月夜裏 野々香 小説の部屋

    

架空歴史 『釈迦帝凰』

 

 

 第04話 『新世界秩序』

 1712年 ドナンの戦い

 フランス軍12万5千人 VS オーストリア・オランダ同盟軍10万5千人 

 スペイン継承戦争で欧州最大の戦闘が始まる。

 フランスは、この戦いで、将兵2000を失い、

 オーストリア・オランダは、将兵20000を失って、大敗北していた。

 フランスは、この勝利によって地上戦の優位性を確立、

 オランダは守勢に立たされ、

 神聖ローマ帝国も国境を守るための布陣を構築。

 イベリア半島のポルトガル、バレンシア、アラゴンは風前の灯となっていた。

 そして、イギリスは、フランス艦隊の増強を恐れはじめた。

 

 

 

 カーボベルデは日印艦隊の基地であり、欧州に対する橋頭堡となっていた。

 インドは、潰しの効く労働者で基地を造成し、

 日本も武器弾薬を供給することで、強力な軍事基地を建設していく、

 しかし、ムガル帝国と南インドの戦いが激しさを増していくと、

 大西洋における南インド勢は縮小していく、

 ブライア

 日本人とタミル人の入植が行われ衣食住の確保が行われつつあった。

 軍事力を支えるための社会基盤が必要であり、

 基盤造りには入植が不可欠だった。

 大型の城塞が建設され、大砲が備え付けられていた。

 戦列艦のように集中砲火を浴びせることは難しくても、

 高台に大型の大砲を配置することができた。

 日本人たち

 「水不足なのがいただけないな。食料が作り難い」

 「入植するなら大きな川のある大陸の方が良かったんじゃないか?」

 「幕府は、フランスとスペインとの交易を重視したかったんじゃないか」

 「やり過ぎるとフランスとスペインまで警戒させてしまう」

 「しかし、タミルとマラヤラムが引き気味なのがまずい」

 「日本単独で欧州勢と戦いたくないからね」

 「だけど、幕府も消極的だな」

 「欧州勢は単独でも抜け駆け先行、内輪もめしながらでもアジアに来たぞ」

 「覇気が強いのだろう。性格だな」

 南インドはムガル帝国を恐れ、日本も清国を恐れて、単独の外征を望まず、

 対大西洋と対アフリカ大陸で、歩調を合わせていた。

 「だけど、もうすぐ戦争が終わるらしいけど?」

 「戦争が終わって、フランスとイギリスが結束したらまずいだろう」

 「だから大砲を並べてるんだろう」

 「なんか、南インドも引き気味だし、ヤバ気な雰囲気だな」

 「36ポンド(16kg)砲をこれだけの高台に置いてたら攻撃してこないだろう」

 「欧州が連合して百隻以上で攻めてこないと誰が保障する?」

 「そこまで仲が良いとは思えないがな」

 「だと良いけど」

 

 

 

 

 世の中、本音と建前があった。

 戦国の世が終わって綺麗事で押さえ込もうとするほど、立身出世の道が狭まり、

 影は濃く、闇は深くなった。

 

