月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

   

  

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

 「島艦長は、逃げないだろう」

 「そのまま突っ込んで、このキャンサーと刺し違えるだろうな」

 「波動バリアで波動砲を相殺される」

 「撃沈するには波動カートリッジ弾で外壁を破壊して、艦内を波動エネルギーで吹き飛ばすしかない」

 「地球連邦の基本戦略は大きく変わっていくだろうな」 古代提督

 「そうですね・・・」

 「ガミラスもボラーも似たようなことを考えるでしょうから」 参謀

  

 第02話 『イスカンダル』

 地球連邦 → 南銀河域定期客船トイラス

 アルサ・ミエルは、地球から南銀河に戻っていく老人と親しくなる。

 親しくなった切っ掛けは、食堂の席で一緒になり、

 ご馳走してくれたからに過ぎない。

 南銀河、ラートゥルの科学者だという。

 「・・・地球人は、人工進化をすることなく、危機意識による進化をしているように思う」

 「それは、南銀河の旧アトラス帝国が行った人工進化計画という背伸びではなく」

 「種族の絶滅を何度も経験して、得られたものだ」

 「・・・・・・」

 「わたしは、南銀河の人工進化で失敗した素因を回復させることが出来ると思い」

 「地球人を研究し、その素因を利用したいと思い、地球で研究した」

 「・・・・・」

 「そして、長い研究の結果。いくつかの事柄で成功した」

 「お嬢さん、君たち地球人には、いくらでも御礼がしたいくらいじゃ」

 と目の前にエスニック料理が並べられ、スパイスの香りが食欲をくすぐる。

 「美味しい・・・・おじいさんの名前は?」

 「ロマ・セイラン。ラートゥルでは、長っ鼻博士と呼ばれとるよ」

 「ふ〜ん。有名人なんだ」

 「少しはな」

 「じゃ ラートゥルに寄った時は、泊めて」

 「南銀河の紀行文を書いて、印税生活を送るの」

 「ほっ ほっ ほっ 豪儀な娘じゃ その若さだと。学校があるじゃろう」

 「へへへぇ〜」

 アルサ・ミエルは、卒業資格のカードを見せる。

 「ほほう。やはり、地球人は、頭が良いの〜」

 「マトリックスカプセルを使えば、簡単に知識が入るわ」

 「・・・そうだろうな。南銀河諸国は、元々同じ人種だった」

 「アトラス人は、個々に違い過ぎた進化をしてな」

 「マトリックスカプセルを使える者は、ほんの一握りじゃ」

 「ふ〜ん。大変なんだ。南銀河・・・・」

 「まあ、良かろう。ラートゥルに寄ることがあれば、ここに連絡しなさい、すぐに迎えに行くよ」

 名刺を貰う。

 「うん、ありがとう。ロマ・セイラン博士」

  

  

 2305年

 宇宙戦艦ヤマトは、新生イスカンダル王室の即位を祝うため、

 大マゼラン星雲のイスカンダルへ訪問。

 砲艦外交と言えなくもないが儀礼的な事柄も含んでいる。

 こういう場合、客船や貨物船を訪問させるバカな国は、存在しない。

 国家間で儀礼的な訪問を行う。

 それは、軍艦以外にありえない。

 イスカンダル人は、完全に滅びていない。

 イスカンダル亜種といえる種族がいて、

 イスカンダル恒星間国家を相続、大マゼラン星雲の大半を支配する。

 ヤマトは、転移空間リレーの誘導に従って超光速転移に成功。

 到着した新生イスカンダル本星は、地球に似た美しい星だった。

 海洋に着水していく、ヤマト。

 そして、ガミラス(クラウゼ型戦闘空母)、ボラー(ゴルサコフ型)、

 エウリア、インディア、ガトランティス、ハイデラ、

 ラートゥル、ジャスタン、フィリア、ジャイブル、ディンギル、

 地球連邦、チターム、クラフクの戦艦群がイスカンダルの王城を囲んみ、洋上に並ぶ。

 各国の外交戦が激しさを増していく。

 注目を浴びたのは、各国の戦艦に比べ、

 一回り以上小さい地球の戦艦。

 非合理的な外観は、紛れもなく戦艦ヤマトを改良しながら再生したものだ。

  

  

