月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

   

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

第01話 『宇宙戦艦ヤマト建造』

 2300年

 銀河系

 二大恒星間国家。

     ガルマン・ガミラス帝国、ボラー連邦。

 中規模恒星間国家。9カ国

     イスカンダル、エウリア、インディア、ガトランティス、

     ハイデラ、ラートゥル、ジャスタン、フィリア、ジャイブル。

 小規模恒星間国家。

     地球連邦、チターム、クラフクのが緊張状態のまま存続していた。

 

 地球連邦は、地球、火星、金星のテラフォーミングに成功しつつあり。

 太陽系を中心に半径200光年圏の全天球を支配、

 他星系の開発も進めていた。

   

 ボラー連邦ゴルーリン大使は、随行員を連れ、

 金星のマク○ナルド店で、ハンバーガーセットを食べている。

 小規模恒星間国家ながら勤勉勤労で高度な技術を有し。

 ガミラス戦以来、数度の危機を乗り越えた地球人類は、強い気(オーラ)を発するようになっていた。

 ボラーの大使は、地球人に庶民的な印象を与えることで、

 親ボラー勢力を拡大しようと画策する。

 「・・・地球のファーストフードは、悪くない。北野弁務官。ボラー連邦の出店を勧めるよ」 ゴルーリン大使

 「地球・ボラーの友好関係を促進できるのであれば前向きに検討したいと思います」 北野弁務官

 警戒する。必ず取引があるからだ。

 特にガルマン・ガミラスとの関係悪化に繋がる取引は危険だった。

 こういった外交交渉は緊迫感に堪えられなくなると、キレて墓穴を掘る。

 豪胆さとしたたかさと繊細なバランス感覚が必要になる。

 短絡な人間には向かない。

 「・・・ところで、地球連邦が開発した次元断層システムは、ガミラスの技術供与ではないのかね」

 ゴルーリン大使は、ビック○ックにかぶり付きながら、微笑む。

 北野弁務官は舌打ちしそうになる。

 最重要機密の情報が漏れている。

 「開発などと、とんでもない」

 「ガミラス艦のデーター解析。機能を想定し、研究をしているだけで。どこの国でも行っていることです」

 「ガルマン・ガミラス帝国は、銀河中央の密集域を制している。勢力的にも優勢だ」

 「・・・・・」

 「我々ボラー連邦は北銀河外周域に広がっている」

 「当然、恒星間距離が長い国の宇宙船は、航続力の関係から艦体も大型化している」

 「地球も、そうです」

 「そう、そして、科学技術は、いくつかの分野を先鋭化させ」

 「ほかを犠牲にしなければ先進技術として、他を圧倒できない」

 「・・・・」

 「ボラー連邦の反陽子ダブルワスプエンジン」

 「ガミラスの次元断層サイクロンエンジン」

 「イスカンダル、地球の波動エンジンがそれだ」

 「特性もある」

 「反陽子ダブルワスプエンジンと波動エンジンは、内燃型と外燃型の違いがあっても長距離航行向き」

 「次元断層サイクロンエンジンは、小型強力で軽量艦向き」

 「それぞれのシステムを理解、把握することができても」

 「ほかの技術の開発や運用にかかる手間や予算配分を考えると百害あっても、一分程度の利益しかない」

 「・・・・」

 「それぞれのシステムを究極化していく方が良いはずだが・・・」

 「交易しだいでは運用できる」

 ゴルーリンは、ポテトを頬張る。

 「ああ・・ゴルーリン大使。現在、地球とガミラスとの交易は文化サービス産業を主としている」

 「異質なシステムの大規模な導入は考えていませんが・・・」

 「大規模でなくても有効に活用できる分野もあろう・・・・」

 「そう、例えば軍艦とか・・・」

 「就役されている軍艦は、恒星間相互監視条約で公開されているはずでは?」

 「確かに・・・」

 「ところで、波動エンジンは探知されやすいエンジンで経済性重視の商船向き」

 「反陽子ダブルワスプエンジンは、非経済ながら性能重視で軍艦向き」

 「お互いに外周域国家同士のほうが有益な取引ができるのではありませんかな」

 「我々、ボラー連邦もワームホールリンクが破壊された場合、波動エンジンは魅力的な機関ですから」

 「現在、地球連邦は、ガミラスと友好関係にあり」

 「ガミラスと非友好関係にあるボラー連邦との関係は一定の制限があります」

 「それに波動エンジンは、侵攻する場合も有効ではありませんか」

 「平和を愛するボラー連邦は他国を侵攻するという概念など、ありませんな」

 「波動探知システムで発見されやすい波動エンジンは平和利用が有効ですし」

 北野弁務官は苦笑する

 「では、ガミラスの反対側にある南銀河やイスカンダルとの交易が目的ですか」

 「確かにそれらの国家と交易する場合、反陽子ダブルワスプは、経済的に不利益ですからね」

 「もちろん、魅力的な提案であることは、わかります」

 「地球連邦の産業も潤うことになります」

 「ですが、国際的緊張を高めてしまうのは、得策ではありません・・・」

 「しかし、ながら、ボラー連邦大使の非公式な提案は政府に伝えます」

 こうして会食が終わる。

  

