仮想戦記 『東海道鉄道株式会社』

著者 文音

 

 第279話

 1929年(昭和3年)二月二十二日

 テキサス州ダラス ホーク映画館上映中

 「緊急通信、テキサス州オースティン近郊のステップで火星人による襲撃あり。一体のボスを取り巻くように群れで市街地に接近中。市街地に至る街道は破壊の限りを尽くされているもう。五忍ジャーの面々は、すぐさま、現場に急行されたし」

 「「「了解」」」

 「司令、五人への連絡を終えました」

 「御苦労」

 「しかし、骨音受信機の性能は素晴らしいものがありますねえ。遠く離れた五人に電話回線もなしに送信、返信ができてしまうのですから」

 「なあに、一定の波長を送受信できる装置を塗っているだけだから、その塗料を塗れば、五人以外にも連絡ができる」

 「しかも、外部からは不可視の装置ですか」

 「しかし、そのようなハイテクがあっても火星人に勝てるかは別の問題だ。火星人の装備は、オーバーテクノロジと考えてよい」

 「五人が無事帰ってくることを願うばかりです」

 「キキッー」

 それぞれの自動車から降りてきた五人が本部と連絡を取る。

 「五忍ジャー参上、これより戦闘に入ります」

 「了解、御武運を」

 「トォー」

 「マリンパンチ」

 「イエローボンバー」

 「ピンクフラッシュ」

 「レッドキック」

 「ブラックジャンプ」

 「司令、五忍ジャー、戦況を押しています」

 「ふむ、戦況をそのまま連絡しなさい」

 「やるな、五忍ジャー、だが、善戦もここまでだ。マースグラビティー」

 「マースパンチ、マースキック、マースジャンプ」

 「司令、敵ボスの繰り出したオーバーテクノロジにより、敵キャラのスピードが百五十パーセント増大しました。五忍ジャー、ダメージを蓄積しつあります」

 「火星の重力は地球の四割、つまり、これが火星の重力環境を作り出されたことで、敵本来のスピードを出しているというのだな。敵の弱点を探せ」

 「了解、五忍ジャー、敵の弱点を探してください」

 「「「了解」」」

 「レッドスピン」

 「イエロークラッシュ」

 「ピンクスパーク」

 「ブラックバインド」

 「ウォーターカッター」

 「一部の敵の動きが鈍りました」

 「敵は、ブルーが作り出したウォーターカッターにあたった場合、もしくは水がまかれた地域で動きが鈍るようです」

 「なるほど、敵がテキサスの乾燥地帯を選んで侵攻してきたわけがわかったよ。火星は大気が希薄で、そもそも水というものがない。水に触れれば水ぶくれ。さもなければ水がまかれた土地の上では、火星のオーバーテクノロジが封じ込める。ブルーのスキルを使って、敵を葬り去れ」

 「了解」

 「ウォータースピン」

 「クッ、マースグラビティーが封じ込まれた」

 「ここまでだ、後はお前一匹が残るまでだ」

 「さあ、皆、ここ一番の大技を決めるぞ、ウォーターボール」

 「ピンクトス」

 「レッドスパイク」

 「ブラックバインド」

 「イエローキック」

 「ブルーアンチシュート」

 「ガバー、やられた。だが、俺は火星からくる先兵の一人にすぎないのだ」

 「五忍ジャーに命じる。そちらに蒸気機関車タイプの宇宙船を無線誘導した。それに乗り込み、敵の本拠地、火星に乗りこめ」

 「「「了解」」」

 「宇宙船、線路上を加速中」

 「時速百キロを突破」

 「核融合エネルギーより、反重力装置を起動」

 「線路より、宇宙空間に飛び立て」

 「五忍ジャー、火星に向けて発車いたします」

 ジ、エンド

 「五忍ジャー、面白かったね。」

 「僕、銀河鉄道に乗ってみたい」

 「そうか、だったら、大陸横断鉄道に乗るしかないな」

 「うーん、五人もののヒーローか。一人一人は弱くても、五人で悪をやっつける。いいことを教えてもらったね」

 「オーナー、主役が五人いますと、プロマイドが五組売れるようになりました」

 「それは売上五倍、いいことだよ」

 「ただ、五人の色分けが上映中できていません。プロマイドは浮世絵カラーに頼ってなんとか、見分けがついているような状況で」

 「モノクロ上映だから仕方ないかなあ。それはプロマイドが五枚売れることを考えると、大したことではないから」

 

 

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