cinema / 『チャーリーと14人のキッズ』

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チャーリーと14人のキッズ
原題:“DADDY DAY CARE” / 監督:スティーヴ・カー / 製作:ジョン・デイヴィス、マット・ベレンソン、ウィック・ゴッドフリー / 脚本:ジェフ・ロドキー / 製作総指揮:ジョー・ロス、ダン・コルスレッド、ハイディ・サンテリ / 撮影監督:スティーブン・ポスター、ASC / プロダクション・デザイン:ガレス・ストーバー / 編集:クリストファー・グリーンバリー、A.C.E. / 衣装デザイン:ルース・カーター / 音楽監修:スプリング・アスパース / 音楽:デヴィッド・ニューマン / 共同製作:ジャック・ブロドスキー / 出演:エディ・マーフィ、ジェフ・ガーリン、スティーヴ・ザーン、レジーナ・キング、アンジェリカ・ヒューストン、カーマニ・グリフィン、マックス・バークホルダー、ヘイリー・ジョンソン、フェリックス・アキル、シェーン・パウメル、アーサー・ヤング、エル・ファニング、シーザー・フロアズ、ジミー・ベネット / 配給:UIP Japan
2003年アメリカ作品 / 上映時間:1時間32分 / 字幕翻訳:石田泰子
2003年12月20日日本公開
公式サイト : http://www.uipjapan.com/charlie/
試写会@有楽町よみうりホールにて初見(2003/11/29)

[粗筋]
 チャーリー・ヒントン(エディ・マーフィ)は食品の企画製作に携わるエリート・サラリーマンだった。友人のフィル(ジェフ・ガーリン)と共に最近新たに創設された自然食品部門の責任者となり、ようやく発表段階まで漕ぎ着けた新製品のために東奔西走する毎日。愛する息子ベン(カーマニ・グリフィン)と遊ぶ時間も取れず、弁護士への道を歩みつつあった妻キム(レジーナ・キング)は世話と家事のために仕事に就くことも出来ない。
 四歳になったことを契機にキムは、ベンを保育園に託して仕事に出ることを決めた。エリート育成を目的とし、入園早々から机に貼りついての受験勉強を進めさせるチャップマン保育園の方針に疑問を抱くチャーリーだったが、説明会の日を境にそんなことに構ってもいられなくなる。何故なら、準備を進めていた新製品が対象である子供達の試食会で不評を浴び、自然食品部門そのものが解体されてしまったからだ――つまり、チャーリーは職を失ってしまった。
 はじめは呑気に構えていたチャーリーも、六週間経ってもまだ就職先が見つからないことに焦りを覚える。と同時に、キムの駆け出し弁護士としての収入しかあてに出来なくなった今、切りつめられるものは徹底的に切りつめないといけなくなった。最初に問題となったのは、チャップマン保育園の法外とも言える保育費。早速ヒントン夫妻は別の保育園を探すが、まともな保育園は近所に一つもない。しばし途方に暮れたチャーリーだったが、公園で親しくなった若い母親との会話を契機に、起死回生の策を思いつく。
 数日後、チャーリーはやはり解雇されて無職になっていたフィルと共に、“Daddy Day Care”――“パパの保育園”を開業した。もともと三人暮らしにしては広すぎるチャーリーの自宅一階を施設代わりにして、近所の子供達を預かろうというものだった。
 子供の世話ぐらい簡単だ、と高をくくり意気軒昂にことに望んだふたりだったが、無論子供達、しかも七人も集まれば一筋縄ではいかない。しかも最初にやって来た子供達はひとり残らず変わり種だった。フィルの息子でトイレの始末がまるで出来ないマックス(マックス・バークホルダー)、大人に対して攻撃的なクリスピン(シェーン・パウメル)、ちゃっかり者でお金がないと動かないディラン(フェリックス・アキル)、ヒーローのフラッシュを気取って常にコスプレ状態のトニー(ジミー・ベネット)、理解不能の言葉を話すニッキー(アーサー・ヤング)、ママに持たされた携帯電話で信じがたいところと連絡を取るプチ・セレブのジェイミー(エル・ファニング)、紙だろうとなんだろうと手当たり次第口に放り込むショーン(シーザー・フロアズ)、いちいち言うことのおませな見習い教授ベッカ(ヘイリー・ジョンソン)……制御不能の子供達に、まるでノウハウのないチャーリーとフィルは悪戦苦闘。フィルは早くも匙を投げようとするが、チャーリーは諦めなかった。
 奮闘の甲斐あって、次第に保育園の経営は軌道に乗り始めた。子供達の要望に耳を傾け、楽しく開放的な経営方針を選んだことで、子供達と共に父母たちの信頼をも勝ち取っていったのだ。だが、彼らによってわずかとはいえ子供を奪われていったチャップマン保育園のハリダン園長(アンジェリカ・ヒューストン)がそれを快く思うはずもない。彼女は早速児童福祉局に法令違反の恐れがあると通報した。
 突然訪れた調査員に驚かされたものの、完全にやる気になっていたチャーリーたちは指導項目に即刻対応した。子供の増加に合わせて、たまたま訪れたかつての同僚マービン(スティーヴ・ザーン)を保育士として招き入れ、父親たちによる保育園“Daddy Day Care”はいよいよ盤石の体勢を整えた、かに見えたのだが……