  

 地球連邦議会は荒れていた。

 地球連邦は国力で劣勢ながら、心身で強い気を放ちの固体で優勢。

 科学技術でも二大超大国と同等に並んでいた。

 しかし、国力の差は、如何ともし難く、

 単純にランチェスターの法則を当てはめれば、殲滅される。

 地球連邦は、2大超大国ガミラスとボラーの狭間で、

 国際力学のバランスで保たれていたに過ぎない。

 地球連邦にも、ガミラス派、ボラー派がいて、

 状況に応じて従属的な外交政策を取る事もあった。

 質的な同位性を量的に補えると勘違いする夜郎自大な地球独立派が最大勢力が問題だった。

 議会場の銀河天球図には、銀河中心域ガミラス帝国、外周域の5割を制するボラー連邦。

 そして、そのほかの外周域に中小規模の恒星間国家が表示されていた。

 地球連邦は太陽系から200光年の全天球を制し、

 10000個以上の恒星を有する恒星間国家だった。

 しかし、直径10万光年の銀河の大きさに比べれば、些細な地方勢力でしかない。

 そして、その勢力圏でさえ、開発が及ばず。もてあましていた。

  

 地球連邦議会のテラス

 数人の議員。

 「・・・ガミラスとボラーの緊張は、停滞から流動的なものに変化しつつある」

 「だからといって、戦争になるとは限るまい」

 「戦争は困る。ガミラスのワイバーヌ肉が入ってこなくなるではないか」

 「それを云うなら、妖緑鉱もだ」

 「いや、地球連邦経済自体がガミラスとの交易を失いたくない」

 「我が地球連邦の産業の1割がガミラスとの交易によって成り立っている」

 「それに波動エンジンは、宇宙空間にある波動粒子を著しく掻き乱すため発見されやすい」

 「地球連邦の艦隊が勝てるとは限らないだろう」

 「だから、近場のジャイブルやフィリアとの交易を重視すべきだったんだ」

 「一部の経済的な損失を理由に全体の国益を左右されたくない」

 「ジャイブルやフィリアの市場は小さいから、興味が、わかなかったそうだ」

 「誰に聞いたんだ?」

 「一般論だよ」

 「近くて、高く、確実に買ってくれるところに商品を持っていく」

 「そして、魅力的な商品が安く買えるところから購入する。当然だろう」

 「はぁ〜」

 経済至上主義を出されると道理も引っ込む

  

   

 地球連邦軍、北天球艦隊所属。

 第13機動部隊

  アンドロメダ型戦艦2隻、オリオン型空母3隻、

  ベガ型巡洋艦6隻、ヴィーナス型駆逐艦16隻、護衛艦3隻、補給艦8隻

 旗艦

 戦艦ソンブレロ

 「古代提督。外縁部に到着しました」

 「この先は、ガミラスとボラー連邦の勢力圏が入り組んでいます」 相原艦長

 「全天球図に異常はないな」 古代提督

 「はい」

 「緊張状態だが戦争するまでいってないはずだ」

 「警備艦隊への補給を済ませて、さっさと下がろう」

 「この距離で、こちらの艦隊の動きが探知されるのは、気持ちが悪い」

 「しかし、思わぬ弱点があったものですね」

 「宇宙の波動を利用して、無限航行できる波動エンジンが発見されやすいというのは」

 「連邦政府は、波動粛層装置を開発して発見できないようにしているらしい」

 「波動エンジンは大型低出力で経済性重視という特性がありますから」

 「まだ、それぞれに長短があって、どれが優れているといえませんが・・・」

 「艦隊戦では、ガミラスかボラーのエンジンを使いたいね」

 「平時では、波動エンジンですか?」

 「そういうことだ」

 「小規模恒星間国家でありながら地球に経済力があるのも」

 「経済性で強い波動エンジンを使っているからだ」

 「ボラーのワームホール転移システムと」

 「ガミラスの転移リレーシステムは、それを補って余りあるものだと思いますが」

 「たしかに国内物流ではね」

 「だが、長距離航行で波動エンジンは優勢だ」

 「以前は、通商破壊作戦向きだったがな・・・」

 「・・・・警備艦隊が、視界に入りました」 田代哨戒班長

  

