Book Review 海外作家編
※レビュー点数の少ないものを一時的に置いてあります

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チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』
1) 早川書房 刊/四六判ソフト/本体価格1600円/2000年1月6日読了
2) 早川書房 刊/文庫版(ハヤカワ文庫NV所収)/

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(2000/1/7)


フィリップ・マーゴリン『葬儀屋の未亡人』
1) 早川書房 / 四六判上製(ハヤカワ・ノヴェルス) / 2000年1月15日付初版 / 本体価格1900円 / 2000年1月17日読了

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(2000/1/21)


クレイグ・ホールデン『夜が終わる場所』
Craig Holden "Four Corners of Night" / 近藤純夫・訳

1) 扶桑社 / 文庫版(扶桑社ミステリー) / 2000年3月30日付初版 / 本体価格781円 / 2000年6月5日読了

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(2000/6/5)


ビル・プロンジーニ『凶悪』 -「名無しの探偵」シリーズ(22)-
Bill Pronzini "Hardcase" / 木村二郎・訳
1) 講談社 / 文庫版(講談社文庫) / 2000年6月15日付初版 / 本体価格762円 / 2000年6月20日読了

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(2000/6/21)


ジョン・バーナム・シュワルツ『夜に沈む道』
John Burnham Schwartz "Reservation Road" / 高瀬素子・訳

1) 早川書房 / 四六判ハード(ハヤカワ・ノヴェルス) / 2000年9月30日付初版 / 本体価格2000円 / 2000年11月20日読了

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(2000/11/20)


ジェニファー・イーガン『インヴィジブル・サーカス』
1) アーティストハウス / B6判ソフト(BOOK PLUS所収) / 2000年8月30日付初版 / 本体価格1000円 / 2001年8月24日読了

 アメリカで出版されるや忽ち各書評に絶賛された、女性作家の第一長篇。キャメロン・ディアス主演にて映画化され、2001年夏に日本でも『姉のいた夏、いない夏』という邦題で公開されている。

[粗筋]
 1970年末、フェイス・オコーナーはイタリアで死んだ。自殺だった。難病に冒され早逝した父が三人の子供達に遺した五千ドルを元手に、恋人と共にヨーロッパを巡り、イタリアの地で突如フェイスは自ら命を絶った。快活で向こう見ずで不死身のような存在だった姉、憧れ羨むしかない存在だった姉の突然の死は、フィービ・オコーナーを強く束縛し続けた。1978年、父の遺産を元手に立ち上げたパソコン会社で成功を収め独立した兄・バリー、父の死から時間を経て新しい恋を手に入れようとしている母、ただひとりフィービだけが自分の未来さえ信じられず、過去の記憶だけを頼りに漫然と日々を過ごしていた。母と仕事、それに恋人との関係について諍いを起こしてしまったことを契機に、フィービは家を飛び出した。父の遺した五千ドルと姉が旅先から送り続けた絵葉書とを頼りに、フィービは姉の痕跡を辿る。姉が自殺した理由を知るために。
 ロンドン、アムステルダム、ナミュール、ディナン、パリ――たった一人の旅はフィービの心にフェイスの記憶と存在を否応なしに思い起こさせ、また行く手も平坦ではない。理由もなく探し歩くうちに縋った僅かなドラッグがフィービの胸中にある闇をより深くする。憔悴しながら訪れたミュンヘンで、だがフィービは思いもかけない人物と巡り逢った。フェイスの恋人であり、旅を共にした筈の青年、ウルフ。二人の出逢いが、フィービに姉の死の真相を齎そうとしていた――

[感想]
 上記のように映画化され、鑑賞に先駆けて原作を読んでおこうとしたのだが多忙のため読み終わるときには上映終わってました。悲しい。
 それは兎も角本書、非常に均整のとれた青春小説である。死んだ誰かを辿る旅、その過程を通して成長していく若者、というニュアンスはもう何万回も繰り返されたであろうが、本編は七十年代、学生達の思想闘争がなし崩し的に終局を迎え、それぞれが凄惨な現実の前に膝を屈しつつあった時代に死んだ姉の痕跡を、数年して大人になりつつある妹が辿るというシチュエーションに当て嵌めている。この、当時幼い子供だった妹が、成長してから当時の姉の記憶を辿る、という微妙なニュアンスが着眼。それを、よく練り込まれたプロットと独特の鋭さを備えた表現で綴っており、自殺した姉の幻影に取り憑かれた妹、という陰惨なテーマを設定しながらも煌めくような印象を与える。結末にしても、旅を完結させたが故の救いも変化も一見ないけれど、確かに冒頭とフィービの感情が異なっているのが解る。
 突出してはいないが、そのツボを押さえた描きぶりに確かな原石の魅力を感じさせる一篇。ちなみに、ミステリではありません。ホワイダニットのような雰囲気があるが、根拠が提示されていないから違います。それでも、文学と呼ぶよりはエンタテインメントと呼ぶべきだろう、賞賛として。

(2001/8/24)


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