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          WING BRAIN メールマガジン第67号
          
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★目次★



■ 洗濯             MUSICA
■ スイッチ               小町
■ 連載 第34回 アナログ人間VSデジタル人間  ロクスケ
■ 思いやりは想像力から             ロクスケ
■ ○編集後記○
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■ 洗濯


 私の家は、20坪ほどの猫の額に3階立てとなっています。そして、敷地の面積いっぱいに建てたので、ベランダは2メートルほどしか取れませんでした。しかも、建築法?で、道路斜線の関係でベランダは斜めに削られ、傍目にはちょっとかっこのいい三角形なんですが、これがとても洗濯物を干しずらい。

 それで、我が家では主に洗濯乾燥機がフル稼働しています。もちろん、くしゃくしゃになってしまうものは、ハンガーにかけて干すのですが、今までそれでなんとか満足していました。

 ところが病院へ入院すると、ひろい芝生の庭があって、洗濯物を外に干せるのです。
時間もあるし、体力をつけるためにもなるべく外に干します。キチンと干すと、パリッと仕上がり、太陽の香りがしてとても幸せです。あー、洗濯ってやっぱりこうでなくっちゃねえーと、つくづく思いました。普段は忙しいので、乾燥機で満足していましたが、やはり本当の贅沢と言うのはこういうことなんだなあと思います。

 病気になってわかることもあります。とても、勉強になります。自分の生活を見直すと
いうのは、普段とてもできませんが、本当に入院して人生の洗濯をしているような気がします。

by MUSICA


 私も23,4のころ1年間入院していたのですが、最初は非常に落ち込んでいました。なにしろこれからと言うときにどうなるかわからない病気で入院し、いつ出られるか、あるいは出られないか、もしかしたら死ぬかも知れないという状況でした。
 
 落ち着いて余裕が出てきたのは3ヶ月目くらいでしたでしょうか。症状も落ち着きすぐにどうこうと言うことはないようだと医師に言われ、それでもいつ出られるかはわからない、長期戦になるとも言われたときです。
 
 最初ひどい状態で重症患者専用の部屋に入れられていましたが、1ヶ月一寸でそこを出て大部屋に移り、3ヶ月目くらいに余裕が出てきて改めて周りを見回したわけです。そこは長期入院患者ばかりの部屋で、私が一番年下、一番年輩の人はおそらく60過ぎくらいで、もう二,三十年その部屋にいると言うことでした。他の人も短い人で5,6年でしたから自分だけが病気なのではないと初めて気が付いたわけです。
 
 他の部屋の人たちとも交流するようになり、ベッドに固定されて一生動けない人や、栄養をすべて点滴でしかとれない女性などがいて、それでも明るく振る舞い落ち込みを見せないその人達に接している内に、たしかに私の中の生命観も変わったようです。その人達は明るく振る舞っていても心の奥底には確かに苦痛を抱えているのですが、それを人に見せないし、同じような境遇にあればその苦痛はわかりますが、それでもいたわり合える気持ちになるようです。
 
 結局、私は当初考えていたより回復が進み、1年で出られましたが、その時の経験が今に至るまで私自身に影響を与えてくれているようです。
 
 退院してもその後さらに2,3年はまともな体力もなく普通に働けませんでしたが、その間に非常に沢山の本を読み、体力を付けるために田舎の野山を歩き回り、草花や小動物、虫などを身近に感じたこともまた大きく私を変えたようです。
 
 社会に出て順調なスタートをするべき時期を数年間棒に振ったか、あるいは貴重な経験をしたか簡単に判断出来ませんが、すくなくともその時期に失ったものと得たものを考えたとき、相当多くのものを得たのではないかと考えています。
 
 確かに病気入院はしない方が良いのですが、不幸にして入院してしまったら、それはそれで日頃考えないことを考え、見ないものを見る良い機会だと考えた方が得ではないかとおもいます。

from ロクスケ




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■ スイッチ


 ナニゴトにもスタートが遅い。どうしてぎりぎりになるまでやらないの。だから間に合わないのよ。…というのは、子供の頃から言われ続け、もはや慣れてしまったに近い言葉である。

 今でも、〆切間際にならないと、取りかかれない事というのはたくさんある。それを、自分なりに考えてみると、どうやら、スイッチがオンになるまでに、ある一定の条件を満たさないといけないらしいことに気がついた。

 〆切が迫ってくる。あるいは、まだ取りかかっていないことに対して、注意を受ける。そうすると、何かせり上がってくるようなものを感じて、自分の器の中が…自分の内側にある受け皿の中が、それは、焦りなのか憤りなのか後悔なのか、ともかく感情の高ぶりで満たされていく。それが臨界に達して溢れだしたとき、一気にスイッチが入る。カイロが繋がるといっても良い。そうなると、早い。まるで、アナログのダイヤルアップが光ファイバーになったかのように、自分の中のアイディアや思考がきちんと形をなすためのカイロへ流れていくのだ。だから、なんとか〆切までに仕事が上がる。それも短期的に過集中になるためか、時間をかけていじくったものよりもずっと良いものが出来上がったりする。