 警備艦仕様の巡洋艦4隻が、補給艦と連結。

 「・・・警備艦艦隊の先任、クラーク・ウォルフ艦長から、通信です」 伊吹通信班長

 映像で白髪の初老の男が敬礼する

 「これは、古代提督。外縁部まで補給艦の護衛ですかな」 クラーク・ウォルフ艦長

 「いや、ただの示威行動だ」 古代提督

 「機動部隊を外縁部に展開させるというのは、いささか、無用心では、ありませんか」

 クラーク・ウォルフ艦長は、かなり迷惑そうな顔をして見せた。

 「上の命令でな、ガミラスとボラーがどの程度、波動震を探知しているのか、探って来いと命令されてね」

 「そういうことですか」

 「常識的に越境でもしない限り、知らん振りされると思うがね」

 「連邦政府も、何かしないと気になってしょうがないと?」

 「小国の指導者が小心者だからといって、責めるのは不条理だろう」

 「同感です」

 「戦線に異常はないかね」

 「報告は、そちらに送られていると思いますが」

 「印象としては、開戦まで半年前という雰囲気ですね」

 「ガミラスも、ボラーも、拮抗している。それに戦争したくても、戦争する口実がないとな」

  

  

 月基地技術開発区研究所

 大統領補佐官、真田技術中将

 「・・・真田所長。新型戦艦の開発は、どうです?」

 「波動エンジンを加重増速していくほど」

 「波動震の揺れが大きくなって探知されやすくなる」

 「固有振動係数まで記録されたら艦型までわかるね」

 「ガミラス、ボラーは、全天球図を見るだけで」

 「20光年範囲の地球連邦の艦隊配備状況がすべてわかる」

 「こちらの展開状況も作戦も丸見えだな」

 「波動粛層装置は、光速の50パーセント以下であれば探知できないようにできています」

 「波動エンジンでは、光速の70パーセントまで加速させなければ転移不能だ」

 「ガミラス艦のように光速の50パーセントからいきなり空間転移する出力はない」

 「やはり、高出力を引き出し、探知させない内燃型が有利なんでしょうか」

 「いまさら内燃機関の開発は進まんよ。産業自体が、そうなっていない」

 「ガミラスから購入した次元断層サイクロンシステムは、どう運用するんです」

 「妖緑鉱の輸入はしていますがガミラスニュームの輸入はしていません」

 「つまり、燃料がない」

 「緑妖鉱は、民間需要の問題で、地球の軍事技術の系列にはない」

 「妖緑系素材を精製。融合して組み込むのは、100年先だ」

 「ボラーの紅晶鉱は、さらに遅れるだろうな」

 「政府案では、今後の予算も現在の技術系列の延長線上で、お願いしたいですね」

 「ボラー。ガルマンガミラスと違い」

 「地球の勢力圏に戦略物資を生み出してくれる特異星雲は存在していないのですから」

 「なるべく期待に添えたいが、しかし、実験的にでも、駄目かね」

 「・・・目を見張る性能が発揮できるのであれば検討しますが。既存の艦艇は使って欲しくありませんね」

 「その辺は、検討してみましょう」

 「しかし、艦隊運用上、個艦性能・・・」

 「そして、マンパワーに頼るのは、好みでは、ありませんな」

 大統領補佐官は侮蔑的に実験器具を見つめる。

 そして、連邦予算が下りる。

 実験戦艦ヤマト建造まで900日

  

    

