2001年11月18日の日常

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中島みゆき2001年度コンサートツアー
XXIc. 1st.
in Keio

(慶應義塾大学三田祭前夜祭)

2001年11月18日(日)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20011111~.htm#Day18
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Special/20011118.htm (このファイルへの直リンク)

(当日の日記本文より続く)

 午後一時半頃、会場である慶大日吉キャンバス着。開場そのものは午後四時となっているのだが、座席を決めるための抽選が一時から三時ぐらいの間に行われるとのことで、若干早めに足を運んだというわけ。制服姿の高校生が目に付くが、彼ら彼女達の目的地は同じ敷地内の高校らしい。にしても何故制服だ、と呟いていると同行した楽志さんは「記号でしょう」。……まあな。二・三匹回収しようとか反対に潰して帰ろうと思ったことは秘密だ。
 それにしても、素人とはいえどうも手際の悪さが目立つ実行委員達であった。キャンバス入口までは車道が真ん中に一本、その左右に銀杏並木を挟む形で舗道が続いているのだが、実行委員の法被を纏った若者が盛んに「搬入の車が利用しますので、車道を歩かないでください」と請うている。言われて守らないのも言語道断だが、守られないのも道理で、抽選のために入口外から見て左手の舗道は敷地内に入れない格好なのに、その事実が途中まで来ないと解らない仕組みになっている。長い敷地内までの道の前と後ろの双方に看板でも立てておけば済む話だろうに、いちいち口頭でだらだら説明するから違反者が絶えないのだ。更に、今回のコンサートは在学生のみ安価で見られるのだが、一般入場者と学生と、抽選に並ぶ列の長さが全く違うのにそれを最後尾の看板などで明示せず、いちいち説明する羽目に陥っているのも、どうしようもなく素人っぽい。
 抽選を終えたあと近辺でCD屋を覗いたり一息吐く場所を探したりと右往左往しながら時間を潰し(休む場所は見つからなかった……)、午後三時四十分頃に再び銀杏並木を通る――まだ抽選の列が続いていた。既に記念講堂の前には開場待ちの列が出来ており、そちらの最後尾に付く。当初の開場時刻午後四時を過ぎても、抽選の列が途切れる気配はなく会場の門が開く様子もない。あちこちで無為に彷徨く法被姿を目にするたびに苛々が募った。実際に開場待ちの列が動き始めたのは午後四時二十分頃。
 座席は木製で座り心地の良くない折り畳み椅子、しかも人が詰まったらなかなか抜け出せない程に座席の間隔がない――のはまあ仕方ないだろう。しかしなかなか抽選・入場の手続が終わらない様子で、結局最初のベルが鳴ったのは午後五時十分、本番のベルが鳴ったのはそれから五分後のことだった。

