仮想戦記 『バトル オブ ゼロ』

著者 文音  

 第02話 震災編

 

国際連盟の発足とともに、日本は常任理事国となる。

1920 年(大正9 )十一月 

軍艦香取艦上 

「迪宮殿下、ヨーロッパへの歴訪にあたり、香取に乗船してイスタンブールまでの旅でよろしかったんでしょうか?」 

「実は、第一次世界大戦の総括にもとづいて、報告書が山のようになっておる。船旅の最中にこれを読もうと思っている。それに、鉄道省の技師から将来、東海道線の輸送量がさばききれなくなるので新規に鉄道をひきたいというのがあがってきている。その一環として、オリエント急行に乗ってみようと思っておる。高山信吾中尉、君もハルファまでの船旅で報告書を出してみないかい。読む価値があれば、来年度以降の予算に反映される可能性があるよ」 

「はっ」 

 

海軍省報告書 

わが日本軍は、大戦の結果、地中海にも支配地を広げました。その結果、海軍戦力の増強は危急の命題となっております。そのため、戦艦及び巡洋戦艦をそれぞれ八隻運用する必要があります。 

「建造後の艦隊維持費用を国の歳入に反映させてみよう。こっちの計算を大蔵省にさせよう」 

 

陸軍省報告書 

西部戦線で塹壕戦に移行した折、局面を打開したのは戦車の登場でした。戦車の突破力は、騎兵隊をはるか上回り、今後の戦争でますます必要とされるものと予想されております。よって、我が国も戦車の研究を始め、エルサレム領にて実戦配備する必要があります。また、この突破を防ぐ戦術を研究するのも緊急の課題になります」 

「今度の旅で実際に戦車を見る必要があるな。戦車の研究費用を来年度予算に反映させよう」 

 

外務省報告書 

大戦後、アメリカの提唱により国際平和を探求する国際連盟が発足しました。提唱国のアメリカが参加しない他、独逸も参加を認められておりません。このような不備がありますが日本は、イギリス、フランス及びイタリアとともに常任理事国に任命されました。国際世論を親日に導くために、日本から国際連盟に人材を派遣するべきです。懸念事項といたしましては、大戦後の仮想敵国が二つ考えられます。一つはイギリスと並ぶ超大国となりましたアメリカ。しばらく 雌伏を余儀なくされるであろうが独逸、ソビエト。現在でさえ、日本海軍の仮想敵国はアメリカとなっております。モンロー主義を唱えるアメリカですからいきなり戦争とはならないでしょうが、日本とアメリカの間に冷戦、いいかえれば静かな外交戦が展開する可能性が現在最もたかくなっております。日本といたしましては、外交においてアメリカの孤立を導く方針を取るべきです。また、南洋諸島とエルサレム信託地を南洋庁並びにエルサレム庁に任せたいと思います。 

 

「南洋庁とエルサレム庁の設置を予算付け。対アメリカ政策だが、イギリスにもコメントをもらおう。もうひとつの超大国であるイギリスとの日英同盟を堅持すれば戦力比で優位に戦える。敵にとっては、この同盟を解消させれれば戦力を半減させることができ大成功である。アメリカの戦力を低減させるには、ユダヤ人票を味方につけるのが有利。エルサレム信託地(現在のイスラエル、レバノン)をうまく統治すれば味方が増えるかな」 

 

同駐中華民国大使館 

今回の講和条約に関しまして、これを端的に表しました名文を掲載したく思います。 

 

これは平和などではない。たかだか20 年の停戦だ。 

フェルディナン=フォッシュ 

 

今回、同盟国側にはきわめて厳しい状況が生まれました。このため、円に対しても円高が進むものと思われます。日本になく同盟国にあるものの一つに、優秀な工作機械があります。これより、同盟国側から工作機械を安価に輸入できるものと思われます。また、中華民国にはその資材となるタングステンが産出いたします。ユダヤ人擁護の政策を取っております我が国といたしましては、イギリス連邦から産出いたします工業用ダイヤモンドを用いて、エルサレム信託地もしくは樺太に工作機器会社を誘致できれば上策と思われます 

 

「駐中国大使館に切れ者がいる。この者を登用できれば、諜報戦でかなり有利だ。ドイツ領にすむユダヤ人が経営する工作機器会社にエルサレム信託地に誘致できないか検討してみよう。中国から優先的にタングステンを購入しよう」 

 

農商務省 

現在、日本では北海道まで稲作の生育圏内が北上いたしましてイネの品種改良はいったん落ち着いております。このたび、地中海気候のエルサレム信託地にはイネは多量の水を消費するため、主食といたしましては不適切であります。現地の気候に適しているのは麺類やパンに用いられる小麦を第一候補と考えております。つきましては、エルサレム信託地に農業試験所並びに農業大学の建設を行い、食料増産をはかりたいと思います。 

「農業試験所の新設予算を組み込み、帝国大学をエルサレムに建設」 

 

