月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

    

第23話 『獅子身中』

 ガルマンガミラス帝星 帝都デスラーズ上空

 女海賊アルサ・ミエルは、格闘宇宙戦闘機ゼーアドラーZを駆る。

 同型機が後方から掃射しながら追撃する、

 アルサ・ミエルは、大気圏・成層圏・熱圏を何度も捻り込みながら行き来し、

 反撃の機会を粘り強く待つ、

 機体に無理をさせているのか、ミシミシと震動が伝わり、警告音が鳴り響く。

 ディンギル水雷母艦で感覚を掴んでいるのか、麻痺しているのか、

 バラバラになるようにも感じられない。

 デタラメほど強靭な機体構造。

 ゼーアドラーZに弱点があるとすれば航続力と搭載能力が乏しいことだろう。

 緩急取り入れながら微妙に射線をかわしていく。

 そこまで、やって、引き離そうとするが追い詰められていく。

 そして・・・・・・

 『・・・アルサ・ミエル。後ろの目がついているんですか?』

 「模擬弾が命中するとは意外だったわね」

 右主翼に2つばかり、赤いインクがあった。

 後方のゼーアドラーZを並ぶ、

 『これでもガルマン・ガミラスのトップガンです。こんなに射線を外されるなんて・・・』

 「わたしも、ここまで追い込まれるのは、初めてね」

 『地球人のオーラの強さが、これほどとは知りませんでした』

 『本当に戦闘機は、初めてで?』

 「ええ、でも、良く出来た戦闘機ね。素人が空戦プログラムで操縦できるなんて」

 『いえ、アルサ・ミエルの能力、プラスアルファによるところ大ですよ』

 『こんなに梃子摺ったのは初めてです、保障しますよ』

 「そう♪ この機体。気に入ったわ」

 『最新鋭の戦闘機を気に入ってもらえないとガルマン・ガミラスも立つ瀬がありませんよ』

 白色彗星ラグナロク要塞が対ボラー戦線に配備された場合、

 作戦や補給など、ガミラス艦隊や航空機の駐留・運用も考えられる。

 ためしにという事で最新鋭のゼーアドラーZ型機に試乗していた。

  

  

  

 西銀河 エウリア・インディア戦線

 各国が武官を派遣し、貿易商船を利用して両軍の戦訓を収集していく。

 最新の戦訓が、そこにある。

 銀河系最大のボラー連邦と銀河最強のガルマン・ガミラス帝国の代理戦争。

 銀河の果てでも戦況を確認したいと各国は思う。

 南銀河最大最強のバナジ貿易商の貿易商人アシュモフは、この戦域にラグナロク要塞を派遣し、

 発言力を得ようするのも道理。

 そして、戦訓を得ようと監視で活躍するのは、各国に雇われた長距離偵察型の機体や艦艇だった。

 アトラス系大型長距離艦上戦略偵察機。

 「・・・ミユキちゃん。状況はどうかね」

 「戦術宙域内の質量戦力比は、エウリア側5.5。インディア側4.5。です」

 五十嵐ミユキ元少佐は、須郷に引き抜かれていた。

 「ボラー側のエウリアとガルマン・ガミラス側のインディア。双方とも機動部隊のはずだが先制攻撃はなしか」

 「双方とも相手の出方を窺がっているようです」

 「これ以上、近付かない方が安全なんだが・・・・」

 「・・・突っ込め、ですか?」

 「頼むよ。ミユキちゃん」

 両軍の転移点が無数に相殺しながら主導権を握ろうとしていた。

 エウリア機動部隊とインディア機動部隊の艦載機が、

 大規模な空中戦を展開する宙域を各国の偵察機が飛ぶ、

 そして、双方の敵味方識別信号で敵としか認識されない機体が紛れ、

 その中に、黒塗りのアトラス系大型長距離艦上戦略偵察機も戦場に突入していた。

 高度なステルスと遮蔽装置を有しても、

 攻撃目標もなく、通過するだけでも、

 当事者同士は関係ない。

 最終的に強力な探知機で捕捉され、弾幕に巻き込まれ、ミサイル群に追撃されたりする。

 五十嵐は、迎撃パルス砲で迎撃掃射しながら、戦場に漂う残骸を利用。

 反重力の反発で機体の軌道を変えるなど巧妙なテクニックを駆使。

 曲芸?