[感想]
 美しき予定調和です。
 大筋にこれといった意外性はない。ごくありきたりの紆余曲折を経て、(一部を除いて)みんな幸せになりましためでたしめでたし、という話。窮地に追い込まれた主人公たちが優れた機転を見せたり、終盤に思いがけない大どんでん返しがあるというわけでもなく、どちらかというと安易な話運びが最後まで続く。
 が、その安易さが齎す「安心感」こそが本編の存在意義だ。紆余曲折があっても、きっと彼らは不幸にならない、爽快な結末にたどり着くに違いない、という確信が、変な堅苦しさや緊張感を抜きに、リラックスしたひとときを味わわせてくれる。
 また、登場人物の個性が掴みやすいのも、安心感を高めている。野心があって常にポジティヴなものの見方をするチャーリー、やや悲観主義的だがチャーリーに信頼をおく相棒フィル、スタートレックおたくの変わり者マービン、彼らに敵対する保育園のエリート主義まっしぐらで如何にもヒステリックなハリダン園長、そしてチャーリーのもとに集う問題児たち。みな一目でどんなキャラクターなのか把握でき、最後まで基本的に変わらないので妙な混乱をすることがない。一方でさりげなく子供達の成長を描くことも忘れていない。
 何よりも評価するべきは、どんな年代が鑑賞しても問題なく楽しめるという点だ。子供達がメインになっていることを配慮して、基本的に台詞は単純明快、字幕にあまり頼らなくても、一定の英語力があれば理解は難しくないし、ギャグもシンプルで非常に身近なものになっている。また、あからさまな暴力行為や、あまり綺麗とは言い難い描写はすべて直接には見せていないことにも注目したい。単純にそうした問題に口喧しい人々に配慮したものとも取れるが、そうした婉曲表現がそのままウィットの役割を果たしており、ただの「子供騙し」に終らせていない。大人の鑑賞にもじゅうぶん応えられる仕上がりとなっているのだ。
 強いて言うならば、実際にハリダン園長の唱えるような英才教育を信奉しているような向きには信じがたい、腹立たしいだけの内容だろうと思われる。が、そういう方にはそもそもこうした単純明快な娯楽自体が不要なのだろうから、はなから劇場に足を運んだりはするまい。それ以外の人にとって、体も頭もリラックスして鑑賞していられる、安心の一本である。お疲れの皆様にも最適かも知れない。エンドクレジットと一緒に流れるNGシーンまで、たっぷりと寛いで御覧ください。
 なお、スタートレックの知識があるともっとディープに楽しめるかも知れません。私ゃ門外漢なのでよく解りませんが。

 試写会での鑑賞だったため、プログラムなどといった詳しい資料が入手できませんでした。チラシは貰ったものの、そこに書いてあるのは極めて簡単な粗筋と、大人の主要キャストの名前だけ。どーしてエディ・マーフィとともに作品の核を形作る子役たちの名前も記してくれないのか。この中に将来大成する人材がいるかも知れないのに。
 なかには、『I am Sam』で並大抵でない才能を見せつけた少女ダコタ・ファニングの実の妹というのもいたらしいが、それが誰であるのかも確認できず(たぶん、公式ホームページなどをよく見ればどこかに書いてあるのだろう、とは思うが)。尤も、子役ひとりひとりの台詞は数える程度で、いずれもダコタ・ファニングに匹敵するような光芒は放っていなかったのだけど。

(2003/12/01・2003/12/20追記)


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