第15話 1959年 『日陣営と、米ソ雪解け』
“詐欺、財産強奪、人殺。不正不当で地位名誉財産を手に入れると”
“同じ目に遭わされるかもしれないと不安になり、復讐の恐怖に苛まれる”
“己が家族と地位と名誉と財産を守るため”
“虚像で得た政治権力基盤を守るため、さらに人を騙し続け”
“さらに財を奪い、時に真実を誤魔化すため人を殺し続ける”
“例えどんなに高い地位、讃えられる名誉、使い切れない財産を得たとしても”
“それは、詐欺、盗み、人殺しで不当に得たものであり”
“不正と腐敗と世襲を生業にした闇に巣食う獣の心であり、人の心ではない”
“傲慢で、愚かで、惨めで、哀れな人生だ”
“だから、誠実に生きるため、まっすぐ生きた証のため”
“真実を語ろう”
“竹内文書は、古代ムー大陸の超文明の遺産との関わりを書き記した宝の地図であり”
“その謎をといた者が、ムー文明の遺産を相続できるのである”
“竹内文献は戦争で焼失したとされるが、それは嘘で、密かに持ち去られた”
“戦時中、竹内文献を解読した者たちがいた”
“それが広長閥であり”
“その結果が死病の発生であり、神火風を起こしたのである”
“そして、ムーの力を手中にした広長閥が日本国を支配し、世界を支配しようとしているのである”
“ムーの遺産は・・・・”
特別高等警察 戦略情報戦課
「こんな感じか」
「んん・・・そうだなぁ」
「ムーはいいとして、なんか、遺跡のようなものがあればいいのだが」
「遺跡を作る、の間違いでは?」
「作る?」
「深海なら、存在は確認できても、そこまで到達できないでしょう」
「なるほど」
「それで、300万人を殺せるだけの力だが、どうやって説得力を持たせるんだ?」
「それ以前に広長閥を出すのはまずくないか」
「いや、広長閥は、もう、既成事実だし、みんな知ってるからな」
「み、認めたら駄目だろう」
「しかし、信憑性を出すなら広長閥は、出さないとな・・・」
「“原爆を落とされた人々の世界平和を望む会” が母体だし、それさえ守れたらいいんじゃないの」
「アメリカの新聞社に、パクス・広長閥って、書かれたこともあるぞ」
「あ、あれは、情報ジャブ。広長閥の反応を見てるだけだから下手に反応しない方がいい」
「しかし、拡大し切った国土と、安全を守るためとはいえ」
「嘘ばっかりだから、腹が真っ黒になっていくな」
「「「「・・・・・」」」」 ため息
アメリカの一部で暴動が起きていた。
アメリカ軍が核実験で人体実験していると地方のマスコミが報じたからで、
死神教に信徒を奪われていたキリスト教会が騒ぎ出し、
死神教も人体実験のセーフティを規定すべきと賛同し、核実験そのものが困難になっていく、
白い家
「くそぉ マスメディアのバカどもが」
「なんで押さえておかなかった」
「最近、金融支配が弱まってますからね。さすがに地方誌までは・・・」
「死病と原爆の相関関係は確かなのに、国民が国を自縄自縛しやがる」
「バレたのなら、仕方がないでしょう。ここは引くべきでは?」
「人体実験は、身寄りのない人間、黒人、ヒスパニック、朝鮮人、漢民族を使っていた」
「しかし、放射線照射実験だけなら、核爆発でなくてもできるようになりましたからね」
「放射線による効果なら実験を続けられますよ」
「死病の原因は?」
「死因だけならガンマ線や中性子線による放射線障害ですよ」
「問題は人工的にそれをやることが困難なだけで」
「中性子爆弾とガンマ線爆弾を開発できるのでは?」
「そりゃ 放射性物質の違いですから、しかし、今ならともかく、当時の日本では無理なはず」
「今でも無理だと思うよ」
「では、どうやった?」
「わからないから、こうやって集まってるのでしょう」
「雁首揃えて、一般常識を語り合うメンバーでもありませんし」
「最近、死神教以外の可能性も高まっているようだが?」
「ええ、死病に興味を持つ人間は多いですからね」
「それらしいことさえ書けば飛ぶように売れますよ」
「被爆者が健康を回復していると聞いたが」
「一部ですよ。なぜか表に出てこないようですが」
「やっぱり、なにかあるんじゃないのか」
「そうはいっても調査が行き詰ってますし。そろそろ、死神教以外の可能性も考えてみるべきでは?」
