TV版「AIR」舞台探訪

〜京都府舞鶴市、福井県小浜市、その他編〜



舞台探訪者の心得
 ・探訪先では、地元の人の迷惑にならないように行動する。
 ・観光地でない場所や公共施設でない場所への探訪,撮影には十分注意する。
 ・探訪者の多い場所での行動は控えめに。


 思い返せば4年前、あるとも知れない原作版「AIR」の舞台を探して日本海側を歩き回った時、拠点となったのが、京都府舞鶴市だった。
 それから2年後、思いがけずにも、それらの町はTVアニメ版「AIR」の舞台として我々の前に現れた。
 しかし、舞鶴市付近では隣の宮津市の由良川橋梁が舞台として確定されただけで、舞鶴市内の舞台の報告は無かった。
 くやしがる知人のQLAND氏を見て笑っていたのだが、最近のネット上の情報によると、なんと舞鶴市内にも舞台があるという。
 そして、一転して余裕の笑みを浮かべたQLAND氏から、遊びに来ないかね?、というお誘いを受けた。
 その言葉に甘えて、夏休みを利用して遠征に出かける事にした。
 はたして、夏の日差しの下で待ち受けるものは…、

 最終話の保育所 −京都府某所−
 暑い…。
 降りそそぐ太陽光線が、まるで重い雨つぶのような圧力を持って照りつけていた。
 我々三人は、滝のような直射日光に打たれながら、陽炎の中に立っていた。

 “夏の『AIR』舞台探訪”。
 それは、「AIR」ファンならば心惹かれる響きだろう。
 しかし、実際にやってみると分かると思うが、「夏の風情を満喫する」などという生やさしいものでは決してない。それは、襲い来る直射日光と猛暑と熱中症との果てしない消耗戦である。
 そんな愚行は、バカのする事だ。

 …しかし、ここに、そのバカが三人も立っていた。
 今回、参加したメンバーは、地元京都のQLAND氏とKIM氏、そして私の3人。
 このクソ暑い盆の時期に「AIR」の舞台を探そうという、ヒマ人勇者たちであった。

 KIM氏の待つ京都府某駅前に、私とQLAND氏が電車で到着して集合した我々は、早速、駅周辺の目的の地へと移動した。

最終話のラストの保育所

 これを見ても何の事だかわからない人も多いと思うが、TV版「AIR」の最終回ラストで、晴子が、
 「ウチ、今までの仕事やめて、近所の保育所に勤める事にしたんや」
と言うシーンで挿入カットとして使われた保育所。
 実際に某所の近所の保育所であるというのは、スタッフの遊び心だろうか?

 当地は保育所ですので、稼働日の訪問は控えましょう。
 また、長時間留まったり、不審な行動も控えましょう。
 しかるべき所に通報されても当方は責任を負いません。

 ここは、QLAND氏がネットで見つけた情報を元にして、KIM氏が事前捜索で見つけていたもの。
 「それにしても、よくこんな所見つけたよなぁ〜」
というのが率直な感想。
 今回、その後何度もそのセリフを口にする事になるのだが、それはまたおいおい。

 さて、上の保育所から歩いて駅前に戻ると、謎のパイプが並んで立っている。

美凪初登場シーンの背後のパイプ

 カルトクイズ級だが、これは、第1話での美凪の初登場シーンの背景に小さく映っているパイプの列の元ネタ、…だと思われるもの。
 これも、KIM氏が事前捜索で発見していたもの。
(「メロディータワー」という名前が書かれていて、たぶん叩くと音が鳴る…、のじゃないかと思うのだけど、中央にあったと思われる鳴らす道具が無いので意味不明のオブジェになっている。実際、こんな所で鳴らされたらご近所の人は困ると思うし)

 そうか、なるほど、TV版「AIR」の駅前の風景は、本当に駅前にあったんだ。
 本当にTV版「AIR」のスタッフは良いシゴトしてますな〜。

何だか故郷に帰ったような気がするよ? にははっ。

 そんなわけで、多くは語らないけど、隣の建物に敬礼しつつ、この場は撤収。

 この後、KIM氏の車に乗って、作品中の住宅地によく描かれていた「下り瓦」の屋根がある地区を見て回ったりしたのだけど、何だかちょっと違う感じ。家の屋根の形はバッチリ同じ家が多いのだけど、田園風景や家並みが微妙に違う。
 QLAND氏のうんちくによれば、この地区は、

・今では平地の真ん中だけど、かつてはでかい湖があって漁業も行われていた。
・漁業権を天皇から独占することを認められていた地域のため、立派な旧家が多い。
・DVDの限定版1巻のカバーなどに描かれる屋根瓦には、下り瓦が備わっている。お寺や立派な平屋の大きな屋根には、アクセントとして下り瓦が付けられることが多い。
・旧家がかたまる地域の甍の波の向こうに、かつて存在した水海を描いたのではないか?