1, Introduction(月迎え)〜あした
 順次登場するミュージシャン達、そのバックに流れているのは最新アルバム『心守歌』より『月迎え』。みゆき嬢の登場でそのまま入るのかと思いきや、途中からメロディは代わって泣き顔で有名な『あした』(シングル『あした』、アルバム『夜を往け』)に入る。白いひらひらとした衣裳を舞わせつつも歌声は相変わらず朗々と力強い。
MC1――内容のメモを取らなかったので記憶が薄い――久し振りの学園祭であること、舞台の広さに対して会場の横幅がありすぎることに触れていた気がする。
2, 船を出すのなら九月
 短めのMCに続いて、意外に古く渋めの一曲。アルバム『生きていてもいいですか』より。
MC2――ふつーのコンサートの延長で構わないとか会場も立派なコンサート会場だとか言われていた、騙されたという話。何処まで本気で本当なのかは不明だが、現地スタッフがピチピチの女子大生でコンサートスタッフが喜んでいたのも、みゆき嬢ら女性陣が「んじゃ自分達の楽屋にもピチピチの男子学生がっ!」と弾んで行ってみたらいつものマネージャーが普通にお茶を入れていた、というのも多分本当だろう。
3, 悪女
『プロジェクトX』しか知らないかも知れない客が多いことを配慮して、というコメントのあとに来たのはみゆき嬢初期の大ヒット曲。プロジェクトX関連で来ないのは「帰っちゃうから」というのには流石に笑った。シングルとアルバム『寒水魚』とで異なるヴァージョンが収められているが、シングル寄りのアレンジとなっていた。但し、迫力も説得力も五割増し。
MC3――多いなあMC。開演ベルの話。コンサート会場ではスタート5分前と直前と二回ベルを鳴らす。ごく一般的なコンサートでは一回目のあともざわざわと雑音が残り、二度目で漸くしんと静まり返る。が、みゆき嬢のコンサートでは何処へ行っても最初のベルで水を打ったように静まり返る。そのあとが長い長い。が、今日は初回のベルでもざわめきが鎮まらなかった、そのことにスタッフ一同感動した、という考えてみると妙な話であった。
4, 狼になりたい
 歌詞の内容が具体的なもの、という前置きに続いてアルバム『親愛なる者へ』収録のちょっと通好みの名曲。オリジナルはフォーク界を支えた名ギタリスト・石川鷹彦の編曲だが、キーボード中心のコンサートに合わせて印象がかなり異なる仕上がりになっていた。しかしそれ以上に痛感させられるのは、中島みゆきのシンガーとしての成長ぶりである。原曲もその生々しさに締め付けられるほどであったが、今回の演奏ではサビのビブラートに思わず共鳴から涙ぐみそうになるほど。
MC4――多いぞやっぱり。前の曲は一人称が「俺」であったが、日本では斯様に女性が男性の一人称で男性の感情を歌うことは普通なのに、昨今みゆき嬢がレコーディングのたびに訪れるアメリカなどではあまり当たり前のことではなく説明に苦慮する。というところで、等身大の女性としての楽曲にスライドする。
5, わたしの子供になりなさい
 同名アルバムより。母が子に囁きかけるような柔らかなヴォーカルだがその実母性から訴えた痛切なラヴソング。だいたいこの題名は要するに『Be My Baby』だし。
MC5――中島みゆきにはふられる歌が多い、という話。メモがこれしかないので詳しい内容が思い出せませんが、ここから『悪女』同様初心者サービスの選曲に繋げる。
6, 空と君のあいだに
 近年のミリオン・ヒットのひとつ、『家なき子』の主題歌としてシングル発売、その後アルバム『LOVE OR NOTHING』で別ヴァージョンが発表されている。今回のアレンジは初心者サービスということもあってかシングルヴァージョン。生で聴くとサビがより切なく響く。
MC6――実は深川、中島みゆきの通常コンサートは初体験。なので、こういう企画があることも知らなかった『ここにいるよ』のコーナー。会場の観客から予めそれぞれの素性・参加に際しての出来事などについてアンケートを募り、前の曲までに構成作家が仕分けして何枚かを紹介するという一幕。暫く歌はないのでだらけてください、と言いながらかく言うみゆき嬢が壇上でぐでー。メモに留めた内容は「プロジェクトXで興味を持って参加した」、「道に倒れて誰かの名を呼び続けたことがありますか(『わかれうた』の一説)――その通りのことを昨年やった。その時の相手と一緒に聴きに来た」ちなみにこの時みゆき嬢の呼び掛けに応えたのは野太い男の声だった、「病院抜け出してきました」、「娘が早大生です」、「学生証を忘れてきたために差額を払う羽目になった(学生は一般の半額)」、「スタッフの照明の女性が格好良くて、それに憧れて照明を目指すことに決めた」。
7, 成人世代
 アルバム『臨月』より。若者たちの失望を歌った曲。この場でこの位置でこういう曲、というのが絶妙で強烈なインパクト。
MC7――『ここにいるよ』続き。通常コンサートの場合はここで真面目極まる投稿を紹介するらしいのだが、どこか脳天気な大学側スタッフの投稿紹介でちょっと温めな雰囲気で締めくくられた。
