月夜裏 野々香 小説の部屋

SF小説 『スターシード戦記』

 

 第02話 『情状酌量は?』

 西暦2306年

 地球の地表で幾つもの核爆発が起こっていた。

 ベンヌックスの核爆弾は、地球連邦製より小型で迎撃困難だった。

 しかし、ベンヌックス側もオーラーローブ維持の燃料である原住民殲滅を望んでおらず。

 地球侵攻は、地球連邦に発見された緊急避難といえなくもない。

 小惑星ベンヌックス

 「これ以上の原住民殺傷はベンヌックスの生きる手段の妨げになるかと」

 「オーラーローブの開発は?」

 「まだ年月が必要かと」

 「オーラーローブの開発は年月がかかる」

 「そして、年月が経過すれば、原住民の人口も緩やかに増えるだろう」

 「調整がうまくいかないとオーラーローブの維持に必要なエネルギー消費も大きくなる」

 「その分、原住民の犠牲も大きくなり、我々の生きる分子の数もおのずと縮小します」

 「宿木だからな」

 「結局、太陽からの放射線、地球の生態系とも我々が生きていくには辛過ぎるか」

 「ユニット式の増幅で原住民に寄生するという選択もありますが」

 「はぁ それでは我々自身ではなくなる」

 「しかし、選択の一つだろうな・・・」

 「ベンヌックス種族。ベンヌックス文明が存在したという証にはなります」

 「そのために他の恒星まで来たのですから」

 「赤色巨星化以前に、もっと文明のレベルを上げておきたかったな」

 「我々が、この恒星系を支配すれば、次の飛躍は、より楽になるかと」

 「そうだな。この恒星系の原住民は、ベンヌックス文明の踏み台になってもらおう」

 「しかし、この恒星系の原住民。なかなか、やります」

 「ああ、梃子摺らせてくれる」

 「こちらの人口は少なく、研究開発能力、資源採掘、産業など、総合力、原住民より劣ります」

 「こっちは100人にも満たない」

 「備蓄は小惑星の格納庫にある分だけ・・・」

 「この恒星系にベンヌックスの生態系を植えつけるのは反動が大きく危険ですし」

 「さらに年月がかかりそうです」

 「同じ炭素系でも化学物質で差異がある」

 「また生態環境が違いすぎる」

 「融合も危険だ」

 「下手なことはできない」

 「生態系が完全に破壊されてしまえば、我々も原住民も住めない星になる」

 「やはり、穏便に刷り込んでいくというのがベストだった、といえます」

 「先に発見されてしまったのでは仕方がなかろう」

 「不幸な結果になったが生存本能だ」

 

 

 焼け爛れた大都市上空を大気圏機動部隊が飛行する。

 大気圏空母ホーネット 艦橋

 「・・・中型都市も狙われ始めたか。このままだと地球文明の産業は、大きく後退するな」

 「ベンヌックス宇宙艦隊に地球軌道上を制圧されたら、この大気圏機動部隊も・・・」

 「わかっている」

 「地表から衛星軌道に打ち上げと成層圏から衛星軌道に打ち上げでは費用対効果が違うからな」

 「ですが地球人類を滅亡させたいのであれば、もっと非道な方法を使うのでは?」

 「ベンヌックスは、息切れしているほかに、地球人類の滅亡を望んでいない可能性もあるらしい」

 「本当に?」

 「物事は、相手の立場になって考えることだ」

 「と、言われましても・・・」

 「仮に地球人類が他の恒星系に小惑星を飛ばして移民するとする」

 「小惑星内部には宇宙艦隊。たぶん、人口は少数。どうするね?」

 「惑星の生態系を根絶やしにして惑星を征服では?」

 「太陽のスペクトルや地球の組成環境で生きていけないとしたら」

 「地球の生態系を改造するのでは?」

 「それをコンピューターで試算したそうだ」

 「来襲した生命体にもよるが異質の生態系であるほど収拾がつかなくなる」

 「・・・」

 「仮に二つの生態系が近くても自らの肉体を強化改造するほうが早い」

 「下手に融合させようとするれば、面倒な化学物質が生じて共倒れになりかねない」

 「化学物質?」

 「ウイルスもだ。どちらの生命体にとっても脅威だろうな」

 「では、どうしたら?」

 「年月をかけて、地球の生態系に合わせつつ肉体を改造強化していくだろうな」

 「超人的なパワーは、なしですか?」

 「常識的に体重以上のパワーは出せないだろう」

 「しかし、効率がよければ異質の生態系でも生きていける」

 「異質な世界で生きていくには、余計にエネルギーが必要になるはず」

 「それがベンヌックスが地球人類を滅ぼさない答えだよ」

 「!?」

 「地球人の生体エネルギーが、その余計なエネルギーなんだよ」

 「そ、そんな、まさか・・・それでは・・・」

 「吸血鬼だな。まるで・・・」

 「・・・そんな」

 「別の言い方をすれば、我々は連中にとっての家畜だな」

 「では、連中が地球人類穂を滅ぼさないのは・・・」

 「費用対効果だろうな」

  

  