 と見紛うばかりの機動で機銃掃射とミサイルをかわしながら戦場を駆け抜ける。

  

 

 アトラス系大型長距離艦上戦略偵察機の周囲を艦隊攻撃に突進するエウリア編隊と、

 艦隊防空のインディア編隊が航空戦を繰り広げる。

 エウリア、インディアの両軍にとって、

 戦訓収集の観戦者は、紛らわしく、煩わしいハエでしかなく、無差別で攻撃してくる。

 無論、撃墜されても文句を言えない。

 インディアの戦闘機がエウリアの攻撃機を追い詰めていく。

 死のダンスとか、死の舞とか、やめると撃墜される。

 エウリアの攻撃機がピケット艦に向け、ミサイルを放っていく。

 そして、あちらこちらで戦闘機・攻撃機やピケット艦が爆発していく。

 「・・・いや、ミユキちゃん、良いねぇ スリル満点だ」

 「全周囲カメラで撮った録画も、お金に?」

 「新しい別荘を建てられるよ」

 「くすっ♪」

  

  

 特異星雲ザイルしか採掘されないザイルニュームの採掘権が恒星間戦争の原因だった。

 イスカンダルニューム。

 ガルマンガミラスの妖緑鉱。ガミラスニューム。

 ボラ連邦の紅晶鉱と並ぶ、戦争の原因。

 さもあらんと、誰もが納得する戦略物資だった。

 機動部隊同士の艦隊航空戦で双方の高速戦闘機・攻撃機の残骸が増えていく。

 障害物が増えると、回避運動で速度が低下していく。

 それならば高速性より機動力。

 適度の反重力バリアを持つ中型水雷艇でも良くなり、

 障害物が増えるにしたがい、高速一撃離脱戦闘が終息していく。

 そして、中速、中防御、中武装の水雷艇群が攻防の主力になっていく。

 ガルマンガミラス系とボラー系の水雷艇が残骸の中を互い戦で掃射しながら交錯して行く。

 いくつもの爆発が艦隊間で膨れ上がり、

 互いに目標の敵艦に向けて宇宙魚雷を発射していく。

 そして、両陣営で攻撃する水雷艇と、艦隊を守ろうとする駆逐艦が爆発して消えていく。

  

 互いの戦艦の砲撃が始まると、

 衝撃砲が艦隊間を交錯して中央域の障害物が粉砕され消されていく。

 衝撃砲でバリアや反重力障壁が破られると装甲板が被弾し、

 艦隊砲撃戦の射線上の外側で戦闘機や水雷艇が攻防戦を繰り広げつつ、

 迂回戦術をとって敵艦隊に切り込もうとし、空中戦を演じる。

 艦隊の後方では、空母や水雷母艦が混乱しながら補給と応急修理を済ませると再出撃を繰り返した。

 戦場は激しさが増し、両軍とも損害が広がっていく。

 互いに遊撃部隊や潜宙艦を駆使し、

 一角を切り崩しながら温存していた、とって置きの水雷戦隊を突入させ、

 敵旗艦に向けて、必殺の雷撃を行なったりする。

 互いが死力を尽くして戦っている中、

 各国の貿易商船や偵察機が戦訓を得ようと、懲りずに近付いていく。

 当然、貿易商船や偵察機も巻き込まれ、失われるが想定内。

 数に任せて執拗に戦局を監視する。

   

   