大戦の結果、中華民国領と接する陸地が増えました。つきましては、中国との取引が活発するとともに、中国領からの不法移民が増大する可能性があります。中国とは、鉱物などの一次産品を購入し、工業製品を輸出する市場として貿易をしていきたく思います。 

 

鉄道省 

大戦の最中から、東海道、山陽道の旅客並びに貨物輸送量が増大しました。このまま輸送量が増大いたしますと、近い将来輸送量をさばききれなくなります。これに対する対処といたしましては、 

 

同線路を複々線化 

同線路の電化による輸送量増大 

同線路を標準軌に変更することで一編成当たりの輸送量増大 

 

等が考えられますが、いずれも新線をひくのと同じくらいの経費並び時間がかかります。つきましては、兵器運搬を考えますと狭軌では運搬できる車両幅の制限が厳しくなっております。よって、新線では広軌を採用し、世界最速の列車を電化により走らせたいたいとおもいます。新線では、世界最速を狙いたく思いますので、できるだけ列車を直進させ、カーブを最小限に抑えるためにトンネル技術を多用したいと思います。つきましては、世界初の海底トンネルを広軌規格で下関と門司間に開通させ、トンネル技術の習得に努めるとともに北九州と東海道を直結させたく存じ上げます。 

 

「関門トンネルに広軌規格で予算をつけよう。まずは、博多と下関間で運行してみるか。それより、海底トンネルを掘るのに成功するのか。難問が山積みだな」 

 

大蔵省 

「エルサレム庁(仮設)における私有地の売り出しに関しまして、以下のように大蔵原案を作成しました。 

 

エルサレム庁の設置ともに、世界に土地の半分を賃貸させる旨、公示する 

最高値をつけたものが該当区画を競り落としたものし、三日以内に手付金として5%。一か月内に十年分の賃貸料を払う義務が生じる。この義務を果たさない場合、競りの権利は次点の人物もしくは組織に移る。 

賃貸期間は、十年とする。十年後、新たに賃貸したいものは最初の競りで成立した金額より10 %増しで賃貸料を用意しなければならない。ここで、先に十年賃貸したものは拒否権を発動できる。拒否権を発動した場合、今後十年間の賃貸を認められるとともに、この間に10 %増しの金額と同額を納めれば、拒否権が正当化され、次の競りまでの期間の賃貸契約が有効となり、引き続き土地の賃貸ができる。拒否権を発動させない場合、もしくは新しい賃貸者に賃貸をさせたい場合、賃貸期間中に建設もしくは設置した建造物に関しては、市場価格で引き取ってもらうことができる。 

競り落としてから十年後の賃貸料とみなされるものとしては、エルサレム庁に収めた税金及び寄付金もその一部として認める。この二つは二倍の効果をもつものとする。いいかえれば、賃貸料の半額以上を税金で納めることができれば、次回更新時に賃貸料は必要ない。 

 

「ほう、税金を納めることで賃貸料を割り引くことができるのか。これで、工場の誘致が進めばいうことなしだな」 

 

駐軍エルサレム水瀬隼人中将 

今回のスエズ派遣で直面しました問題につきまして報告いたします。今回、巡洋艦18 隻からなる連合艦隊がスエズに派遣されましたが、時間の経過とともに隻の運用率が低下いたしました。 

単純に、二つの巡洋艦が部品の都合で故障したとします。二つの故障部位が異なれば、双方の正常な部品を用いれば、一隻は動かすことを考えました。しかし、今回の連合艦隊では、部品一つひとつが異なる場合が多く、故障とした場合、その艦艇にあわせて新たに部品を製造するか、やすりがけして部品を削る必要がありました。今まで、日本近海で作戦する場合、製造工場に発注するだけで済みましたが、エルサレムで発注した場合、部品が届くまで長い時間が経過し、作戦行動に支障をきたします。願わくは、これから製造させる部品につきましては、巡洋艦の場合、同じ型の巡洋艦で製造し、新しい型の巡洋艦になった場合でも、部品の共有化を推し進めていきたく思います。いいかえると、共通規格の提唱をいたします。 

次に、兵は神速を尊ぶ。と使い古された言葉ですが、今回のスエズ派遣で一番活躍した隻は、水上艇を運用した若宮でした。海軍、陸軍があるのなら空を部隊とする空軍を設置すれば、飛行機の有効活用につながるものと思います。また、神速につきましては、隻にも求めたいとおもいます。連合艦隊で運用できる隻は30kt  以上あることを条件とすれば、神速作戦にも対応可能と思われます。 

 

「空軍省の設置。それと同格で共通規格省を陸海空軍省と同格に扱い、四つの省の上に大本営を常設する。さて、八八艦隊だが30kt  の縛りを入れるか。これより遅い隻は連合艦隊に参加できないことを検討してみよう。」 

 

「迪宮殿下、わたしからは提案のみなんですが、よろしいですか」 

「もちろんです、高山中尉。これを受け取ればいいのですね」 

「お願いします」 

「おや、三枚ですね」 

「ええ、うちは農家の三男坊の出身ですから」 

「うむ」 

 