 地球物理学研究所

 「・・・E = mc二乗」

 「エネルギー(E)は、質量(m)と光速(c)を掛けて二乗したモノに等しいという計算だが・・・」

 「ベンヌックスのおかげで新たな可能性を見出すことができた」

 「光速(c)を小さくすると、m×n = c/n が成り立ってくる」

 「そ、その根拠は?」

 「太陽の半径は70万kmだ」

 「太陽の中心でニュートリノが光速で抜けると単純計算で2、3秒で太陽の表面に達する」

 「・・・・」

 「察しのいい者は、ベンヌックスのエネルギー弾の収束率と理屈がわかったと思う」

 「太陽の中心で発生した光は、可視光線・赤外線・紫外線」

 「ほかにも、X 線、プラズマ流、太陽宇宙線、太陽電波が太陽の表面に達するまで・・・」

 「数百万年から1千万年以上かけて、ということになる」

 「では、ベンヌックスのエネルギービーム兵器が光速より遅く」

 「光線でなく光弾なのは、収束率の関係?」

 「無論、ベンネックスのエネルギービーム弾が数百年とか、数千年も保存できるものではない」

 「少なくとも地球艦隊を長距離から撃ち抜くビームエネルギーを収束できる時間は維持できる」

 「通常レーザーは1秒で約30万kmだが。ベンヌックスのエネルギービーム弾は、1秒で約10万km」

 “E = m×3 c/3 二乗” と黒板に書き加えられる。

 「つまり、光速の3分の1となった代わりに質量(m)×3」

 「エネルギービーム弾の内部では、光子が半物質化していると考えられる」

 「確かに破壊された地球艦艇は、熱エネルギーで溶かされたにしては不自然な破壊だ」

 「敵のビーム弾は、外に対して熱エネルギーも光エネルギーも放射されていない」

 「むしろ、我々のビーム兵器より熱量で弱々しいほどだ」

 「映像で見る限り我々の艦隊の光線の方が力強く派手に見える」

 「しかし、撃破されているのは、我々の艦隊だ」

 「こっちはエネルギーを外に放射して垂れ流し」

 「ベンヌックスは魔法瓶にエネルギーを入れてぶつけているような感じだな」

 「なるほど・・・光速の3分の1でも、回避は不可能だし、エネルギー収束が強い方が得だ」

 「ビーム弾を低速にすれば、低速するほど、収束率が増し、攻撃力が増す・・・かね」

 「・・・いまは、そう推測している」

 「攻撃だけでなく、防御。ベンヌックス艦隊のバリアの強さとも関係があるかもしれない」

 「んん・・・」

 「しかしだ・・・」

 「・・・・」

 「理屈がわかっても、どうやって、それを可能にしているのかは、これからになる」  「 (−_−)

 はぁ〜

 ・・・・落胆・・・・・

  

  

 捻じ曲げられた空間

 芳村シュウと榛名ジルは、地球人と明らかに違って見えた。

 オーラースーツのエネルギーは、外界から身を守るためと擬態に使われる。

 それでも長い年月を掛けて肉体改造し、素でも短期間であれば生きていける。

 もちろん、オーラースーツは攻守にわたって使用できた。

 その気になれば、1個中隊を相手に戦争できるほど。

 とはいえ、それ以上ではない。

 オーラーエネルギーが尽きれば、肉体は次第に弱り死と直結する。

 つまり、命を擦り減らして戦う必要はなく、

 軒下を借りて母屋を・・・が究極の目標で、

 穏便に済ませたいと考えるのが異種族の生きる道といえた。

 しかし、それは遠い未来のことであり、今は、寄生している身。

 二人は、ブドウに似た食べ物を食べる。

 「・・・ここの食べ物も久しぶりかな」 シュウ

 「気をつけないと外で猛毒になることもあるよ」 ジル

 「そうだね」

 「でも、ほかの異端種族も調整で災厄を起こしているけど・・・」

 「スペイン風邪とか、香港風邪とか、あれかな?」

 「可能性は大ね。調整が成功したにしても失敗したにしても・・・」

 「原住民の被害は少なくない・・・わたし達も致命的に迷惑する」

 「どちらにしろ、ちゃんと計算してやらないと・・・」

 「それより、当面は、ベンヌックスよ」

 「あの馬鹿タレども、何とかしないと、わたしたちまで・・・」

 「この前、連中のナノマシンを見つけたけど」

 「はぁ・・・」

 「まだ、生態系を調べるための物だけど」

 「操作系は、まだ、みたいね」

 「あれだけ大規模な小惑星だと、研究室、工場とかあって、多方面でやれて何でもありだな」

 「でもベンヌックスの宇宙艦隊は、あれで打ち止めかな」

 「人口は、1000人もいないと思うね。建造も整備も怪しいはず」

 「こっちは壊れた宇宙船」

 「それも有人じゃなくて、遺伝子加工船だし」

 「あと、この空間だけ。もっと分が悪いよ」

 「ったく、ベンヌックスの連中。波風立てて、どうしてくれようかしら」

 「次の公転軌道の再接近で、どうするかだね」

 「ベンヌックス?」

 「多分、最初は、公転周期に乗るため、速度を落とすための減速スイングバイだったはず」

 「じゃ・・・次のスィングバイで連中が好む、太陽との相対距離を選ぶ?」

 「と、思うよ」

 「太陽エネルギーと宇宙艦隊さえ、あれば、小惑星でも、十分、繁殖できるんじゃない」

 「どうかな。太陽光のスペクトル比も、あるからね・・・」

 「試行錯誤が必要だものね」

 「この果物だって、わたし達と同じ、中間変種だし」

 「だよね」

  

  