 イスカンダル 地球大使館

 なんとなく、不満げなイスカンダル地球大使

 「・・・アンドロメダ型で良かったんじゃないのか。大きいし見栄えもいい」

 「それなのに思わせぶりな戦艦も持ってきやがって、やりにくい」 神村大使

 「イスカンダルとの恒久的な友好関係と」

 「通商の更なる発展を願って。だろうね」 大統領補佐官

 「その、だろうね。が思わせぶりなんだ」

 「ははは、大使。イスカンダルの情勢は?」

 「地球連邦との友好関係は、問題ないがね」

 「イスカンダルとガミラスは、かなり疎遠だ」

 「イスカンダル亜種は、ガミラス人から過去、数百年ほど」

 「二流種族として扱われていたことがあったからね」

 「大マゼランの憂鬱か。ガミラスにも困ったものだ」

 「デスラー総統は、マシだったようだ」

 「もっとも、そのおかげで銀河系にまで手を伸ばせるほど、国力が増大したんだがね」

 「目標は地球だった」

 「ふっ 何が幸いし、何が災いするか、わかったものじゃないな」

 「神村大使、その件は、済んだことだ」

 「それにいま地球は、ガルマン・ガミラスとの共闘時代でもある」

 「ヤマトは、そのどちらとも象徴的な戦艦だ」

 「それにガルマン・ガミラスの主流を占めているガルマン人も、ガミラスの亜種だ」

 「バラバラだったガルマンを宗種族のデスラー総統がまとめ上げ、一大帝国を築いた」

 「イスカンダル人も、ガミラス人も、宗種族は、似たような運命をたどったわけだ」

 「それで本国の方針は?」

 「善隣外交で、頼むよ」

 「高みの見物で大儲けできれば良いが、そうならない可能性も少なくない」

 「巻き込まれると損だ」

 「そうだろうね」

 「しかし、ガミラスとボラーは、互いに相手の戦力を削ぎ落とそうと躍起になっている」

 「西銀河のインディア、エウリアは交戦中で」

 「南銀河のフィリア、チタームの関係も、それぞれに微妙だ」

 「過去を遡れば、誰しも加害者で被害者になっている」

 「ガトランティスとディンギルは、再建中で安定しつつある」

 「暗黒星雲帝国の逃亡艦隊も銀河系に散らばっているらしい」

 「インディアとエウリアは、ここで問題を起こさなければ良いが」

 「ここで、撃ち合うような事はあるまい。いくらなんでも国際社会から爪弾きに合う」

 「しかし、ガミラス側のインディアと、ボラー側のエウリアの戦争か。代理戦争だな」

 「元々の火種は両方の国にあった。たまたま、武器弾薬を供給した比率でそうなっただけだ」

 「ガミラスとボラーは、血を流さずに産業を支えてくれる戦争があれば、それだけ潤う」

 「戦訓も血を流さずに手に入る。ガミラスとボラーは、拮抗した状況で戦端を開くことはない」

 「いまのところ本気で戦う気はないさ」

 「そして、地球連邦も、敵対関係にある国はない」

 「銀河で交戦中の国は、銀河の反対側にひとつだけ、火の粉が飛んできても小さいよ」

 「まぁ 地球連邦も、両国に何がしかの “物” を輸出している」

 「物? 戦略物資だろう」

 「そうとも言う」

  

  

