第2章 6:
「対ディアーザ戦隊 復活」



  レオンの爺さ・・・ 親父に言われた通り、勇者はマザレルナへ一旦戻ることにしました。
  「はて? 今更戻ったところで何があると言うんだろう・・・」
勇者はマザレルナに入り、あちこちを見て廻りました。スラックは相変わらず居ない
 ようです。で、レオンの居た部屋に行ってみると・・・ 「!!!」
  そこには3人の戦士たちが立っていました。勇者がカラッカを離れて以来の再会です。
  「これは勇者殿、お久しぶりでござる。」
  何故か、時代掛かった話し方をする、Lv. 59のロックル戦士(魔術師)が居ます。
  「これは、これは、久しぶりでんな。」
  妙な関西弁を使う、Lv. 59のキャックルモンク(商人)も相変わらずです。
  「お懐かしゅうございます。お元気でしたか。」
  唯一、まともな日本語・・・ いや、マックル語で話すLv. 58のフィンクル僧侶(鍛
 冶師)も元気そうです。
  4人はひとしきり再会を喜び合った後、戦士が自分たちのことを話し始めました。
  「勇者殿が町を出立されてから、拙者とモンク殿は『カラッカ』、僧侶殿は『フィン
 クルの里』で修行を致しておりました。そうしましたら、先程サイモンなる御仁が尋ね
 て参いられて、我等3人をテレポーテーションなる妖術でココへ送って下すったのでご
 ざる。あの方は何やら不思議な雰囲気をお持ちでござった。」
  「そうか・・・ サイモンは3人をずっと探してたんだ。だから、ラントには居なかった
 のか・・・ 」実は、リッパーからラントへワープで戻った時、勇者はレオンにもサイモン
 のことを訊いてみたのですが、「‘祠の跡’を出てから一度も姿を現していない。」と
 のことでした。
  戦士のあとに、僧侶とモンクが続けて勇者に言いました。
  「あなたのことは、サイモンさんからお聞きしました。復活したディアーザを追って
 らっしゃるそうですね。もちろん、これから私たちも連れて行って下さるのでしょう?」
  「そら、そうや。でなかったら、ワイら何のためにこないなトコまで飛ばされたんか
 わからんようになるわ。」
  勇者は笑って、こくんと頷きました。斯くして、魔王ディアーザを打ち破った、伝説
 のパーティーが復活したのです。

  勇者は3人を伴って、マザレルナ北の塔を囲んでいる堀の前に立ち‘ジャンプL’を
 唱え、堀を飛び越えると一路デリナダへと進んで行きました。
  『シェード』『ジャミー』『ちび悪魔』『埴輪戦士』といったモンスターが出現しま
 したが、伝説のパーティーに立ち向かえる筈も無く・・・
  「また、つまらぬモノを斬ってしまった・・・ 」というロックル戦士の決めゼリフを言
 わせただけでした。勇者も「久し振りに聞いたな・・・ 」と思いました。
  勇者たちがデリナダに入ると、マザレルナの弟子が言っていたようにスラックが彼等
 を出迎えました。ワープの行き先がまたひとつ増えて4ヶ所になりました。
  「随分と時間が掛かったようじゃのう・・・ 」だいぶ待たせてしまったスラックに、勇
 者がこれまでの経緯を話しました。「ディアーザがゴールデンマックルにのう・・・ その
 後、北へ飛んだんじゃな、いかん、それは急がねばならん。お前たち‘オスヤコディの
 洞窟’へ入って‘オスヤコディの鍵’を取って来るのじゃ。」
  「‘オスヤコディの鍵’ですか? その鍵で何を開けるのですか?」僧侶が尋ねると
 スラックは「デリナダで起きている問題」を説明しました。
  「お前たちがディアーザを倒して、洞窟からモンスターが消えよった。と同時にこの
 町の荒くれどもが一斉に洞窟に入りおったんじゃ。以前、お前達が入手した‘アサシン
 ダガー’‘いにしえの衣’‘サファイア’‘水門の鍵’以外にも、何やかやと色んなモ
 ンが出たらしい。じゃがお宝と呼べるようなモンがそう簡単に見付かるもんでもない・・・
 その内、お宝に有りつけんかった何人かが洞窟内を荒らし始めたんじゃ。」
  「そんなん、放っといてもよろしいちゃいまんの?」確かにモンクの言う通りなので
 すが・・・
  「それがの・・・ 腹立ち紛れに、よりによって‘水門’を閉めてしもうた奴がおるんじ
 ゃ。あの‘水門’は開けるのは大変じゃが、閉めるのはちょいと知恵の働く奴なら簡単
 にできるからのう・・・ 全く、お宝と‘水門’に何の関係が有るというんじゃ。」
  「愚かなことを・・・ 」僧侶がやれやれといった表情で呟きました。
  「では、今、『カラ』の町は孤立しておるということでござるか。」戦士が心配そう
 な表情でスラックに聞きました。‘デリナダ東の祠’の更に東にある水門を閉じると、
 水路が無くなり、水門の南にある『カラ』に行く為の唯一の移動手段である船が使えま
 せん。このままでは他の町とも交流ができなくなり、食料もカラに届かなくなってしま
 います。
  「カラだけじゃのうて、その南にある王国も影響を受けおる。」スラックの言葉に、
 思わずモンクが訊き返しました。「王国? そんなもん、おましたかいな・・・ 」
  「ラントと同様、ディアーザ討伐後に復興された国じゃ。どっちにしても水門を開け
 んことには行くこともできんわい。幸か不幸かディアーザが復活したおかげで、洞窟の
 中にもモンスターが出始めてのう、お宝探しの熱は一気に冷めたようじゃ。」
  「で、その‘オスヤコディの鍵’というのは洞窟のどこに・・・ 」僧侶の質問にスラッ
 クが答えました。
  「一番奥にあるらしいのじゃ。見付けた奴がおったらしいが、突然モンスターに出喰
 わして取らずに慌てて逃げ出したらしい・・・ 恐らく‘オスヤコディの鍵’なら水門も開
 けられるじゃろう。おお、そうじゃ洞窟内にディコスがおるぞ・・・ 」
  「ディコスでっか?」またモンクが訊き返しました。
  「わしから‘白い鍵’を盗んで洞窟に逃げおった。あの鍵がないと‘旅の扉’が使え
 ん。ディアーザがまた『悪さ』をせんように、あの鍵なしでは何者だろうと絶対入れん
 ようにしておいたんじゃが・・・ 勇者よ、それが逆にお前さんを困らしてしもうたのう。
 まあ、恨むんならディアーザを恨んでくれ。」
  「ともかく、‘オスヤコディの鍵’と‘白い鍵’2つの鍵を持参致せば宜しいのでご
 ざるな。しかし拙者共、船を持たぬのでござるが・・・ 」
  「ほれ、あそこに渡し舟の船頭がおるじゃろ。あいつに頼めばええ。」スラックの指
 した方向に「渡し舟屋」があり、船頭らしきマックルが船の横に座っていました。
  勇者たちはスラックに言われた通り、渡し舟の船頭の元へと歩き始めました。

  勇者はラントの町で「また、どこかで会うかも知れねえな」と言っていたディコスの
 姿を思い出していました。
 
                                    つづく



続MS1に戻る

← 第2章 5:「ん〜マザレルナ北の塔」

第2章 7:「ジャンプのパズル」→