cinema / 『オーシャンズ12』

『cinema』トップページに戻る
『light as a feather』トップページに戻る


オーシャンズ12
原題:“Ocean's Twelve” / 監督:スティーブン・ソダーバーグ / 脚本:ジョージ・ノルフィ / 製作:ジェリー・ワイントローブ / ジョージ・クレイトン・ジョンソンとジャック・ゴールデン・ラッセル考案のキャラクターに基づく / 製作総指揮:ジョン・ハーディー、スーザン・イーキンズ、ブルース・バーマン / 撮影:ピーター・アンドリュース / 美術:フィリップ・メシーナ / 編集:スティーブン・ミリオン,A.C.E. / 音楽:デイヴィッド・ホルムズ / 衣装:ミレーナ・カノネロ / 共同製作:フレデリック・W・ブロスト、 / 出演:ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ドン・チードル、バーニー・マック、ジュリア・ロバーツ、ケイシー・アフレック、スコット・カーン、ヴァンサン・カッセル、エディー・ジェイミソン、カール・ライナー、エリオット・グールド、シャオボー・クィン / 配給:Warner Bros.
2004年アメリカ作品 / 上映時間:2時間5分 / 日本語字幕:菊地浩司
2005年01月22日日本公開
公式サイト : http://www.oceans12.jp/
丸の内ルーブルにて初見(2005/01/15)※先行レイトショー

[粗筋]
 ラスベガス・ベネディクトのカジノ襲撃事件から約三年。幸せ……かどうかはともかく、手にした大金を元手にそれぞれの生活に舞い戻っていた仲間たちに、突然あの日のツケが廻ってきた。
 首謀者のダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)はカジノ王のベネディクト(アンディ・ガルシア)から金もろとも奪ったかつての妻テス(ジュリア・ロバーツ)とともにコネティカット州でいちおうは真っ当なふりをしつつ、しかしかつての“仕事”に未練たらたらな暮らしを送っていたが、そんな彼の前に突如ベネディクトの使者が現れる。かつて自分から奪った金を利子付きで返せ。期間は二週間、それを過ぎたらお前たちの命は保証しない――
 同様の使者は他のメンバーの前にも送られていた。ホテル経営に乗り出すも四苦八苦していたラスティー・ライアン(ブラッド・ピット)、放送禁止用語を切り刻まれて聴くに堪えない音楽を前に頭を抱えていたバシャー・ター(ドン・チードル)、先の強奪計画の成功に気をよくして後進の育成に力を注いでいたというライナス・コールドウェル(マット・デイモン)――一堂に会した彼らは総額1億9000万ドルに達する金を返済するために、ふたたび共同作業に乗り出す。しかし、既に悪名の轟き渡ったアメリカでの仕事は難しいと判断し、ラスティーの提案によって一同はまずアムステルダムに赴いた。
 地元の案内役であるマツイ(ロビー・コルトレーン)の助言により、セキュリティ万全のビルに隠棲したバンデルバウド(ジェローエン・クラッベ)の所有する由緒ある証文をまず奪うことに決めたダニーたちだったが、ベネディクトもかくやと思うほどの強固なセキュリティに加えて常に邸内にいるバンデルバウドの隙を窺って侵入することは困難に近い。外部との接続点がないサーバを停止させるために向かいのビルからケーブルを渡して細工するところまでは辿りついたが、角度が僅かにずれていて照準が合わない。アイディアマンであるはずのラスティーもなんとなく精彩を欠いている――万策尽きたか、と思われたところでようやくラスティーが大胆極まりない策を案出、辛うじて侵入に成功する。
 犯行の翌日、バンデルバウド宅の捜査にやって来たのはユーロポールの捜査官イザベル・ラヒリ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)。彼女は現場の痕跡から瞬く間に幾つかの事実を割り出した――犯行グループは犯罪史でも類例の少ない手段で計画を実行しており、ある程度犯罪史に明るいこと。だがその一方で、何らかの理由によって別の犯人によって先回りされたこと――先回りした犯人は恐らく、ナイトフォックスと呼ばれる怪盗であるということ。
 ナイトフォックスの正体はフランス・コモ湖畔に大邸宅を築く貴族フランソワ・トゥルアー(ヴァンサン・カッセル)富も名誉も兼ね備えた彼にとって犯罪は自己顕示欲を満足させるものであり、金額の多寡は問題ではない。だがそんな彼を目前にして、師匠である男はダニー・オーシャン一派を最高の盗賊と認めた。解散し現役を退いたという彼らを舞台に引きずり戻し自らと対決させるためにベネディクトを唆したのも実はこの男だったのである。間もなく自らの前に現れたダニーに、トゥルアーは勝負を持ちかける。自分が負けた場合、ベネディクトに対する負債をすべて支払うという条件で。期日まで既に一週間を切っているいま、ダニーに断る理由はなかった――