高山信吾中尉 

日本に貢献したとする人物への勲章授与。逆に、外国で貰った勲章への日本国内での評価。 

軍艦への交代勤務制と軍幹部の留学義務化。 

イギリスにおける日本食の普及。イギリスに留学した同僚はいつも言ってました。食事がまずい。醤油、味噌、梅干し、寿司、牛丼、海苔。和食が恋しかったのは、アメリカに留学した同僚も同じことでした。 

 

イギリスで留学生向けの寮を借りるとき、同じく食品会社や飲食店も進出させるか、検討してみよう。水瀬隼人中将のレポートに出てきたロレンス中佐にも我から勲章を叙せねばなるまい。艦隊の交換勤務は、同型の艦が複数できたときの課題にしておこう。 

 

同年十二月 

イスタンブール 

「良子、またせたね」 

「よろしかったんですか。私たちが新婚旅行をすると発表して?」 

「正確には、フランスに入ってからだね。イスタンブールからトリエステ間は、敵国感情に支配されてる可能性があるから、連合国領でないと、新婚旅行中に不慮の事故にあいかねない。もちろん、連合国側でも万が一の事態が待ってるかもしれないが、新婚旅行は、一生に一度だからね。チャンスは一回きり。それに、ここまではおっかけてくる新聞記者もいない」 

「わかりました、私にとっても初めての海外旅行ですから存分に見物させていただきます」「そういわれると、助かるよ」 

「岩瀬少尉、すまないが同行を頼む」 

「はっ。不便でしょうが、列車を壱両貸し切りにしました。食堂車以外で他人と接触しないようにいたしましたことをご理解お願いします」 

「御意」 

 

ベオグラード近郊 

「この列車の感想はどうだい?」 

「日本の列車より二まわり大きいせいか、ゆれなくていいわ」 

「そうだね、広くて静かだ。日本でもこんな列車が走ってるとしたら乗ってみるかい?」 

「ぜひ乗ってみたいわ」 

「そのうちできるかもしれないから、気長に待っててくれ」 

 

ミラノ駅東方 

「さて、皇太子としての時間だ。ミラノでは、自動車と航空機工場の視察に行くよ」 

「はい」 

 

ミラノ駅国際列車用ホーム 

「おい、これを戦勝国めぐりにやってきた皇太子にぶつけてみるか?」 

「さて、婚約者の前でどんな答えをくれるかな。ひょっとしたら、うまい受け答えができるかもしれない。なにせ、イタリアと同格の五大国を実質、仕切ってる人物だからな」 

「あれ、日本の皇帝は飾り物か?」 

「いや、切れ者だけど病弱らしい。会議も三回に一回は皇太子が代行してる。皇太子にしてみれば、皇帝になる前にはめを外せる最後のチャンスらしい」 

「それにしても、この記事。ワシントンポストだけど、白い家は当てが外れた感じじゃないか。自国の将軍をけちょんけちょんにされて」 

「お、向こうに列車がみえてきた」 

 

一編成のオリエンタル急行列車がミラノ駅に滑り込んできた。 

「チャオ」 

「チャオ」 

「皇太子殿下、ミラノにはどんな用件で?」 

「もちろん新婚旅行ですよ」 

「おおーー」 

「ミラノでまわるところは」 

「航空機工場と自動車工場のほか、大聖堂にも行く予定です」 

「殿下、この記事をご存知ですか?」 

 

ナイト勲章の代償 

 

水瀬隼人中将 授賞理由 

オスマントルコから近東の開放。西部戦線への兵団輸送 

海軍戦死者 78 名。陸軍戦死者 1648 名 

ロレンス中尉のコメント 

「彼がいなければ、バグダット解放は二年以上遅れることになったでしょう。機をみるに俊敏な方です」 

 

ジョン=パーシング将軍 

西部戦線の救援、独逸をフランスより駆逐 

陸軍戦死者 13万人 

とあるアメリカ陸軍関係者の話 

「イギリスとフランスは、アメリカ兵をそれぞれの兵団に組み込ませようとしたんだよ。そうすれば、指揮権の問題もないし、それまでの独逸軍との戦闘経験が生かせるからね。しかし、パーシングはそれを拒んで独逸軍に対し、正面作戦を展開したね。結果は戦死者と障害者の製造工場さ。なんせ、戦死者比率は軽く英仏両軍の比率を上回ってたね。しかも自分は、後方に陣を取って前方の司令官と軋轢をつくるだけ。猪のように突進するだけだったよ。指揮権が連合軍に移った時にアメリカ軍が万々歳したよ。今日はお祝いだってね」 

 ワシントンポスト 

 