 イスカンダル海上に並ぶ。各国の戦艦。

 ヤマト展望室

 古代提督と島艦長が展望ドームのテーブルを挟んで座っている。

 アンドロイドメイドがコーヒーを運んでくる。

 「・・・古代提督。少し休んではどうです」

 「アンドロメダと違って、狭い艦内。疲れているのでは?」

 「ああ、感慨深い光景でな」

 「銀河系主要国家群の主力艦が勢ぞろいしている」

 「この先、見られることは、あまりないな」

 「確かに珍しい光景ですね」

 「済まんな。無理言って同行させてもらった・・・」

 「しかし、どうしても見ておきたかった」

 「いえ、かまいません。わたしもこういう経験は、得難いと思っていますから」

 「インディアとエウリアは、両端で、大人しくしているな」

 「互いに戦争中でも、ここでは、戦わないでしょう」

 「ところで、どう思う。ガミラス艦とボラー艦」

 「ガミラスは、エメラルド型戦闘空母。ボラーは、ゴルサコフ型戦艦で主力艦」

 「どちらも、本気でないようですが侮られない程度の軍艦を送ってきたと思いますが」

 「艦長らしいことを言ったらどうだ。勝てそうか?」

 「少なくとも、一番、戦う可能性がある軍艦だぞ」

 「ヤマトなら勝てますよ。相手が、一回り、二回り、大きくても質的な差は大きいですから」

 「ふっ 向こうは、どう思っているかな。羽の生えた戦艦をみて」

 「主翼と言ってくださいよ。羽では、鳥じゃないですか」

 「艦隊機動で邪魔になりますね」

 「主翼は、ドックでも白い目で見られていますから」

 「まったくだ。専用ドックまで建造させやがって、金食い虫が・・・」

 「他の提督も、本来、割り当てられる艦船が減らされたと、ぼやいている」

 「それで、今後、軍政局は、主翼付き戦艦の建造を検討しているのですか?」

 「ガルマンガミラスからガミラスニュームを購入しようと思えば購入できるだろう」

 「デッドコピーの増殖分だけを消費で使うのなら問題ない」

 「しかし、小型連結艦は、次元断層サイクロンエンジンそのままだ」

 「ガミラスニュームを消費することになる」

 「艦隊として運用できるのなら小型連結艦は、必要ありませんよ」

 「巡洋艦にでも、役割を分担させればいいのですから」

 「問題は、艦隊機動で主翼が不利益になることと、建造、整備性の不具合でしょう」

 「いや、その件は、真田中将が妙案を考えているらしい」

 「かなり自信があるようだ」

 「それは助かりますね」

  

  

 イスカンダル王城

 アフロリア・イスカンダル王の戴冠式は、粛々と行われる。

 各国とも外交戦を展開。

 それぞれに自国に優位な協定を結ぼうと様々な工作をする。

 その主要なものは、通商上のルート確保が多い。

   

 島艦長は、人波に酔ったのか、少しばかり離れると声を掛けられる。

 「・・・これは、島艦長」

 「地球の軍艦。変わった戦艦ですが、新型ですかな?」 ポールタフ艦長(ボラー戦艦)

 「島艦長。どこかで見たことがある艦型ですな」 ラインヒス艦長(ガミラス戦闘空母)

 ガミラス艦長とボラー艦長は、今生の別れとばかり、

 離れのテラスで、一緒にカクテルを飲んでいる。

 「これは、ポールタフ艦長に、ラインヒス艦長」

 「あれは、実験艦ですよ」

 「訓練もかねて、イスカンダルまで遠出してきました」 島艦長

 「ほう、道理で相互監視条約に引っかかっていないと思いました」

 「もちろん、地球連邦に悪意があるとは思っていませんが・・・」 ポールタフ艦長

 「確かに、隠しもせずに公開したのは、そういうことでしょうな」 ラインヒス艦長

 「当然、艦内に招待していただけるんでしょうな」 ポールタフ艦長

 「もちろん。儀礼上の範囲を超えない程度の招待は、させていただきますよ」 島艦長

 「それは嬉しい限り」

 「ところで羽付き戦艦。あ、失礼、戦略爆撃機でしたかな」

 「他人事ながら格納庫を心配してしまいますな」 ポールタフ艦長

 「実験艦ですよ。名称は、ヤマトです」 島艦長

 「ずいぶん、懐かしい名前ですな。す・が・たも」 ポールタフ艦長

 「少しばかり懐古趣味の強い技術将校がいまして」 島艦長

 「ふっ どこの国にもいますよ」

 「懐古趣味な将校は、どちらかというと弊害でしかありませんが」 ラインヒス艦長

 「ところで、ボラー側は、大口径艦首砲の装備を検討していると聞いていますが」 島艦長

 「ははは・・・・噂は、人の数だけありますから・・・・・」

 「我が国の反陽子ダブルワスプエンジンは、大口径艦首砲向きのエネルギーではありませんからね」

 「研究しているだけですよ」

 「多くの場合、主砲エネルギーとして使われてしまいます」 ポールタフ艦長

 「ボラーで開発した波動指向粒子で」

 「エネルギーを波動の揺らぎに対して向けて曲げられると聞いたのですが、本当ですかな?」 ラインヒス艦長

 「ふっ まさか、波動指向粒子は反応が遅く、超光熱に耐えられませんから・・・」

 「それより、ラインヒス艦長」

 「ガミラスの新型ドメラーズY型戦艦は、追加建造をしないのですかな」 ポールタフ艦長

 「いまのところ、ないようです」

 「軍事バランスを崩してしまう状況を苦慮しているのか」

 「財政的な理由によるものだと思いますがね」 ラインヒス艦長

 「どちらかというと、機動要塞の方が脅威では?」 島艦長

 「地球の機動要塞は小惑星をくり貫いた物を使用しているそうですな」

 「使い勝手は、どうですか?」 ポールタフ艦長

 「あれは、機動要塞でなく、移民産業コロニーですよ」

 「地球連邦の国力で、機動要塞は、ありまえませんから」 島艦長

 「惑星リング衛星を機動させる準備をしているのでは?」 ラインヒス艦長

 「まさか、軌道産業衛星で少しばかり補強しているだけでしょう・・・」

 「機動要塞を建造できような超大国とは根本的に違いますから」 島艦長

 「いやいや、地球連邦が精強なのは認識していますよ」 ポールタフ艦長

  