 ヘリウム3は、生活環境を変えていた。

 寿命を超えて飛ぶ飛行機も製造でき、

 空に居を構える人間も現れる。

 ここに、ひとつのグループが巨大飛行艇で洋上を飛行していた。

 「・・・取り舵14度」

 「了解、取り舵14度」

 「当分、陸地は避けるべきだろうな」

 「ええ、中型都市も爆撃されているほどですから」

 「参ったね」

 「ええ、参りました」

 パイロットも副パイロットも、人外の者に見えた。

 「しかし、こうなると海中に潜む方が良かったかな」

 「大型船を潜水仕様で沈めて、そこに住むのは、気分的に限界がありますよ」

 「おかげでナノマシンの研究が進んで生活の足しになっているだろう」

 「体内のナノマシンのおかげで、ずいぶんと順応が進みましたがね」

 「俺達は、この世界で錬金術を使って比較的、お金持ちだ」

 「しかし、ベンヌックスは、イレギュラーだよ」

 「痛し痒しだな、原住民の科学技術と向上させると、我々が発覚されやすくなる」

 「ですが科学技術が低いと我々の研究開発が遅れる。まして資材は駄目駄目だ」

 「“人族の科学技術を向上させて自滅” を繰り返すはずだったのに・・・」

 「どこかの異種族に核戦争を妨害されたからな」

 「ええ、ベンヌックスの核攻撃は助かったというべきか・・・微妙ですね」

 「そうそう、表向き、原住民同士の内輪揉めが基本だからな」

 「このままだと、我々もベンヌックスの煽りで発覚され滅ぼされる」

 「わたし達の生命体にとって、この星の生態系は足りない化学物質と余計な毒がありますからね」

 「しかし、この体。どこまで、この星の生態系に近づけたものか」

 「我々が、我々で、なくなりますからね」

 「もう少し、太陽光と地球の大気成分と土壌がな・・・・」

 「それを言っては・・・」

 「痛し痒し、か・・・」

 「ええ、この機内だけは人工的になんとか、ですからね」

 「問題は、生体エネルギーの不足をどうするかだ」

 「原住民が多いところは核攻撃を受ける可能性もある」

 「人工的な居住空間を作れるが自給自足は、まだ足りないな」

 「ええ」

  

  

  

 ベンヌックス

 総統府

 「ベンヌックスが太陽から離れていくにつれ地球への攻撃が弱くなる」

 「公転周期は342年。遠く離れる前に地球に大打撃を与えるべきだ」

 「ベンヌックスがエッジワース・カイパーベルトの外側」

 「オールトの雲まで行くと地球への攻撃は困難になってしまう」

 「もっと地球人の人口を減らしても大丈夫なのでは?」

 「だが宇宙艦隊の稼働率は低下している」

 「我々の人口では、艦隊整備もままならないし、回復させるられない」

 「攻撃力が微妙に不足だな」

 「ベンヌックスの軌道変更はエネルギー消費が激しい」

 「次にベンヌックスが地球に接近するとき、我々は、地球の反撃を受けるだろう」

 「地球文明を根底から崩すべきだろうな」

 「せめて、石器時代並みにできれば、次に来たとき、家畜化できるのだが・・・・」

 「そういえば、地球に異種族の存在を確認したというのは?」

 「それらしい接触はありますが、まだ未確認です」

 「完全に地球から離れる前に殺戮ロボットを送るべきだろうか」

 「ええ、しかし、こちらも無防備になってしまいます」

 「新たに軍事力を整備しようとしても産業は、皆無」

 「ヘリウム3をどの程度、採集できるかで、変わってくるだろう」

 「人口を増やせれば産業も興せる」

 「ええ、しかし、増やしてもいいものかどうか・・・」

 「「「・・・・」」」

 ベンヌックス人の人体改造は始まったばかりだった。

  

 

 木星 軌道

 ベンヌックス艦隊

 ヘリウム3は、ベンヌックスにとっても、重要な戦略物資だった。

 恒星間を越えてきたベンヌックスは、戦略物資の備蓄が少ない。

 地球連邦と戦いながら、ヘリウム3の採集もしなければならない。

 ベンヌックスの地球攻撃が精彩を欠いていくのも資源採掘が原因だった。

 「地球連邦艦隊の資源採掘は?」

 『現在、ベンヌックスの反対側にある土星から採取している模様です』

 「そうか。警戒を怠るな」

 「土星より、木星の方が地球に近く、ベンヌックスは徐々に離れていく」

 『了解です』

 「エネルギー量に比例して、人口も増加できる」

 『了解』

 

 

 

 

 大気圏機動部隊

 空母 ホーネット 艦橋

 「迎撃は?」

 「間に合いません」

 「っく・・・」

 太陽数百個分の閃光。

 光球が大地を削り、夜空を照らし、キノコ雲が天空にまで昇る。

 「提督。大都市に続いて、中都市の全てが破壊されつくしています」

 「人類よ、大自然に帰れかな・・・」 ・・・っ・・・涙・・・

 「このまま、人口が減少すれば宇宙技術どころか、大気圏艦隊を存続させる産業基盤すら失います」

 「現代科学の粋も産業も、人口によって支えられているからな」

 「地球文明の再建は・・・」

 「ベンヌックスの攻勢は、精彩を欠き始めている」

 「息切れしつつあると見るべきだろうな」

 「直径2000kmの小惑星に過ぎませんからね」

 「軍事力の総量なんて、高が知れていますよ」

 「そういうことだ」

 「耐え忍べば、ベンヌックスが次の公転周期で内惑星側に入ってくるころ反撃できる態勢を整えられるだろう」

 「300年は、短すぎませんか?」

 「どの程度の産業基盤を残すことができるかだな」

 「資源もです。地球資源は、残り少ないですから」

 「月と火星基地、金星もだ」

 「月も火星も金星、食料自給率と戦力は、ともかく」

 「生活必需品は、地球の産業に頼っていましたね・・・」

 「そうだったな・・・」

 「・・・・」

  