 蓬莱島

 徳川幕藩体制から切り離されて、豊臣大君を中心とした中央集権が執られていた。

 武士階級と平民の二層だった権力構造は、年月とともに武士と平民の関係が曖昧になり、

 武士の子供は、体面もなく、鉄砲鍛冶をし、漁業をなしていた。

 これは、東アジアで蓬莱だけであり、

 一人当たりの生産力の高さも東アジア随一だった。

 小さな島でありながら身の丈に合わないほど大きな街が作られ、

 道と港湾が広げられていた。

 清国船、タミル船、マラヤラム船、スペイン船が入港し、

 各国の外交官を館に常駐させる奇策によって、交易の振興を図り、

 日本と清国の密貿易と闇経済も仲介していた。

 清国皇帝の管理の下、統制されるべき貿易と、

 徳川幕府の御用商人を通して取引されるはずの品々が蓬莱を経由して行き交った。

 無論、清国と幕府の役人に金は入らないため、犯罪で、取り締まりの対象だった。

 しかし、日本の市場に安物が出回り、庶民は助かるのである。

 もっとも、幕府と清国は、税収の問題と別に取り扱って欲しくないモノがあり、

 非公式な会談が日蓬清の間で開かれていた。

 ケシの花は、東欧、地中海原産と言われ、

 唐の時代、シルクロードを越えて中国に来たといわれ、

 最初、王族貴族で用いられていたものが庶民に広がって行った。

 無論、不埒な使い方をしないのであれば、薬用、薬味として有用だった。

 しかし、常用性の強い薬物である事が知られ、

 心に闇を持つ者がいるのか、商品作物として売り捌く者が現れる。

 アヘンは、最初、たばこ、酒といった趣向品と思われたものの、

 その毒性と弊害が知られるようになると問答無用で取り締まりの対象となり、

 国を超えて情報が交換がされ始めた。

 「清国が流しているのではないのか?」

 「違うある。誤解ある」

 「しかし、清国国内にケシ畑があると情報がある」

 「すぐに潰すある。清国は、アヘンを許さないある」

 「ところで清国は大型ジャンク船を建造しているとか?」

 「イギリスとポルトガルが助けてくれたある」

 「・・・・・」

 「清国は、明の大艦隊より巨大な艦隊を作るある」

 「作るだけ?」

 「皇帝次第ある♪」

 「・・・・・」

 「でも、私に投資するなら日清友好の使い道を考えるある♪」

 「・・・・・」

 徳治国家は、権力者の裁量次第で金次第だと予測が付いた。

 無論、優れた裁量を発揮できる権力者ならば、法治国家に勝る結果が得られるものの、

 そういう状況になることは少なく、継承される可能性はさらに少なかった。

 かといって、融通の効かない法治国家が良いかというと限度があるのだが・・・

 

 

 この時期、

 自前の奴隷を持つインド、

 黒人を奴隷に使うイギリス、フランス、スペイン、ポルトガル、オランダ。

 奴隷より扱いが難しいものの同族、あるいは少数民族を扱き使う国、

 日本、清国、ロシア、その他に分かれた。

 奴隷は貴重な財産で、人間というより家畜だった。

 人権を蹂躙できる奴隷は、費用対効果が良く、支配者の生活を豊かにした。

 しかし、スペイン継承戦争で日印艦隊が大西洋に進出すると、

 奴隷貿易からイギリス、ポルトガル、オランダ船が駆逐され、

 フランス船とスペイン船が増え、

 南北アメリカのフランス領とスペイン領で黒人奴隷を利用した産業が発達し勢力が増していく。

 

 

 

 アゾレス諸島(2333ku)+マデイラ諸島(797ku)

 この二つの諸島は、温暖な気候帯だった。

 日印艦隊は、どちらかの諸島に配備されていた。

 日本艦隊 2500トン級戦列艦16隻 大砲60門

  伊勢、甲斐、紀伊、加賀。陸奥、土佐、安芸、飛騨

  播磨、武蔵、長門、因幡。薩摩、信濃、駿河、尾張

 戦列艦 伊勢

 「タミル艦隊が一度、引き揚げるらしい」

 「またかよ」

 「対ムガル戦で艦隊が必要なんだと」

 「南インドは、大丈夫だろうな。南インドが陥ちたら洒落にならないぞ」

 「幕府は、インドに軍を上陸させるかで揉めてるらしいよ」

 「そんな事になったら、大西洋の足場を維持できなくなるだろう」

 「城塞が完成するまで、インドで事を起こして欲しくないな」

 「どこもかしこも予算が厳しいからね」

 

 1713年 ユトレヒト条約(フランス、日本、タミル、マラヤラム VS イギリス、オランダ)

  フランスは、イギリス、オランダの奴隷貿易に参入できる。

  日本とタミルは、セントヘレナ島、アセンション島を領有。

 

 1714年 ラシュタット条約(フランス VS 神聖ローマ帝国)

  フランスは、サボイア公国とコルシカ島を領有する。

  

 スペイン継承戦争から始まった世界大戦は、1714年に終結する。

 もっとも、インドの戦いは終わらず。

 大北方戦争も膠着しつつも継続していた。

 

 

 フランス パリ

 戦後、フランスは、国土が増え、スペインとも同君同盟を果たし、

 欧州最大の勢力となっていた。

 とはいえ、フランスは、度重なる戦費で財政が逼迫しつつあった。

 貴族は、生活水準を落としたがらず、

 皺寄せは庶民へと押しやられ、

 重税は、庶民を生き地獄へと追いやっていく、

 反絶対王制派は、貧富の格差が広がるにつれ拡大し、

 農民と労働者の暴動は増加していく、

 “扱い難い怠け者の血縁より、潰しの効く勤労な赤の他人”

 というわけで、日系人は、少しずつ増えていた。

 最初は、糞尿処理だったものの、

 労働に美徳を置く日本人の価値基準が大きいのか、

 スペイン継承戦争を弾みにしたのか、

 その勢力は、運送、農地へと拡大し、商業にまで進出していた。

 そして、比較的、保守的な気質がブルボン王朝の安定に繋がると信任され、

 言語で不自由なくなると役人へと抜擢され始めた。

 

