仮想戦記 『バトル オブ ゼロ』

著者 文音

 

 第05話 地中海編

  1940(昭和15)年六月十日

 イタリアが対英仏に宣戦布告。

 統合本部

 「ついにイタリア参戦か」

 「ただいま、欧州大陸は独逸一色のため、それに乗り遅れないためと思われます」

 「エルサレム信託地から鉄道により速やかな増援をエジプトに送り、エジプト領を支えてくれ。おっかけ、地中海の支配権を握る」

 「戦艦は長門と陸奥を残してエルサレム信託地へ送れ。重巡洋艦は、妙高と那智を残して六隻。空母は正規空母全てを回す」

 「搭載機だが、やはり九六式搭載機になるかね?」

 「欧州戦線に零戦をすべて回しました。英国防衛に成功しましたら、エルサレムにまわすことができそうです」

 「やむを得ないな。欧州からの報告を見る限り、零戦でさえ戦闘機としては標準的な水準らしい」

 「九六式でイタリアとやりあえるのかね?」

 「現地からの報告では、十分やれると出てきております」

 「さて、基本方針だが地中海の制海権確保をして、リビアとイタリアを分断する。その結果、英国とともにアフリカ大陸からイタリア勢力を駆逐。そして拠点としてイタリア南部の島を占拠、海からイタリアを追い込むことにする。空母と戦艦は制海権と制空権の確保にまわす」

 「さて、イタリアの海軍戦力をみると、戦艦四隻、重巡洋艦八隻となっております。空母は確認されていません」

 「勝敗は、空母が握りそうだな」

 「後、海軍として正規空母蒼龍型二隻、妙高型四隻の建造を上奏しました」

 「うむ」

 

 カラブリア沖海戦(シチリア島沖)

 リビアに陸軍を輸送し帰路に就いたイタリア海軍(弩級戦艦二隻、重巡洋艦六隻、軽巡洋艦八隻)と南下中の護衛英国海軍(戦艦三隻、空母一隻、駆逐艦十六隻)が偶然接触。たがいにほぼ水平にすれ違う航路をとっていた。

 

 イニーゴ=カンピオーネ(旗艦コンテ=ディ=カブール乗船)

 「クゥ、敵の搭載機による空襲が先手か」

 「ソードフィッシュ九機による雷撃を重巡洋艦群回避しました」

 「敵軽巡洋艦、戦艦の前に出ます」

 「よし。今度はこちらだ。重巡洋艦に相手をさせる」

 「敵巡洋艦後部に被弾、離脱します」

 「敵戦艦、距離三万。戦艦一隻が突出してきます」

 「距離二万六千から敵戦艦撃ってきます」

 「こちらも二万千五百になったら先頭の戦艦に砲撃を集中させろとジュリオに伝えろ(敵の残り二戦艦は足が遅いのか、)我々は残り二隻に備える(イタリア海軍のアホな戦訓め、複数で攻撃したらどっちの砲撃かわからんだと、これはアホな戦術だ)」 

 「はっ」

 六分後

 「おしいぞ。ジュリオ。至近距離に弾を落としやがって、次は当てろ」

 「ジュリオ(戦艦)後部被弾。火災が機関室よりでています。ボイラー四基を停止」

 「(厳しい)。空軍はどうした。先制攻撃を依頼していたのに」

 「いまだ、影も確認できません」

 「ジュリオ、ボイラー室を八基のうち六機まで復旧」

 「残り敵戦艦二機の合流に伴い、(数的不利のため)撤退する」

 「はっ」

 「煙幕を張れ」

 「空軍のアホめ、先制攻撃はどうした?」

 「只今空軍から入った連絡によれば、戦闘開始十分前に英国海軍に大打撃を与えたとのことです」

 「そんな話、信じるやつは海軍におらんわ」

 「損害状況は?」

 「戦艦ジュリオ中破、重巡洋艦一隻、舵を破損、その隻に接触した駆逐艦が破損。こちらの成果は確認できませんでした」

 (ムッソリーニのアホめ、戦艦六隻が建造中なのに戦争を仕掛けるなよ。戦艦二隻が改装中で実働戦艦はこの戦いで出てた二隻しかおらんっちゅうに)