  

 ベンヌックスの地球攻撃は、武器弾薬の枯渇に従って低迷していく。

 地球は、紙一重の救いであり。

 ベンヌックスは攻撃だけでなく、

 守りのための武器弾薬まで消費し焦燥感が広がっていた。

 地表で、いくつかの核爆発が起こり、

 その中心部で、被爆の及ばない場所が作られる。

 周辺の閃光に混じって大気圏外から機体が降りた。

 地球側の監視網を妨害するための工作で、

 ベンヌックスの人型機動兵器4体が大地に立った。

 ベンヌックス本小惑星の防衛・警備用兵器で、

 投入は、捕獲されたとき、地球に科学技術が知られるなど、賛否で分かれた。

 しかし、地球の言語が、ある程度、理解され、

 人型を人間そっくりに偽装できるようになると情報収集のため、投入が決まる。

 むろん、自爆装置付。

 「・・・ここが、地球の日本か」

 「情報収集を始めましょう」

 無線通信は盗聴の恐れがあり、音声会話が行われる。

 鳥羽ナオヤ(夫)、鳥羽イクエ(妻)、鳥羽ショウヤ(長男)、鳥羽エミナ(長女)

 ごく一般的な家族構成。プロフィールなど、大体、決まっていた。

 ベンヌックスは、地球の電波を盗聴し、

 衛星から撮影し、

 ナノマシンの投下など地球の現状をほぼ把握していた。

 地球人の人口は、20億以下に減少。

 家族、親類縁者、身寄り知人も全滅は珍しくなく、

 プライベートな記録を偽装するのは難しくなかった。

 「ひどい、やられようだけど、軍事力は、維持されている」

 「社会基盤はボロボロのはず」

 「最先端技術は維持できず廃れていくはずだ」

 「でも、ベンヌックスは遠ざかっていく。何とかしないと」

 「重要拠点の潜入は難しい」

 「しかし、それ以外なら、何とか入り込める」

 「あとは、砂取りゲームの要領だ」

 「ええ、問題は、ほかに異種族がも存在するかね」

 「異種族か・・・」

 「近傍で赤色巨星化している恒星系で、どの程度、知的生命体が育っているか、宇宙技術があるか」

 「その種族に飛翔の意欲があるか、もね」

 「引き篭もりで、ヘタレ種族など、どうでもいい。この恒星系に来ている種族だけだ」

 「推測では、この星に定着している可能性は、3種族以上らしい・・・」

 「少なくとも周辺はいないみたい」

 「ああ、四方が都市で、この隙間だけが被爆を逃れられる」

 「選定とタイミングは、合っていたな」

 「良かったわね。あなた」

 「そうだね。行こう」

 家族の理想ともいえる関係と雰囲気。

 ベンヌックスがTVドラマを検証し、研究した光景だった。

  

  

  

 ぶっすぅうう〜

 とした少年と少女が立ち尽くす。

 「ベンヌックスのやろう・・・」 ふるふる シュウ

 「風景が変わっているじゃない」 ジル

 「ぅ・・・風景で、ルートを覚えているのに、あいつら、コロス」

 「なに考えているのよ。あいつら、原住民を殺しすぎよ」

 「公転軌道で、次に戻ってくるまで、300年以上だろう。人口を減らしておきたいんだよ」

 「んん・・・ひょっとして、わたし達にとっても、チャンスかしら」

 「ベンヌックスを潰せればね」

 「もっとも、僕達の方も、この星の生態系で “素” で生きていける、という条件付だけど」

 「・・・いまだ、寄生状態だと、無理か・・・」

 「はやく、この星の生態系に順応したいものね」

 「こっちは機材が残っていないし」

 「地球の遺伝子工学やナノテクノロジーじゃ、無理だよ」

 

 

 

 

