cinema / 『RYAN [ライアン]』

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RYAN [ライアン]
原題:“RYAN” / 監督・出演:クリス・ランドレス / 出演:ライアン・ラーキン / 配給:KLOCKWORX
2004年カナダ作品 / 上映時間:14分 / 日本語字幕:金丸美南子
2005年09月17日日本公開 ※『NOTHING [ナッシング]』併映
公式サイト : http://www.klockworx.com/ryan/
シネセゾン渋谷にて初見(2005/10/13)

[粗筋]
 1968年に発表され、当時のアニメーション作家に多大な影響を齎した短篇『歩く』。その作者ライアン・ラーキンは現在、トロントでホームレスとなっている。アーティストの栄光と、彼らが最も恐れる凋落とをひとりで体現してしまった男に、現在若手アニメーターとして注目を集めるクリス・ランドレスが接触、インタビューを試みる……

[感想]
 2004年のアカデミー賞短篇アニメーション部門賞を獲得した作品であるが――なるほどこれは物凄い。失望や挫折を肉体の欠損という形でヴィジュアル化したアニメーション世界に、かつて国際的な評価を獲得しながらもわずか二作で製作の現場を離れ道端でチップを請うまでになってしまった男の作品をシンクロさせることで、その作品世界の華麗さと激しい失意とを二重写しにしている。ポイントはインタビュアーである監督自身の傷痕もまた同様に晒していることであり、インタビューの現場である何処かの安酒場らしきところに身を置く人々は等しくその欠落を晒し、画面の片隅に滑稽な姿をちらつかせている。
 主題となる対象を完璧に表現するために、アニメーションという手法を極限まで活用した、表現に淫しきった作品である、が――自らの身に起きた悲劇をここまで的確に描かれてしまったライアン・ラーキンも結構辛いものがあっただろうに。

(2005/10/13)


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