「無論だ。我々は死神教を完全には信用していない」
「だから神火風とは言わず、死病と呼んでいる」
「もっとも死病が正確かと言われると、そうとも言い切れないが」
「だからといって、我々は、神火風に誤魔化されるようなウブじゃない」
「しかし、死神教は増えてますよ」
「ふっ 死神教と一般人の平均死亡年齢を比較されたら負けて当たり前だろう」
「確かに、長生きするような教理ばかりですからね」
「子供ならいざしらず、いい大人が入っていいものじゃない」
「確かに子供は入ってますね。礼拝のたびに小遣いをもらって出てきますよ」
「大人も子供も同じ金額か・・・」
「ええ、一緒ですね」
「意外といい商売だな」
「偽善ですよ」
「潜入させた朝鮮人は?」
「かなりの割合で発見され、捕らえられているようです」
「むかしの日本人は、もっと無用心だったがな」
「数が少な過ぎて目立つのでしょう」
小笠原沖
第01機動部隊
空母 白鳳(ランドルフ)、海鳳(ハンコック)、雷鳳(タイコンデロガ)
重巡 穂高(セントポール)、
軽巡 八瀬(ダルース)、黒部(サンタフェ)、白萩(モービル)、河津(ビロクシー) 駆逐艦18、
蒼雷
自重6000kg/運用12000kg/最大20000kg
全長16m×全幅10m×3.8m 翼面積48u
直径40cm級流星406型(2000kg)×4基(8000kg)
巡航速度2基1000km/h 航続距離2000km
最大速度4基2450km/h 航続距離800km
25mm機関砲 1丁 ハードポイント10基 増/ミ/爆6000kg
離陸滑走距離600m
艦上機型の蒼雷が白鳳(ランドルフ)の飛行甲板で離着陸を繰り返していた。
空母は、アングルド・デッキとエンクローズドバウが施され、近代的な空母となっていた。
「アングルド・デッキは行けるじゃないか」
「悪くないですね」
「しかし、アメリカはF4ファントムを開発している」
「こちらは艦上戦闘機オンリーだからな」
「予算上、空母は艦隊防空だけで十分では?」
「予算を出されると否定しようがないな」
「空母型だけで艦隊を編成する話しも出ている」
「そんなに航空機を搭載したいのか」
「というより、艦上機、ヘリ、巡航ミサイル、対地作戦部隊と柔軟に中身を変えることができるからな」
「大型だと、目立って、撃沈されやすいだろう」
「逆に大型巡航ミサイルを搭載できて、大陸を直接威嚇しやすいっていう話しもある」
「何しろ、日本の北太平洋支配域は広大だし」
「大型巡航ミサイルの射程で、西海岸を火の海にできるだろう」
「開戦と同時に撃沈されない限り、敵国に脅威を与えることができるわけか」
「対潜強化で、敵潜水艦が巡航ミサイルを発射する前に、敵潜水艦を撃沈する能力は高い方がいいよ」
「だけど、国土を守ることを最優先するなら、敵潜水艦狩りより、敵国土への攻撃力が最強の抑止になるからね」
「だから大型巡航ミサイルを搭載できる大型艦が望ましいし」
「飛行甲板を持ち、最低限の防空能力があれば好ましい」
「まぁ 艦上機、ヘリ、巡航ミサイル、対地作戦部隊は、その時々に応じて切り替えられるならもっといい」
「大きさは、どうするって?」
「大鳳型か、エセックス型の大きさでいいんじゃないかって、ことだ」
「ふ〜ん」
戦後、日本人は、大本営の前線の見殺し策と、
本土の絨毯爆撃、原爆により、体制不信を持つ者が増えていた。
しかし、曲がりなりにも日本国は戦勝国であることから、軍の信頼は最低限保たれ、
若い世代は右翼的な意識を持つ者も少なくなく、価値観も多様化していく、
愛知
工場で一般向けの大戦機が組み立てられていく
武装こそされてなかったものの、注文に応じた機体が製造されていく、
中には、見かけが零戦のリスペクト機で、エンジンも材質も一新された性能向上機が作られていた。
零戦21型改5
自重1500kg/全備重4000kg
全長9.12m×全幅12m×全高3.51m 翼面積22.44m
1800馬力 速度800km/h 航続距離2500km/h
購入者は、富裕層で大戦を懐かしむ派だった。
「いい、いいなぁ 懐かしいなぁ」
「見かけだけは、零戦ですが、エンジンは最新型ターボプロップエンジンで、材質も最新ですよ」