 国際情勢は、緊張状態のまま、続いていた、

 直ちに行動を移すほどでもない。

 古代提督と真田所長が建造中の新型戦艦ヤマトを見つめていた。

 「・・・それで、真田所長、実験艦をヤマト型で建造するのか」

 「懐かしいだろう。古代提督」

 「哀愁が漂うね。ヤマト記念艦に行っても。そうだが・・・・」

 「2世代前のことだ」

 「しかし、合理性が感じられない艦型だな」

 「お前が、それを言うのか」

 「しかし、主翼も、つけているのか」

 「規格外の専用ドックまで作らせて、良く軍政局が認めたものだ」

 「まあ、規格が認められたということは、それだけ優秀ということだ」

 「艦底の第3艦橋を離脱可能な機動艇にしたのか?」

 「ああ、分離と連結させることができる」

 「哨戒艇、次元潜航艇、電子指揮艇など考えているが軍令部の決定待ちだ」

 「転移能力もあるから作戦能力も高いだろう」

 「そして、見かけだけはヤマト型だが中身は、最新鋭艦だ」

 「1対1ならアンドロメダ型が相手でも勝てるぞ」

 「・・・転移だと。機動艇に波動エンジンを組み込むには、小さ過ぎるぞ」

 「機動艇を旧第3艦橋の代わりに艦本体から切り離しているのは理由がある・・・・」

 「次元断層サイクロンエンジン。ガミラスのエンジンか?」

 「そうだ」

 「保証のない実験艦だろう」

 「艦隊は、容易に実験機材を組み込めないだろう」

 「わかっていることじゃないか。どの艦長も、新装備で、保障、連携、補給が阻害されることを嫌う」

 「ヤマトのイスカンダルまでの旅には、敬服するがね」

 「いまさら、個艦性能で戦う気になれないね」

 「あれほど、異常なことには、ならんよ。最近は、科学技術も頭打ちだ」

 「・・・しかし、ヤマトか・・・ほかの名称は思い浮かばなかったのか」

 「たまたま、他の名前が使われていてね」

 「三巡して、ヤマトが戻ってきただけだ」

 「小さくないか」

 「アンドロメダ型に比べたら小さいさ」

 「ヤマトを原型の大きさで模倣しただけだ」

 「ヤマト型にしたのは、趣味か」

 「ヤマト型は、国際的にも知られている」

 「合理性がないから同型艦の建造はされない」

 「しかし、国際的な影響力という点で評価されている」

 「たとえ、巡洋艦に毛が生えた程度の質量でもな」

 「何でアンドロメダ型に勝てるんだ」

 「ガミラスニュームを燃料で使っているからだ」

 「んん・・・おいおい」

 「次元断層サイクロンエンジンなんか建造したことないだろう」

 「それに、いつガミラスニューム精製工場を作ったんだ。聞いてないぞ」

 「ふっ ガミラスニュームモドキかな」

 「初期のガミラスニューム精製工場を建設するだけで5年分の連邦予算が吹っ飛ぶんだぞ」

 「それに連邦政府は、経済はともかく」

 「軍事的にガミラスに依存するのを極度に避けているじゃないか」

 「だいたい放射能は、いただけないぞ」

 「輸入したガミラスニュームを増殖させた分をエネルギーとして使っている」

 「ガミラスニュームの増殖?」

 「ガミラスニュームは、増殖できるのか、放射能は? 危険すぎる」

 「・・・コスモクリーナーD」

 「・・・まさか・・・・」

 「・・・実験艦だからな・・・・うまく使ってくれ、古代提督」

 「・・・・・はぁ〜 よりによって放射能ばら撒きエンジンか」

 「・・・・ほとんどは、コスモクリーナーDで転換できるはずだ」

 「それとな、もう一つ・・・・・・」

 「」

 「」

 古代提督は、絶句する。

 「・・・・真田・・・おまえ、本当に科学者か?」

  

  

 2304年

 建造中の実験戦艦ヤマト。

 (全長270m×全幅38m)。主翼全幅160m。

 波動エンジン1基。補助エンジン2基。

 次元断層サイクロンエンジン2基 + 瞬間物質移送機。

 艦首2000mm波動砲、

 主砲が460mm3連装3基 (波動カートリッジ弾450発)、

 120mm連装砲24基 (波動カードリッジ弾4000発)、

 転移戦用ミサイル40発、

 次元断層対潜ミサイル40発。

 転移戦用ドーム3基。

 機動艇(飛龍)1艇。コスモドラゴン36機。

 「真田所長。新装備の実験艦を建造するのに1300日か」

 「400日分の予定オーバーの言い訳はないのか」

 「一回り大型のアンドロメダ型戦艦の建造が800日」

 「古代提督。はっきり遅いと言えば、どうだ」

 「軍政部が認めたことに口を挟むつもりはないがね」

 「実験艦は、そういう性質なんだ」

 「アンドロメダ型三隻分の価格が気に入らないだけだよ」

 「二世代後にはフィールドバックできるさ」

 「不合理だな。どうせならベガ型巡洋艦型にすればいいんだ」

 「しかし、この性能・・・宇宙空間での機動性能を考えると、編成に組み込むのは・・・問題ありだな」

 「また、それを蒸し返すのか。実験艦と国際的な影響力を兼ねさせただけだ」

 「それに全天球に砲門を分散させて向けるより」

 「一方向に置く方が質量を集中できて強力にできる」

 「艦底に艦載機格納庫を置くのも、それだ」

 「戦列艦?」

 「実験艦!」

 「では、ノスタルジックに酔わせてもらうか」

 「実験艦は、機密性が重要なのに、象徴的に見せる艦型にするとは矛盾してないか」

 「そう思わせるのさ。誰も、実験艦とは思うまい」

 「なんか矛盾しているな」

  