 

 樺太

 この頃、木炭を養蚕と製鉄に取られ、

 庶民は、石炭で暖を取ることが増えていた。

 といっても、石炭は、高級な高熱無煙炭から、

 低熱で凄まじい臭気と煙幕と思えるような石炭まであり、

 石炭とひとくくりで、まとめてしまうと、実態が捉えられなくなってしまう。

 まず、石炭は、燃えると硫黄を出し、鉄を脆くさせるため、

 そのままの状態では、製鉄に使用できない、

 しかし、石炭が製鉄で使えるならは、より安く鉄が仕上がり、

 木材を船舶と建築用に転用できた。

 石炭による製鉄法は各国で期待され、研究されていた。

 日本刀が仕上げられ、

 役人は失望し、批判気味に見つめる。

 そして、試し斬りが始まる。

 数度の試し切りで、折れ、

 あるいは、曲がるのは、石炭を使って作った日本刀だった。

 「やっぱり、石炭で焼き入れはまずかろう」

 「駄目か」

 「イギリスのダービー家が石炭で製鉄しているという噂は、眉唾だったかな」

 「石炭を暖房用で使う分には問題ないと思うがね」

 「んん・・・」

 

 

 

 スペイン継承戦争が終結すると、

 今度は、フランスとスペインが外貨欲しさで、インド戦争に参入しようとしていた。

 同等の敵との交戦は、労ばかりで報いが少なく、

 加担して外貨を稼ぐ方が効率的と言えた。

 日本は、スペイン継承戦争とインド戦争の両方の特需で儲け、

 その外貨で、大西洋に足場を築いていた。

 タミル王国 バリカット港

 クルター・パジャマ(男物)、サリー(女物)の民族衣装の中、

 裏地無しの着物を着流した日本人と、

 派手な服のフランス人が徘徊する。

 南インドは、フランスのバロック建築と日本の数寄屋造りと鳥居の影響を受け、

 多様多彩な風景を作りだしていた。

 そして、清国人も少なからず姿を見せ、

 清国と南インドの貿易も拡大していた。

 日本人たち

 「あれが、清国の大型ジャンク船か・・・」

 「随分、奮発したものだ。まるで浮かぶ要塞だな」

 「ムガル帝国の戦列艦も大きかったが、清国のは常軌を逸してるよ」

 「全長495尺(150m)、全幅204尺(62m)あるそうだ」

 「大砲は?」

 「42ポンド砲が艦首2門と艦尾2門」

 「32ポンド砲が両舷に120門」

 「片舷60門としても破壊力は大きい、一撃で戦闘不能か、沈没だな」

 「・・・なに考えているんだか」

 「甲板で野菜を育てられるらしい」

 「新鮮な野菜は良いと思うけど、農業用水が高くつきそうだし」

 「航海に時間がかかり過ぎるのは困ると思うよ」

 「奸臣だけの特権だろう」

 「海戦向きじゃないけど、国威高揚ならありだな」

 「しかし、明の時代とは違うし、朝貢外交なんて無理と思うがな」

 「だけど、清は大国。金で済むのなら、なだめておきたいよ」

 「少数民族の満州族は、10倍以上の漢民族を無理やり押さえ込んでる」

 「戦争は無理だろう」

 「清国は、漢民族の反乱を防ぐ力がある事を証明をしなければならないし」

 「資産の再分配を狙う人間は常にいる」

 「それに腕力バカは、立身出世を狙って戦争したがるからね」

 「大砲と銃があるから、腕っ節で戦争出来る時代じゃないと思うけどな」

 「つまり、自己鍛錬していない庶民も戦争を欲する時代じゃないの」

 「それはそれで、あぶねぇな」

 「ところで、例のモノは?」

 「ウーツ鋼とダマスカス剣か」

 「ああ」

 「日本刀の製造法と虎徹、村正と、交換に教えてもらったらしい」

 「しかし、もう少し情報を集めたい。シリアのダマスカスにも人を送ってる」

 「オスマン帝国じゃないか」

 「オスマン帝国との交流で良い機会ではあるね」

 「大盤振る舞いだな」

 「錆びないなら、それだけの価値はあるだろう」

 「高く付きそうだな」

 「ウーツ鋼は南インド産なんだが、シリアのダマスカス剣の製法は、一子相伝でな」

 「一子相伝は、職人が生きる糧だから普通だろう」

 「南インドに日本刀が輸出されている理由は、生産量だよ」

 「つまり職人の絶対数」

 「じゃ ウーツ鋼とダマスカス剣の生産量は低下しているのか」

 「インドのカースト制は、日本の士農工商より強力だからね」

 「それで、作れたの?」

 「刀工20派に伝えるらしいけど、製法とウーツ鋼も特別だ」

 「まぁ 見よう見真似でなんとか近いモノを作れるらしいが・・・」

 「ダマスカス剣は日本刀より上なのか?」