「うんうん、20mm機関砲がないのが悲しい」
「民間機ですから・・・」
「まぁ いいか」
男は、嬉しそうにコクピットに乗り込むとエンジンを回した。
「音が違うな」 ちょっと失望
「言われたとおり、ターボプロップエンジンですから」
「・・・まぁ いいか」
古くて新しい零戦が滑走路から飛び立っていく、
国防省戦略室
旧日本海軍艦艇が全滅し、
捕獲したアメリカ艦艇を運用していたが、戦後の海軍兵器体系も構築しなければならなかった。
そこで、予算内で、空母を中心とした海軍、潜水艦を中心にした海軍、
大型艦を中心にした海軍、中型艦を中心にした海軍、小型艦を中心にした海軍。
混合型の海軍と、多種多様な兵器体系でシミュレーションが行われていた。
フルシチョフ書記長のアメリカ訪問と雪解けは、米ソ両陣営の結束と、
日本の孤立化と軍事的刺激を足すことになり、些少なりとも国防費を増大させる結果になった。
海軍将校たち
「大鳳改は、かっこいいけどな」
「でも居住性が悪くなると不評が出そう」
「一度、アメリカの軍艦に慣れるとな・・・」
「離着艦で便利だからアングルド・デッキは、あったほうがいい」
「艦舷の二重隔壁に巡航ミサイルを配置するとアングルド・デッキが邪魔になるよ」
「巡航ミサイル、艦上機、哨戒ヘリの組み合わせだから。格納庫はどうしたらいいものか」
「艦橋を大きくしないと対処できないから、飛行甲板が小さくなるかも」
「それ以前に、発射口が少ないと、全ミサイルを発射する前にやられるかも」
「だけど、飛行甲板に発射筒用の穴を開けるわけにもいかない」
「航空機と同じようにエレベーターで上げる?」
「格納庫から両舷のミサイル発射機に移動させて、発射するほうが益し」
「機能を複雑にするより、単能艦がいいような気がしてきた」
「その方が指揮を集中しやすいし、専修で活躍しやすい」
「しかし、大型艦は大型巡航ミサイルを装備しやすい」
「格納庫の高さだけでも10mくらいあるし」
「艦舷の丈を足せば、20m級の中距離弾道ミサイルも装備できる」
「軍艦から直接アメリカ西海岸を攻撃できるのなら、その方がいいと思うけどね」
「戦術的な機能より、戦略的な攻撃性ってわけか」
「相互確証破壊が確実な防衛とは言えなくもないが・・・」
「巡航ミサイルの射程は?」
「4000kmくら欲しい」
「長いね」
「巡航ミサイルは、片道の爆撃機みたいなものだからね」
「巡航ミサイルというより、特攻ミサイルだな」
「「「「「・・・・・」」」」」
ごほん!
「だから巡航ミサイルは大きくなるし。空母くらいの器が欲しい」
「4000kmならアラスカとハワイの線からロッキー山脈の西側の諸都市を狙える」
「だから艦上爆撃機が要らないって発想は、どうかと思うが」
「機能を優先するなら防空戦闘機と巡航ミサイルでいいと思う」
「いっそのこと、格納庫の前半分を巡航ミサイルの格納庫にでもするか」
「前が良いって理由は」
「着艦の衝撃は大きいからね」
「どっちか選べってなったら、飛行甲板の前半分に穴を開けてもいいんじゃないか」
「なんか嫌。艦舷から発射させるほうがいい」
「だから艦舷側は垂直発射ミサイルを置くって」
「スマートさを追求するなら、旧式艦上戦闘機をそのまま、巡航ミサイル改造する方法もあるよ」
「発射が遅いと撃沈されやすくなるよ」
「外郭壁を4重にすればいいんじゃないか」
「巡航ミサイルの本数は単純に4倍になるし、全通格納庫はそのまま使える」
「んん・・・ 幅は狭くなるが妥協してもいいかもしれないな」
「核兵器をもっと小さくできればいいけど」
「核兵器か、アメリカ版神火風の可能性だってないわけじゃないだろう」
「それは言える」
「もし、そんなことになったら神火人の数が国力の差になってしまうし、最悪の国際情勢になるな」
「核あh保有するとしても核を使うのは、なるべく控えたいな」
34000t級雷鳳型空母 (仮)
全長280m×艦幅30m(全幅46m)×吃水9m
ディーゼル電気推進160000馬力 速度32kt 12000海里
対空ミサイル60基 対艦ミサイル60基 迎撃ミサイル60基 対潜ミサイル60基
大型巡航ミサイル60基