 月は、資源地とか、組立工場に近い。

 対ベンヌックス戦で宇宙産業は歪になり、著しく低下。

 それでも、月基地に資材が運び込まれ、宇宙戦艦が建造される。

 「120mm砲12基か、47mm砲6基・・・それと、320mm艦首砲・・・微妙だな」

 「ベンヌックスから得た情報と、残骸の流用だと、この辺だな」

 「これだけ、やっても、勝てないんじゃな・・・」

 「だいたい、ビーム兵器を光速以下に落とす技術に問題ありだぞ」

 「ビーム兵器を強化する方法は、エネルギーを大きくするため分母を大きくする」

 「しかし、エネルギーは消失していく」

 「だが、ベンヌックスは、収束率を高める技術だ。エネルギー消失まで時間がかかる」

 「このベンヌックスの粒子加重収束技術は秀逸だな。地球技術の限界を超えている」

 「地球連邦の技術では、粒子加重収束装置は、艦首砲だけだ」

 「いま、ある資材だと、3隻が限度だな」

 「マツシマ、イクツシマ、ハシダテか。しかし・・・」

 「3隻だけじゃな〜」

 「しかし、理論上、ビーム兵器を光速以下に落とすほど、収束率が高まり威力が維持される」

 「選択の余地がないとはいえ、艦首砲は悪くないよ」

 「ベンヌックスの艦隊速度が遅いからだろう」

 「それは、いえる」

 「それと、ベンヌックスに工場小惑星を奪われたのは問題だぞ」

 「3分の1が奪われ、3分の1が破壊された」

 「そいつは、どうかな」

 「ベンヌックスは、一貫した産業を起こす人口も資材もないと、考えるのが普通だな」

 「占領しているだけで、使えないのか?」

 「占領は、本星ベンヌックスの自衛用ロボットを使ってだ」

 「たぶん、生産能力も小さいよ」

 「身を削ってか」

 「ベンヌックス小惑星も生命維持関連が7割以上を占める、という推測もある」

 「確かに死んでは元も子もない」

 「恒星間を越えるなら、それくらいの割合で欲しいな」

 「どこから来たにせよ。地球連邦にとっては災いだよ」

 「黄道に対し北32度方向」

 「そして、太陽系と、銀河系の公転周期を計算すれば、当てはまりそうな恒星系は、それほど多くない」

 「赤色巨星化した恒星に限定するなら、2、3つだ」

 「どこの赤色巨星から来たかわからないが、地球から遠ければ地球に有利。近いと地球に不利だ」

 「しかし、まだ底が知れないから、決定的とはいえないな」

 「ああ、迷惑な連中だが、恒星間を越えてくるだけの知性と意欲に敬意を払いたいね」

 「だが、殺しすぎだろう」

 「一緒に共生はできないだろう」

 「ほかの恒星系に行ってくれるのであれば、いくらでも援助するよ。技術と交換にね」

 「そこまで、信頼しあってないだろう。ベンヌックスも限界かもしれないし」

 「確かに・・・」

 

 

 

 芳村シュウと榛名ジルは、高台から小さな町を見下ろす。

 「芳村。小さな町ね」

 「上手く、入り込んで、ここに居つこうよ。生体エネルギーは、足りそうだし」

 「わたし達は、捕食型じゃなくて、接触型だから。人口が少なくても、大丈夫だろうけど・・・」

 「人が集まりやすいところが目立たなくて、楽なんだけどね」

 「あとは、お金ね」

 「お金より、現物かもね」

 バックの中身は、火事場泥棒な。お札・宝石など、金目の物が入っていた。

 所有者ごと、消し飛んでいる事が多く、

 盗むというより、見つけた遺棄に近い。

 「榛名。とりあえず、住処を探そうよ」

 「オーラスーツが移動住処なんだけどね」

 「はぁ 早く人間になりたいよ〜」

 「芳村は、どっちに行く?」

 「とりあえず、西と東で回り込んで、あの真ん中の橋で会おうよ」

 「ええ」

  

 異種族同士で抗争が行われるのは稀だった。

 それこそ、生命エネルギーを削っての戦いで寿命が縮む。

 さらに原住民が近代科学技術をフルに使えばバレてしまうのだから厄介で、

 通常、異種族が出会っても無視。

 しかし、衝突することもあった。

 調整上の攻防とか。

 調整の過程で、暴走したりとか。

 テリトリーの餌の獲り合いとか。

 闇から闇に葬らないと異種族の存在が原住民に知られ、警戒される、

 互いのオーラースーツをフルに活用して戦う。

 そして、オーラースーツの技術差。

 方式、エネルギー総量や特性、特質など、それぞれ違った特性があった。

 強靭な防護壁は戦車の装甲に近く、

 互いの防御壁を撃ち破るろうとすると接近戦になりやすい。

 調整の失敗でエネルギーを過剰に消費しなければならなくなると悲惨で

 原住民の死体が山済みになってしまう。

 異種族の生命エネルギーの取り込みは、捕食、吸血、接触に大別しやすい。

 どちらにしろ、数人から数十人もの生命エネルギーを吸い取らなければオーラースーツを維持できない。

 深夜、

 人気のない公園に人影が二つ。

 「暴走か・・・」

 「・・・・」

 「ここは、俺のテリトリーなんだがな」

 「本当かよ。俺のほうが古株だぜ」

 「ちっ! お前、やりすぎだよ」

 数体の死体が転がっていた。

 「・・・ぅぅぅ・・・対被爆効率を上げようとして、調整に失敗してしまったよ」

 「ったく・・・死んでもらうよ」

 「いやだといったら?」

 「非協力的だな。お前の同種族にも迷惑がかかるだろう」

 「・・・生憎、死にたがりじゃない」

 「はぁ〜 名前は?」

 「進藤カズマ」

 「俺は、芳村シュウだ」

 二人からオーラが渦巻き、半物質化しつつ具現化し、

 シュウとカズマの間で風が渦巻いていく。

 不意にシュウの前を横切る赤い物を反射的に掴むとバラだった。

 !?