 南銀河

 宇宙戦艦ヤマト & シャルンホルスト、グナイゼナウ。

 コントロールする側で護衛されるヤマトは全長270m。

 コントロールされて、護衛する側のシャルンホルスト、グナイゼナウが全長492m。

 半分強の全長しかないはずのヤマトは最新鋭戦艦で、

 100年前の大型巡洋艦より攻守共に強かったりする。

 「・・・どうです。藤野マユミ技師長」

 技師長と呼ばれた女性は真田中将直属で若手のホープ。

 今回の南銀河探索に同行していた。

 彼女は、貨幣大のそれを見詰めては、ため息。

 「島艦長・・・どうやって精製したのか、まるで見当が付きませんね」

 「モアブが飲食代の代わりに置いていったものです」

 「・・・少なくとも、精製された物は既存で最強の装甲より、質量比で1.7倍は強力なものです」

 「各国とも技術的に頭打ちしている現状で脅威ですね」

 「コアチタンを精製できるとわかって地球政府も、一安心といえますね」

 「元々、アトラス帝国はコアチタンの精製を兼ねて人工進化を意図した形跡があるようです」

 「今回の南銀河の探索も、その技術的な蓄積を手に入れるため、でもあります」

 「ラグナロク要塞とは取引を?」

 「ロマ・セイラン博士。ラートゥルでは、長っ鼻博士と呼ばれていたそうです」

 「彼の持っていたデーターが残されていました」

 「地球人の血を精製し」

 「気の強い地球人のヒアリングをオーラードライブで増幅させることで」

 「ミュータントを通常の健康体に回復できるようです」

 「地球連邦と南銀河との関係が深くなるか」

 「政官財とも動いて、どういう取引になるのか・・・・いろんな力が働いているようです」

 「ナノマシンを体に取り入れて、無理やり健康体にしたミュータントもいるようですが」

 「元々は、放射線など対宇宙線用の体内ナノマシンですからね。大変な技術です」

 「そっちは、一時的に機能停止状態にさせ、回復させる事になるでしょう」

 「ナノマシン自体は、増幅器の一種ですから、地球側でも応用できそうですね」

 「なるほど。悪くない傾向ですな」

 「ガルマン・ガミラスとボラーともいまのところ、直接、事を構える気がないようですから」

 「対外的には、いいようです」

 「やはり、地球は、ガルマン・ガミラスとボラーに翻弄されますか・・・」

 「地球連邦は、近いですからね」

 「・・・銀河外周側を回っていくので最初の寄港地は、予定通りフィリアになりそうです」

 「大国ですな」

 「14の恒星系がありますから」

 「もっとも、通常の航路を使っていないので寄り道するかもしれませんが・・・」

 「構いませんよ」

 「学術的に得られるものがあれば、いくらでも・・・・」

  

  

 ヤマト大食堂

 佐々木セイイチ中尉(戦闘班長)

 那岐ツバサ少尉(コスモ・ドラゴンパイロット)

 ソロ・クロウ少尉(ヤマト機関士)

 竹内シンヤ少尉(航海士)

 芹菜ユキ少尉(作戦オペレーター。知的な美人)

 仁科マイ准尉(作戦オペレーター。清楚な感じ)

 佐奈ミキ准尉(航海士オペレーター。かわいい)