 

 同年七月

 エルサレム信託地ハルファ

 「カラブリア沖海戦の後、イタリア海軍は地中海に出てきません」

 「ならば、戦艦二隻空母一隻の編隊を作り、地中海の制海権を奪う」

 「エジプト領の英国軍とあわせ、リビアをたたく。エジプト領には戦車弾薬及びパレスチナ義勇兵を送ったな?」

 「鉄道にてイタリア参戦直後、アレキサンドリア向けに出発させました」

 「地元勢力の取り込みはうまくいってるか?」

 「サヌーシー家を交渉相手にしております。リビア在留の勢力をまとめてくれるそうです」

 「これもエルサレム信託領がうまく機能している恩恵だな」

 「では、残りの兵力で我々は、トリポリをたたく。もし万が一、イタリア海軍が出てきたら戦艦二隻空母一隻の地中海巡回部隊で応戦するものとし、トリポリ攻略を継続するものとする」

 

 同年八月

 リビア戦線(蜂の一刺し戦)

 「トリポリまで南西二百キロメートル」

 「空母蒼竜、飛龍、翔鶴より九九式爆撃機五十三機発艦いたします」

 「護衛として九六式戦闘機二十機が随伴いたします」

 「第一波、敵飛行場を爆破」

 「第二波、敵格納庫を爆破」

 「第三波、港湾施設に命中」

 「敵軍隊、東に向けて移動中」

 「ベンガジにて敵勢力は合流するものと思われます」

 「移動中、攻撃するな。この暑い砂漠を移動するだけで敵は消耗するだろう」

 「もし、敵装甲車部隊から離脱する者があれば保護してやれ」

 「こちらが制空権を取って、敵の監視を空から続けよ」

 「サヌーシー家に伝えとけ、トリポリでは略奪するな。しばらくトリポリの自治を任せると伝えよ」

 「弱ったな。戦艦に仕事がない」

 「困りました。兵を押さえるのが難しいです」

 「一応、ベンガジで最終決戦の可能性があると伝えておけ」

 「制空権と制海権がある限り、その可能性は極めて低いがな」

 「はあ」

 

 五日後

 ベンガジ

 「おい、あれはトリポリにいたイタロ=バルボ元師ではないか?」

 「かなりやつれているな」

 「元師、どうされました?」

 「連合軍から空襲を受けて命からがらこちらへ合流しに来た」

 「この後、戦われますか?」

 「無理だ、CV33(戦車)は空襲でやられた。ここに逃げてる最中も空から監視つきだった」

 「それより、水を一杯くれ」

 「アレキサンドリアから降伏勧告が先ほど届きましたがどうされますか?」

 「受諾だ」

 「こちらには、歩兵部隊と豆戦車しかない。空から空爆されると終わりだからの」

 

 ローマ首相官邸

 「首相、リビアが落ちました」

 「どこから攻撃された?わが軍は、来月からエジプト領に進攻する準備をしていたのではないのか?」

 「エジプト領側に戦力を集めていたところへ後背地のトリポリを空襲されました」

 「前線があれば、戦力が残るのではないか?」

 「ベンガジに兵士が集まったところ、制海権と空軍戦力がなければ戦えないと降伏を受諾したとのことです」

 「わが海軍は敵海軍を把握していなかったのか?」

 「英国海軍と一戦して以降ひきこもりになっております。どうやら、空軍に空襲依頼をしたのを全然空軍が戦力にならないのを知って、人身供養はお断りのようです」

 「くっ。地中海の制海権を取られたなら、三方を海に囲まれた我が国を守るのは難しいな」

 「危急存亡の淵に立ってしまいました」

 「リビアに送る戦車千台が手元に残ったのがせめてもの救いか」

 「イタリア防衛に戦車を配置しろ」

 