 『・・・バラ・・・どういうことだ。バラを武器に使うのか』 カズマ

 『ん・・何だ? あいつ、急に緊張したぞ』 シュウ

 『まさか、花びらを刃物のように散らすのか・・・』

 『しかし・・・バラを使うやつは、二枚目のはず』

 『あいつは、二枚目じゃないぞ』

 『ん・・バラに注目しているのか・・・なぜだ・・・反射的に掴んだ、だけなのに・・』

 『それとも、オーラーエネルギーで、茎の部分を鞭に変えるのか』

 『なぜだ、あいつ、バラが弱点なのか』

 『まさか、バラがオーラースーツに障害を与えるのか、生理的に不愉快を与えるのか』

 『・・・ど、どう使うんだ。投げるのか・・・んん・・・』

 『それとも、マタタビ効果でもあるのか』

 『化学物質に秘密が・・・どっちだ?』

 『ありえん、あれほどのオーラースーツに・・・』

 じー! × 2

 『『わ、わからん・・・』』

 「でやっ!」

 上に放り投げられるバラ

 『な、なにぃ〜! 上に投げただと。そんな、見たことも、読んだことも、ないぞ・・・』

 うごぉ〜!

 倒れる進藤カズマ。

 「な、なんだ、あっさり、勝負がついたぞ」

 「何で、よそ見していたんだ」

 「・・・」

 「そうか、最初から、負けるつもりだったのか、意外と良いやつだったんだな・・・」

 

 

 

 アカネ荘 204号室 3DK

 芳村シュウ、榛名ジル

 「芳村。なによ。3DKって?」

 「しょうがないよ、難民が集まって高騰しているし」

 「ベンヌックス。あいつら、貧乏だから、一度、落としたところは落とさないのに・・・」

 「それでも原住民は、不便な生活をしたくないよ」

 「こういう状況だと、食料を押さえている田舎が強いし」

 「水田、少なくなっているんじゃない。確か、自給率低いよ。物流も滅茶苦茶だし」

 「人口も減って、日本の総人口は、2000万以下らしいよ」

 「ひどい! わたし達の大切な生体エネルギーをどうするのよ」

 「日本は都市が多いから殺戮効率がいいんだ」

 「ぅぅ・・・消費と生産力が落ちると物流も弱くなって、物価が高騰。しわ寄せが、生活苦か」

 「悪循環だね」

 「ベンヌックスぅ・・・段々、腹が立ってきた」

 「とりあえず、ここで、一息ついて、それから考えよう」

 「至近距離で核爆発を受けない限り、大丈夫だと思うけど」

 「でも、芳村。これから、どうする?」

 「あたし達の住んでいた町。瓦礫の山だし」

 「同種族が、この近くで、農家やってるって聞いたけど」

 「渦菜さんのところか」

 「あそこ。調整の仕方で、わたし達と生物学的に分岐しつつあるんだよね」

 「でも、なんで、農家なんだ」

 「たしか・・・原住民の生命エネルギーを奪っているから」

 「お詫びに食料を作って埋め合わせしたい、とか、言ってたような・・・」

 「ふ〜ん、義理堅いことで・・・無事かな」

 「たぶんね」

 

 

 