  

 イスカンダル首席補佐官チャーリムは、各国の代表と交渉していた。

 そして、喧々諤々 離合集散、二国間の動議など繰り返された結果。

 無難な線で落ち着いていく。

 「・・・では、麻薬関係の密輸入禁止協定は、全会一致ということで、良いですね」 チャーリム

 各国の大使は、うなずく。

 「では、もうひとつ、麻薬に関連してない宇宙海賊に関する協定ですが」

 「引渡し協定に差異があるようです」

 「暫定的に領空を超えた場合の海賊に関しては、被害にあった国でなく」

 「捕らえた国に優先権があるということで良いですね」

 チャーリムがいうと、渋々という感じで各国代表が同意する。

 「あと、貿易商人による第三国を経由しての輸送協定」

 「物資、または、送金に関する・・・・」 チャーリム

  

  

 イスカンダルの歓楽街

 イスカンダルの憲兵隊が監視している中、

 インディア、エウリアを除く各国の艦隊乗員が三々五々散らばり、

 歓楽街を徘徊する。

 いたるところに各国の乗員がバラけていた。

 互いにケンカにならなければ良いと思いながら。

 「・・・おい、見ろよ。各国の特産品がこれだけある国は、珍しいな」

 那岐ツバサ少尉 (コスモ・ドラゴンパイロット)

 「本当だ。インディアとエウリアの特産品が並んでやがる」

 ソロ・クロウ少尉 (ヤマト機関士)

 「やっぱり、銀河系から少し外れた大マゼランだから、自由貿易の利益も大きいんじゃないかな」

 竹内シンヤ少尉 (航海士)

 「だけど、イスカンダルは、銀河系から離れているはずなのに・・・・」

 「これだけの種類と量は、地球連邦にもないわ」

 「同じ波動エンジン文化圏で、地球は、位置的に有利なのに・・・」

 芹菜ユキ少尉 (作戦オペレーター)

 「ガミラスとボラーが睨みあっているから、地球は、難しいんじゃないか」

 ソロ・クロウ少尉(ヤマト機関士)

 「ねぇ〜 イスカンダルのミトン魚が美味しいんだって、早く行こうよ」

 芹菜ユキ少尉(作戦オペレーター)

 「食いしん坊だな。芹菜少尉」

 那岐ツバサ少尉(コスモ・ドラゴンパイロット)が笑う

 「な、何よ」

 「食べたくないんなら、ソロ少尉と竹内少尉と、三人だけで行っちゃう」

 芹菜ユキが、ソロ少尉と竹内少尉と腕を挟んで引っ張っていく。

 「あ、ごめん、ごめん・・・おおい〜・・・頼むよ・・・」

 那岐ツバサ少尉(コスモ・ドラゴンパイロット)が慌てて付いていく。

  

  

 歓楽街の一室

 「これが・・・インディアの火器管制システムの概要・・・」 男

 「ええ、そうよ」 女(エウリア人)

 「ディラック過粒子エンジンのシステムか・・・」

 「わかった。交換に応じよう。何基揃えられる?」 男

 「6基」 女(エウリア人)

 「十分だ。使用に耐えられるものだろうな」 男

 「ええ、主力艦バブザーム型のものよ」 女(エウリア人)

 「わかった。それで十分だ」 男と女が握手。

 

 歓楽街の一室

 「・・・エウリアのナノ制御技術を手に入れたいの」 女

 「エウリアは、ザイル星雲の特殊な多重プラズマ磁場圏で産出されたインディニューム系技術で成り立っている」

 「手に入れることはできても運用は保障できない」

 「いうなればガミラスニュームやイスカンダルニュームと似ている」 男(インディア人)

 「そのインディニュームが紛争の原因でしたね」 女

 女は苦笑いする。

 インディニューム、エウリアニュームと、それぞれの勢力で呼んでいる」

 「しかし、国際的には、ザイルニュームが通用していた。

 「エウリアが我が国の領土を不当に占拠していてね」 男(インディア人)

 「かまわないわ、ナノ制御システム20基と武器弾薬を交換してあげる」 女

 「・・・4週間ほど待っていただきたい」 男(インディア人)

 「3週間よ」女

 「・・・まあ、海賊船に頼むか・・・割高になるぞ」 男(インディア人)

 「かまわないわ。密輸・・・いえ、海賊船の船長によろしくね」

 女が立ち上がると、男と握手。

  

  