 ベルリン首相官邸

 「総統、リビアとエチオピアが落ちました」

 「確かに独逸からイタリアにスエズ運河攻略を命じたが、反撃にあったのか?」

 「エジプト国境に戦力を集めているとき、後背地のトリポリを空襲され落とされました。ベンガジに移動した現地司令官が制海権と制空権がないことを判断して、降伏を受諾したとのことです」

 「それで、イタリアはどうすると言ってる?」

 「イタリア防衛に全力を挙げるとのことです」

 「ま、確かにそれしかないのだが」

 「使えんな、イタリアは。我が国の戦力だけで戦うのみだ。もう少しリビアで粘っておれば、援軍を送ることも考えておったのに。万が一がある、イタリアにロンメルを駐屯させとけ、イタリアの監視だ」

 「はっ」

 

 ハイファ

 「次はマルタ島の援軍か」

 「マルタはすごいよ、小島でありながらイタリア軍の空襲によく耐えてる」

 「ここは、戦艦の出番かね。シチリア島を無効化しなくてはならない。将来的にシチリア島の占領を考えておく上で、シチリア島の制海権はとれるかね?」

 「シチリア島の飛行場が無効化されれば可能かもしれませんが、少しイタリアに近すぎます」

 「では、シチリア島南部を爆撃し、イタリアに無言の圧力をかけるともにクレタ島の士気を高めておこう」

 「いえ、もうひとつマルタ島の北西に島があります。今回はこのパンテッレリーア島ならば、空爆とともに砲撃できると思います」

 「戦艦に活躍の場を与えねばならないか。第一次世界大戦後、初の砲撃はこの島になるか」

 「は、練度を高める意味にも使えるかと」

 

 八月三十一日

 独逸及びイタリアによる東欧の国境線引き。第二次ウィーン裁定。

 

 

 駐スイス大使館書簡

 独逸は、陸空軍を東に移動させています。イタリアとブルガリア軍と合同で次なる目標は、ソビエトを攻撃するかもしれません。

 しかし、イタリアと連合国が前線を形成している地域がもう一つあります。ギリシャアルバニア(イタリア軍占拠)国境です。よって、独逸の攻撃目標は、ソビエトかあるいは背後を突かれるのを防ぐ意味で、バルカン半島征服の二つが考えられます。

 

 1940(昭和15)年九月二十七日

 独伊軍事同盟発足。以下、枢軸国といえばこの同盟に参加する国々を示す。

 

 同年十月

 小麦農林10号品種登録。

 

 鍾馗制式投入(中島飛行機、戦闘機)

 最高速度605km/h

 航続距離2200km(増槽時)

 12.7mm×4(胴内、翼内各250発)

 翼面荷重185kg/m^2

 

 同年十月

 「現在時刻、十四時三十分、北西にパンテッレリーア島まで距離百キロ」

 「空母蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴より九九式爆撃機七十五機発艦いたします」

 「戦艦部隊、敵陣地に向けて前進。砲撃距離になれば順次斉射を行い、回航して帰路につけ。島までの接近は距離二十キロまでで良い。」

 「九六式戦闘機(460km/h,7.7mm×二)に空母を護衛させろ」

 「九六式戦闘機四十機、空母上空につきました」

 「パンテッレリーア島の飛行場を破壊」

 「敵機百機、シチリア方面よりやってきます」

 「さあ、おいでなすった。イタリア空軍の実力をはからせていただこう」

 

