙という法器を持ってるからアイテムはあるな」

   李鉄拐=葫蘆(ひょうたん)  漢鍾離=芭蕉扇  呂洞賓=剣   藍采和=花籃(花かご)

   韓湘子=笛   何仙姑=蓮の花   張果老=魚鼓(楽器の一種)  曹国舅=玉板(玉製の板)

 「しかし、大量に人間を殺せるような伝記が残ってないと」

 「崑崙は、アガルタと繋がって、失われた高度な文明と接触した」

 「んん・・・面白くはあるが、それがどんなものなのか」

 「崑崙に力が宿ると仮定するなら」

 「裏八仙の法器を集め。その地で、血の契約を結べばアガルタの扉が開き、力が手に入る、は?」

 「お、おぉおおお・・・ って、なんかと、かすってないか?」

 「す、少しくらい、かすってもいいだろう・・・」

 城木は、神火風の探求本を何冊か見せた。

 「ふっ 我々が誘導しなくても、民間が似たようなことをやってるみたいだな」

 「実態を誤魔化してくれるのは嬉しいが、近いのもあるからな」

 「まぁ 木は森に隠せって言うから。たくさん作って誤魔化すべきだ」

 「そして、餌をたくさん作って、アメリカCIAをテンテコ舞いさせてやる」

 「あははは・・・」

 「とりあえず、海軍特殊部隊、陸軍特殊部隊、特高の3人組が艱難辛苦の末、8つの裏八仙を集めて崑崙に辿り着き」

 「血の契約を結んで、アガルタの扉を開き。超兵器でアメリカ軍とソビエト軍の将兵300万を死に至らしめた」

 「んん・・・」

 「そして、8つの裏八仙は、日本の8つの場所に隠された」

 「おぉおおおお〜 ちょっとつながってきたぞ」

 「アメリカ、ソビエト、イギリスは崑崙山を探し」

 「日本が持つ8つの法器を集めなければいけないわけだ」

 「いいねぇ いいねぇ」

 「じゃ それらしい餌を撒いていくか」

 「そうだな」

 「まず、ひょうたんだが・・・」

 「」

 「」

 「」

 「」

 

 

  

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 月夜裏 野々香です。

 神火風のせいで、神秘詐欺産業は大儲け、本物が1000分1くらいに・・・ (笑

 特高は、神火人発覚を恐れ、死病の原因を創作して、リアルRPG世界を作っていきます。

 世界中の情報部員が、特高が作ったダミーを追いかけます (笑

 

 

 日本・輝夜 (72万ku) 日本・半島

 和洋州 (25万ku) 中国京杭大運河東部域 

 日満州 (100万ku) 外満州 

 扶桑(カムチャッカ・チュクチ)州 (121万ku)

 大和(アラスカ)州 (171万7854ku)

 南洋 (ビスマルク・ソロモン諸島) (78150ku)

  フィリピン バターン・コレヒドール島 日本自治 “桃太郎” 区 (1000ku)

  マレーシア ブルネイ 日本自治 “金太郎” 区 (1000ku)

  インドシナ ダナン 日本自治 “舌切雀” 区 (1000ku)

  インドネシア パレンバン 日本自治 “浦島太郎” 区 (1000ku)

  ビルマ ヤンゴン 日本自治 “因幡の白兎” 区 (1000ku)

  シンガポール 日本人自治 “鶴の恩返し” 区 (1000ku)

 

 

 日本海軍

 第01機動部隊

  空母 白鳳(ランドルフ)、海鳳(ハンコック)、雷鳳(タイコンデロガ)

  戦艦 薩摩(ミズーリ)、駿河(ウィスコンシン)、

  重巡 穂高(セントポール)、

  軽巡 八瀬(ダルース)、黒部(サンタフェ)、白萩(モービル)、河津(ビロクシー)  駆逐艦18、

 

 第02機動部隊

  空母 蒼鳳(アンティータム)、幻鳳(シャングリラ)、慶鳳(ボノム・リシャール)、

  戦艦 因幡(アイオワ)、播磨(ニュージャージー)、

  重巡 蔵王(ボストン)、

  軽巡 天白(オクラホマシティ)、三原(アムステルダム)、日高(マイアミ)、天神(パサデナ)  駆逐艦18

 

 2410t級ガトー型潜水艦46隻

 2424t級バラオ型潜水艦26隻

 2424t級テンチ型潜水艦8隻

 

 1360t級エヴァーツ型護衛駆逐艦(21)  1740t級バックレイ型護衛駆逐艦(44)

 1240t級キャノン型護衛駆逐艦(23)    1250t級エドサル級護衛駆逐艦(24)

 1450t級ラッデロウ型護衛駆逐艦(4)   1350t級ジョン・C・バトラー型護衛駆逐艦(24)

 

 ジェットエンジン

 直径40cm級流星エンジン  直径60cm級彗星エンジン

 直径80cm級蒼星エンジン  直径100cm級紅星エンジン

 

 “原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” 

 広島  賀茂忠行  天光正教  ウリエル  死神ウラン

 長崎  安倍晴明  聖炎主教  サリエル  死神プルト

 

  

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第13話 1957年 『インフレーショントリック』

第14話 1958年 『戦争したいから不況にするの』
第15話 1959年 『日陣営と、米ソ雪解け』