 まるで、火山のようなものだ。脳の中に火山があって、マグマが臨界点に達したら一気に噴火する。それ以外は至って静かで…眠っているのか?と勘違いされるのも、似ているかも知れない。

 仕上がれば、大した文句も言われないのだが…いかんせん、もっと早く取りかかればいいのに、もっと丁寧に時間をかけてやれば、もっと良いものが作れるはず、と思われ、口にされると辛い。それが出来ていれば、最初からやっている…と反論はあえてしないけれど。それでも時には言いたくなることもある。それが出来たら苦労はしないんです。だから、悩んでいるのですよ、ADD/ADHDは。
 
 
by 小町




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■ 思いやりは想像力から


 よく言われることですが、最近の戦争はゲーム感覚で行われるので無差別大量殺戮になりやすいとのことです。大昔、刀や槍で戦っていたときは相手が目の前で苦しみながら死ぬのを見るので、それが殺戮に自制がかかったのに、今では下で爆弾が破裂することで数十人単位が死ぬのにそれを見ないから、平気なのだという訳です。

 大量殺戮自体は、兵器の能力が上がったからですが個人の感覚の上で、確かに戦争がゲームのように感じられることになったのは事実のようです。なぜこんな事をいまさら言うのかは、それが想像力の欠乏によることと関係があるからです。

 未成年が集団で一人をなぶり殺しにし、やっているときはチョー気持ちが良かったと裁判で言うのは、被害者の苦痛を自分には全く関係のないことととらえ、それを想像する能力がないからです。つまり人間としてはなはだ未熟なわけで、例えば幼い子供が無心にカブトムシの足をもぎ取るようなものでしょう。幼い子供にはきちんと教えないと、動物をいじめることをおもしろがるようなことがあります。あとで物心が付いて、大概はその記憶があれば後悔するのですが、いまその段階に至らないままの10代の幼児が増えているような気がします。

 たとえば子供を炎天下の車の中に閉じこめたままパチンコをやり、子供を熱中症で死なせてしまう親が後を絶ちません。つまり、炎天下の車の中に乳幼児を置き去りにすればどうなるかを想像出来ないわけで、これは過失ではなく、未必の故意による殺人罪を適用しても良いケースだと考えます。

 このようなケースは犯罪だと私は思いますが、いずれにせよ犯罪者の多くには想像力が著しく欠如している場合が多いと言われています。

 つい先日、猛暑の中、都心で40度近い日でしたから、実際歩道の照り返しやビル、車の排熱の中では50℃を超えていたと思われます。その中で、いかれた女、30代くらい?がイヌを連れて歩いているのを見ました。本人はタンクトップでサングラスをかけそれなりに涼しい格好をしていましたが、彼女が引っ張っているイヌは小型で毛むくじゃらの種類であり、むろん裸足です。おそらく卵でも焼けそうな歩道の上で、イヌの体は照り返しもひどい路面から15センチくらいの高さにあり、足の裏は水ぶくれでも出来ているのではないでしょうか。毛むくじゃらで必死にあえいでいましたが、飼い主は散歩をさせているつもりなのかも知れません。

 そんな状態がイヌにとってはまさに拷問だと思いますが、飼い主にはそんな想像が出来ないようです。心理状態としては犯罪者と変わらないのではないでしょうか。

 これは特にADHDなどに関係があることではないですが、いま自分はADHDではないか、ASではないかと言う人たちの話の中には自分のことだけに目を向け、相手の立場を想像する能力に欠けているのではないかと思われるケースが見受けられるのです。というより、そのような人が増え、そのような人たちの何人かがASやADHDと診断されてしまう事があるのではないでしょうか。

 今年の7月5日の朝日新聞の記事では女子大生を殺した通り魔男が自閉症だった、小学生を続けざまに殴って逃げた男が自閉症だった、だから責任能力がないと弁護団が主張したとのことだし、また19日のどう新聞の記事では日本小児神経学会がテレビやゲームのしすぎで自閉症になることはないと発表したとのこと。ということは、実際にテレビやゲームのしすぎで自閉症になると信じている人が大勢居ると言うことでしょう。

 とにかく、想像力の欠如した人間が増え、それが自閉症の増えた原因だなどというとんでもない認識につながっているような気がしてなりません。

by ロクスケ





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■ 連載 第34回 アナログ人間VSデジタル人間


 人間は元々アナログ感覚で生きている。時間は継続して流れ、物事はそれにその時間にそって変化するので、人間がアナログ感覚で生きているのは当然のことである。むろん、ADHDであろうと人間なのだからアナログ感覚で生きているのだが、ここでいるデジタル人間とは模擬的にADHDを表現した言葉だと理解して戴きたい。
 