「我々は、解放軍ではないですよ。同盟しているイギリスを広い範囲で領土と考えますと、領地に侵入してきた敵を駆逐しただけ。専守防衛に努めた結果、スエズ運河確保が必要になり、その範囲内でイギリス兵について行っただけの話です。もちろん、水瀬中将はよくやってくれました。ナイトの勲章に匹敵する行為であり、我が国からもそれにちなんだ栄誉を与えるつもりです。ただ、日本軍は第一次世界大戦の英雄に匹敵するほどの活躍をしておりません。アメリカ陸軍こそ、戦争の勝利者ですから」 

「おー。では、日本国のユダヤ人国家建設表明の今についてお聞きしたいのですが」 

「議会に掛ける前ですので変更があるかもしれませんが、ここでお話しできることを話しましょう。エルサレム信託地の半分は、公共用地となり、アラブ人、パレスチナ人及びユダヤ人の入植を受け付けます。残り半分につきましては、10 年の租借地として世界に貸し出します。賃貸料を払っていただいた方に対しては、先方が希望すれば司法権も授与されます。一種の公国領と思ってくれて結構です。」 

「10 年とは少し短くありませんか?」 

「10 年後にまた競りを行うためにそう感じる方もいるでしょうが、もし他の方が競り落とすなら最初の競り落とし金額の1 割増しの金額が必要になります。この110 %の費用ですが、土地に工場を建設し、10 年間に収めた税金が賃貸料の55 %を超えた場合、無条件で賃貸契約が更新されますし、50 %以上なら、ライバルがいない限り10 年後の更新料なしで、賃貸を継続できます。一種の工場誘致政策と思ってもらって結構です」 

「はい。もし、工場を建設したものの10 年後に賃貸料が更新できないという場合、その工場はどうなりますか?」 

「今のところ、政府が時価で買い取ることを検討しますし、新しい借主が使用したいのでしたら、両者の間で売買契約が成り立つかもしれません」 

「もう、ないようでしたら、ここから視察に向かいますね」 

「急げ、明日の朝刊に間に合うぞ」 

 

白い家 

「一人この記事で大統領候補が消えたな」 

「はっ。1920 年の予備選では、退けることができましたが、次回の共和党予備選では強力なライバルになりえました」 

「アメリカとしては、日本の黄禍論を展開して日英同盟を解消させるつもりだったんだが。エルサレム信託地は、イギリスの保護領であるエジプトの弾除けになってしまったし、アメリカ国内で厭戦気分が蔓延するな。この賢い日本人中将と猪将軍というイメージが世界中に広がってみろ。世界から孤立するアメリカが目に見えている。クリーン戦略で軍縮会議を22 年に設定しろ。その前に戦艦の建造を急いでおけ。アメリカがユダヤ領を約束しておけば、こんな展開になりえなかったものを」 

 

フランスイタリア国境 

「このトンネルを越えたら、フランス領になるけどこのトンネルは世界最長のシンプロントンネルという」 

「世界最長ね。日本の技術では無理かしら」 

「今は無理かもしれない。けれど、数回長距離トンネルを掘る技術を習得させたら、世界一のトンネルを掘れるかもしれない。実は、下関と門司間で海底トンネルを掘る案が出てる」 

「そっちの方が夢があるかもね。お魚が頭上を泳いでいるんだから」 

 

パリ リヨン駅南方 

「もうすぐパリだよ。駅の名前がなぜかリヨン駅という」 

「え、パリにリヨンがあるの?」 

「世界には、利用者のために便宜を図る鉄道もある。行き先を駅名にするお国柄なんだ。だから、ソビエトのモスクワも行き先ごとに駅があるはず」 

「では、日本はイギリス式ですか」 

「それがロンドンだと中心的な駅が10 駅あって、文字通り鉄道発祥のお国柄さ。もっとも、オリエント急行に乗ってロンドンを目指すのを勧めてくれたのは、僕の顧問さ」 

 

パリ リヨン駅ホーム 

「おい、世界中のユダヤ人から日本の皇太子からコメントを取ってこいと言われてんだ」 

「うちもだよ。少なくとも入札の実施時期についてコメントを取ってこいと言われてる」 

「金持ちは、別荘。実業家は、水がいらない産業を興そうとしている。国なき民族の悲願がかかってるからね」 

「でも、パレスチナ人も権利があるよな」 

「あるが、入札方式だとお金持ちがどうみても有利だよ。たとえ、いくつかの区画を取られても、次の入札も挑戦してくるよ」 

「で、エルサレム信託地の言語はどうなるんだ?」 

「公共語は、最低三つだろ。ヘブライ語、アラビア語、日本語。それに英語かな」 

「中東の火薬庫がこれほど注目されるとわね。ここにいる新聞記者だけで、30 人はいるぞ」 

 

オリエント急行の終着駅に列車が入ってきた。 

「ボンジュール」 

「ボンジュール、迪宮皇太子」 

「フランスではどこへ」 

「エトワール凱旋門で献花をするために」 

「フランスの印象は?」 

「そうですね。フランスはよきライバルです」 

「おー」 

「さすがに食事がうまい。日本も負けてはいられません。実はイギリスに日本人街を建設しようと思います。そこに日本料理も誘致しようと思ってます。ぜひ、皆さんの舌をうならせるものを用意したいと思ってます」 