 「もう、五十嵐先輩が須郷社長に着いて行っちゃうなんて・・・・」 仁科マイ ぶすくれる

 「なに? マイちゃんが誘われたかったの?」 芹菜ユキ

 「な、なに言ってるんですか? そ、そんな・・・はずないですよ」

 「ああ・・・須郷社長に惹かれてたな〜」 佐奈ミキ

 「そんなこと、ないです!」

 「まぁ 男の俺らでさえ、須郷社長の生き方には惹かれるものがあるからな」 竹内シンヤ

 「組織にガッチガチと違うからね」

 「薄っぺらな宇宙船で海賊や地場勢力と渡り歩いて」

 「外宇宙を行ったり来たりするのって 、刺激あるよ」 ソロ・クロウ

 「そういや、アルサ・ミエルもディンギル水雷母艦だったよな」

 「あんな駆逐艦に毛が生えたような軍艦でラグナロク要塞の前に転移するんだから参るよ」 竹内シンヤ

 「知らずに一緒に遊園地で遊んだっけ・・・笑うしかないね」 佐々木セイイチ 苦笑い

 「気の強さが、わからなかったのか?」 那岐ツバサ

 「隠していたんだろう。五十嵐も気付いていなかったな」

 「まさか “佐々木おにいちゃん” とか “五十嵐おねえちゃん” とか呼んで」

 「キャピ、キャピしていた女の子が、女海賊アルサ・ミエルと思わんさ」

 「本当。全然、わからなかったな・・・」

 「だけど、海賊業は、そんなに上手くなかったんでしょう」 芹菜ユキ

 「表向きだよ。盗んでいたのは金や物じゃなく」

 「金になる情報や不正腐敗の証拠」

 「後で上澄みを銀行に振り込ませていたのさ 」

 「おかげで、海賊では珍しく安定収入のお金持ちだよ」 佐々木セイイチ

 「じゃ 被害届けも出せず、口止め料を払っていたわけか」 竹内シンヤ

 「彼女が情報を公開したら各国の有力者が政治生命を軒並み潰されるらしい」

 「地球連邦もね」 佐々木セイイチ

 「あはは」 ソロ・クロウ

 「政治家、官僚、財界って、国益より保身を優先させるからね。普通」 那岐ツバサ

 「「「「・・・・・・」」」」 ため息

  

  

 ヤマト艦橋

 第一種警戒の警報が鳴り響く。

 「由良副長。戦闘が行われているようです」

 「海賊か・・・」

 「アトラス教団船籍とバナジ貿易商船籍のようです」

 「・・・噂は、本当だったということか」

 「噂ですか?」

 「地球と組んでミュータントを回復させれば、アトラス帝国の再建がかなうと考えているアトラス教と」

 「地球を利用して儲けようという大手貿易商、国家主義者の緊張関係が高まっているらしい」

 「それが理由で?」

 「それだけ、というわけでもないが一度、カテゴリで分けられてしまうと。そうなりやすい状況になるな」

 島艦長が艦長室から降りてくる。

 「・・・状況は?」

 「2光年先で戦闘が行われているのを転移走査で確認しました」

 「中型武装商船同士の小競り合いのようです」

 投影パネル。

 二隻の武装商船が撃ち合いながら交差していく光景が映される。

 「アトラス教団とバナジ貿易商か・・・」

 「この辺には何もないはずだが海賊行為か。救難信号は?」

 「いえ、どちらも出していません」

 「・・・では、監視しながら、予定通りの航路を・・・救難信号が出たら急行する」

  

  