  

 

 地球連邦

 中央国際宇宙空港

 アルサ・ミエル 16歳。

 それなりに美少女は、ネコを連れ。

 ボストンバックを持って南銀河行き客船トイラスの搭乗口に立っていた。

 

種代みとき画

 

 「・・・ミエル。本当に行ってしまうのかい」

 「南銀河の紀行文を書いて、一儲けするわ」

 「気を付けておくれよ」

 「大丈夫。最新のオーラードライブもあるし。平気よ」

 母親が心配している振りをしているのがわかる。

 悲しいことだが気持ちが、わからないわけでもない。

 地球人の “気” は強い。

 父も、母も、標準的な気の強さだった。

 しかし、組み合わせの妙だろう。

 アルサ・ミエルの気は、桁違いに強かった。

 彼女自身は、隠しても両親にわからないはずもない。

 実の両親でさえ、不気味がられても、おかしくないほど強い気。

 地球連邦軍に入る前に少しばかり、羽目を外してみるつもりだった。

 南銀河。

 強大なガルマンガミラス帝国の南進を拒絶している混沌とした世界。

  

  

 紆余曲折を経て完成した宇宙戦艦ヤマトが出航する。

 そして、並んで上昇する宇宙船があった。

 「相原・・・あの船は?」

 「南銀河巡回航路の客船トイラスです」

 「銀河の船旅か」

 「羨ましいですか? 島艦長」

 「・・・少しな・・・」

 初航海で表立った式典もなく出航したのは、実験艦という性質のため。

 人類の存亡の希望を乗せてではなく。

 次々世代の地球連邦艦隊のモデルを決定するため・・・

 

 

 アンドロメダ型戦艦キャンサーに乗艦する古代提督は、一回り小型で古風な僚艦を眺める。

 「副砲と煙突が廃止されて、転移戦用のドームか・・・」

 「主翼に翼エンジン二基、第三艦橋代わりに機動艇」

 「むかしのヤマトの外見と少し違うな」 古代提督

 「波動エンジンと次元断層サイクロンエンジンの相性が悪いため」

 「次元断層サイクロンエンジンを艦体から離して翼付けにしたそうです」 有田艦長

 「小型高出力エンジンか・・・・」

 ガミラス・デストロイヤー艦のエンジンが両翼に1基装備されている。

 「問題は、ガミラスニュームの増殖分の消費に限られているので」

 「ワープや戦闘時には、どうしても制限があるようです」

 「第三艦橋の小型艦も次元断層サイクロンエンジンか」

 「ガミラスのデストロイヤー艦より、小型だな。円盤型でも、問題ないのか」

 「技術者の話しですと、地球連邦とガミラスの技術融合という観点で最新鋭です」

 「ドメル将軍の円盤型より強力なはずです」

 「もっともガミラスニュームの増殖は、どこの国も、やっていないそうですが」

 「羨ましいのか?」

 「ガミラスニュームを燃料にしている軍艦をですか?」

 「あまり乗りたくはないか・・・翼付けエンジンで離したくもなる」

 「真田所長は、放射能に対するトラウマが、ないんでしょうか」

 「放射能で人類が滅びかけたのは、事実だがね」

 「コスモクリーナーDを使って強制的に放射能を取り除きながら」

 「ガミラスニュームの増殖と上澄み分をエネルギーに転換ですか」

 「放射能を強制的に消失させたときに得られえる噴射エネルギーも利用できる」

 「波動エンジンを低巡航レベルで抑えられるというのは悪くないさ」

 「・・・・今後、どの程度、技術が生かされていくのか興味がありますね」

 「放射能は好きになれませんが」

 「ふっ 放射能の問題を解決できなければ地球連邦艦隊のボイコットもありうるな・・・」

 「ヤマトの島艦長を出せ」

 『・・・古代提督。こちらは準備を完了しています』

 島艦長が敬礼する

 「そうか。では、スケジュール通り始めてくれ」

 「はい」

 ヤマトの慣熟訓練が始まる。

  

  