「エルサレム信託地に日本料理店は進出しないのですか」 

「私からお願いするつもりはありません」 

「エルサレム信託地の賃貸の入札はいつになる予定ですか?」 

「21 年度予算は、もう間に合いませんので、その次の年度に間に合うように公布をするならば、来年の九月ごろを予定しています。どうか少しでも多くの方々に入札を入れてもらいたいものです」 

「質問がなければ、凱旋門に向かいますね」 

「おい、すぐさま、新聞社に報告を送れ。カメラマンは、凱旋門で献花の様子を写してこい」 

 

ロンドン ウオータールー駅 

「おい、ロンドンまで日本の皇太子をおっかけてくる理由はなんだ?」 

「今度は、ロレンス中尉とエドワード皇太子のお出迎えだからな。写真を撮ってこないといかん」 

「へロー」 

「へロー、迪宮」 

皇太子同士で握手。迪宮とロレンス中尉が握手。三者は記者団を引き連れ、ウエストミンスター寺院へ献花に向かう。 

 

バッキンガム宮殿 

バッキンガム宮殿でロレンス中尉に日本空軍名誉元帥の称号を授与。 

「今回の旅は、水瀬中将にナイトの称号をいただきましたのでそのお礼を兼ねて、私の新婚旅行をしようと思い立ちました。さて、パリの記者に負けまして、道中好き勝手なことを言ってました。実は、イギリスで日本の見本市を開こうと思っています。日本食が恋しいという日本人留学生の要望にこたえようと思っているのですが、世界三大料理といわれる食の中に日本食が入っていません。これは、我々日本人のアピールが足りないためと思っております。つきましては、それをアピールする場所を今回のイギリス訪問中にめどをつけようと思ってます。もし、候補地がおありでしたら、どんどん私にアピールしてきてください」 

「候補になるには、どんな条件が必要なのでしょうか?」 

「日本食を作るにあたって、小麦を栽培しようと思っています。見本市は、幅100 メートル、長さ500 メートルを必要でしょうか。植木市を開催するために平らであること、ロンドンから直通列車が走っており、駅から二キロメートル範囲であること。小麦が栽培できることでしょうか」 

「そうなりますと、駅近郊で小麦栽培をしているとこですね。猪のとれる場所では難しいですな」 

「そうそう、鷹の舞うようなところを我々も探してみましょう」 

 

 1921 年(大正10 )二月 

農商務省からの告示 

近年、イギリスをはじめとする欧州各国に留学や出張が盛んとなっております。さらに、欧州各国に日本文化を伝えることは、文化交流の大切さを実践するものとして、政府も後押しをしてみたいと思います。日本食の職人、日本食品会社、盆栽職人、植木屋など、日本文化の伝道師になる覚悟があるのでしたら、ぜひ、今回の募集に応募して下さい。今回は、ロンドンに留学している留学生や商社勤務の方の便宜をはかるために、ロンドンから南東40 キロに位置するケント州の州都メードストンで日本国のみなし公務員として勤務していただきます。最低基本給は大蔵省に勤務五年の主任と同額の給料を保証いたします。食品会社等の会社であれば、土地建物の準備をこちらで用意しておくほか、社員三人まで先の勤務条件でみなし公務員として雇用契約を結ばせていただきます。もし、政府に対し提案がありましたら、文章により一次審査を通過したものにつきましては、同省において最終審査があり、それを通過した場合にその提案を受け入れる用意があります。その際、題名は日本文化の伝道師であり、それに貢献していただくことが採用していただく条件となります。 

 

日本橋にあるとある牛丼屋 

「おい、親父。お前のところはうまくて安くて早い。三拍子そろっているが、イギリスに行く気はないのか?」 

「そんなうまい話があるわけないでしょ。第一食っていけれないでしょ」 

「それがあるんだ。公務員になって給料を保証してくれる。食いっぱぐれはない。しかも食の伝道師を自任すれば、いいかえればそこで成功すれば、ヨーロッパ中に牛丼文化を広げてもいいそうだ。しかも店が暇だったら、大豆、小麦、米の栽培をしていればいい。同地に農業試験所のイギリス支所ができる話だ」 

「忠治、おまえ、落ちる前提で受けてこい。受かれば公務員だ」 

 

金毘羅にあるとあるうどんや 

「おい、おばちゃん。お前のうちでイギリスに行く者はいないか。うどんさえ作ってくれれば問題ない。おまんまの食いっぱぐれはない」 

「小夜。おまえ、東京まで観光に行ってきな。受かれば、お前も公務員だ」 

 

和歌山にあるとある梅栽培農家 

「達治、おまえ、お国のために働いてこい」 

 

野田にあるとある醤油屋 

「忠一、佐治、洋三、お前に我が家を継ぐうえで、課題を申しつける。イギリスに渡り、ヨーロッパ中に醤油を売り開くのだ。機転でやってぬけてこい。成功した者に我が家を継がせる」 