との事で足を延ばしたのだけど、消化不良の結果に終わってしまった。

  QLAND「ここでいいじゃん! ここにしておいてくれよ〜!」

 と、いうのは、舞台を探して回った者の共通の心の叫びだと思う(笑)

 そんなわけで、この日の収穫は上の二箇所だけ。
 ここでドライバーを務めていただいたKIM氏とお別れして、私とQLAND氏は電車で次の目的地へと向かったのだった。

 最終話の海へと続く道 −京都府舞鶴市−
 私だけ東舞鶴駅前のカプセルホテルに泊まって、翌朝、QLAND氏と合流。
 QLAND氏の車で由良川を渡って宮津市まで行き、前回の探訪で撮り逃した美凪列車を撮影。

美凪列車(下り列車)

 作品中と違って電車のライトが点いていることに気がついた人は鋭い。
 実は、作品中と同じ上り列車を撮れなくて、下り列車を撮ったもの。
 でも、やっと1年越しの念願を叶えられたわけで、満足満足。

 舞鶴市は、戦国時代の城下町から発展した西舞鶴と、明治時代の軍港から発展した東舞鶴に山をはさんで別れている、という。
 その、東舞鶴まで戻って来てQLAND氏が案内してくれたのは、川沿いの朝市。

東舞鶴の朝市

 これがどうした? と思うだろうけれども、これが第1話Bパート冒頭の朝市のパラソルの元ネタではないか?、という説。
 QLAND氏のうんちくによると、

・石原監督がコメンタリーで、故郷の港町の朝市について話している。
・舞鶴市の朝市は、たいてい直売所。道で、それも川沿いで開かれているのはここだけ。
・朝市に来る農家は意外とリヤカーが多かったため、荷物が増える日よけは持ってこない人がほとんどだったので、向かって右側のおばさんのビーチパラソルの2本立ては以前は目立っていた。色も去年までは作品中と同じだった。
・最近は自動車化されたためビーチパラソルも増えている。ビーチパラソルは、シーズンオフの海水浴場に行けばごまんと捨てられていて、コンバインに付けるなど農家がよく利用している。

 というわけで、作品中とそっくり同じではないけれども、元ネタになった可能性は十分高いだろうという次第。
 ちなみに、正面から撮影しなかったのは、作品中とは背後の堤防とか家並みが違うため、どうせ同じ絵にならないし、正面から撮影すると画像処理が手間なので。

 さて、ここから、ネット上の情報を元に、最終話のクライマックスで使われた背景のモデルの場所へと移動する。
 やって来たのは、東舞鶴港の東側。
 「本当にこんなところにあるのだろうか?」、と疑うような場所に、それはあった。

高速コイン精米所(遠景)

 これが、最終話Bパートで晴子が観鈴を車椅子で押すシーンの背景に登場した、「高速コイン精米所」の看板のモデルではないか?、と言われているもの。
 ご覧の通り、看板は精米所の小屋に隠れて半分しか見えないし、道の真ん中を車椅子を押して歩けるような道ではない。
 
高速コイン精米所

 このように正面に回れば看板が見えるが、進行方向に対して道路の反対側になってしまう。
 これだけではモデルと断言する証拠に乏しいのだが、実はここから100〜200m先に、決定的な場所があるのだ。
 それは…、

最後にお母さんと歩いた道だねっ!