 空母上空

 「おい、複葉機(CR32最高速度360km/h)がいるぞ」

 「こっちの戦闘機(G50最高速度473km/h)は、コックピットがむき出しだ」

 「おい、雷撃機(SM79,エンジン三基,爆撃機として430km/h)のほうが速くないか?」

 「とりあえず、雷撃を防げ。低空なら撃ち落とせないでも雷撃コースを取らせるな」

 「巡洋艦、弾幕を張って九六式の援護をせよ」

 「雷撃二発、空母までの距離三キロ」

 「面舵いっぱい。十分回避できそうです」

 「爆撃機、シチリア方面に帰還いたします」

 「よし、潜水艦と遭遇しないように海面下を監視せよ」

 「味方機、損害なし」

 「敵機、複葉機を一機撃墜」

 「空母を護衛する九六式をまた上げろ」

 「コックピットがむき出しだったのは、邪魔なのか?それとも計器が信用できないから風を受けているのか?」

 「どちらにしても、それが許されるのは敵機より50km/h以上速い場合だろ。護衛の役目を果たせなければ、戦闘機に載る価値がないぞ」

 「斉射が終わり次第、戦艦部隊、回航せよ」

 「ふっ、今日が初戦というやつらばっかりだが、被害がなかったのが一番だな」

 

 パンテッレリーア島監視所

 「敵部隊、撤退します」

 「ふう、助かった」

 「飛行場をつぶされただけですんだな」

 「小手調べだったのか。それとも、イタリア海軍のおびき出しだったのか」

 「海軍は軍港にひきこもりだ。ここからみている限り、双方の飛行部隊はピストルを撃ちあってるみたいで、どっちも撃墜できないな」

 「火力不足の一言だな」

 「ただし、空襲で飛行場をつぶされたんだから、次来た時は目標が格納庫になるかね」

 「俺たちの立場は、一転して最前線に立ったわけだ」

 「どうする?」

 「どうするたって、ひきこもりの海軍に搭載機といい勝負をする戦闘機だからな」

 「我が国以外、複葉機を実戦で使ってる国はないよな」

 「やっぱ、独逸だよ、Me109なら撃墜できるだろうが」

 「制海権と制空権のない戦いはつらいね」

 

 同年十月二十八日

 イタリア陸軍がアルバニアよりギリシャに侵攻。

 イタリア陸軍

 「山岳装備なしで侵攻か。凍死の可能性が一番高そうだ」

 「冬季装備なしで進攻とは、ギリシャをなめてるとしか言いようがないんだが」

 「この先、伏兵で前進した部隊が死んだと報告されてるな」

 「戦車隊も山岳地を走破するのにてこずっている」

 「アルバニア軍も士気が高くない」

 「また、ムッソリーニの先走りっぽいな」

 「とにかく、冬季装備をした増援を要請しろ」

 「このままでは、我々が先に全滅する」

 「はっ」

 

 イタリア首相官邸

 「ギリシャ戦争では、攻め込んだ我々が逆に押し込まれる始末です」

 「早急な増援を」

 「わかった、指揮官を代えて、さらに増援要請にこたえる」

 「やることなすこと、うまくいかんな」

 「独逸にくぎを刺されていたんだが、バルカンに手を出すなと」

 「しかし、国境線を接してるとどうしても勇み足になってしまうな」

 

 ギリシャ陣地

 「英国から応援部隊六万人が到着しました」

 「よし、これで負けはなくなった」

 「日本軍に、空母よりイタリアの輸送部隊を空襲依頼しました」

 「うまくいったら、イタリアの戦車を捕獲しよう」

 「逆襲あるのみ」

 

 空母蒼龍

 「初の陸上攻撃だな」

 「味方に制空権があることを見せつけるだけでもかなりの士気向上になるかと」

 「ギリシャ軍にイタリア戦車の捕獲ができればゆうことなしだな」

 「九九式爆撃並びに九六式戦闘機発進させよ」

 

 イタリア軍陣地

 「空襲です」

 「誰が狙われてる?」

 「わが軍の輸送部隊です」

 「輜重部隊に支障をきたすと、ガソリン切れ、食料不足にみまわれる」

 「イタリア空軍に迎撃を依頼せよ」

 「はっ」

 「まずいな。飛行機のエンジン音を聞いただけで、士気低下とともに兵士の逃亡が増えそうだ」

 「国境付近で持久戦模様になりそうだ」

 