 同種族同士は、特定の波長で交信が取れた。

 長所になるが発覚すれば、一網打尽のリスクも同時に背負うことになる。

 渦菜家は、300年ほど前に生物学的な分岐が始まっていた。

 といっても、白人と黄色人の違い程度の差で、まだ同種族に含められる。

 渦菜家は、野菜畑の中の一軒家にあった。

 シュウとジルが手を振ると、農業機械に乗る渦菜ケイジが答える。

 「いま、たい肥作りをしているんだ」

 「縁側で、休んでいてくれないかな」

 「お茶を出しているから、飲んでいいよ」

 「たい肥?」

 「牛とか豚のヤツを発酵させて、土を作っているんだ」

 イメージ的には、原住民が家畜に当たる。

 家畜のための食料つくりの一環で汚いというイメージから遠い。

 家畜の食料など、基本的には、口に合わず。

 オーラースーツがなければ食中毒だった。

 肉体改造で致死に至らなくなるまで数世紀が必要だったらしい。

 渦菜家は、極悪な生体エネルギー泥棒といえた。

 しかし、周りの住人は、篤志家とか、良家扱いで、この地域で名家と思われているらしい。

 体が弱った住人に損得なしに食料を分けていたら、それは、喜ばれるだろう。

 弱った原因の半分は彼にあるのだから、食料を安く供給するのも自然。

 視点と価値体系も、まったく違うのだから、損しても徳が集まっている様に見られる。

 渦菜ケンジは、スコップで、たい肥を混ぜ合わせた後、やってくる。

 どう見ても、百姓のおじさんにしか見えないものの、

 正体は、妖魔とか、妖怪に近い。

 「・・・新参者をどうするか、だろう?」

 「ああ、小惑星で飛翔してきた非常識な連中だよ」

 「そっちが本家本筋だから。そっちに合わせてもいいけど・・・」

 「原住民と、ベンヌックスの間でバランスを取るべきだと思う」

 「積極的か、消極的か、決めてないけど、原住民よりだよ」

 「・・・まぁ 危機的な状況には違いないから、それでいいけど、調整は?」

 「調整か・・・原住民に近づきたいのは、山々だけど、さっき、調整に失敗したヤツに会ったからな」

 「ベンヌックスの攻撃で慌てたんだな」

 「調整するとしてもベンヌックスの軌道が、もう少し、離れてからにしたい」

 「核攻撃を受けながらの調整は厳しい」

 「それでも、いいか」

 「しかし、ベンヌックスの攻撃が減ると原住民の魔女狩りが始まらないか?」

 「んん、やっぱり巻き込まれるかな」

 「慌てて調整したというのも頷ける・・・・」

 農家の生活は、それなりに意義がある。

 トラクターで、たい肥を混ぜながら大地を掘り返していく。

 例え、直接でなくとも、種を植えながら、大地の恵みに期待する。

 家畜(地球人)の餌なのだが家畜の健康は、生体エネルギーと比例する。

 異星人種が寄生状態でも、その家畜の餌を作っているなら社会的に組み込まれる。

 誰でも、社会生活で働けば、時間を盗られ、気を使い、疲労し、命をすり減らしながら消耗する。

 それなら餌と疲労の交換だけですむ、我々の方が、いいのではないだろうか。

 原住民が家畜で構わないのなら、好都合。

 しかし、原住民は、エゴと覇気を失っていない。

 楽になればいいものを・・・

 異人種の多くは、体内ナノマシンのヘリウム3発電熱で体を動かせる。

 一日の生活に必要な1500から2000カロリーの熱量など造作もない。

 ほとんどのエネルギーは、原住民の擬態と生態系に対する生命維持のオーラースーツに使われてしまう。

 調整で原住民に近づけば、消費するヘリウム3も摂取する生体エネルギーも少なくできた。

 アニメの正義の味方が巨大パワーを燃料補給もなく戦える

 それは、ヘリウム3を過剰消費しない限り、ありえない。

 しかし、体内のヘリウム3を消費し切ってしまえば、自滅。

 あとは、生命エネルギーを求めて悪役になるしかない。

 宇宙時代幕開けでヘリウム3の補充は容易になった。

 しかし、体内のナノマシンのヘリウム3の吸収装置の有無で命運が分かれる。

 ヘリウム3を消費し切れば、ナノマシンも死んでいく、

 それまでに地球の生態系に順応できなければ摂取しなければならない生体エネルギーは増える。

 つまり、体内のヘリウム3発電は、時間稼ぎ。

 生体エネルギーの摂取は、その場しのぎ。

 結局、異星人種は、地球の生態系に合わせて肉体を改造しなければ、生きていけず、

 子孫繁栄もなかった。

  

  

 地球連邦北米軍基地

 「10kgのパワードスーツか」

 「身に纏っていると、少しくらい重くても移動しやすい」

 「それで、敵に30kg分の武器弾薬を強要させるのも戦略だよ」

 「現状のパワードスーツが、この程度で、この重さか・・・」

 「これだけ、派手の原爆を落とされなければ、採算が取れないパワードスーツだよ」

 「基地警備用ロボットの方が上ですかね」

 「パワードスーツは、対被爆の護身用だよ。需要が強いと昼夜なく生産が進む」

 「なるほど、道理だが日本の特撮、仮面ライダーに似てないか」

 「デザイナーが参考に使ったんじゃないか」

 「おまえ、趣味に走っていないか」

 「まさか、一昔前のライフル弾に耐えられるよ」

 「耐熱耐水も悪くない。ベンヌックス相手だと不安だが・・・」

 「贅沢に作れば、もう少し強靭にはできるけど、一般は、このくらいだな」

 「国防は、少数精鋭じゃないからね」

 「どう考えても、ベンヌックスと、科学技術の差が、ありすぎる。特にナノレベルは、お手上げ」

 「微細加工になるほど、技術差は、広がるよ」

 「原子核発電や原子核発熱の技術は、完全に負けているな」

 「理論上は、人体を戦車並みに強靭にすることができるよ」

 「カロリー計算だと、食事も、いらなくなる」

 「美食は、最高の文化だよ」

 「糖尿病の人間には悪いが、食べる喜びがないと生きていけない」

 「情緒的な会話でなく、生物学的な会話のつもりだったが」

 「まあ、そういう技術を使って、ベンヌックスが地表に降りてくると、厳しいな」

 「単純に対地制圧だとベンヌックスは一騎当千になるだろう」

 「ベンヌックスに面に対する制圧力がないのが救いだね」

 「それは、次にベンヌックスが、太陽に近づいたときにわかるよ」

 「こっちの核弾頭は?」

 「全部、迎撃、撃破されたよ」

 「もっと、弾頭を小さくできないと無理」

 「かぁ〜 平和が恨めしい。もっと冷戦が続いていたら・・・」

 「いや、ソ連に根性がなかっただけ」

 

 