61口径128mmFlaK40砲×2基 71口径40mmガトリング6連砲×6基
戦闘機12機 哨戒ヘリ12機
艦の外周外郭は4重となり、
離着艦の邪魔になりにくい場所にミサイル発射サイロが配置されていた。
40mm機関砲は無人で、甲板外周前後左右に配置されたドーム状に配置され、
レーダー射撃装置と連動して発射することが出来た。
「無人なら40mm機関砲をもっと増やしていいような気がするが」
「無人でもレーダーが追いかけられる標的は、4基だから」
「射撃用レーダーをもっと増やすべきじゃないか」
「トランジスターは高いから泣きたくなるような金額になるよ」
大和州
産卵で川を遡る鮭を熊が獲っていた。
視界に入る範囲で、人間も鮭を捕まえていく、
1匹捕まえるだけで、家族が1日食べることができた。
余計に捕まえ、売れば収入になるが獲り過ぎても値崩れを起こし、赤字となる。
それを防ぐなら外国に売ればよく、外貨や資源を入手でき、加工品を世界中に売ることができた。
ホテル
白人旅行者たちは、レストランに入ると思い思いに料理を選んでく、
「米と小麦は、ふんだんにあるようだな」
「大和州の産物と余裕で交換できるだろう。それに寒い地域だから保存に燃料を使わなくていい」
「日本が世界の穀倉地帯になりそうなのが困る」
「寒冷地に強い作物を品種改良で作ってるし」
「穀物をソビエトに輸出して農業の力をつけさせている」
「一通り回ったが扶桑も大和も都市が大きくなってるし、人口も増えてるようだ」
「寒冷地だというのに大変な力の入れようだな」
「しかし、城郭作ってまで日本風を誇示したいのかね」
「たいして、大きいわけでもない天守閣だけど、日本の城郭は、印象が強いな」
「城郭建設の9割は堡塁と水堀にあるからね。城は飾りだよ」
「しかし、よくもまぁ 懲りずに建設できるものだな」
「安い労働者が腐るほどいるからね」
「富裕層が増えてるからじゃないか。経済は活力があるようだ」
「平時の支配権は金融支配だから、資金源を押さえればいいだけだ」
「貧富の格差が権力の指標なのに。国民基礎所得で国民に一律分配している」
「社会資本が多いから需要を勝ち取る新興企業が生まれ易い」
「権力層と富裕層は、仲間内で利権を構築しにくくなるし」
「大企業は絶えず新興の中小企業に追撃され、市場は競争に晒されるはず」
「とてもじゃないが聖域で惰眠を貪れないし」
「聖域を作っていたら費用対効果で敗北させられるだろう」
「だが広長閥は、アメリカのような寡頭政治を望んでいない」
「広長閥が少数勢力なら、我田引水で利権を貪るだろう」
「当然、排他的な経済政策を執るため経済は縮小するはず」
「広長閥の政治権力基盤は、我々のような貸し借りで貧富の格差を作る金融支配と違うのだろうか」
「日本は、アメリカの金融奴隷支配制度と違うのだろうな」
「輝夜州、日満州、和洋州、扶桑州、大和州を工業的に自立させ」
「国民に一律分配で育てようというのだから、金融農耕制度と言えるでしょう」
「それより、死病の原因は?」
「国民に聞いても知らぬ存ぜぬか。適当な作り話しをするよ」
「有力なのは?」
「死神教。次がビルマのナッツ信仰。神仁教」
「あと、崑崙と裏八仙説。竹内文書とムー遺産説が目白押しだよ」
「どれもこれも胡散臭いな」
「結局、自身が神火風をモノにできない限り、信じることは不可能ということだろう」
「まぁ そうだが・・・」
「日本の装甲列車をどう見る?」
「施設過剰の割に火力が小さいな」
「費用対効果が悪すぎる」
「鉄道は、大量輸送と人員と物資の移動が目的で。軍事力としては副次的なもののはず」
「だが投資が多ければ役には立つし。軍民両用で使うのなら悪くはないと思うよ」
「地下トンネル予算が軍部と鉄道局のどっちから出てるのか気になるところだがね」
「運行を支配してるのは、鉄道局のようだが」
「寒冷地でいいとしても予算をかけすぎている気がする」
「漢民族を労働力で使えるうちに建設したいのだろう」
「漢民族は、労働移民扱いだっけ、二等市民より酷いもんだ」
「しかし、生活水準は、中国軍閥より高いし、安定してる」
原子力開発フロア
炊飯器サイズの原子炉の研究が進んでいた。
完成すれば1日10000wで60年くらい発電してくれる。