 それは間違いなく、最終話のクライマックスシーンに登場した光景だった!
 地元のQLAND氏でさえ、「普通探さないよ、こんな所」、とあきれるぐらい、普通に探していたら絶対に見つからないような場所。ここを見つけた先達には、まったく脱帽です。
 場所は、舞鶴大波簡易郵便局。
 実は、私も「簡易郵便局」という文字は読み取ってはいたのだけれども、まさかQLAND氏の地元だったとは…。灯台元暗し。

 そして、このすぐそばには…、

この横を通ったよ(左右反転)

 同じく、クライマックスで晴子が押す車椅子で観鈴ちんが通った時の背景が!
 作品中では、左右反転して使われている。
 ちなみに、作品中では、防火水槽の後ろの小屋にははしごがかかっているが、それは、道をはさんで反対側にある。


 上の写真に、防火水槽を左右反転して合成すると、ちょうど作品中の背景とそっくりになる、と思う。

 「いや〜、撮った撮った。満足満足」
と、満足していると、隣でQLAND氏が、
 「まったく、自分で探そうって気は無いのかね」
とブツブツ文句を言う。

 QLAND氏は、自分で探そうとする努力をしないのはつまらないではないか、と言う。
 たしかに、それは事実だと思う。
 けれども、私は、作品世界をより楽しめればそれでOK、というのも、またアリだと思う。
 いや、正直に告白すると、自分も昔は探索至上主義者だった。けれども、以前に未発見の背景を膨大な時間をかけて探していた頃に、ある時ふと我に返って、無駄に費やした時間のあまりの大きさに愕然となって、それ以来、探索熱が少し冷めているのだ。
 その意味で言えば、QLAND氏のスタンスこそが真の『舞台探訪』者であって、私は『聖地巡礼』者なのかもしれない。

 …とはいえ、時刻はまだ正午前。まだ舞鶴市内を探索する時間はあった。
 そこで、QLAND氏の案内で、舞鶴市内の海ぞいの町を探索する事に。

 …しかし、結論から言ってしまえば、やっぱり、何も見つからなかったのだった。

 いや、雰囲気だけならば、良い場所は沢山あるんですよ。
 例えば、三浜という所の海水浴場なんて、入り江はあるし、後ろは山だし、田園風景はあるしで、ロケーションとしては文句のつけどころが無いんですよ?
 …でも、「AIR」の風景は、無い。
 「ここでいいじゃん! もう、ここにしとけよ!」
と、二人で何度口にしたことか。

 “夏の『AIR』舞台探訪”。
 「AIR」ファンならば心惹かれる響きだろう。
 しかし、それは、襲い来る直射日光と猛暑と熱中症との果てしない消耗戦である。
 あるとも知れない舞台を探して回るのは、それなりの覚悟が必要だ、とだけ言っておこう…。

 そして、始まりの地へ −福井県小浜市 知徳法師の寺−
 そして、舞鶴市から舞鶴若狭自動車道を東へ。
 着いた場所は、小浜市の空印寺。

作品中では、「知徳法師」のお寺になってるよ。

 思い出せば、4年前、QLAND氏と私は、原作版「AIR」の舞台探訪を、この地から始めたのだった。
 そして今、この地は、TV版「AIR」の舞台となって我々の目の前にあった。


柳也「俺達を呼んだのは、‥」


柳也「‥知徳法師という高僧だった」


知徳「以来、この寺では翼人達を見守り‥」


柳也「翼人は、その力ゆえに‥」


柳也「神奈の母は、戦で殺めた者達の呪いを‥」


柳也「霊山に攻め入ったのは、朝廷の手勢だった」


裏葉「‥小さな器に海の水を移すようなもの」

 細部が違うところもあるけれども、ほぼそっくり。
 ぜひ作品の映像と比べてご堪能あれ。

 そして、無事に全てのミッションを終えたQLAND氏と私は、名物の「小浜ラーメン」を昼食に食べて、夏の「AIR」舞台探訪を締めくくったのだった。

 以上で、夏のTV版「AIR」舞台探訪は終了。
 これで、この夏の心残りを、一つ減らすことが出来ました(笑)

 今回は、そのほとんどがネット上の情報を元に探索しました。
 先達の皆さんに感謝ですm(__)m

 また、某所周辺でドライバー&案内を務めていただいたKIM氏、そして由良川橋梁から小浜市までドライバー&案内を務めていただいたQLAND氏、ありがとうございましたm(__)m

 最後になりましたが、今回の舞台探訪で参考にさせていただいたサイトさんです。感謝m(__)m

UME_BLACKのモバイルイズム「TV版AIR背景新発見!」
 毎度お世話になってるサイトさんです。
 舞鶴市内の舞台の情報はここで知りました。
お箸が重いTOP→メニューの「聖地巡礼之旅」
 空印寺の舞台の情報はここで知りました。
 また、偶然にもコミケでお会い出来た時に購入した「AIR」の聖地巡礼ガイドは、旅行中に大変参考になりました。

  終わり。