98合同教育研究全道集会第4;数学教育分科会 
 
 幻の授業 指数関数どこまでやるの 
実践記録と構想            
1998年11月14,15日札幌新川高校  
渡邊勝(元札幌琴似工業高校) 



基礎資料.1997年度、琴似工業高校化学工学科3A、B70名の諸君と共に学習した。
97年12月8(11)日から冬休みを挟んで、98年2月3日まで三学期の 
平常授業5時間+幻?時間+考査1時間 の授業実践についての報告である。
「幻」;全国教研が1月23日から群馬県前橋市(全体集会)で始まり、24日は、 
桐生市で数学教育分科会が行われた。私は、同分科会の司会者として四年目の
任務を果たすべく記録に専念していた。午後2時頃突然左腹部に激痛が襲いかか
ってきた。それから、幾つかのドラマの場面があって、約50日間の入院となった。
大学病院でも数年に一例の珍しい病気・左腎動静脈瘻がその病名であった。 
学級担任としての最後の仕事も勿論教科担任の仕事も他人任せの遺憾極まりな
い生活を余儀なくされた。辛うじて、3月1日の卒業式には「仮出所」して担任生徒を
送り出したが、現場に復帰したのは3月16日であった。そして、退職。 
 やろうとしてやれなかった授業の分が「幻の」数時間である。
.本校は、同一専門科を原則として三年間の持ち上がる。3ヶ年計画の授業プ
ランが可能である。下記にあるような実践をしてきた。
.履修してきた項目  
1年次4単位:三角比、数と式、二次関数*二次方程式・不等式、数え上げ  
2年次3単位:確率、平面解析幾何、積分→微分(微積分は「授業書式」)  
3年次2単位:基本定理による積分(微分方程式まで)、指数関数・対数関         
数、<予定>指数・対数関数の微積分(微分方程式まで)
.先に微積分をやってしまう理由 
微積分の基礎はせいぜい4次の整関数を扱う中で修得できる。工業高校のカリキュ
ラムの特徴は、数学時間数の先細りである。三年に入ると週2時間しかなく。授業の
効率は低下する。しかも、進路決定に心が奪われて落ち着いて学習できなくなる。 
週あたり時間数が多い内に微積分をやってしまいたかった。微積分後、個別の関
数は、「トピックス」として扱うこともできる。それで、微積後は続き物でなく「短編」
「中編」ものを配置した。
(昨年度電子科では、微積分→三角関数、指数・対数関数→複素数をやった) 
構想 1.微積分の概念を得た後で、指数・対数関数を学ぶ。
微分によって (a)=kax  すなわち、変化率が存在量に比例する諸量の変化を
表す関数としての指数関数の特徴を掴みやすくする。
2.微分方程式で締めくくること; 
微分方程式による自然法則の記述の有効性は、歴史の試練を通して明らかになって
いる。ガリレオの落体法則の先駆けの後、ニュートン力学の第二法則; 
        
から始まって、自然科学・社会科学でもその有用性は言を待たない。
 「微積分」の歴史はニュートンの運動方程式すなわち微分方程式から始まった。 
微分方程式による統合、例えば、高校で学ぶ関数を次のように整理できる。

現行指導要領では、微分方程式が削除され、「画竜点睛を欠く」ことになっている。
以上の観点から、削除は誤った処置と言わざるを得ない。もっとも、積分追放論を唱える
「偉い先生」もいらっしゃる事態ではあるが。
3.専門科目の知識と結合させる。 
化学工学科では、専門教科・科目の中で、反応速度、放射性物質の崩壊速度などを学
習する。当然微分方程式で記述されている。変数分離型で解けるが、指数関数が解にな
るものに出くわす。これを是非数学の授業でやりたいと思った。
日頃「先生こんなことやって役に立つの」に対して「役に立たない」と言い切っている
が、高踏・趣味的数学でなく、世界を見られる数学を標榜している私には是非やって
みたかった教材である。
4.次の道筋によって授業する予定。(途中まで実践、残りが幻)  
対数関数の微分→合成関数の微分→指数関数の微分→指数関数の積分→ 
微分方程式の復習と新しい分野への動機付け→変数分離型微分方程式の形式的 
解法→具体的な微分方程式
実践1.「授業書」=プリントの作製の方針 
概念理解に重点をおき、練習では複雑な問題をやらせない。 
復習を丁寧にし、既習事項を面倒がらずに再提示する。 
なるべくグラフをいれる。特に合成関数の微分には、立体グラフを使った。 
工業高校生必携のポケコンを活用させる。(SHARP PC−G815) 
一時間にB4一枚発行を予定。 
授業終了後にプリントを回収して点検、授業と成績評価の資料にする。
2.授業の仕方と手順 
プリント配布→教師の説明→プリントの演習問題をやる→その間指名して、黒 
板でやらせる→板書の添削と評価→プリント回収。
3.生徒の感想と教師の感想 
授業の初めでは、生徒は演習に難渋していた。必ずしも易しい教材でないので
当然の反応であろう。難易の乱順序など、私の問題の出し方に問題があったとも
思われる。また、新校舎への移転作業のため授業がカットされ、授業が間遠にな
ったことも一因であった。 
その後入院を余儀なくされ、手術後も感染症を警戒して、見舞を断ったため、一
人の生徒にも会わず、ために、生徒の感想を聞くことができなかった。 
病気療養中には、同僚が代替えで授業を持ってくれたが、同僚とも必要最小限
の連絡しかできなく、私の構想を伝え切れずに終わった。結局は、数Tの復習問
題を「時間つぶし」にやるだけであった。 
生徒の高校生活最後の数学授業を「腑に落ちるもの」で充実させたかったし、私
自身の教育実践でも有終の美を飾りたかったので、返す返すも残念であった。 
私の実践を踏み台にして、生徒の心を捉えて離さない優れた実践研究の出現を
待ち望んでいる。


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