蓄電池は必要だがオール電化でも一般家庭が十分足りる規模になった。
大規模な送電線は不要になり、
蓄電池と組み合わせれば原子力自動車も動かすことができた。
もちろん、本命は原子力潜水艦で、
開発は、放射線に強い神火人が担当していた。
福祉センターの車が大会社の駐車場に入っていく、
「竹ばあさん、今度、死ぬんだって?」
40代の女性は、面白そうに笑う。
「特高に、もっと腰を曲げて歩けって言われなくなるから天国に行けそうだよ」
「もう、肌黒い化粧にも飽きたからね・・・」
「「「「あはははは」」」」
「でも自分の葬式を見るなんてね」
「そういや、竹ばあさんなら、棺桶越しに見れるんだったな」
「おかげで、身寄りのないババァになっちまうよ」
「神火人の仲間がいるだろう。それに時々は、会えるだろう」
「昔馴染みと会えなくなるのが寂しくてね・・」
竹ばあさんは、放射線室に入っていくと、
放射性物質を組み合わせながら実験データーをとっていく、
放射線を電化させる技術は、常人であれば寿命を縮めてしまう。
しかし、一端の神火人なら常人の1000倍も許容範囲があった。
「第二の人生か。これから少しずつ、増えていくだろうな」
「しょうがないと言えばしょうがないし。羨ましいと言えば羨ましいな」
「そういや、電気会社からクレームが来たらしいぞ」
「そりゃ 電気代で食ってる会社だから発電を家電にされちゃかなわんだろうがね」
「しかし、国防を考えたら、一般家庭で発電してくれたら守り易い」
「航空戦力と迎撃ミサイルの割り振りを考えるとそうなるか」
広島
遺族が涙しながら献花をお棺に入れ、親類縁者たちも後に続く、
『竹ばあちゃん。顔色がいいのね。まるで生きてるみたい』
『肌の張りも・・筋肉もありそうなのにね』
『そうだな。寝てるみたいだったよ』
『ピカドン浴びてケロッとしてピンピンしていた人が、死ぬときはあっけないものだな』
『ほんとう、1週間くらい前に会ったけど、元気だったのに・・・』
火葬場
最後の別れが終わると、棺が炉に入れられ、
反対側から引き出され、別の棺が入れられる。
燃やされるのは、身寄りのない別の遺体で、骨となって出てくるのは別人の遺骨だった。
特高の人たち
「・・・・」
「竹ばあちゃん。そろそろ起きてください」
「・・・間違って、一緒に燃やされたらどうしようかと思ったよ」
「貴重な戦力ですので、それはありませんよ」
「しかし、あまり長生きされても困りますからね」
「とりあえず、新しい、家に案内します」
「やっぱり、遠くに行くのかい?」
「噂が漏れたら大変ですからね」
「もう、皆に会えなくなると思うと、寂しくなるね」
「お仲間がお待ちしてますよ」
「でも、20も若返るなんてねぇ」
「3年くらいかけて、化粧で老けさせただけですし。30歳くらい若返ってもいいくらいですよ」
「そうかい、嬉しいねぇ」
「次に死ぬときは、もっと、弱々しくしていてください」
「はいはい」
世界最大級の鉱山から鉄鉱石が運び出され、日本行きの30万t級船に積み込まれ、
そして、世界最大級の油田からも原油が汲み出され、日本行きの50万t級タンカーに給油されていく、
安い鉄鉱石と原油は、勤勉勤労な労働者と、低賃金で製造される製品の国際競争力に反映され、
日本で製造された部品は、優先的に親日国家に流れ込む。
ブラジル
ジュセリーノ・クビシェッキ大統領の “50年の進歩を5年で” のスローガンと、ブラジリア遷都は、
内陸に首都を移すことで、サン・パウロ派とミナス・ジェライス派の争いに終止符を打ち、
全国的な開発でブラジルの総生産を拡大させる策だった。
対して、軍事独裁を画策するアメリカと親米勢力の間で、激しい政争が起きていた。
日本は大統領派側に立って支援していた。
この時期、アメリカで生産できる民生品で日本が生産できない製品はなく、
ブラジルが必要とする製品は、アメリカ製から日本製に切り替えられていた。
サンパウロ 日本人町リベルダージ
シュラスコ
ウェイターが肉の塊を持ち歩いてテーブルを回る。
日本人たちが肉の一角を指さすと、ウェイターが薄く切って皿に載せていく、
「・・・へぇ・・・肉の味がする」
