cinema / 『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』

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パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
原題:“Pirates of Caribbean : Dead Man's Chest” / 監督:ゴア・ヴァービンスキー / 脚本:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ / キャラクター原案:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ、スチュアート・ビーティー、ジェイ・ウォルバート / 製作:ジェリー・ブラッカイマー / 製作総指揮:ブルース・ヘンドリックス、エリック・マクレオド、チャド・オマン、マイク・ステンソン / 撮影監督:ダリウス・ウォルスキー,A.S.C. / プロダクション・デザイン:リック・ハインリクス / 編集:スティーヴン・リフキン,A.C.E.、クレイグ・ウッド / 衣装:ペニー・ローズ / 視覚効果&特殊アニメーション:インダストリアル・ライト&マジック / 音楽:ハンス・ジマー / 音楽監修:ボブ・バダミ / 出演:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ビル・ナイ、ステラン・スカルスゲールド、ジャック・ダヴェンポート、ケヴィン・R.マクナリー、ジョナサン・プライス、ナオミ・ハリス、トム・ホランダー、リー・アレンバーグ、マッケンジー・クルック、デヴィッド・ベイリー、マーティン・クレッバ、デヴィッド・スコフィールド / 配給:BUENA VISTA INTERNATIONAL(JAPAN)
2006年アメリカ作品 / 上映時間:2時間31分 / 日本語字幕:戸田奈津子
2006年07月22日日本公開
公式サイト : http://www.pirates-movie.com/
TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2006/07/15) ※イベント先行上映

[粗筋]
 あの“ブラックパール号”を巡る冒険から3年。ようやく迎えた挙式の日、だが準備だけされたまま放置されたテラスには雨に濡れ憔悴するエリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)の姿があった。やがて、大勢の軍隊とともに現れた、花婿となるはずだったウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)の手首には枷が嵌められている。それどころか、彼らと共に登場した、かつてノリントン提督(ジャック・ダヴェンポート)の部下であり、今は東インド貿易会社の重役であるベケット卿(トム・ホランダー)は、エリザベスまでも拘束した。罪科は、国家への反逆者である海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)を逃がしたこと。
 やがてウィルひとりを呼び出したベケット卿は、罪を免除する代償として、ジャック・スパロウが持つ“北を指さないコンパス”を要求する。そのうえベケット卿はジャックに対して、国王の署名入りの書状を携えていた。船舶拿捕を公式に認める免状――つまり天下御免で海賊行為を許可するものだった。心の自由を望むジャックがそんなものを喜ぶはずはない、と思いながら、愛する女性を救うため、ウィルに迷う余地はなかった。事件後ジャックが取り戻した海賊船ブラック・パール号の行方を追うため、ウィルは東インド会社の影響が及ばぬ自由港トルトゥーガに赴き、噂を辿る。
 同じ頃、ジャックもまた危難に晒されていた。13年前、キャプテンになることを切望したジャックは海に囚われた魔物デイヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)と契約を交わし、ブラック・パール号与えられていた。かつての部下バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)の叛乱などで辛酸を舐めながら近年はようやく快適な海賊生活を楽しんでいたジャックだったが、忽然と現れたデイヴィの使者が、成算の時期が近いことを告げる。そしてジャックの掌には、死期を告げる黒丸が浮き出ていた。ジャックは深夜、船員たちを叩き起こすと、デイヴィ・ジョーンズが呪いのために手出しの出来ない陸地を目指して船を急がせる。
 ようやくブラックパール号の接岸した島を発見したウィルだったが、原住民に捕らえられ、ブラック・パール号の船員ともども絶壁に作られた檻のなかに閉じこめられてしまう。唯一ジャックは自由の身であったが、何故か原住民から“神”と解釈された彼は、その魂を肉体の軛から解き放つという理由によって焼き殺されようとしていた。
 すんでのところで危機を脱し、海賊たちと共にブラックパール号で大海原へと逃れたウィルは、ジャックに“北を指さないコンパス”を渡すよう懇願するが、ジャックはそれよりも、自分が捜している物を一緒に見つけ出す方がエリザベス救出には役立つ、と言った。ジャックが捜し求めているのは、ある宝箱を開くための鍵。
 ジャックに唆されるまま、ウィルは鍵の在処を探るためにジャックの元恋人でヴードゥ卿の預言者ティア・ダルマ(ナオミ・ハリス)のもとを訪ねる。彼女はその鍵が、他でもないデイヴィ・ジョーンズのもとにあることを告げる。ティアはお守りにと、デイヴィの踏み込めない陸の土を詰めた瓶を手渡した。
 かくして、ウィルはジャックの命じるままに、デイヴィ・ジョーンズの船に侵入する。そうしてそこで、思いがけない人物と出会うのだった……

