ガイアについて

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 地球交響曲(ガイア・シンフォニー)を紹介する前に、地球という我々が住んでいる惑星についての知識を若干整理しておきたいと思います。御存知の通り太陽系第3番目の惑星で、直径は赤道面で1万2756Km、極(北極、南極)面で1万2714Kmと完全な球形ではなく若干楕円に近い形をしています。極を軸に24時間で自分自身が回転しながら約365日と6時間で太陽の回りを公転しています。表面は大気に覆われています。大気圏は海面から約500Kmていどまでで対流圏、成層圏、中間圏、熱圏の四つの層に分けられます。

 対流圏、温度の高低により空気が対流を起こす範囲ですが、海面から極地方で6〜7Km、赤道地方で17〜18Kmまでを言います。成層圏は対流圏の上にあって海面から50Kmまでの範囲です。中間圏は成層圏の上にあって海面から90Kmまでで気温は摂氏0度からマイナス80度となっています。熱圏は中間圏の上を言います。この四つの層の他に地表はオゾン層によっても覆われています。オゾン層は海面上10Kmから50Kmの範囲に広がっていて紫外線の影響から動植物を守っています。最も濃度が濃い部分は海面から25Km付近だと言われています。

 ところで我々人間が酸素ボンベや宇宙服などの保護具なしに活動できる範囲はどの程度でしょうか。ガイア・シンフォニー第一番で登場するラインホルト・メスナーという登山家は世界で唯一人、単独で酸素ボンベの補助なく八千メーター級の山々全山の登頂に成功した人です。八千メーターすなわち8Kmが活動範囲の限界ともいえるわけです。

 これはガイアという惑星から見るとどの程度の範囲となるのでしょうか。単純に言えば1万2700分の8と言うことになりますが、具体的にイメージするとどうなるでしょう。直径30cmの地球儀に当てはめてみると0.19mm、1mmの5分の1にも満たない大きさと言 うことになります。同様にオゾン層は0.24mmから1.18mmの範囲に広がっていることになります。ガイアという惑星規模から見ればいかに狭い範囲かと言うことが実感できるのではないかと思います。

 しかし、その狭い範囲の中に極めて豊かな自然と数多くの生命が育まれているのです。その貴重さ、希少さを十分認識し大切に扱っていかなければ、人類はそれほど遠くない日にガイアという惑星から生存を拒否されてしまうのではないでしょうか。

(2)

 さて、それでは地球交響曲(ガイア・シンフォニー)という映画の紹介に入ってゆきたいと思います。地球という惑星は、きわめて豊かな自然の中で数多くの生命を育むことによって壮大な交響曲を奏でていると言えるのではないでしょうか。その交響曲を心の琴線で感じとった人々が共鳴して行っている様々な活動をオムニバス形式で紹介することによって地球という惑星の素晴らしさを再認識し、そこに生きるわれわれ人間の役割を改めて考え直してほしいというのが、この映画のテーマではないかと私は思っています。

 製作・監督は龍村仁さんです。龍村さんは京都大学を卒業後、NHKに入局し東京オリンピックなどのドキュメンタリーに携わってきました。1974年に退職してからは、ドキュメンタリー、ドラマ、CMなど数々の作品を手がけ、1992年11月に「地球交響曲第1番」を公開したのです。地球交響曲は現在までに1番から6番までが撮影・公開されています。

 もっとも公開されているとは言っても、ごく一部を除いて一般の映画館で上映されているわけではありません。全国各地で行われる大小様々の自主上映会にフィルムを貸し出すことによって公開しているのです。この文章を書いている私も、そうした自主上映会の一つである「チネット97」に関わっているわけです。

 自主上映会ですから会場も料金も様々ですが、料金は千円または千五百円というケースが多いようです。また上映期間は1日だけ、しかも1回だけというのがほとんどですが、毎月、全国のどこかで何番かが上映されているようです。ちなみに私が関わっている「チネット97」では1997年から東京中野区の中野ゼロの大ホールまたは小ホールで年1回か2回上映会を実施してきました。