「俺は、最近、好みの部位が見分けられるようになったよ」
「痩せインド牛もなかなかじゃないのか」
「牧畜のやり方が野生に近いからね」
「そういや、牧畜産業は、食い込めてないな」
「牛のワクチン注射と牧草農薬はアメリカが強いよ」
「日本も満州で牧畜やってるじゃないか」
「牧草もワクチンも試行錯誤だよ・・・」
「あれはなに?」
「鶏の心臓」
「鶏の心臓・・・ 鉄臭いが味は悪くない」
「この炭酸はいいような気がする。コーラよりいいんじゃないか」
「ガラナだ。確か南洋でも栽培し始めたと思う」
「アメリカのコカコーラばかり、いい思いさせるのも癪だからね」
「それはそうと、ブラジルが近代化してしまいそうだな」
「どうかな。例のフィルムで反米は強まってるけど、金をもらったら寝返る人間も多いし」
「ブラジル人は、道徳や良心を発揮できるほど豊かじゃないからね」
「ところで、本国から古代南アメリカ文明を調べるよう言われてるのだが」
「そんなもの調べて、どうする気なんだろうか」
「俺の方が物知りって自惚れたいんじゃないのか」
「そんなもののために」 笑
「本当は、国際情報詐欺に使うんじゃないだろうな」
「まさか、アメリカ人やイギリス人じゃあるまいし」
「日本人は誠実だよ。騙されない知識を持っていたいだけだろう」
「だといいけど・・・」
「とりあえず、ブラジルは広大な土地があるからな」
「食料輸出でアメリカの穀物メジャーを牽制できるだろう」
「ブラジルは流通システムと港湾設備が弱いから海外販路がね・・・」
「やっぱり、アメリカが妨害してる?」
「アメリカも穀倉地帯だからな」
「ブラジルとアルゼンチンの穀物が国外に流れるとアメリカ穀物メジャーは、窮地、ポシャるだろうな」
「是非、流通システムと港湾設備を支援したいね」
「アメリカとブラジルで穀物戦争になるかも」
「それは楽しみ」
日本の膨大な貿易黒字は、巨大な外貨を得とくし、
外貨は力になり、死神教を核に、対外情報機関を構築しつつあった。
影で暗躍したのが少数民族で、欧州では黄色人種系のロマ人、白人系のイェニシェのジプシーだった。
そして、東西陣営に属したくない諸国は、日本と組む事を望み、
自由都市リューベック、スウェーデン、スペイン、ポルトガル、トルコで、日陣営を形成しつつ
空軍 サーブ35ドラケン(直径60cm級彗星607型エンジン2基)
陸軍 40t級Strv103戦車
海軍 1800t級UボートXXX型
など、兵器の共有化が進められていた。
スペイン マドリード
日陣営戦略会議
「イギリスは経済を縮小させるつもりのようだ。来年からアフリカ大陸の植民地が独立する」
「アフリカ大陸は、統制が失われ、貧富、民族、言語、宗教の軋轢で抗争が起きるだろう」
「そして、アメリカとソビエトは、権力闘争に火に油を注ぎ、軍生品を中心に利益をあげる」
「武器と資源を交換すれば儲かりますからね」
「アフリカでも日陣営の第3勢力を作るべきでは?」
「資源と交換で民生品を売ろうとしてるが、欧米に資源を押さえられている」
「安定した外交関係を築こうとしてもアメリカとソビエトに支援されたゲリラに妨害される」
「支配権が及ばないのなら、意図的に近代化させないよう画策してるようだ」
「親日ゲリラを組織して、権力を奪取するとか?」
「見所の有りそうな人間を留学させてる」
「日本商品の代理店をやりたがる先住民は少なくないが、組織化まで至ってない」
「死神教に興味を持ってる先住民は多いようだ」
「しかし、死神教は、神の名の下に聖戦を強要しうる宗教ではない」
「つまり、陣営としての宗教化は意味がないと」
「そうなるね」
「時に、ユーゴスラビアのチトーと交渉してはどうだろう」
「ユーゴスラビアは共産圏ですが」
「だが外交は自主独立を執ってる」
「共産主義を国内に引き込むことになるのでは?」
「共産主義を必要以上に恐れることもなかろう」
「日本は大量の労働移民資源を持っているし」
「国民基礎所得で格差を是正してますが、ほかの国はそうでないのですよ」
「貧困層は、社会主義の実現の声を望む者が少なくないのですよ」
「貧困層が望んでるのは、社会主義や民主主義や資本主義でなく、貧富と地域の格差の是正ですよ」
ゴ、ゴホン! ゴホン!