 「錆びない点で、もう、日本刀より上だな」

 「ウーツ鋼でダマスカス剣は作れたらしいけど。玉鋼は、いま一つらしい」

 「じゃ ウーツ鋼が玉鋼より質が上ってことか」

 「日本でもダマスカス剣の生産に入るけど、ウーツ鋼は輸入しないと、どうにもならないそうだ」

 「だけど、鉄砲の時代だろう。ダマスカス剣も日本刀もないと思うがね」

 「大砲や鉄砲だって、鉄を薄くできたらそれだけ軽くなって有利になるだろう」

 「まぁ そう言えなくもないけどね」

 「それに銃剣も良いのが欲しいだろうね」

 「だけど鉄は木炭。船は木を使う」

 「いい加減にしないと、日本が禿山になってしまいそうだな」

 「だよねぇ〜」

 

 

 

 日本の常識は、米を中心にしていた。

 一坪(一日分の米が取れる広さ)

 一反(一人が1年間食べる米が取れる広さ)

 一石=300坪=2.5俵(一人の人間が1年間食べるコメの量150kg)

 一両=一俵(60kg)。サンピン侍(三両一分)=三俵

 全て、米を基準にして計算されており、年貢も米で計算されていた。

 江戸時代になると農家の余剰人口の捌け口だった都市で町人文化が花開き、

 米以外の商品作物が増えて、米中心の計算も狂い始め、

 北海道、樺太の商藩は、商品経済を加速させ、

 米中心だった経済を脇役へと押しやっていた。

 そして ・・・・

 北アメリカ大陸 日本領 “すめらぎ”

 曖昧な勢力だったものの、

 南は、スペイン領カリフォルニア州と国境を境にし、

 東は、フランス領モンタナ州、ワイオミング州と国境を接していた。

 北にかけて未開地が広がっており、

 日本領の探索は、北方に広がろうとしていた。

 先住インディアンの多くは、誇り高く、土地に対する私有の観念がなかった。

 そのおかげで入植できたのだが・・・

 日本人の入植は、インディアンの居留地から離れた場所に行われ、

 田畑を作ることで生活を安定させてしまう。

 とはいえ、インディアン側に土地私有の概念がなく、

 土地安堵の主従関係で成り立つ封建社会の日本は窮した。

 徳川の天下太平は、経済主導の産業の価値を高め、

 人々の目は、生産、流通、サービスと商品へと向けられ、

 米を基準とした日本人の常識は、崩れつつあった。

 武士階級は、商人に年貢を転売することで金銭を得、社会生活を営むようになり、

 商人に借金をする者が増大し土地より金の発想も湧いてくる時代背景が作られていた。

 そして “金” “銀” “銅” は限りがあり、

 一旦、庶民の財布に入ってしまうと、商品と交換するまで貨幣は流れなかった。

 すめらぎ所司代は、個人の土地私有を1000坪以下に制限し、

 個人の最大土地所有1000坪=3石1/3=7.5俵1/3=500kgとなった。

 御神籤と交換したり、

 一俵分の米と交換できる “すめらぎ藩一俵札” を発行してしまう。

 さらに1両は、不足し、銀銭、銅銭も不足がちだった。

 米一俵と交換できる紙幣が使われるようになると、金は、蓄えられ、

 経済は安定していく。

 とはいえ、収穫米分しか発行流通できないため、一時凌ぎでもあった。

 この時期、日本の居留民とインディアンは、米と魚・肉を交換し、

 徐々に交流を深めていった。

 インディアンが水田を作るようになると用水路は急速に拡大し、

 日本人街に住むインディアンも現れた。

 インディアンは保存がきき、安定した食料の米を購入するようになると、

 米札を得るため狩猟の獲物を持ち込み、

 水田で労働するようになり、市場が広がっていく。

 「所司代。土地所有の制限。よろしいのですか?」

 「土地を制限しているだけで、資本を制限しているわけではないからな」

 「むしろ、所司代の行う事業が産業の基幹になるのなら悪くなかろう」

 「では、商人は、所司代が求める事業を引き受けることで、配当を得るという事に?」

 「まぁ そんなところだ」

 「白人は、インディアンを駆逐しながら植民地を拡大してるようですが」

 「羨ましい性格だねぇ」

 「まったく」

 「日本の場合、もう少し、年月が必要だな」

 「しかし、知られているだけで50近い言語が確認されています」

 「日本語が多くなれば、日本語を話すインディアンも増えるだろう」

 「気長ですな」

 「ここは日本ではない。他所の土地だよ」

 そして、日本側もトウモロコシなど、アメリカ産の作物を植え始め、

 食事事情を豊かにしていった。

  