 旧ヤマトは、第三艦橋が艦底に吊るされていた。

 しかし、新型ヤマトは小型艇が吊るされていた。

 この時期、地球連邦軍は、一万を超える恒星を防衛するため、

 小型機動艦を充実させようとしていた。

 蒼龍(強行偵察型)、飛龍(航空戦指揮型)、

 雲龍(次元潜航型)、海龍(水雷艇型)、幻龍(電子・転移戦)・・・・

 駆逐艦より小型安価で数を揃えられる代わりに空間転移能力がない。

 しかし、ヤマト搭載型は、ガミラスの次元断層サイクロンエンジンを装備していたため、

 短距離の空間転移能力を有していた。

 そして、今回の慣熟訓練は、試験的に飛龍(航空戦指揮艇)改を装備。

 艦載機も、新型のコスモ・ドラゴン36機が、ヤマト艦底格納庫に格納されている。

  

 ヤマト艦底から飛龍が離脱。

 そして、ヤマトから射出された新型機コスモ・ドラゴンが編隊を組んで飛龍を中心に訓練を開始する。

 「カタログの数値に対し±0.3というところか」 島艦長

 「性能が安定すれば、すばらしい攻撃部隊になりますね」 由良副艦長

 「攻撃?」

 「防空だよ。36機では、それが限界だ」

 「波動エンジンと艦底の隙間にコスモ・ドラゴンを並べても36機か」

 「艦底に大砲を載せるより、合理的かもしれないな」

 「オリオン型空母と発想が逆転ですね」

 「オリオン型空母の艦底は次元潜航装置で埋まっている」

 「一種の潜水空母だ。ヤマトは航空戦艦に近いな」

 「戦艦と空母を二隻建造するほうが良いですね」

 「まあ、旧型ヤマトも単艦で作戦を行うように建造されていた」

 「そして、この艦も実験艦で単艦での行動、似たようなものだ」

 「ですが主翼付きは、面白い戦艦ですね」

 「邪魔かもしれないが戦闘で次元断層サイクロンエンジンが被弾した場合。怖いからな」

 「コスモクリーナーDが周りを覆っているんですよね」

 「既存の技術の組み合わせの妙というやつだな」

 「島艦長。空母サラトガより、コスモタイガーXを出撃するそうです」 オペレーター

 「そうか、加藤中尉。飛龍の管制により迎撃戦を行え。ヤマトは対空戦闘に入る」 島艦長

 「了解!」 加藤

 「今回は、対空拡散波動砲は無しですね」 由良副長

 「訓練じゃなくなるからな」 島艦長

 サラトガの艦載機コスモタイガーXは、ヤマトの倍以上の83機。

 地球艦隊がヤマトの転移点を抉じ開け、転移空間を確保。

 サラトガの瞬間物質転送機がヤマトから12光秒の位置に83機のコスモタイガーXを転移させる。

 地球艦隊の転移点がヤマトに集中しているため。

 転移で逃げるのは不可能。

 しかし、飛龍の管制を受け。

 ヤマトに向かうコスモタイガーX83機に対し、

 性能差で勝るコスモ・ドラゴン30機が切り込んで撹乱。

 理想的な迎撃と、ヤマトの弾幕で撃墜認定の警報が増えていく。

 艦底方向から生き残ったコスモタイガーXが回り込んでくる、

 ヤマトは、艦体を反転させ、弾幕を増やしていく。

 ヤマトの120mm誘導弾が炸裂し、

 サラトガ攻撃部隊の生き残りは、赤いペイント弾で真っ赤になって後退していく。

 「・・・・ほう、凄いじゃないか」 島艦長

 「被害は・・・ゼロ判定です」 由良副長

 「コスモドラゴンか」

 「稼働率84パーセントは、いただけないが性能は、コスモタイガーより良さそうだ」

 「ヤマトのイージスシステムも計画通り機能しているようです」

 「主砲発射の衝撃でも機能を損なわなかったのは良いが・・・・」

 「しかし、艦底に回りこんでくるのは、お約束だな」

 「数が少なかったからでしょう。数が多ければ、全天球から包囲されて、雷撃ですから」

 「そんな大部隊には近付かないよ」

 事前のコンピューターシミュレーション結果に近い結果で演習が終始していく。

 「・・・艦長。旗艦キャンサーより」

 「0000時に転移戦から、ダミー艦と遊星爆弾に対する砲戦訓練だそうです」

 「了解したと伝えろ・・・・ダミー艦か、贅沢だな。普通は遊星爆弾だからな」

 「機動性は、ダミー艦が優れていますから」

 「コスモ・ドラゴンを着艦させて整備と補給」

 「飛龍は、このまま、砲撃の観測支援をさせる」

   

  