 地球の補佐官とチタームの弁務官

 「・・・地球のテラフォーミング技術を移入したいのですが、お力添えいただけませんか」 弁務官

 「まあ、お互い、小規模な恒星間国家ですから協力したいとは思います」

 「しかし、地球連邦は、ガミラス、ボラーとの関係の影響を受けるので戦略的な支援は・・・」

 「本国の、それも議会で承認を得ないと困難だと思いますが」 補佐官

 「コアチタン鉱を、どう思いますか?」 弁務官

 「・・・面白い特産。素材ですね」

 「軽量で、ありながら強靭。・・・・確か・・・・加工のしようがないほどですが」 補佐官

 「ええ、たぶん、どこの国も加工技術を持っていない」 弁務官

 「チタームに加工技術があるのですか?」 補佐官、訝る

 「いえ、ですが、輸出することは、できますよ」

 「それも大量に・・・」

 「ボラーでも・・・ガミラスでも・・・ディンギルでも・・・地球でも」 弁務官

 「・・・困りましたな・・・・」

 「食指は動くのですが・・・わかりました。上層部に伝えます」

 「ですが、正味成功するとは限りませんよ」

 「上層部の判断することですから」 補佐官

 「かまいませんよ。サンプルを贈らせていただきますよ。補佐官」 弁務官

  

 

 イスカンダルの戴冠式は終わった。

 式典と前後して、海賊と密輸団の民間定期船制圧(プリンスプラム)事件が起きる。

 そして、イスカンダル銀河協定が調印。

 各国ともそれぞれに有意義な砲艦外交が終わる。

  

  

 戦艦ヤマト艦橋

 「・・・島艦長。済まないが、特務で、チタームに行ってもらいたいんだが」 古代提督

 「了解しました。隠密ですか、それとも、発見されてもかまわないと」 島艦長

 「ヤマトを使うということは、だ。できれば、隠密に移動したいということだ」

 「わかりました」

 「では、明日の0700時にチタームの戦艦アムヌードと一緒に出航してくれ。途中で合流することになるだろう」

 「少なくともチタームは、敵でないということですね」

 「一応招待されている。艦長には、会ったかね」

 「ザナリッツ少将ですか。ええ、好人物と思いました」

  

  

 南銀河

 恒星間国家ジャスタン

 定期観光船に乗っての旅は、紀行文として弱い。

 というわけで、来たのが開発惑星ボルノアーツ

 アルサ・ミエルはカメラで自然を撮っていた。

 紀行文も、それなりに溜まり。印税生活も期待できそうだった。

 結局は、両親に疎まれて地球から離れたかったのかもしれない。

 この星は、旧アトラス帝国の残照(施設)が僅かに残り、

 その気になって資本を投下すれば開発できるという惑星だった。

 いまのところ身の安全は、守られている。

 南銀河の住人は、気が弱い。

 一部に気が強い者がいて、全体の5パーセント程度が支配層や富裕層を形成している。

 そして、大半が、ミュータントだった。

 女の子の一人旅、自分を襲おうとする者は、その前段階で意識を飛ばしていた。

 自分が、その気になれば、南銀河の支配層になれるかもしれない。

 何より、ミュータントが多い。

 ミュータントに比べれば、地球人とガミラス人すら人種問題の範疇に入らないほど近い。

 ミュータントには、劣勢のミュータント、優勢のミュータントがいる。

 中には、自分と同じレベルの “気” の強さを持つ海賊もいた。

 そういう時は、お互いに避けた。

 戦えば、互いに命の保証がない。

 それなら、自分より弱い者を・・・

 と、いうのが鉄則。

  

 

 そして、突然、大気圏に向かってくる十数隻の水雷艇。

 さすがに場の外から内に転移されると、避けようもない。

 近くにいた開発作業員数十人と一緒に人質。

 逃げようかと思ったが相手が多すぎる。

 貞操の危機だ。

 しかし、こっちが宇宙船の中で本気になれば、あきらめて降ろしてくれるだろう。

 海なら船板一枚で、海の底だが、宇宙船なら、さらに分が悪い。

 お互いに・・・・

 水雷艇は、軌道上の水雷艇母艦に帰還すると。

 水雷艇母艦は、そのまま逃げ出していく。

    

 そして、囚人の部屋で、耳を澄ます

 「・・・停戦しなければ撃つ。逃げてもムダだ。ガードル」

 「開発惑星の人質を取っている。逃がしてくれたら。他の星に降ろしてやる」

 「・・・そんなの信用できるか。撃て!」

 そして、衝撃。

 「げっ!」

  

 

 

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第01話  『宇宙戦艦ヤマト建造』
第02話  『イスカンダルへ』
第03話  『チタームへ』
登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図