「ユーゴスラビアを味方につけることができるなら、国防産業は大きな利益になるのでは?」
「「「「・・・・・」」」」
「そういえば、日本人に成り済ました中国四川人が欧州に入り込んでました」
「本当に?」
「時々ですが、語尾に “ニダ” って使ってましたよ」
「・・・・」 脱力
日満州(100万ku)
蒼い空と穀倉地帯が地平線まで広がっていた。
その光景が日満州の7割の風景で、ごく一部が近代化していた。
油田地帯に石油精製所が建設され、工場群が作られ、街が広がっていく
油田地帯は日満州最大の産業地帯になっていたが、油田の自給自足という戦略的な価値でしかなく、
日本の国際的な競争力を押し上げる経済的貢献は、中東油田が最大だった。
日本人は移民と人口増加で徐々に増えていくものの、まだまだ、少数派だった。
一方、漢民族は、待遇が改善たれたものの労働移民にされ
日本人に帰化するか、
稼げるだけ稼いで、大陸へ帰還すると決めてるのか、大陸での人脈も広げていた。
そして、見切りをつけた漢民族は、あるだけのポイント通貨で商品を買うと、
中国大陸で店を開いて利益を上げていた。
満州里市は、ソビエト国境の街として栄え、ソビエト領側のザバイカリスクと面していた。
国境の都市であることから、国境沿いに1kmに渡って掘が作られ、
高さ100mほどの堡塁が作られていく、
日ソ両国を繋ぐ複々線は、標準軌1435mmと広軌1520mmが互いの街まで乗り入れ、
互いの街で、いったん、物資と乗客が降ろされ乗り換えられ、
日満州で産出した穀物の一部がソビエトに輸出されていく、
日本人たち
「ロシア人との商売はどうよ」
「スターリンが死んでから粛清が減ってるし、温和になったと思うね」
「極東シベリアが成長してる気がするが」
「食料を輸出したら、人口は増えるだろうよ」
「まぁ 減反するより輸出するほうが、はるかに益しな政策では、あるけどね」
「ソビエトに足場は作れそう?」
「日本料理の進出はいいようだ。チェーン店化させてる」
「あと、核抑止で、死神教に関心を持つロシア人も増えてる」
「しかし、死神教のためにソビエトを裏切るかというと、そこまではいかない」
「もっと教祖を崇拝させるような教理じゃないと」
「教祖が教義を信じてないようじゃな」
「まぁいいよ。広長閥は、原爆と死病を切り離したがってるようだし」
「やっぱり、やばいんだ」
「世界中の諜報機関が広島と長崎に集まって情報収集してるからな」
「死体の山から生き返った噂も尾ひれを付いて広がってるし」
「一応、願望で幻覚を見たとか。被爆で混乱して間違ったってことにしてるけどさ」
「重度熱傷が早いと1日、遅くても数日で治ったの、見てる奴が多いから」
「これで、東京オリンピックってなったら観客と旅行者に紛れて、公然と入ってくるし」
「やっぱし、東京オリンピック。やるのか」
「たぶん、1964年になると思う」
「焼け野原だったのが十数年でオリンピックか、嘘みたいだな」
「極東ソビエト軍がもう少し弱ければ、発展も速いんだけどね」
「極東にT55戦車が大量配備されてきてるんだっけ?」
「大量と言うわけでもないな。気を使われてるフシもある」
「そうなのか」
「スターリンは、本気で神火風を恐れたみたいだから」
「極東ソビエト軍の総司令部もチタの地下300mにあって戦々恐々としてるらしい」
「ひょっとしたらフルシチョフ書記長を脅したら飛び上がるんじゃないか」
「かもな」
国防省科学技術本部
航空機開発の核は、エンジンであり、
レシプロエンジンからジェットエンジンになっても変わらなかった。
そして、ジェットエンジン開発も性能向上を追求していくうちに、
推力と航続距離を向上しやすいターボファンエンジンへと変遷していた。
「ターボファンエンジンに変わっても径を変えないそうだ」
「それだとファンの分だけエンジンが小さくなるよ」
「旧式機でもエンジンを換装するだけで使えるからね」
「代わりに直径1200mm級天星エンジンを追加する」
「まぁ 旅客機用は大型エンジンがいいかもしれないが実体はワンランク小型にしたようなものだ」