 転移戦

 転移するためには、転移先に転移点を確保する必要があった。

 転移を妨害する方法は、重力場を擬似撹乱するか、

 転移点で、転移点を相殺する方法が上げられる。

 重力場の撹乱は、恒星系圏内であれば楽だった。

 しかし、深宇宙は、重力場が存在せず。

 転移戦で敗北すると、いきなり艦隊上空にミサイルや爆撃部隊が転移。

 大損害を被ることになる。

 これを防ぐためには、全天球で転移点を走査。転移点をぶつけて、相殺するしかない。

 重要なのは、近距離に敵艦、ミサイル、攻撃部隊を転移させないこと。

 この転移戦で勝利しょうと思えば、転移走査線を強力し、

 精度を高め、数を増やすしかなかった。

 転移戦用の艦艇を建造する方法もあれば数を揃え、転移走査線を増やす方法もある。

 第13機動部隊から、転移走査線がヤマトがいると思われる空間に対し放射される。

 ヤマトも、転移走査を開始。

 ヤマトの転移点走査能力は、単独の艦艇で最強最大だった。

 全天球レーダーで、ヤマトを中心に転移不可能空間が広がっていく。

 それでも相手が艦隊だと転移点防衛も限界がある。

 ヤマトより25光秒にダミー艦が転移する。

 ヤマトの全天球レーダーが反応すると、

 ヤマトと飛龍のハイパーリレー通信によって瞬時に計測。

 主砲塔が旋回、砲身が微調整しながら、主砲弾が撃ち出され、

 目標を破壊。

 しかし、ダミー艦は、さらに現れてヤマトを砲撃。

 ヤマトは、巧みに回避運動を行いながら砲撃。

 ダミー艦を撃沈していく。

 

 第13機動部隊は、瞬間物質移送機で、

 ダミー艦と遊星爆弾を送り込んでいく。

 アンドロメダ型キャンサー

 古代提督 吉村参謀

 「・・・やるな、島艦長」 古代提督

 「艦底にこだわらなくても良いのでは?」

 「意図的に転移できる空間を作っているようにも思えます」 吉村参謀

 「・・・そうだろうが、ついな」

 「ダミー艦とはいえ、こちらの被害を減らそうと思えば、どうしても、艦底方向から狙いたくなる」

 「しかし、転移戦も、なかなかだ。新型イージスシステムを使っているだけある」

 「ヤマトと飛龍の連携も良いようだ」

 「アンドロメダ型に勝るというのも、頷ける」 古代提督

 「全天球から攻撃してみますか?」

 「・・・いや、そこまで戦力差を作ることもあるまい」

 「生存率0.7パーセント以下。結果は見えている・・・」

 「訓練代わりに、少し、いたぶってやるくらいで良いだろう」

 「例の波動バリアを使っても、0.7パーセントですか」

 「波動砲を艦首から垂れ流しにしながら、波動震を意図的に起こし、艦体全周を防御か」

 「波動粛層装置の開発に躍起になっているのに」

 「逆転の発想で、面白いことを考えるものだ」

 「元々、艦体全周は、最大6G程度の反重力壁を放出させていますからね」

 「ヤマトは、最大7.2Gで、さらに強力です」

 「最大7.2G機動も可能か、姿勢制御噴射やエンジンを使えばさらに機動力が増大する」

 「逆に言うと艦体は、常に7.2Gで押し潰されている事になる」

 「その代わり、波動バリアを混成で使えば、すぐに位置がばれてしまいますからね」

 「長距離誘導弾やミサイルを受けることになるかも知れません」

 「カタログでは、アンドロメダ型の砲弾を弾き返すと書いてあるが・・・」

 「一回り小型でありながら、アンドロメダの1.2倍の防御力か」

 「波動エネルギーの容量は決まっていますから。その間だけです」

 「30秒で、逃げられる距離は、それほど大きくありませんから」

 「島艦長は、逃げないだろう」

 「そのまま突っ込んで、このキャンサーと刺し違えるだろうな」

 「波動バリアで波動砲を相殺される」

 「撃沈するには波動カートリッジ弾で外壁を破壊して、艦内を波動エネルギーで吹き飛ばすしかない」

 「地球連邦の基本戦略は大きく変わっていくだろうな」 古代提督

 「そうですね・・・」

 「ガミラスもボラーも似たようなことを考えるでしょうから」 参謀

 

  