 

大阪にあるとあるラーメン屋 

「父ちゃん、俺んちもイギリスにいこうや。新し物好きは大阪の特権や」 

「そやな、いってみるか。イギリスでラーメン売れんかったら、漫才でもしよや」 

 

農商務省 

「おい、どうやって食品ごとの代表を決めているんだ」 

「そりゃ、料理を作ってもらうしかないよ」 

「全部、職員が食ってるわけにはいかないから、応募者を集めて料理させ応募者同士で代表を決めている。全員納得することがなければ、代表を数名残して最後に職員が試食している。この際、日本代表選抜ということで局長クラスまで食べに来てるんだ。おれたちが食べるはずなのに試食者を決めるにも競争倍率が応募者並みに高くてね、最後は抽選で決めてるよ。そうしないと担当者が悲鳴を上げるからね」 

 

霞が関 

共通規格庁の立ち上げに伴い、五年後以降、共通規格で政府の発注品を納めることとする。軍艦も飛行機も共通の部品を使えば、同じ型であれば使い回しがきくものとする。よって、軍艦の製造は、十年間同じ規格で製造するものとする。工作機械が必要とあれば、政府はできるだけの援助をする。 

 

「これって、敷居が高くないか?」 

「高いが、軍以外の納品は人身を預かる部品以外、それほど厳しくしないそうだ。小さな町工場でも今回の規格で新たに納品できるようになるかもしれないという配慮もあるそうだ」 

「それよりも、次の戦艦は設計図をひけないかもしれないぞ」 

 

連合艦隊に所属する艦は、30 kt を出せるものとする。 

 

「これは、海軍が要求した八八艦隊をやんわり拒否してるね。実際、大蔵省がした維持費の計算では、国が傾くほどだったよ。国家予算がなくなるほどだ。戦車の研究費は予算が通っていたよ。戦車も共通規格でできるといいんだが。どうやら戦車も金食い虫らしい」 

「今ある戦艦は、天皇御召戦艦でもある香取でさえ、その半分しか速度が出ないんだが」 

「金剛型であれば、改装をすれば達成できそうだが。それに、十年間同じ型の戦艦を使用するとなると、各部署で要求が入り混じりそうだ」 

「もっとも兵装は弱めとならざるを得ないだろうね」 

「戦速を優先せざるを得ないね」 

 

下関門司間を海底トンネルで結ぶために調査費を承認。東海道山陽道に新線を敷くための路線調査費を承認。 

 

「付属事項で広軌規格と標準軌規格で必要予算を検討とある」 

「北九州と本州が陸続きになる効果は大きいよ」 

「新線ができたら、大阪まで乗車時間が半減する予定らしい」 

 

南洋庁とエルサレム庁の設置。八番目の帝国大学をエルサレムに開設する。付属農場をイギリスのケント州にも開設する。 

 

「もう、国予算で建設する帝国大学はないと思っていたが、びっくりした」 

「授業を日本語でするとさすがに都合が悪いよな。英語が共通語でなんとかまとめよう」 

 

エルサレム信託地の第一回入札を今年九月に行うものとする。 

 

「これは、一回ぽっきりとなる可能性がある。一回落札したら、権利だけ維持して金がなければ、さらに貸し出しとなる可能性もある。どうやら、ユダヤ人とパレスチナ人が札束で取り合いになるようだ」 

「中東の火薬庫に火がつかないことを祈るのみだ」 

 

空軍省を設立し、エルサレム信託地に本部を置くものとする。 

 

「本土だと海軍と空軍とどっちが主導権争いをするか、それを回避するためのものだろうね」 

「トップに中尉を持ってきたことは、知名度か実力か」 

「両方の場合もあり得る」 

 

陸海空三軍及び共通規格庁の上に統合本部を置くものとする。 

 

「陸軍と海軍は仲が悪いからね」 

「近東で協力体制を作るために必要な措置かな」 

「迅速に命令が伝わるようにするためらしい」 

「兵器の製造も統合本部で行うようしたのは、二重に開発経費がかかるのを防ぐためともいえる」 

 

今年も婚礼の儀の予算計上はなし。大正天皇の体調を考えての上での話だ。 

 

同年九月 

イギリス メードストン 日本人街 

「平日は、今のところ農民だな」 

「週末になると、ロンドンからの列車が着くたびに料理屋が忙しくなる」 

「週末の午後になると、今度はお持ち帰りの日本食がダース単位で売れていく。こっちは日本の保存食だな」 

「それが最近そうでもない。醤油三兄弟は、醤油をステーキにかける調味料として売り出している。おろしたラディシュとあわせて和風ソースとして成功しそうだ。居残り組が大豆の確保に奔走してる」 