[感想]
 そういうわけで、第1作と立て続けで最新作を鑑賞した。何せ1本でおよそ2時間半、合計5時間に及んで延々同じ椅子に座り続け、スクリーンを見つめていなければならないので、チケットを購入してしばらくは「早まったか?」という思いが禁じ得なかったが、結果的にこれは間違っていない楽しみ方だったと思う。
 何せ、随所に第1作のシチュエーションを転用したお遊びが盛り込まれているのだ。名場面や決め台詞を、微妙にアレンジしたり違う人物で再現したり、と実に細かく仕掛けてくる。この辺はさすがに3年前いちど観たきりだったり、自宅にて映像ソフトで漫然と観ただけでは把握しきれまい。そういうお遊びをほとんど拾い出せるのは、苦労をおして敢えて2本立て続けに観ていたからこそだろう。そして、そういう楽しみ方が出来る、観客のツボをよく弁えた作りがまず頼もしい。
 加えて、前作の評で指摘したアトラクション的な楽しさなどといった美点もあらかた完璧な形で踏襲している。冒頭こそ悲劇的でいささかシリアスだが、いざ冒険が始まれば徹底した常識外れのイベントが堪能できる。隔絶された島の原住民たちに捕らえられたジャック・スパロウとウィルを含む乗組員たちそれぞれの脱出と逃走が息をもつかせぬスピード感で描かれ、続いてはデイヴィ・ジョーンズたち海の怪人が神出鬼没、常識外れの戦いぶりを披露する。その見せ場のふんだんなこと、前作に勝るとも劣らない。
 特に終盤、水車を利用したアクション・シーンなどはその成り行きの滑稽さも秀逸だが、非常に複雑な撮影手法が想像される込み入った映像を作りあげていて見飽きない。改めて思い返すと撮影の際には相当な危険が伴ったように思われるが、それを過剰に意識させることなく、しかし程良いスリルを演出し、同時に随所で笑いを加味しつつクライマックスの大混戦を盛り上げている。このとき並行して、3人がたった2本の剣で多数の敵と戦いつつ逃走するという場面を織り込み、いつ果てるともつかないクライマックスを更に飽かせない工夫をしていることも重要だ。前作の大混戦をきっちり描き込んで支持されたことへの自信を窺わせる、力の入ったシークエンスである。
 前作の好評を受けてバジェットが増えたことと、本編の撮影時点で既に第3作の製作が決定、一部の撮影が並行して行われていたこともあって、舞台の拡がりや敵キャラの強力さが増している。ジャック・スパロウ船長の過去に深く関わり、その能力についても謎の多いデイヴィ・ジョーンズの存在感は驚異的ながら、この第2作のなかでは存分に描かれたとは言い難い。それは続編の存在が大前提となっているから、規模を思うさま拡張して温存することが出来たからと言えよう。
 それ故に、話はきちんと収まっていない。冒険は八方丸く収まった前作とは大違いの辛辣なラストを迎え、しかし衝撃的な展開と共に次作へと話を投げている。
 だが、そのわりに消化不良の印象を受けないのは、提示された冒険の内容にはひととおり片を付けているからである。ウィルがジャックの行方を捜してようやく未開の島に辿り着き、そしてジャックと共に命からがら脱出する。ジャックから鍵と宝箱探しを提示される。他方、エリザベスは自分のために我が身を犠牲にしようとしているウィルを捜し出す旅に出る。そうした一連の基本的な目的は達したのちの結末であるから、極めて痛烈な展開、決着だが不快感はない。ラストの意外性にしても、本編の出来事を引き受けつつ新しいステージを提示しているに過ぎないのだから、逆にモヤモヤとした印象を打ち消して爽快感に繋げる役割も果たしている。煽りすぎて本編の余韻を壊さず、しかしきっちりと次回作への興味を繋いでいる点、実に優秀な決着の付け方と言えよう。
 2時間半という尺は今日の主流からすると長めだが、しかしさながらジェットコースターに乗せられているが如く、飽きることなく最後まで満喫できてスッキリとした後味を残し、それでなおかつ次作も待ち遠しくなる実によく出来た作り。前作と違い、続き物となることが大前提となっているので、本来なら評価を保留するべきのようにも思うのだが、この見事な締め括りはそれ自体高く評価できる。完璧な娯楽大作ぶりである。
 この調子ならば、来年の夏に予定されている完結編もさほど不安を感じない。首を長くして待ちたい。

(2006/07/17)


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