8, 帰省
 2000年発売のアルバム『短篇集』より。年に二度の帰省の時、不意に優しさを取り戻す人々の表情を歌う。言葉に合わせて何処へともなく優しい眼差しを向けるのが印象的。
9, ホームにて
 初めて(!)MC抜きでもう一曲、こちらはアルバム『あ・り・が・と・う』に収録され、そののちシングル『わかれうた』にもカップリングされた、『帰省』以前の帰省をテーマにした、こちらもまた優しい一曲。『帰省』では情景を傍観する者の想いが綴られているのに対し、こちらはどちらかと言えば当事者、それも故郷に戻るその瞬間を叙事的に歌ったもの。みゆき嬢自らギターを爪弾く。
一時退場衣裳変更――舞台が暗転し、奥からみゆき嬢が退く。ややあって会場に雨音が響き始める――ファンならばこの時点で次の曲が予想できる。
10, 囁く雨
 雨音を裂くように歌声が響き、最新アルバム『心守歌』の冒頭を飾るこの曲へ。白い衣裳から情熱のように赤い衣裳に変わっている。
MC8――黒のイメージがあるからちょっと趣を変えて赤に、という話から、次の二曲をコーラスとの共演でお届けするという話。
11, 夢の通り道を僕は歩いている
 男性コーラス(宮下文一)とのハーモニーが印象的な、アルバム『短篇集』収録曲。マイクに向かいながら文字通り歩くように手を振っていた。自分のペースで歩いていく様を、珍しく明るいタッチで描いた曲。
12, あのバスに
 代わってこちらは女性コーラス(坪倉唯子……だと思ったんだけど……)とのハーモニー、但しこちらはロック調で『心守歌』収録。誰しもが感じる種類の焦りを、バスに喩えているのだ。
(2001/11/20追記:杉本和世という指摘がありましたのでお詫びして訂正いたします)
MC9――今回は歌詞がちゃんと合ったという話。続いて、今回のコンサートツアーが『短篇集』『心守歌』という二枚のアルバムに基づいていることから、ふたつのアルバムジャケットがどうして似たようなコンセプトになっているのかについて。馬は、通りかかったんだそうだ、たまたま。
13, 樹高千丈 落葉帰根
 引き続き『心守歌』より、但し初出は2000年末の夜会『ウィンター・ガーデン』。流浪と孤独の悲しさ木の枝と幹の距離と喩えた歌。題名は難しいが、と断ったとおり、その真情は寧ろ素直に表現されているのである。
14, LOVER'S ONLY
 アルバム『心守歌』のトリを飾る、珍しいクリスマスソング。舞台でも、それまで隠されていた電飾が点されムードを盛り上げる、が流行歌としてのクリスマスソングの例に漏れず、歌っている当人は独り身なのである。曲調も演出も華やかだが、それ故に際立つ寂しさ。
15, 夜行
 今日ただ一度の三曲連続、こちらも『心守歌』より。日の当たらない場所を往き密かに泣いている人々について。『ホームにて』に引き続きギターを取り出すが、今度は爪弾くというより掻き鳴らすという風情。エンディングでバンドメンバーの紹介、殆どレコーディングスタッフと同一という豪華さに驚く。
MC10――あの事件以来、ツアーの最後に同じ言葉を紡いでいるのだろう。非常に芝居じみた、けれど切実な訴えと共に本編最後の歌へと移る。
16, ヘッドライト・テールライト
 シングル『地上の星』両A面曲であり、『短篇集』にも同じヴァージョンで収録されている。行き交う車のライトが果てない旅に不安と希望とを暗示する。森々とエンディングを奏でる中、ミュージシャン達が順次退場していき、本編の幕が下りる。
アンコール1, 地上の星
 鳴りやまぬ拍手に応えての再登場、今度は薄青い(照明の効果かも知れないが)衣裳に着替えて『プロジェクトX』絡みのもう一曲。同じ地平にあって光に気付くことのない星を求める歌――番組の要請に応えて詞を書いたのだろうか? 間奏のさなかに舞台右、中央、左と移動してそれぞれの観客席に頭を垂れるみゆき嬢。
アンコール2, 月迎え
 再びミュージシャンの大半は退場、キーボード兼バンドマスターの小林信吾氏が打ち込みと録音済み音源に合わせて演奏し、みゆき嬢は傾いた舞台に寝そべるように歌う。そうして舞台は静かに、本当の幕を降ろすのだった――

 コンサートそのものは大満足。別口で通常のコンサートへのお誘いも受けており、諸般事情から悩んでいたのだがこれならもう一回見ても損はない。但し、帰途にもアンケートなどで事後に反映しようという意志の見られない三田祭実行委員の姿勢には、正直呆れました。余程好きなアーティストが、しかも独自のメニューで舞台に立つとでも言わない限り、来る気にはなれないでしょうこの様子では。

(2001/11/18)
(2001/11/19 やや修正)


「若おやじの日々」への感想はこちらからお寄せ下さい。深川が空を飛びます(飛ばねえって)
……また行こうかな、コンサート。

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