 この映画をご覧になりたい方は、インターネットで龍村仁事務所の公式ブログ「地球交響曲<ガイアシンフォニー>」をご覧になれば何時、何処で、何番の上映会が行われているかを知ることができますので是非参照してください。なお、「チネット97」のホームページにはリンクのページからゆくことができます。併せて御覧になって下さい。

(3)

 ここで地球交響曲(ガイア・シンフォニー)の出演者を紹介したいと思います。

【第1番】

★野澤 重雄(植物学者:日本)

 ごく普通のトマトの種から、バイオテクノロジーも特殊な肥料も一切使わずに、1万5千個の実をつけるトマトの巨木を育てることに成功しました。

★ラインホルト・メスナー(登山家:イタリア)

 世界に14座あると言われる8000メートルを超える山々を、世界で唯一人、酸素ボンベも使わずに単独で登頂することに成功しました。

☆ダフニー・シェルドリック(動物保護活動家:ケニア)

 30年以上にわたり、密猟者に親を殺された象の赤ちゃんを野性に還す活動を続けています。映画の中では、彼女が初めて育てた雌象エレナとの交流が描かれます。

☆エンヤ(ミュージシャン:アイルランド)

 祖父から受け継いだケルトの神話や妖精物語をもとに、シンセサイザーのような近代的な楽器を通じてケルトの魂を甦らせる美しい癒しの音楽を作曲しています。

★ラッセル・シュワイカート(元宇宙飛行士:アメリカ)

 アポロ9合の乗組員で、人類で初めて宇宙遊泳を経験しました。映画では、その時の経験を元に人類と宇宙の未来について語ります。

【第2番】

★14世ダラ・イ・ラマ法王(チベット仏教最高指導者:チベット)

 地球上に存在する様々な生命の多様性を尊び、共存することを唱えています。1989年にノーベル平和賞を受賞しました。私は実際にお会いして人間としての波動の高さと暖かさを強く感じさせられました。

★ジャック・マイヨール(海洋冒険家:フランス)

 映画『グラン・ブルー』のモデルで、素潜り潜水の世界記録保持者だったこともあります。深海に潜るときに必要なのは心の静寂さであるとして、人間は心の持ち方一つで常識をはるかに越えた能力を発揮し得ることを身をもって示してくれました。

★フランク・ドレイク(天文学者:アメリカ)

 科学的な方法による地球外生命との接触を世界で初めて試みました。SETI(地球外知的生命の探査)研究上の創設者で、現在も広大な宇宙でのET探しを続けています。

☆佐藤 初女(森のイスキア主宰者:日本)

 その季節にその土地で採れた新鮮な素材を使って美味しい料理を創って食べさせ、心を病んだ人、苦しみを抱えた人など多くの人々に真心で接して癒してきました。映画の中では森のイスキアの所在地、弘前の四季と共に生きる初女さんが描かれます。

【第3番】

★フリーマン・ダイソン(宇宙物理学者:アメリカ)

 プリンストンの高等学術研究所教授。科学、芸術、宗教、哲学等あらゆる分野に深い造詣を持ち、人間という種の未来について宇宙的な視野から語ることの出来る20世紀最大の叡智の一人。

★星野 道夫(写真家:日本)

 人間と自然の営みとの調和が大切であることを深く理解していた自然写真家。私も写真展を何回か見に行きましたが、魂を揺さぶるような何かがあったような気がします。カムチャッカで取材中に熊との事故で亡くなりました。

★ナイノア・トンプソン(外洋カヌー航海者:アメリカ)

 一切の近代器具を使わず、古代の遠洋航海カヌーを駆ってタヒチからハワイまでを航海し、古代の海の旅を蘇らせました。この航海はハワイの先住民の人々にかってない勇気と誇りを与えましたが、同時に科学技術に依拠しすぎている現代人の生き方に反省を求めているような気もします。