 ガルマン・ガミラス工廠

 ディンギル水雷母艦サクラの修理改装。

 なんとか騙し騙しでガルマンガミラス帝星まで来た水雷母艦サクラ。

 しかし、ここで機関の換装を余儀なくされる。

 「もう・・・ナインハルトのやつ〜」

 「まぁ 身代金で修理改装代も、せしめている事ですし」

 賠償でナインハルト財団の株を持ってしまうと、それほど、嬉しくもない。

 ナインハルト財団の回転資金を奪えば、配当金が減る。

 「・・・・・」 ぶすぅ〜

 「いっそ、払い下げてガミラス艦を購入したらどうです?」

 「費用対効果で優れていますよ」

 「デストロイヤー艦の試乗も誘われていますが・・・」

 「いやよ。地球人は、放射能に耐性があるガルマン・ガミラス人と違うんだから」

 この時期、地球人も被爆でDNAが損傷しても自己修復を助けるナノマシンを体に取り込んでいる。

 また、放射能を取り込んでしまうバイオウィルスもある。

 このナノマシンとバイオウィルスの強弱で皮膚の色が変わる。

 人種によって差異があり、ガルマンガミラス人は、比較的強い耐性を持つナノマシンを体に取り入れ。

 地球人は研究開発で進んでおらず、

 比較的弱いナノマシンで皮膚の色は、変わっていない。

 代わりにパワードスーツ&オーラードライブで増幅した気で内外の放射能を軽減。

 心身機能を保護している。

 それでも遊星爆弾で被爆した頃の地球上でも生活できる。

 ガミラス艦より宇宙空間の放射線が強い。

 しかし、地球人の放射能嫌いは宗教じみていた。

 ガルマン・ガミラス帝国にもアトラス系駆逐艦のハイパーディラックエンジンが流れてきている。

 ディンギル水雷母艦のミュー・プラズマエンジンより強力なエンジンで、これに換装していた。

 寄せ集めでチグハグな改装だった。

 それでも、水雷母艦サクラの性能は向上してしまう。

 「でも、さすが銀河最新最強のガルマンガミラス工廠ね♪」

 改装後のカタログを見ながらほくそえむアルサ・ミエル。

 工廠に居並ぶ大中小のガルマン・ガミラスのデストロイヤー艦。

 (全長150m、全幅70.2m、重量22000t) 150mm3連装3基。40mm迎撃砲12門、魚雷12本

 (全長110m、全幅50m、重量12000t) 105mm3連装3基。40mm迎撃砲8門、魚雷8本

 (全長72m、全幅34m、重量6000t) 75mm3連装3基。40mm迎撃砲4門、魚雷4本

 銀河中央部(光の宇宙)では、交戦距離が近い。

 これくらいの大きさで、数で勝負が費用対効果で優れていた。

 例え、敵艦が大型艦であっても相対距離を詰める事ができて、

 火力を集中できるのなら小型艦でも役に立つ。

 魚雷が命中すれば大損害。

 最新の艦艇は、外見が同じでも中身が違って攻守の性能で開きがある。

 技術的な進歩が頭打ちでも100年前の一〜二クラス上の艦と撃ち合える。

 技術的な革新を図ろうと思えば、個々の文明の融合になるのだが融合は簡単ではない。

 また、依存する度合いが大きくなると戦争で争奪戦になるか、戦争も出来なくなる。

 貿易商人や海賊は、こういった融合を独自に進めて成果を上げている。

 そして、新興独立惑星国家。

 地球連邦も過去にガミラスとイスカンダルの技術を融合。

 独自技術で昇華させて地球の技術体系を構築していた。

 「アルサ・ミエル、ガミラスの新型高圧直撃砲はいいですね」

 「ディンギルの収束ビームと合わせ、5パーセントほど向上です」

 「むふっ♪」

 宇宙空間でビームの威力が分散しないように収束ビームで包むのだが、

 ガミラス技術とディンギル技術との組み合わせが、たまたま良かったらしい。

 もっとも127mm連装高圧直撃砲で威力は、ソコソコで価格は、かなりのもの・・・・・

 水雷艇は、ガルマン・ガミラスのゲールZ型水雷艇と交換するが、

 無人戦艦ヤシマのコントロールシステムが場所をとって3艇しか装備できない。

 無人戦艦ヤシマの格納庫は小さく、

 貴重品の輸送業か、大船団の護衛でもやらない限り採算は合わない。

 地球の輸送艦でも購入し、

 まっとうな貿易商人という道もあったのだが有名になりすぎていた。

 賞金首のリストから外れても海賊アルサ・ミエルを討ち取って、

 名を上げようと考える海賊も増えている。

 これでは、怖くて、まっとうな貿易商人もできない。

 また、まっとうな貿易商になると、

 機密漏洩の恐れありと暗殺者が送り込まれてくる可能性もあったり、

 毒を喰らわば皿まで、である。

 一度、ヤクザなレッテルを貼られてしまうと、

 そこから抜け出せなくなってしまうのが世の中といえる。

 現実に大規模宇宙船団の護衛を請け負って、貴重品がヤシマに積み込まれている。

 何のことはない。

 弱みを握っているガルマン・ガミラスの官僚が、

 地球までの行程でアルサ・ミエルに護送業を組み込んでいた。

 これは、口に出さなくても “頼むよ” であり。

 こっちも “わかっているよ” である。

 バリバリの癒着構造で持ちつ持たれつの世界は、銀河の隅々まで広がっているのか。

 適度に腐ってやがる。と言えなくもない。

  

  