 同年十一月

 ハンガリー、ルーマニア及びスロバキアが枢軸国側に参戦。

 

 ハイファ

 「イタリアとギリシャは国境付近で持久戦模様となりました」

 「ギリシャには、三八式歩兵銃を輸送しておきましたのでイタリアには負けないと思われます」

 「それでは、別の道から進攻するかもしれない独逸に対する戦略を練ろう。その時期までには、零戦二一型が全空母に搭載完了するだろう。戦略の練り直しを迎撃機の面からもしてくれ」

 

 1941年三月

 アメリカによるレンドリース法。連合国に武器貸与が始まる。

 

 駐日ソビエト大使館

 「我が国に零戦とマグヌードルを導入したい」

 (マグヌードルはメーカーに工場を作らせるだけでいいが、零戦をソビエトで飛ばすのは問題がある。ここは過酷な要求を突き付けて、やんわり断ろう)

 「そうですね、それに釣り合うものでしたら、T34の設計図が必要となりますね」

 (よっしゃー、釣れた。これでおれもソビエトで出世できる。しかし、日本人の思考はわかりやすいな)

 「そうですか、わかりました。明日にでもT34の設計図をもってきましょう」

 「えーーー」

 「対独逸戦が近づきつつあります。早期に零戦の配備をお願いします」

 (しかし、書記長もマグヌードルのために戦車を売ってもいいとは、重度のラーメン中毒か?それとも前線の士気を維持させるために必要なものか?俺もこれには賛成だが)

 

 翌日

 霞が関

 「本当にT34の設計図か?」

 「間違いはなさそうです」

 「よし、それではマグヌードル製造元に連絡せよ。政府がソビエトに工場を建設するから、生産を開始してくれと」

 「これで第一の関門は通過だ」

 「零戦だが、英国の部隊を半分引き抜き、日本から残りの操縦士をソビエトに送る。零戦は二百機を送ろう。操縦士は百人だ」

 「今回もまた、迎撃専門でいこう」

 「空冷は僻地でも手入れが楽だが、水冷のほうが寒冷地でも調子がいい。エンジンを冷やさない工夫がいるな。旭川駐屯地の対策をとりいれよう」

 「ローテーションで、なるべく上空を飛ばしている方がエンジンが冷えなくていいかもな」

 「T34だが、各工場で分担生産した部品を組み合わせることで完成させる。製鉄所で鋼板を、トラック工場でディーゼルエンジンを、重機工場で砲台を、タングステン砲をエルサレム信託地で加工させる。完成車並びに部品は大きすぎて広軌規格で輸送するものとし、地中海向けに輸送するのものだから門司港の隣に完成車工場を持ってくる。日本名は津波とする」

 

 同年四月六日

 独逸、イタリアがユーゴスラビアに侵攻。

 十七日、ユーゴスラビアが降伏

 

 同年四月十日

 独逸、ギリシャへユーゴスラビアより侵攻。

 二十一日、派遣された英国軍がクレタ島に撤退。独逸がそれを追ってギリシャ南岸にたどり着く。

 

 ハイファ

 「独逸はクレタ島を攻撃してくる可能性が高い。クレタ島を残しておくと独逸、ルーマニアが空爆圏内に入るからだ」

 「地中海にはひきこもりのイタリア海軍しかいないが、独逸のことだ、空襲からそのまま空挺部隊攻撃を仕掛ける可能性がある。空挺部隊をスペイン内戦ですでに独逸は試している。これは第二のバトルオブブリテンだ」

 「あくまで独逸を陸軍国家にしておくために島は海軍である日英軍で押さえる。独逸には英国防衛戦に続き、二度目の敗北を味わってもらい、スペインが中立を保ってもらうために必要な戦略であるから、すでにユダヤ人には武器を持たせてクレタ島に入ってもらっている」