  

 愛宕丸がハワイを発見した時、

 ハワイ諸島は、まだ統一されておらず、いくつもの部族が争っていた。

 その後、北太平洋航路で日本領すめらぎ行きの船も帰りは南の航路を取るため、

 新鮮な食料と水が得られるハワイ諸島の停泊が増えた。

 最初、日本人は、神と勘違いされ、

 その後、物々交換が始まり、港湾に面した土地を得てしまう。

 日本人の入植がはじまると、先住民と摩擦が起こった。

 しかし、大砲と銃の威力を知ると、ハワイ人は大人しくなっていく、

 ハワイの住人も土地を公共のもとして認識しており、

 私有するものではないという考えを持っていた。

 そのため、個人所有を1000坪以下とし、

 ハワイ諸島の大半を共有地としてしまう。

 ワイ・モミ港

 ガレオン船 高雄

 日本人たち

 「船長。ワイキキの部族がハワイ統一に手を貸して欲しいそうです」

 「他と同じで、気が進まんな。通常取引だけでいいよ」

 「しかし、スペインとフランスが来ると厄介な事になるのでは?」

 「まぁ 島々に砦を建設して占有を宣言すれば良いだろう」

 「少なくとも、まだ友好国だ」

 「いまのところは、ですね」

 「聞いた話しだと人口は、日本、フランス、タミル、スペイン、マラヤラムの順らしい」

 「海上では、船、大砲、銃の方が重大なのでは?」

 「まぁ そうだがね」

 「しかし、いったん、入植を成功させれば地の利を生かせて強いだろう

 「その地の利のハワイ諸島の内紛が不安ですが」

 「日本人が増えれば収まるだろう。しかし、ワイ・モミ港は、言い難いな」

 「意味は、真珠の水場だそうですが」

 「真珠か・・・真珠湾にしよう」

 

 

 

 

 清国でトウモロコシ、落花生、薩摩芋が植えられるようになると、

 水利の少ない場所でも食料が得られるようになり、

 その総人口は、1億5000万を超えたとも言われていた。

 市場の大きな清国と取引すると莫大な利益が転がり込んだ。

 八島(舟山)諸島の漁船は、漁場で魚を浚うと、中国本土へと向かい。

 ある漁船は、沖の要塞と思えるような巨大船に魚を供給し、

 そこで銀両、あるいは、穀物、資源と交換した。

 日本製の輸出で多かったのは、農耕器具で、

 完成度の高い農耕器具が清国へ送られ、

 莫大な利益が八島(舟山)所司代に転がり込んだ。

 日清関係は、表向き緊張状態を見せながらも、

 戦った場合の損失比が大きいのか、示威行動で終始していた。

 寿司の露店に清国人と日本人の商人が座っていた。

 清国人は、髪を剃って三つ編みを後ろに垂らす弁髪にしていた。

 「くっそぉ 清皇帝は、弁髪を押し付けたある、面白くないある」

 「日本人のチョンマゲと似たようなものかな」

 「日本のチョンマゲは日本の伝統ある」

 「弁髪は、漢民族の伝統じゃないある」

 「髪を洗う水が少なくていいだろう」

 「外国に行く日本人は、散切り頭ある」

 「服装に合わせているのでしょう」

 「羨ましいある。清国でそんなことしたら首が飛ぶある」

 少数民族の満州族は多数派の漢民族に気を使い、

 満漢偶数官制を採用していた。

 弁髪は、その少数民族が多数民族に強行し、

 逆らう者を死刑にしていた数少ない政策の一つだった。

 

 