「それと二つ星、三つ星レストランの料理長がこっそりと醤油を買ってゆく。なんでも醤油一つで星一個増えそうな効果があるそうだ」 

「豆腐屋は、醤油をかけることで畑のステーキとして売り出し始めている。こちらは医者の勧めで肉食を禁止された患者か、パリコレやロンドンのモデルが数日分を買い込んでゆく。」 

「ロンドンの百貨店にもおろしてくれと客が頼むんだ。豆腐屋は、苦労しながらもロンドンの百貨店と売買交渉してる」 

「おかげでおれたちが持ってきた大豆だけでは足りなくなりつつある。今年だけは、急きょ日本から取り寄せたけど、周辺を大豆畑にして来年の在庫を確保しなければならない。最近、俺たちは暇でなくなりつつあるんだが、みなし公務員より収入が多くなりそうだな」 

「それより俺は、お持ち帰りの乾麺があるならラーメンでもできるはずだと、そんな意気込みでお持ち帰り用のラーメンを研究してるラーメン屋に頭が下がるね」 

「中心部幅百メートル、横五百メートルを盆栽市にすると聞いた時は、どれだけスカスカな状態になるかと思いましたが、平日でさえ周辺の方々が物珍し半分できてくれたのでほっとしたよ。天気の変わりやすいイギリス用に地面をセメントにしといたのは正解だったな」 

 

同年十月 

エルサレム庁 

「エルサレム信託地の入札の結果が出ました。ユダヤ人が八割を落としました。パレスチナ人が残りを落としました」 

「この入札、毎年にしないか?国家予算の一割を確保できたぞ」 

「これは、十年に一度なので十年分としてプールすることが決まってます」 

「そうだな。後、交番を各区画ごとに配置するだけの予算ができたな」 

「わいろなどの誘惑に負けない人物を選抜してくれ」 

 

 1921 年(大正10 )十一月 

ワシントン 

ワシントン会議が始まる。 

「おい、軍縮会議だが、陸海空軍のはねっかえりは騒いでいないか?」 

「出世したかった者、一国一城の主になりたかった者は、飛行機乗りになってしまったからな。空軍で出世競争をしてるよ。それに、議会にかけた八八艦隊構想は、国民から総すかんだったよ。今はおとなしくしてるね。逆にワシントン会議を引っ張っていくかもしれない」 

「日本で、戦艦の新規建造は後一年は無理かな。今ある艦隊もかなり老朽化してるし、早いとこ、設計図をひっぱって共通規格で一気に四隻建造したいから、というのが海軍の本音かな。代換建造なら問題ないようだしね」 

 

白い家 

 

「日英同盟を崩そうとすると、イギリスが強硬に反対してくる」 

「エジプト保護領の弾除けがエルサレム信託地だからな」 

「今まで世界会議をリードしていたイギリスにとって、とってかわったようにアメリカで開催されたのも面白くないんだろ」 

「こっちを見る目がなんとなく、この猪野郎というのが見え隠れするんだよな」 

「パーシング様々だよ」 

「やむをえない。利益を優先せざるを得ないか」 

 

 1922 年(大正11 )二月 

ワシントン条約締結 

 

太平洋における各国領土の尊重。 

中華民国への九カ国による門戸開放要求 

英米日仏伊の戦艦比率 

 20:20:10:7:7 

戦艦の新規建造は今後十年なし。艦齢二十年を過ぎた艦についてのみ、代換建造を許可される 

航空母艦の各国配分については、戦艦比率を採用する 

巡洋艦一万トン以下 

日英同盟の更新 

 

霞が関 

「おい、戦艦の設計図をひけたか?」 

「は、金剛型をモデルにいたしました。戦速30kt を達成するにはこれしかありませんでした」 

「よし、主砲はどうなった?」 

「ワシントン条約にある41cm 砲を採用いたしました。この紀伊型は、初期排水量三万七千t 、改装排水量四万二千t となりました」 

「よし、敷島、朝日、周防、石見、鹿島、薩摩、三笠、香取の代換戦艦をこれでいこう。すぐさま、議会に通達せよ。来年度予算にねじ込め」 

「つきましては、巡洋艦の設計図も出来上がっております。妙高型と命名しました」 

「戦艦が終わったら、次は巡洋艦だな」 

 

白い家 

 

「おい、どういうことだ?私のところには、日本が世界の16 インチ(41cm )戦艦の過半数を得るべく、建造開始とあるんだが」 

「は、問い合わせたところ、各艦の就航年次を送られてきました。毎年、二隻ごとの建造を行うとのことです」 

「なになに、薩摩が06 年。鹿島が05 年。後は、日露戦争時の戦艦か」 

「日露戦争時の戦艦をこの時代まで引っ張ってきたものと思われます」 

「たしかに、たしかに条約には反していない。だがこの資料を見つけれなかった諜報部のトップは誰だ。すぐさま首を切れ」 

「はっ」 

「イギリスはどういってる?」 

「日本海軍の老朽化の原因の一因は、我が国にある。第一次世界大戦時、地中海の制海権を日本海軍に任せたために、日本海軍の艦の更新が遅れてしまったのでこのような状況を招いた。いや、困った、困った。と笑いながらいわれました。どうやら、ワシントンでの会議が面白くなかった模様です」 