[感想]
 前作でさえ冗談のような豪華キャストだったのに、キャサリン・ゼタ=ジョーンズとヴァンサン・カッセルという新しいスターを呼び寄せ、更にとんでもないゲストをノンクレジットで出演させている本作、もう話や映画としての出来を云々する以前に映画好きなら一度観ておいて損はない。こんな豪華な面子がひとつの画面に一度に映っているところなんか、そう何度もお目にかかれるものじゃありませんから。
 前作にしても、出演者それぞれに見せ場を設けつつ如何にラストでひっくり返すかに拘りすぎたため、お遊びが過ぎて強奪計画自体が採算割れを起こしているように見えるという欠点があったが、本編は更にその点、度を過ごしている印象がある。登場人物が言うとおり、もうアメリカでは活動の場が限られてしまうため、海外に標的を求めるのは致し方のないところだが、この人数で乗り出すほどの計画を予め用意していなかったためにかなり無理を感じさせる。どだいベネディクトの要求自体が無茶なのだが(あれに応えるためには同規模のカジノを襲撃する以外に方法はなかっただろう)、もし中盤でああいう展開がなかったらダニー・オーシャンたちはどうやって窮地を乗り切るつもりだったのやら、そちらのほうに興味を覚えてしまう。
 ひとつの襲撃を、キャラクターそれぞれの属性を活かしつつ描いてみせた前作はいわゆる犯罪ものとしてそれなりに面白い出来だったのだが、本編はキャラクターの特質を活かす場面がほとんどなかったのもいささか物足りない。チームのなかでもひとつ格上として設定されているダニーにラスティー・ライアン、比較対象としてヘタレっぷりが強調されているライナス、特殊工作のプロとしての見せ場があるバシャーあたりはともかく、他のキャラクターは概ね作戦行動における活躍の場面がないのでいまいち勿体ない。前作ではいい味を出していた変装詐欺師ソール・ブルーム(カール・ライナー)も、今回は間抜けな役回りだった。
 では全体でトーンダウンしているのかというとさにあらず、前作で物語の呼吸を押さえ、出演者たちのチームワークが確立されていたお陰か、却ってストーリーラインに左右されることなく和気藹々としたムードと、随所でのコミカルなやり取りが際立っていた。新しいキャストであるキャサリン・ゼタ=ジョーンズとヴァンサン・カッセルはそれぞれメイン・キャストであるブラッド・ピットとジョージ・クルーニーが中心となって絡むことで作品の流れに自然に溶け込ませ、それ以外の箇所でメイン・キャストたちの軽妙なやり取りで魅せていく。前述のダニー&ラスティーの巧みな会話にどうしても混ざれないライナスの姿やどこに行っても口喧嘩ばかりのマロイ兄弟(ケイシー・アフレック&スコット・カーン)、何だかパッキングされるために参加したような軽業師のイェン(シャオボー・クィン)、などなど、事件とは直結しなくともそれぞれに楽しませてくれるポイントがあるあたり、犯罪映画としてはともかく、クライム・コメディという枠のなかでは実にツボを押さえているのだ。
 しかし本編を“観て損なし”と思わせている最大のポイントはクライマックスでの展開である。正直やりすぎだ、と思わなくもないが、これだけのキャストを揃え、出演者たちの友情関係だけで作品を盛り上げていくことが可能だったからこそ許される展開であり、開き直ったようにそれを実行に移してしまうあたりにはただただ感心する。しかもそこで混ぜっ返すためにあんなものを投入してくるのが更に凄い。
 物語はそこで終わることなく、最後の最後で犯罪ものならではのツイストをもういちど披露する。このくだり、もうちょっと事実関係を早めに仄めかすなどの伏線があれば更に活きてくるのでは、とミステリ愛好家としては残念なところだが、しかし如何にも映像の魔術師であるソダーバーグ監督らしいテクニックを用いていて、直前のサプライズほどではないもののなかなかの迫力がある。人によっては日本のとある名作ミステリを想起するはずだが――それはまあ、この映画の観客にあってはたぶん相当な少数派なので、触れる必要はないだろう。
 かなり現実離れした物語ながら、幾つものストーリーラインを同時進行させ、それを終盤のカタルシスまできちんとだれさせることなく引っ張っていく演出のスピード感、相変わらず癖のあるカメラワーク等々、ソダーバーグ監督の作家性もきちんと留めている。
 賞レースに絡むことはあり得ないだろうし、ストーリーの骨格に色々と難はあるが、それを百も承知のうえで自分たちが楽しみ観客も同時に楽しませよう、という気負いのない意気込みとでも言うべきものを感じさせる、痛快な一本。血がまったく流れていない点にも注目。

 ちなみに本編で個人的に敢闘賞を差しあげたいのはヴァンサン・カッセルでした。もともと好きな俳優でしたが、クライマックスを観て惚れ直しました。ていうか、本当に踊らされてどうするお前。

 本編は先行レイトショーで鑑賞したものだが、それに先駆けてプレミア上映が日本で行われ、併せてジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモンの三人の主要キャストが来日、記者会見などのキャンペーン活動を行った。
 だが、プレミア上映と前後して開催された合同記者会見にこそブラッド・ピットは現れたものの、他の個別会見は残るふたりのみが対応している。理由は直接語られなかったものの、来日の数日前に発表されたブラッド・ピットと妻ジェニファー・アニストンとの別居報告(文面を見る限り正式な離婚ではないように受け取れる)が原因であることは想像に難くない。
 合同記者会見の場でもジョージ・クルーニーが開口一番、「映画に関すること以外の質問は遠慮して欲しい」といった予防線を引いていたそうだが、個別の会見においてもクルーニーとマット・デイモンはその場にいないブラッド・ピットを冗談半分に揶揄しつつ真面目に気遣っているのが解り、本当に仲のいい様子が窺われた。クルーニーはあちこちで『オーシャンズ13』がある可能性を仄めかしているそうだが、この仲の良さから察するに、あながちリップ・サービスだけではないような気がする。
 ……舞台のひとつに日本が選ばれる、という話は眉に唾して聞いておいたほうがいいと思うけどね。

(2005/01/17))


『cinema』トップページに戻る
『light as a feather』トップページに戻る