 相州炮術調練場

 原野にいくつものテルシオ(戦列歩兵団)と砲兵隊、騎馬隊が展開し、

 銃剣の付いたフリントロック式銃を抱えた幕府軍が向かい合っていた。

 戦国時代を終わらせた幕府の軍事組織は、旗本八万騎と呼ばれ、

 日本最大最強の武士団だった。

 その意識と忠誠は、所領の枠を超えるものでなく、

 徳川家を守る武士団であり、日本と国家を守る軍事組織でなかった。

 武士団は、五番方(新番・小十人・小姓番・書院番・大番)に分かれ、

 その主たる役割を権威固めと治安維持に変質させていた。

 天下太平は、剣術より文才と算術を要求し、

 サムライの資質も実戦的なモノから儀礼と形式に移り変わろうとしていた。

 幕府は、地方知行制(現地領主制)を俸禄制(サラリー制)へ移行させ、

 武士と領地を切り離して抱え込むことに成功し、

 考え様によっては、近代化に必要な下地が制度で作られていたことを意味した。

 日本の朱印船がスペイン継承戦争に巻き込まれ、損失を出すと、

 派閥均衡、権力闘争で内向的な保守的な家臣たちの気持も変わる。

 武士階級の対面を保ちつつ、大砲と銃を核にした軍の近代化が求められた。

 当然、西洋・インドの戦訓の影響を受け、

 軍服は、黄緑系でフランスの影響を僅かに受け、

 革靴に至っては全面的に模倣していた。

 幕府は、スペイン継承戦争の戦訓を確認するため演習場を整備し、

 戦訓の記録と戦場を見てきた者の話しを参考に10分の1の規模で再現させていた。

 戦場は、指揮官の声が届く範囲。

 中隊(200人)規模のテルシオ(戦列歩兵団)が戦術機動の要になった。

 これは、集団になることで敵に与える重圧と、

 味方の数が多いと、自分は被害を免れられるという心理も働く、

 小人数で突撃するなど、恐怖ばかりで、士気が保てなくなる。

 こういった印欧の密集戦術は、日本の歩兵基本戦術と、そう違わない。

 しかし、大砲と鉄砲の発達がテルシオの運用を困難にさせていた。

 小隊(30〜50)規模の散兵戦術の生存率が高く、

 戦果も見込めそうに見られた。

 重臣たち

 「旗本が私的な人足を抱えて戦場に出すのは如何なものかな」

 「旗本に特別待遇が認められるのは、功名心と権威付けでしょう」

 「銃の射程が伸びると、その功名心と権威を狙ってくるのでは?」

 「フランスの軍服を見ると、そう思えないがね」

 「フランス軍は数で勝ったような気がするね」

 「実力主義を取るイギリス軍が上だと聞いてるぞ」

 「しかしねぇ・・・いくら戦争だからって、武士の権威失墜はまずいよ」

 「ヤクの毛皮を権威付けに使うのも射的の的のようで、どうかとも思うが」

 「赤熊が砲兵、黒熊が騎兵、白熊が歩兵は、いいと思うけど」

 「大隊とか、中隊とか、小隊とか、規模で分けるのはどんなものかな」

 「役付けで呼ぶのもありだけどね。規模が分かりやすいという気もするな」

 「なんか、慣れないな」

 「部隊の性質を制限させて膠着させるより、指揮官の柔軟性に合わせる方が良いと思うね」

 「しかし、財政的にテルシオ脱却は厳しくないか」

 「んん・・・散兵戦術を取ると、小派閥になりそうだな」

 「10000の兵だと、大隊長20人。中隊長は50人。小隊長は200人になる」

 「散兵戦術だと、戦いを兵の統制を小隊長に任せることになるぞ」

 「大砲と鉄砲で実質、弓と槍の4倍の戦力以上だろう」

 「小隊50人が中隊200人分になったと思えばいいのでは?」

 「士官学校が4倍以上になるのは確かだな」

 「「「・・・・」」」

 「それに中隊規模の突破力を小隊で支えられないだろう」

 「確かに鉄砲があっても中隊規模の突撃は恐怖だな」

 「騎馬隊の位置付けは?」

 「表向き軍馬30万頭。農耕馬150万頭。牛120万頭だけどね・・・」

 「成獣で役に立つのは3分の1で、軍農併用がほとんどだからな」

 「北海道で生育してるんじゃなかったのか?」

 「すぐに増えんよ」

 「それに牛馬を “すめらぎ” 領に持って行きたがる者も多い」

 「貧乏旗本が馬を商家や農家に貸しても文句が言えないしな」