「すぐさま、この戦艦八隻が就航した上でのシュミレーションを行え、それから世論対策をすぐさま出せ。このままだと、議会から太平洋の安全を守るための会議ではなかったのか?それとも、危険にさらすための会議だったのかと突き上げを食らうぞ」 

「はっ、至急」 

 

 1923 年(大正12 )一月 

フランスとベルギーがルール地方を占拠。 

トーマス=エドワーズ=ロレンスがイギリス空軍より除隊。 

 

 1923 年(大正12 )九月 

関東大震災発生。 

 

御前会議 

「犬飼大臣、被害の状況を教えてくれ」 

「死者行方不明者、五万人以上。住宅損傷およそ五十万戸。東京の半分の家が被害を受けました。避難民百万人以上。これが現在の数字であり、上積みは避けられません」 

「また、デマにより朝鮮人と中国人を排除する風潮が出ております」 

「復旧が進むにつれ、無職者が続出するものと思われます」 

「井上大臣、復興に金はあるかね?」 

「戦争景気が終わり、税収が落ち込んでおります。金はありません」 

「臣民を落ち着かせるいい手はないか?」 

「保護する者が必要かと」 

「陸軍を出す。各駐屯地ごとに区割りして、外国人を保護させろ。彼らにはがれき撤去を軍と一緒になってやってもらう。がれき撤去が早い駐屯地から、機動部隊にする約束をせよ」 

「埋蔵金を借りる。エルサレム庁に八年分の予算が残っている。これを一時、復興費用として運用せよ」 

「帝都の復興地図を製作せよ。職と土地の確保のために弾丸列車計画を発動せよ。東京から博多までの線路作成に従い、被害地域での用地確保を行う。がれき撤去が終われば、トンネル工事等に職を提供する旨、公示せよ」 

「使えるものは軍でもなんでも使え。皇居も半分を一般開放せよ。海軍に物資の運搬にあたらせよ。運搬に功があった部隊から、軍艦を配分してゆくものとする。総力をあげよ」 

「はっ」 

 

東京の壊れかけた路地裏付近 

「軍隊に助けられたのは、夢に違いないニダ」 

「きっと、地震で揺れたから、脳が混乱してるに違いないニダ」 

「おまえら、がれき撤去を手伝わんか。報酬も払う」 

「やるニダ」 

「そうかそうか。では、一輪車にがれきを積んで空き地に集めるんだ。仕事ぶりがよければ、公務員にしてやる」 

「本当ニダ?」 

「あー、嘘はつかん。警察官も消防官もかなり死者がでてるから、補充募集がある」 

「やるニダ。安定を求めるニダ」 

「やってくれ。俺たちも戦車がかかってるんだ」 

 

ソウルのとある輸入商社 

「これが今、欧州を席巻してる魔法の調味料ニダ」 

「これを日本に持ち込めば、金持ち間違いなしある」 

「さっそく、原料を分析してこのソイソースを作るニダ」 

「材料表示には、大豆、小麦、塩、麹を準備すればいいニダ」 

「早速なめてみるニダ」 

「これは、なんだか懐かしい味ニダ」 

「そう思うニダ」 

「頭の中で製造法を考えるニダ」 

「材料を一つの甕に入れてじっくり待つニダ。きっとそうに違いないニダ」 

「この調味料のなまえもうかんできたニダ」 

「ショウユニダ」 

「醤油ニダ」 

「これ、隣の食料品屋で売ってるニダ」 

「アミィーーーーゴ」 

 

白い家 

「東京の被害状況はどうだ?」 

「壊滅的な被害を受けています。しかし、日本人はデモや暴動を起こしておりません」 

「まるで、雨にあったかのようにやむなしといった感じです」 

「それとエルサレム信託地より東京に運送されます資材の中身を調べたところ、欧州より多数の工作機械を搬送しております。どうやら、独逸などから買い集めていた分かと思われます。東京の復旧は、早いかと。さらに弾丸列車計画を発動しました。東京大阪間600km を四時間で運行する計画を立ち上げまして、世界の注目を集めております。完成すれば、世界最速を誇ります」 

「使えんな。これを国民に知らせても何にも役に立たん」 

「大統領、このタイミングで日本人移民排除は止めた方がいいかと。人道に反すれば、票を失うかと」 

 

「殿下、水瀬中将より連絡がまいっております。日本空軍にロレンス名誉元師を入隊させれないかと。曰く、空軍で働きたいとのことです。陸軍は嫌だと」 

「諾」 

日本空軍にロレンス元師が誕生する。赴任先は、エルサレム信託地。 

 

 1924 年(大正13 )一月 

帝都復興とともに、皇太子殿下成婚。 

 

 1926 年(大正15 )十二月 

昭和天皇即位。 

 

 

 

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第02話 震災編
第03話 戦間章