 ガルマン・ガミラス工廠の喫茶店。

 アルサ・ミエルはティラミスで上機嫌だった。

 ・・・・・雑誌を見て、顔色が変わり・・・・真っ赤になって・・・・・震え始める。

 「・・・・・・・」

 「・・・どうしたんです。アルサ・ミエル?」 ガードベルト

 「・・・な、なんでもない・・・」

   

  

 ガルマン・ガミラス宇宙航行管理局

 「ハウゼン局長・・・どうして、海賊アルサ・ミエルに護送を頼んだりするんですか?」

 「・・・途中で “悪さ” されたら困るだろう。護送船団の護衛なら割安だよ」

 「はぁ・・・」

 「州警察と途上の開発惑星の有力者も “アルサ・ミエルを寄港させないでくれ” と嘆願がきている」

 「あはは・・・・」 脱力

 モノは考えようで、これが事実だったりするのだから口実だけは尽きない。

  

  

 ガルマン・ガミラス帝星

 雑誌本社・印刷所が突然、吹き飛ぶ。

 サイレンが鳴り響き。

 警察と救急、消防のスカイボートが集まってくる。

 アルサ・ミエルは、公園の高台に登ってくる黒猫を抱える。

 「・・・良くやったわね。ジジ」

 にゃ〜ん。ゴロゴロ。

 アルサ・ミエルがゴシップ記事に火をつける。

 絵は、アルサ・ミエルが地球連邦軍 完全武装の一個中隊を壊滅させて立っている。

 問題なのは、立っている方も、倒されている方も裸ということだろう。

 年頃の娘にとってはショックなことでネット上は、軍で使うような追尾破壊ウィルスを送り込んでいる。

 おかげでガルマンガミラス本星どころか、

 ガルマン・ガミラス帝国全体にウィルスの被害が及ぶ。

  

   

 衛星アマテラス

 元ガミラス高速空母 “ホウショウ”

 直径(円盤部)150m、全長(十字部)300m。

 40mm迎撃砲12門。コスモドラゴン40機。

 ガミラス時代の遺物で地球連邦に捕獲されていたものだった。

 打撃艦隊は、無人コントロールシステムでも良いのだが空母だとそうもいかない。

 円盤型は、反重力推進エンジンの加速がメインで噴射ノズルがなく、

 転移に至るまで時間もかかる。

 この種の艦艇が少ないのは機動性より、

 加速性が有力視されているからといえる。

 しかし、艦体質量比で噴射エンジンを省ける利点も少なくない。

 ドメラーズU世も、この種の艦種で戦術宙域に限定すれば機動性が高く、

 銀河系中央部の遊撃防御で有用といえる。

 「・・・・・・・・・」 ため息の藤堂

 「なんとも使いにくい艦艇ですね・・・」

 「アマテラスの防衛に限定するのなら悪くないね」

 「追撃や逃亡する時は困るが」

 「まぁ 敵艦に向かって突入しない逃亡しないのであれば」

 「艦載機で遊撃戦に徹することができるので高速空母は有効ですね」

 「高速空母というより。機動空母だな」

 「ですね」

  

  

  

 帝星ガルマン・ガミラス 警察省

 「・・・非常用発電装置が原因不明で爆発」

 「社長を含め死者36名。重軽傷者258名です」

 「ったくぅ バカなゴシップ新聞社があったもんだ」

 「海賊が法的手続きを取ると思っているのか」

 「秘密警察はアルサ・ミエルと仲間のアリバイを確認しています・・・」

 「傭兵にでも頼んだのでしょう」

 「まぁ 変に正義感の強い新聞社で上も煙たがっていたから好都合とはいえるがな」

 「毒を持って、毒を制す。ですか?」

 「事故で片付けておこう」

 「いいんですか?」

 「証拠があれば別だが・・・」

 「・・・事故にしましょう」

  

  

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香 です

 ディンギル水雷母艦の絵が欲しい。

 と最近、思うようになりました。

 アフリエイトにないようです。

 アルサ・ミエルも、いい加減、大型デストロイヤー(150m級)に乗り換えろよ、です。

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第22話 『修羅の・・・・』

第23話 『獅子身中』
  
登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図