「60cm径の彗星以降は、ワンラン下のデータを流用できるから開発で有利かもしれないが」
「40cm径の流星はほぼ新設計になるから大変だろうな」
「可能な限りファンを小さくするほうがいいだろう」
「どちらにせよ。このままだと次期主力戦闘機は彗星を使うことになるかもしれない」
「だから、エンジンを換装とはいかないね」
「なぁに、いざとなったら旧型は無人戦闘機か、標的機。巡航ミサイルにしてしまえばいいよ」
「だけど、開発しても機数が少ないと、戦力にならないだろう」
「予算が少ないのが悪い」
「焦土からの国土再建途上とはいえ、国防の神火人依存は変わらないか」
「まぁ 他国に比べて軍服の防弾予算は桁違いに大きいからね」
「そっちの予算を回してくれたら、もっといい戦闘機を開発できるんだけどな」
「だけど、神火人部隊って超回復力だけじゃなく、双方向交信で相乗的な強さがあるだろう」
「だから常人部隊も小型無線を持てば同じように強くなるって、誰だって思うからな」
「それで、携帯無線機の小型化か。そっちに予算が取られると流石に辛い」
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月夜裏 野々香です。
そうそう、アメリカは核実験で25万人から50万人を被爆させたそうです。
怖いですね。50万人なら広島長崎を足した数を超えてますけど、
ソビエトと中国も、たぶん、やってますよね。
この戦記は、神火風の調査も兼ねて、もっと多くの将兵が被爆してるでしょうね。
怖い怖い。
あと核実験に比例して肺癌死亡者が増えてそうなのですが
癌情報サービスで肺癌を調べてみましたが明らかに不自然な統計でした (笑
日本・輝夜 (72万ku) 日本・半島
和洋州 (25万ku) 中国京杭大運河東部域
日満州 (100万ku) 外満州
扶桑(カムチャッカ・チュクチ)州 (121万ku)
大和(アラスカ)州 (171万7854ku)
南洋 (ビスマルク・ソロモン諸島) (78150ku)
フィリピン バターン・コレヒドール島 日本自治 “桃太郎” 区 (1000ku)
マレーシア ブルネイ 日本自治 “金太郎” 区 (1000ku)
インドシナ ダナン 日本自治 “舌切雀” 区 (1000ku)
インドネシア パレンバン 日本自治 “浦島太郎” 区 (1000ku)
ビルマ ヤンゴン 日本自治 “因幡の白兎” 区 (1000ku)
シンガポール 日本人自治 “鶴の恩返し” 区 (1000ku)
日本海軍
第01機動部隊
空母 白鳳(ランドルフ)、海鳳(ハンコック)、雷鳳(タイコンデロガ)
戦艦 薩摩(ミズーリ)、駿河(ウィスコンシン)、
重巡 穂高(セントポール)、
軽巡 八瀬(ダルース)、黒部(サンタフェ)、白萩(モービル)、河津(ビロクシー) 駆逐艦18、
第02機動部隊
空母 蒼鳳(アンティータム)、幻鳳(シャングリラ)、慶鳳(ボノム・リシャール)、
戦艦 因幡(アイオワ)、播磨(ニュージャージー)、
重巡 蔵王(ボストン)、
軽巡 天白(オクラホマシティ)、三原(アムステルダム)、日高(マイアミ)、天神(パサデナ) 駆逐艦18
2410t級ガトー型潜水艦46隻
2424t級バラオ型潜水艦26隻
2424t級テンチ型潜水艦8隻
1360t級エヴァーツ型護衛駆逐艦(21) 1740t級バックレイ型護衛駆逐艦(44)
1240t級キャノン型護衛駆逐艦(23) 1250t級エドサル級護衛駆逐艦(24)
1450t級ラッデロウ型護衛駆逐艦(4) 1350t級ジョン・C・バトラー型護衛駆逐艦(24)
ジェットエンジン
直径40cm級流星エンジン 直径60cm級彗星エンジン
直径80cm級蒼星エンジン 直径100cm級紅星エンジン 直径120cm級天星エンジン
“原爆を落とされた人々の世界平和を望む会”
広島 賀茂忠行 天光正教 ウリエル 死神ウラン
長崎 安倍晴明 聖炎主教 サリエル 死神プルト
第15話 1959年 『日陣営と、米ソ雪解け』 |
第16話 1960年 『事大賊党 VS カオス・クライシス』 |