 「我々は、零戦で敵の空爆機と輸送機をたたく。制海権を維持できるだろうが、制空権は島の北側で独逸が握ることになるだろう」

 「零戦乗りには爆撃機をたたくことをたたきこんでくれ」

 「兵隊がいなければ占領ができないからな」

 「空母四隻には零戦だけを積んでいく。もし零戦が被弾したら空母もしくは島の南側に不時着してくれ、それなら人員を救出できる」

 「作戦は以上だ」

 「はっ」

  

 クレタ島戦力

 ギリシャ民兵一万五千人

 英国連邦軍一万五千人

 ユダヤ人義勇兵三万人

 

 海軍戦力

 蒼龍型空母四隻 搭載機零戦二一型二百機

 妙高型重巡洋艦六隻

 

 独逸軍

 降下兵二万一千人

 Me109,Ju

 Ju52輸送機

 

 同年五月二十日

 独逸軍陣地 クルト=シュテゥデント大将

 「先に三時間にわたる空爆によりクレタ島北部の対空兵器をほぼすべて破壊しました」

 「よろしい、それでは空挺部隊による占拠にはいりなさい」

 

 英国連邦陣地 ベルナルド=フレイバーグ将軍

 「午前八時をもって敵輸送機Ju52部隊の降下が始まりました。敵兵力は一万かと。またグライダー部隊が少数飛行しています」

 「よろしい、日本軍に連絡し輸送部隊をたたいてもらう」

 「歩兵部隊の武器は十分だな」

 「弾薬と三八銃とも十分にあります」

 「それでは、物陰から敵を狙撃してくれ」

 「はっ」

 

 蒼龍(クレタ島南二百キロ)

 「敵一万パラシュートより降下しつつあります」

 「よし、零戦を飛ばせ、敵空挺部隊と援軍とを隔離する」

 「重巡洋艦には、ギリシャ半島とクレタ島の制海権を確保して敵海上部隊の接近を防いでくれ」

 

 英国連邦陣地

 「敵西部、中央部、東部の三か所に分かれて降下してきます。島の飛行場を確保するのが目的かと思われます」

 「飛行場の確保を目指す敵をたたけ。遮蔽物はないぞ。部隊を飛行場周辺に展開しろ」

 

 独逸軍陣地

 「敵飛行場周辺でわが軍を包囲しつつあります」

 「先行部隊はこのままですと包囲せん滅の恐れがあります」

 「海上輸送兵力はどうだ?」

 「重巡洋艦がでてきました。本土とクレタ島の間に侵入してきて制海権を確保されつつあります」

 「わが軍の海上輸送部隊に砲撃を加えつつあります」

 「空軍に空爆してもらえ」

 「敵の兵力四万以上かと。敵火力十分です」

 「第二波を出す」

 「零戦二百機、島上空の制空権を確保しつつあります」

 「第二波中止。迎撃機を零戦にぶつけよ」

 「敵は飛行場所属か?それとも空母か?」

 「敵空母、クレタ島北部からの報告では確認できません。島南部の飛行場と視界圏外の空母から場合、どちらも絞れません」

 「海路からの部隊を引き返せ」

 「敵の地上部隊をたたくには五万の空挺が必要かと思われます」

 「作戦を中止する。被害が大きすぎる」

 「戦力を引き返させろ」

 

 英国連邦陣地

 「敵兵の捕虜、五千人。わが軍の損害二千人」

 「Ju52三機撃墜。Me109二機、零戦三機墜落」

 「後戻りできない戦力だと、空挺した戦力のうち半数が捕虜か」

 「もう空挺部隊の空襲はないだろうな。失敗したときに損害が大きすぎる」

 「我々は、これより困難な戦いになる。マルタ島並みかそれ以上の空爆にさらされることになるだろう」

 

 1941年(昭和16)七月

 独逸がソビエトに対し戦争を始める。

 フィンランドがソビエトに復讐戦を開始する。

 ユーゴスラビアでチトーがパルチザンを発足、ゲリラ戦を開始。

 

 1942年(昭和17)一月

 独逸、ユダヤ人の撲滅を開始する。

 

 

 

 

 

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