 「しかし、こうも世俗に塗れた軍隊だと弱いだろう」

 「幕府は、軍政だからね」

 「政治、経済、軍事を一まとめだと、組織的に中途半端になるよ」

 「それに我々は、徳川家のための軍事組織だ」

 「日本全体を守る対外的な軍組織じゃないからな」

 「国内統一軍なんて、関所を廃止して、国内の藩を全て潰さない限り無理だね」

 「諸藩を潰す方法は?」

 「藩の石高を合わせた合意で日本をまとめるしかなかろう」

 「それでは、徳川幕府が潰される」

 「すめらぎ領でやってるだろう。地区ごと領主を集めて合議制」

 「あそこは、インディアンもいるし、別格だよ」

 「すめらぎ領は、インディアン込みの共和制でやってる」

 「日本人ばかりの日本で幕藩の合議制にできないのはなんでだ」

 「無理だろう。藩主の意識は藩にあるのであって、日本にないよ」

 「まぁ 仮に合議制でやってもだ」

 「地方の豪族に国家意識など生まれるものか」

 「どうせ、視点は低く、視野も狭い我田引水で、予算争奪戦になるに決まってる」

 「日本は貧しい国だ」

 「国民は生きて行くだけで精いっぱいだからな」

 向かい合う隊列同士が空砲の煙火が噴き出すと、

 決められた人数が倒れ、決められた数が前進し、

 ドナンの戦いが再現されていく。

 「数十人単位で塹壕を掘って、待ち構えていた方が良くないか」

 「1分で4発だと、狙いもままならずだな・・・」

 「それに水捌けが悪く、皮靴だから水虫になるぞ」

 「職業病だな」

 

 

 

 イギリス

 目的の不明の帆船が浮かんでいた。

 機能優先な軍船として暴挙であり、

 速度を求める商船としても愚挙だった。

 世界最大最強の軍船ながら甲板に菜園が作られ、

 作物が植えられ、鶏が飼われていた。

 清国海軍 大型ジャンク船 鄭和

 全長150m、全幅62m。

 「今日は、天津飯ある♪」

 「港が近いと、新鮮な水と卵がたくさん使えるある」

 「でも、降りても大丈夫あるか? 魔女狩りは嫌ある」

 「カトリックは不正と腐敗で神聖を喪失ある」

 「科学技術の発展と大航海で知識量が増え、世俗化が進んでいるある」

 「イギリス正教とプロテスタントの分離でキリスト教は失墜ある」

 「キリスト教は権威を落とし、絶対的な価値基準じゃないある」

 「もう、魔女狩りのよりどころもないある」

 「清国も世界の中心から、アジアの大国に引き摺り落とされて落ち目ある」

 「庶民が外界に無知である事で保たれていた権威も怪しいある」

 「大丈夫ある。清国の船は大きいある」

 

 ロンドンっ子は、群れをなして清国船の威容を見つめる。

 白人将校たち

 「ムガル帝国の巨大帆船は、常軌を逸していたが」

 「清国のそれは、愚行の極みだな」

 「洋上移動基地とか、要塞のような使い方じゃないのか」

 「1対1で勝てなくても数を揃えれば勝てるだろう」

 「60隻ほど作るらしいよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「動きが遅くても、上陸作戦で有用かもしれない」

 「なるほど、あの大型ジャンク船なら沈む前に海岸にたどり着けそうだな」

 「しかし、正気ならまともに撃ち合いたくないな」

 「大砲は日本から買ったものらしい」

 「造船と大砲は、教えたはずなんだがな」

 「清国は、大砲を作る技術力が低いのか?」

 「いや、中華思想が強過ぎてな・・・」

 「だが、鉄鉱石もあるし、木材もある」

 「鉄剣と槍を作れるのなら、いずれ、大砲くらい作れるだろう」

 「脳が同程度なら同等以上のモノが作れるだろうよ」

 「そうとは限らんよ」

 「まず、技術者を優遇する風土が必要だ」

 「そして、知識を共有できる土壌と、適度な競争・・・」

 「あれだけ大きな船を建造できるのなら、大砲も作れると思うが」

 「職人たちは?」

 「戦争が終わったから引き揚げさせたよ」

 「まぁ 作らせるより、買って貰う方が良いからね」

 「日清戦争を期待していたんだがな」

 「いまからでも戦争すれば良いのに」

 「大西洋とインド洋の制海権を奪えるかもしれないな」

 

 