 それと、一般的にアナログ人間とはコンピュータやデジタル技術に無縁の人々という意味合いで使われているが、ここではそんな意味では言っていない。
 
 と前置きが済んだところで、何を言いたいのかだが、つまり思考が継続している普通のアナログ人間と、思考がパルス(本来鼓動のことだが、切れ切れの電流という技術用語)上になっているADHDのことを言っている。デジタル信号とは、切れ切れの電流の一つ一つの組み合わせに意味を持たせて通信をすると考えて良い。それで、非常にこじつけだとは自分でも思うが、ADHDの場合、瞬間瞬間のパルスで思考が終わってしまい、あるパルスでとりあえず完結した思考を次のパルスが引き継いで瞬間的な思考をしている、そして少しづつ変形させながら思考を全体として続けているというイメージだ。
 
 念のためだが、これは医学的や心理学的な説明をしているわけではなく、あくまで私のイメージを説明しているだけだから、それ以上の裏付けはないことを承知で読んで戴きたい。
 
 パルスには幅と強さがある。強くて幅の広い思考のパルスは、つまりADHDにおいて興味の対象に就いて集中している状態と言える。通信の話に戻れば、従来のアナログ通信に比べ、デジタル通信は雑音に強いという特徴がある。つまり、ある一定の幅、強さ以外のパルスを雑音として切り離しやすいからだ。その点、アナログ通信はもともと強弱広狭さまざまな信号の集まりと考えられるので、デジタル通信のようにある条件で雑音を切り捨てることが出来ない。だから、アナログ録音のテープなどを何度もコピーすると音質が劣化してくる。
 
 一方、デジタル録音はなんどコピーを繰り返しても音質が劣化しない。ただし、伝えられる信号の幅や強さに限度があるので、音質は一般にアナログより劣るとされている。実際は人間の耳で聞き取れるほどの違いは無いほど、デジタル技術は進歩しているが。
 
 アナログ思考の場合、雑音が入ることで質は劣化するが、全体の意味は変わらない。アナログレコードが古くなって雑音だらけになっても大きな傷が入っても、とりあえず録音されている中身は聞き取れる。
 
 一方、デジタル録音のCDのばあい、データのパルスと似た雑音だとそれもデータとしてまったく違う情報をして処理してしまうことがある。
 
 そろそろ、結論。雑音が入ってもとりあえず継続して考えられるアナログタイプ、雑音によっては飛んでもない方向へ考えが言ってしまうデジタル、但し集中しているときは少々の雑音でも影響されないデジタルADHDの違いを、強引にこじつけイメージで描いてみた。
 
 それぞれ一長一短あると言うことか。ただ、確かにアナログが主流である状態は、今の電子技術と違って、永久に変わることはないだろうが。
 
 
 

by ロクスケ


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○編集後記○
(■ WingBrain委員会による出版第二弾もとにかく順調に作業が進み、すでに入稿を済ませあとは印刷上がりを待つだけになっています。今回の本も、自分で言うのも何ですが、かなり出来がよいのではないかと自画自賛している処です。
 
 ■ ADHD関連図書では専門家による本やADHDの子供を持つ親御さんによる本が多いですし、またかなりがアメリカの本翻訳です。むろん、それらの本も非常に優れており、私たち自身それらの本で多くを学んだのですが、やはり当事者でなくては思いつかない事柄が多く存在すると言う気持ちは消えませんでした。そこで、当事者が自分で自分をどう見つめ、どう考え、どう改善してゆくかをまとめたのは今回の本だと言えます。
 
 ■ 書名も大体決まり、最終チェックも順調で、なかなかしゃれたカバーデザインもほぼ出来ています。もう少ししたらサイトで発表出来るでしょう。発刊も殆ど遅れなく9月末〜10月初めには実現すると思います。
 
 ■ ところで冒頭でもお知らせしていますが、私たちのサイトが移転することになりました。3年もの間お世話になったプロバイダで、出来ればそのままでいたかったのですが、ご存じのようにこの業界では3年もの間には色々なことが起こりえます。色々考えてみて、移転を決意しました。今度お世話になるプロバイダは大手ですが、ずうっと安定して活動を続けていますし、長年使えなかったアンケートも近い内に復活したいと思っています。新しいURLをみなさんよろしくお願いいたします。
 
 ■ いやな事件が連続して起こり、記録的な猛暑、水不足、地震、噴火、大型台風とどうもめいるようなことばかりです。しかし、一つとにかく良いニュース。05年度からモデル事業として発達障害者支援を人口30万以上の都市で行うとの法案を今期の臨時国会に提出するとのこと。まだまだ十分とは言えませんが、とにかく第一歩だとは思います。
 
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