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「朝霧の巫女」舞台探訪〜三次市編-其ノ弐-〜巫女のいない風景〜旧市街〜
「朝霧の巫女」の場面中に登場する風景は、そのほとんどが、三次市の中でも三方を川に囲まれた、三次町の街並みの中に集中している。歩きでもなんとか回れないこともないぐらいの範囲である。
取材では、QULAND氏が作って来た、コミックから113に及ぶカットをコピーした資料「朝霧の巫女みこツアー撮影ガイド」が大活躍した。
歩道橋は柚子の母、御幸が「あらあら、これは帰郷早々大変だわね」とつぶやくシーンのもの。 この時に見ている方向は太歳神社方向で、現実世界と合っている。 後ろの三角屋根は漁業共同組合のものだが、どうがんばってもコミックのように国道の標識の右側までかかるようなアングルで撮ることは出来なかった。
歩道橋から東方向に歩いて行くと、上のお店の通りに出る。 写真からは分かりづらいが、コミックと同じく「ベーカリー」店のようである。 コミックでは「…川眼科」と宅急便の看板が描かれているが、行った時には眼科の看板は移転にともなって無くなっていた。宅急便の看板は下のように、
行った時には引っ込められていた。 こまさんが立っているシーンだけに、「クロネコ」の看板である(?!) このお店の通りを北に歩いて行って、小さな路地を右手に入ると、有名な(?)たばこ屋横の路地がある。
実際に行ってみると、忠尋が歩いている方向がちぐはぐで、ここにもコミック世界の三次市と現実世界の三次市のズレが見える。
たばこ屋の通りの酒店前。 右側が太歳神社方向(北向き)、左側が巴橋方向(南向き)に撮ったもの。 コミックは、酒店自体が右側の写真で、その奥の通りは左側の写真を左右反転したようだ。(酒店の雨どいの形と「合いカギ」の看板から) ここで忠尋が山を見上げるシーンがあって、太歳神社の裏山の(たたり岩のある)比熊山だと思われる山が大きく描かれているが、実際には右側写真のように、山を見ることは出来ない。 ここで忠尋が山を見上げるシーンは、「妖の寄る家」収録の「山を魅る子」〜昭和霊異記III〜において、忠尋の祖父の忠明が山を見上げるシーンとオーバーラップして、忠尋の運命を暗示させるものとなっている。 「昭和霊異記」は、こまが審神者が『山に呼ばれる』ことの意味を知るシーンで終わるが、「朝霧の巫女」第一話は、その数十年後の、こまが三次駅を見つめるシーンから始まる。どちらも山を背景とした、印象的な構図となっている。
通りを南に下ったところにある三次市歴史民俗資料館。 ついでなので入って見ようか、というぐらいの軽い気持ちで入ってみることに。 しかし、これが、それまでの自分の持ってた「朝霧の巫女」のイメージを大きく変える転機となったのだった。 一階奥の展示室に、「もののけ展示室」という、ちょっとユーモラスな感じの展示室がある。 三次市発祥の怪異譚「稲生物怪録」にまつわる展示がされている所である。
ここに展示してあった古い絵巻に、我々一同は目を奪われた。 なんと、「朝霧の巫女」第壱巻中の「第一の怪異」に登場する髭手大男を始め、ひょうたんの妖怪、逆さ生首など、作品中に登場する妖怪がことごとく描かれていたのだ。 絵巻の元になった物語の名は、「稲生物怪録(いのうもののけろく)」。 そう、ここに至って、ようやく「朝霧の巫女」のサブタイトルとなっている「平成稲生物怪録」の由来を知ったのだった。
本当に失礼しましたm(__)m>宇河先生 ずっと「朝霧の巫女」は、忠尋の置かれた緊迫した状況に比べて、出てくる妖怪が微妙にユーモラスな所がミスマッチしていて、妙な作品だと思っていたんですが、これでようやく謎が解けました。 「稲生物怪録」は、江戸時代の三次藩士、稲生武太夫(ぶだゆう)が平太郎と呼ばれていた十六歳の時(寛延二年(1749年))に、「たたり岩」の前で肝試しをしたことが発端で、次々と妖怪が屋敷を襲撃して来るようになるという怪異譚である。 三十日にわたって妖怪が出続けるという物語の規模と、武太夫が書いた回想録が子孫の手元に現存することや、同僚の藩士が書いたといわれる「稲生物怪録」の原本が今も残されているというリアリティが他に例を見ない点である。 「朝霧の巫女」は、妖怪が「稲生物怪録」に登場する順番までこだわって描かれている。 今回は行きそびれてしまいましたが、稲生家の屋敷跡(稲生武太夫碑)が太歳神社の近くにあるので、神社参拝の折りにはぜひ立ち寄って見ましょう(第弐巻 P191にも載っている) 「もののけ展示室」には、らくがき帳が置いてあって、「『朝霧の巫女』を見て来ました」という方も結構いました。中には青森から来られている方もいてびっくり。 こうして、予想外の出会いがあった三次市歴史民俗資料館なのだった。 (冷房が効いてるので、夏の暑さの緊急避難所としても使えそうです(^^;) 「朝霧の巫女」舞台探訪〜其ノ参〜へ続く
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