 金星

 地表から50kmの高度に巨大なフローティングシティが浮かんでいた。

 二酸化炭素の大気に窒素79パーセント、酸素21パーセントの風船が浮かぶ。

 この高度であれば地球の気圧とほぼ同じ、気温も0度〜50度で推移。

 熱伝動管を地表近くにまで落とせば熱エネルギーを得られ、

 太陽光熱発電も地球の1.9倍の効率。

 焼却炉の上に住んでいるようなものでゴミ問題も存在せず。

 重力障害もほとんどなく、エネルギー効率だけなら地球圏で最高レベル。

 致死レベルの二酸化炭素と十分すぎるほどの太陽光で苔に似た植物相が浮遊して酸素を作り出し。

 熱による上昇気流と宇宙空間で冷やされた大気の降下気流が存在し、

 風速100kmの大気層で広がっていく。

 金星はベンヌックスの攻撃を受けていなかった。

 地球人以上に二酸化炭素を嫌っているのか、あまり、太陽に近づきたくないのか・・・

 フローティングシティは、透明な防御壁に包まれ、

 日光浴に浸れ、植物相が生い茂り、動物も棲む、恒久的な生態系を構築していた。

 機能が破壊されるか、生態系のバランスが狂わない限り、数世代は生きていける。

 「船板一枚、地獄の底か・・・」

 「だが攻撃されていない」

 「攻撃されたら、軽く全滅だな」

 「地下が残るよ」

 「地下か・・・」

 「金星の地下1kmに地下空間か・・・なに考えているんだか」

 「植物相を作って、酸素を地表に出しているのだろう」

 「熱エネルギーだけは、腐るほどあるんだから」

 「ベンヌックスに見つからないことを祈るばかりだね」

 「しかし、地下資源を得て、フローティングシティを拡大しないと人口問題になるよ」

 「採掘プラントで地表を浚っているけど、当たり外れがあるからね」

 「水の方が問題だけどね」

 「氷衛星を軌道に乗せているだろう」

 「足りねぇ」

 「まぁな。ガニメデでも持ってこれたら、話しが早いんだけどな・・・」

 金星で作られたドライアイス(二酸化炭素)が火星軌道へ飛ばされ。

 小惑星の氷衛星が金星軌道へ飛ばされていた時代は、ベンヌックスの来襲で終わる。

 

 

 

 木星系トロヤ群小惑星ヘクトル(370×195km)

 ベンヌックスに占領された基地内部は、ベンヌックス人の生態系に合うように切り替えられていた。

 そして、数人のベンヌックス人が立っていた。

 「・・・さて、どうしたものかな」

 「ベンヌックス人を地球の生態系に合わせえるのには年月がかかりすぎる」

 「こういった閉じた世界であれば、調整できるよ」

 「資源を加工すれば、閉じた世界でも十分に人口を増やせるよ」

 「この太陽の放射線は、我々のいた恒星系の放射線とは違う」

 「惑星の組成も違う。惑星上での生活は、問題ありだよ」

 「肉体改造をどこまで行うかだな。危険だよ。調整は」

 「最小限の肉体改造で良いんじゃないか」

 「無理に原住民に擬態することもない」

 「太陽系の支配者で良いよ」

 「擬態は、ソース配分で言うと無駄かもしれないが情報収集で不利だよ」

 「それは、ロボットにやらせれば良いだろう」

 「じゃ・・・最低限、惑星上で生きていける固体改造で、あとは、惑星の生態系のほうをこちらに合わせる?」

 「惑星改造も、固体改造も複雑だからね」

 「劇薬なウィルスとか、化学物質を生成してしまう可能性がある」

 「それを避けようと思えば年月がかかるよ」

 「そうだよな」

 「まぁ ヘリウム3を供給できるなら、原住民の生体エネルギーにこだわらなくても良いけど」

 「体内の細胞核にヘリウム3を取り込む技術は、至難の業だよ」

 「だよな・・・」

 「外で製造して、体内に供給するのが、無難だな」

 「んん・・・・このステッキは?」

 「新型の武器だよ」

 「普通は、遠くの敵を撃つんじゃないか。戦略の常識」

 「そうしたいのは、山々なんだけどね。補給の関係でな。孤立無援になるよ」

 「接近戦か」

 「荷粒子、陽電子、中性子を帯電させるから、装甲でも、スパスパ切れるよ」

 「そういう問題か?」

 「地球人の携帯火器なら、開発しているオーラーローブで防げるよ」

 「エネルギーの消耗は必要最低限にしないと」

 「原住民に奪われたら?」

 「ベンヌックスと地球人類はオーラーの質が違うからね」

 「波長が合わないと、ただのステッキ」

 「それなら良いがね」

 「剣状の物もあるし、エネルギー消費を気にしなければ、銃撃もできるよ」

 「消費か」

 「一応、ヘリウム3のストックもつかえるけど」

 「原住民から生体エネルギー吸収、このステッキにエネルギーを変換して供給できる」

 「なるべく体内ヘリウム3の消費は抑えたいな」

 「一騎当千でも、数万で押し寄せられたら負ける」

 「生体エネルギーの吸収変換効率が早ければ、勝てるんじゃないか」

 「こっちの人体改造は、計算中だし、まだ無理」

 「長引きそうだな」

 「公転周期なら300年以上あるよ」

 「はぁ〜 それまで、占領した基地が持ちこたえれば良いが」

 「赤色巨星化で生きて行けない恒星系じゃない」

 「最悪、地球がなくても時間をかければ、この太陽系に定着できるよ」

 「しかし、太陽の放射線と、元素の比率と組成が、違うと、こうも梃子摺るとは・・・」

 「まだ、予想の範囲だよ」

 

 

    

  

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 月夜裏 野々香です。

 適当な公式を作ってしまいました。勘弁です。

 プラス&プラスだと、嘘くせぇ〜

 プラス&マイナスで、総量が、変わらないのであれば、ありという感じです。

 

 

 バラの武器

 アニメと漫画の読み過ぎに注意しましょう。

 

 

 調整

 異端人種・異種族が肉体改造を試みて生態系に近づける、

 あるいは、惑星の生態系を肉体に近づける。

 大きく分けて二つ。

 もっとも大きな研究室があるわけでもなく、段階的に微調整で行います。

 失敗しても、成功しても、生態系と原住民(地球人類)は、とんでもないことになったりとか・・・

 もちろん、原住民が絶滅すると、寄生している側も絶滅なので、かなり慎重に行われます。

 

  

 

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第01話 『スター・シード戦争』

第02話 『情状酌量は?』