 フランス

 糞尿処理による人口増加と副次的な産業で日本人街の建設は拡大、

 しかし、パリの人口増加に対し、農業肥料では、焼け石に水であり、

 ルイ14世も日本人の懐が温まるだけなのが癪なのか、

 地下下水道の建設が始まる。

 もっとも、下水道管理も日本人がやり始めたのだが・・・

 1715年 パリ

 街道を埋め尽くした民衆は喜び、葬列に罵倒を浴びせた。

 絶対王制を敷き、太陽王と呼ばれ、

 フランスの国益を拡大させたルイ14世の葬儀だった。

 戦争の重税が庶民に押しかかっていた。

 貴族、特権階級が己が財産を守ろうとするなら庶民は生き地獄であり、

 庶民が生き残ろうとするなら資産の再分配を狙うか、

 庶民同士、財を巡って殺し合う選択しか残されていなかった。

 フランス人の金の使い道が実利にあるのなら、忍耐できたかもしれない。

 しかし、フランス人の気質は実利より虚栄だった。

 フランス人の気質がフランス人とフランス社会を追い詰めた。

 日本人たち

 「国を大きくしても、国民から嫌われてしまうと不憫だな」

 「国益と庶民生活が一致しているとは限らないからね」

 「国益より特権階級の踏み台にされていると思われたら、お終いだな」

 「俺たち日本人の立場は、どうかな」

 「糞尿処理している間は大丈夫と思うけど、税金が増えそうだな」

 「いやだよ」

 「利権だけで碌に働いてない貴族に払わせればいいんだ」

 「そうそう」

 「小金貯めたし、帰るか」

 「幕府だって、結構、取るぞ」

 「んん・・・どうなるか、もう少し様子見かな」

 「ルイ15世は5歳だと」

 「じゃ摂政が付くんだな」

 「議会が決めるらしいよ」

 「王様が傀儡にされるか、王位簒奪されそうだな」

 「日本は傀儡が普通だろう」

 「裏で仕切ると矢面に立たず、うまみが転がり込むからね」

 

 

 1716年

 江戸城

 第8代将軍 徳川吉宗

 「戦争が終わると鉄砲と日本刀の売れ行きが落ちてマニラガレオンが買えなくなるのか」

 「御意にございます」

 「それに鉄砲と日本刀を作ると日本の山が禿山になる」

 「御意にございます」

 「では、生産を落としてはどうかな?」

 「食べられなくなる者が続出かと・・・」

 「戦争で儲けたのだからもういいだろう」

 「いいだろうと言われましても、雇った人足には “金” を払わねばなりませんし」

 「これまで支払っていた “金” は戦争で得た外貨ですので・・・」

 「堂島米会所の先物が原因で米価が高騰しているのではないのか?」

 「い、いえ、そのような事は・・・」

 「だが先物のために農民たちから米を奪って、大阪に持って行っておるだろう」

 「それで、地方で一揆が増えているのではないのか」

 「で、ですが、それで幕府の財政が助かっているのでして・・・」

 「・・・それでどうせよと?」

 「食えなくなった者には別の職を与えるのが良いかと」

 「別の職といっても、佐渡金山は年々減少している。幕府も “金” はないぞ」

 「南インド側に立って参戦すれば、もう少し “金” が入るのではないかと」

 「だが清国から八島(舟山)を守れなくなるだろう」

 「噂では、清は、チベット遠征があるとか」

 「チベットに行くと見せかけて八島じゃないだろうな」

 「日の本は、清朝に味方すると確約しているので大丈夫かと」

 「だが清国海軍は強大になってる」

 「幕府の兵力が少なくなれば、どう動くかわからんだろう」

 「では、食えなくなった者は、すめらぎ領の移民を募ってはどうでしょうか?」

 「んん・・・それはいいとしても金銀流出は困る」

 「投資がなければ回収も遅れます」

 「商人たちは、無手で戦わされているのと同じです」

 「商人どもは、儲けているのではないのか?」

 「金銀の持ち出し制限を上げなければ、国外に財を築くかと」

 「んん・・・」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 公事方御定(判例)書が完成したのが1742年。

 それ以前は、奉行が自分の裁量で刑罰を下していました。

 

 日本領すめらぎ領は、かなり広いです。

 史実でいうところの、ワシントン州(17万2348ku)、

 オレゴン州(24万8631ku)、アイダホ州(21万4314ku)

 の合計は、(63万5293ku)。

 さらに北方に未開地が存在し、

 ブリティッシュコロンビア州(92万5186ku)、

 ユーコン準州(474391ku)も期待できそうです。

 また、フランスとスペインのワイオミング州、コロラド州、ユタ州への入植は遅れており、

 すめらぎ領と争点になるかもです。

 

 

 清国は、スペイン継承戦争でイギリス、ポルトガルの支援を受けたのか、

 中洋折半風の鄭和艦隊(60隻)を保持しそうです。

 

 

 ダマスカス剣=ウーツ鋼の正体は、炭素含有量1.6パーセントの超高炭素鋼でした。

 炭素は多ければいいというものではなく、丁度いい含有量だったようです。

 因みに日本刀は、玉鋼の炭素含有量1〜1.5パーセントですが、高炭素鋼。

 日本刀は、硬柔の材質の二重構造で、

 ダマスカス剣は、製法の違いなのか、

 硬柔の材質を途中で交互に加えているのか、年輪のように混ざったようなもの、

 日本刀の方が錆びやすいので負けでしょうか。

 もっとも、斬れ味とか、その辺は不明です。

 あと時代は質から量で、優良な砂鉄ならどこの国でも良く、

 そして、禿山防止で優良な木炭ならどこの国でも良いという感じです。

 

 

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