【第4番】

★ジェームズ・ラブロック(生物物理学者:イギリス)

 地球は一つの大きな生命体であるという「ガイア理論」の創始者です。「地球交響曲」のシリーズは、彼の理論に勇気づけられて1989年にスタートしました。以来、10年間の夢が実り、第4番でご本人に出演していただくことが出来ました。映画の中では、「地球はそれ自体が大きな生命体である。全ての生命、空気、水、土などが有機的につながって生きている。これをGAIA(ガイア)と呼ぶ」と言う彼の理論がやさしく語られます。

☆ジェーン・グドール(野生チンパンジー研究家:イギリス)

 26歳の時、有名な人類学者ルイス・リーキーの薦めで、母ヴァンヌとともにたった二人でタンザニアのジャングルに入り、チンパンジーの観察・研究を始めました。女性としての、生命に対するやわらかく広い視野からの研究は、霊長類学会に大きな変化をもたらしました。

★ジェリー・ロペス(ビッグ・ウェイブ・サーファー:アメリカ)

 ハワイ・オアフ島のノース・ショアでは、高さ20フィートを越える津波のような巨大な波の立つ日があります。このような計り知れない巨大さをもつ地球の力の前でも静かにサーフ・ボードを操り、地球と生命との調和を見出そうとするジェリーの生き方と思想が語られます。

★名嘉 睦稔(版画家:日本)

 少年時代に沖縄の孤島で育った彼は、現代人が成長のプロセスで閉じてゆく地球と会話する回路を次々と開きながら成長し、気づいたときには版画家となっていました。風、鳥、樹の精霊と親しみ、三線、沖縄空手をこなし、神話を語らせれば右に出るものはありません。

【第5番】

☆石垣 昭子(染織作家:日本)

 1970年より京都で日本古来の染織を修行し、1972年沖縄復帰とともに故郷で染織家としての道を歩み始めました。かって島の人々の生活を支えてきた伝統の技を見事に蘇らせ、祭りの衣装なども復元しました。

★アーヴィン・ラズロー(哲学者・未来学者・音楽家:ハンガリー)

 15歳でジュネーブ国際音楽祭グランプリを獲得しました。エール大学、ブリンストン大学、ベルリン国際平和大学教授、国連調査訓練研究所長等を歴任し、1993年に世界賢人会議ブダペストクラブを設立しました。

*再会編として、

 ラッセル・シュワイカート、14世ダラ・イ・ラマ法王、ジェームズ・ラブロック、ジェーン・グドール、名嘉 睦稔、佐藤 初女さんなどが出演し、故人となられた野澤 重雄、ジャック・マイヨール、星野 道夫さんが紹介されます。

【第6番】

★ラヴィ・シャンカール(シタール奏者:インド)
 厳しい修行の末、インド数千年の叡智に立ち還りながら、西洋近代文明との橋渡しを続けてきました。60年代、モントレー、ウッドストックなどのフェスティバルに参加し、ニューエイジの若者たちに圧倒的な支持を受けました。74年にインド音楽の原点に回帰する運動を開始しています。

☆ケリー・ヨスト(ピアニスト:アメリカ)
 6歳からピアノを始めました。幼い頃から大自然の山や川、森や湖との超越的な交感を何度も体験したケリーは、ただひたすらピアノの中から”光の音”を紡ぎ出すことに全霊を捧げてきました。その生き方がそのまま優しさと気品にあふれたピアノ音楽を産み出しています。

★ロジャー・ペイン(海洋生物学者:アメリカ)
 ”音で世界を見る動物”コウモリやフクロウの研究で博士号を取得しました。67年、ザトウクジラが歌を歌うこと、その構造が人間の音楽に非常によく似ていることを世界で初めて発見しました。海の環境保護をすすめる団体”Ocean Alliance”を設立しています。


◎「チネット97」の上映会は盛況のうちに終了することが出来ました。
 ありがとうございました。


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