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 月夜裏 野々香です。

 なるべくヤマトの世界を継承しつつ、

 少しばかり捻じ曲げました。

 一隻で艦隊を全滅させたり、

 裏づけもなく、いきなり、パワーアップして何倍のも敵艦隊と戦ったり・・・・・

 無限に広がる大宇宙とかいって、

 わずかな時間で、何十万光年も行ったり来たり、永久運動機関だったり。

 ゾンビのようにしぶとかったり・・・・・

 ふっ 宇宙ゾンビ型戦艦ヤマト。

 少しばかり現実よりに戻しました・・・・・10パーセントほど。

 この物語は、初代ヤマト以後の西暦2300年からの銀河系を舞台にした物語です。

 当時の登場人物は、世代交代していません。

 その代わり、女性隊員を増やしました。

 この時代、地球連邦の勢力圏は、地球を中心に半径200光年。

 19万個の恒星・矮星など主要天体がありますが、

 まともに開発されているのは、太陽系とタウ・セチ恒星系だけ。

 他に40個の恒星に拠点があり。

 開発の余地は (現ヤマト時代の技術力で約16000個) まだまだです。

 そして、広大な領土を持つガルマン・ガミラス帝国、ボラー連邦も似たような開発状況です。

 宇宙って広すぎます。

 多すぎますか?

 銀河系の恒星の数は、およそ2000億個だそうです。

 元々が気宇壮大すぎたのです・・・・・・呆れます。

  

  

これは、各国の基幹動力に対するイメージです。
勢力 エネルギー 観念だと
イスカンダル・地球 波動エンジン ディーゼル外燃電気推進機関(無いけど)
ガルマン・ガミラス 次元断層サイクロンエンジン ガソリンエンジン
ボラー連邦 反陽子ダブルワスプエンジン ディーゼル内燃機関
白色彗星帝国 ハイパーディラックエンジン ガスタービン機関
暗黒星雲帝国 ミュー・プラズマエンジン 重油燃焼機関
     
独立恒星系 プラズマエンジン 蒸気機関(転移不可)
     
     

 

 機関や燃料を何段階も精製しているため、超大国といえど、いくつもの機関を併用できない状況です。

新ヤマトの兵装

総トン数(t)

全長(m)

全幅(m)

主翼(m)

エンジン

波動 波動補助 次元断層サイクロン

68000t

263

38

160

1基

2基

2基

 

艦首波動砲

2000mm

エネルギー砲

 

 

3連装3基

460mm

カートリッジ弾

450発

 

 

連装24基

120mm

カートリッジ弾

4000発

 

 

 

転移戦用

460mm

ミサイル

40発

 

 

 

次元断層

460mm 対潜ミサイル 40発
飛龍   1機
コスモ・ドラゴン 36機  

 

 

 

 

 

 

 

 

 副砲と煙突を廃止。

 あっさりですが、460mm砲も120mm砲も弱装波動カートリッジ砲弾です。

 なぜって、整備補給上の都合です。

 それと対空拡散波動砲を撃つとまるでシャワー・・・。

 他に第三艦橋が着脱式で独立した小型艇(40m×36m×10mの楕円状)にしました。

 ほか艦載機36機が波動エンジンと艦底の隙間に並べられました。

 艦底に砲塔がないのは、このためです。

 それと波動エンジンの作戦能力(無限はないでしょ・・・)があまりにも高すぎるので、

 性能向上分をギリギリ下げ、

 航続力30万光年、巡航速度24時間で1000光年(時速41.6666光年)に制限。

 150万光年で波動エンジンがお釈迦で廃艦。

 さらに波動エンジンは、発見されやすく、

 大型低出力という弱点を作りました。

 弱点があったほうが面白いから。

 あと弱点を補強するため、

 ヤマトに主翼をつけてガミラスから購入したエンジン(放射能一杯のエンジン)二基を装備させました。

 それと転移戦という概念を取り入れました。

 一種の電子戦のようなものですが、転移を相殺させてしまいます。

 転移戦を制するものが海戦を制します。

 こいつに負けると転移で逃げられなくなります。

 現代でいうと電子戦のようなものでしょう。

 それともう一つ。

 地球人類は、ガミラス戦、白色彗星戦、暗黒星雲帝国戦、

 ボラー戦、ディンギル戦で存亡の危機を乗り越えて、心身能力が向上。

 一般人で気(オーラ)の力で雨を反らせる程度。

 傘業界全滅(相々傘、死語になりました)。

 宇宙訓練学校で死ぬほど訓練を受けると。

 集中できるだいだい約5分は、小火器の弾道すら反らせます。

 他にも知能、技能、直観力で特異な能力を発揮できる者がいるので、

 10人もいると相乗効果で・・・・・。

 だから、少しくらい異常なG加速を受けても平気です。

 別に加速にかかるG計算をしたくないわけではないです。

 

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第01話 『宇宙戦艦ヤマト建造』
第02話 『イスカンダルへ』
登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図