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Herman Melville (1819-1891) 
  Moby Dick (1851)
             
  Billy Budd, Sailor(1924に死後出版) 黒人の水兵が艦上の軍律違反で処刑される話。
   
Matthew Pearl
 Dante Club, (2003)
2003年に本書が出版された時に丸善でペーパーバックを買って読んだ。その当時は、ダンテには特別の興味はなかったが、マサチューセッツ州の最高裁判事が殺されるというショッキングな事件から始まり、後に有名は裁判官になるOliver Wendell Holmes, Jr.の父親Oliver Wendell Holmes, Sr.が登場して、事件を解決するというので買ったのだが、読み始めると面白く、約300頁の本を一気に読んだことを覚えている。その時の稚拙な感想文は、このHPにもアップした(面白かったという感動を伝えただけ)。この度、この本のaudio bookAmazonにあったこと、2018年夏にギリシャ・イタリヤを約1か月旅行し、フィレンツェ行の準備としてダンテの神曲地獄篇InfernoLongfellowの英訳で読んだことから、あらためて英語のオーディオ・ブックで聞いてみようという気になった。これも面白かったので、朗読14時間18分であったが、1週間で聞き終わった。聞くにあたっては、Longfellowの英訳が手元にあるとよい。そして、朗読の中でも時々イタリア語が出てくるので、イタリヤ語の原文も参照できるとよい。これらは、いずれもutenberg rojectから無料でダウンロードできる。なお、本書の日本語訳も、未見であるが、あるようだ

(内容の紹介など) 1865年 のボストン、南北戦争(英語IではCivil Warと呼ぶ)が終わった直後であり、ボストンには北軍として戦って戻ってきたものの、元の仕事や生活に戻れなかった兵士たちがたくさんいた。彼らに対して教会その他慈善団体が食事や住む場所を提供していた。他方で、その頃、アメリカの代表的な詩人Longfellowは、ダンテの神曲地獄篇(Inferno)の翻訳を急いでいた。フイレンツェでダンテ生誕600年の式典が行われることになっており、ロングフェローは、それに間に合うように翻訳を急いでいたのであった。ロングフェローのボストンの自宅で毎週水曜日に「ダンテ・クラブ」と称する会合が開かれ、そこでロングフェローが翻訳した部分を披露して、参加者のOliver Wendell Holmes Sr(医師、詩人、ハーバード大学卒).James Russell Lowell(詩人、ハーバード大学卒)たちが批評しながら、英語訳を確定していった。本書は、ロングフェローのダンテ翻訳活動のことについても詳しく述べているので、殺人事件はなかなか進展しない。しかし、この部分が実は重要かつ面白い。ロングフェローのダンテ翻訳については、いろいろな理由でこれに反対する人々もいた。当時のアメリカ、特にボストンは、プロテスタントが多く、中でもUnitarian主義(伝統的カトリックの三位一体説を否定する)が強く、ダンテの神曲はカトリックの宗教観をアメリカに持ち込むことになるとして反対するものが多かった(と言っても、彼らは、ダンテなど読んだことはないのだが)。また、ボストンにはBostonBrahminと呼ばれるイギリス系の上流階級がおり(ダンテクラブのメンバーであるLowellHolmesも、Logfellowの妻の実家Appletonも、これに属する)、彼らもダンテを危険思想と見ていた。ハーバード大学は、当時、彼らの子弟の教育機関であり、そこの教授陣の中にも、ダンテに反対する者が多かった。このような中で、ダンテクラブは神曲の翻訳を行っていたのである。後に、起きる連続殺人事件がダンテの神曲地獄篇の中味を模しているなどと社会に知れると、翻訳作業がとん挫する危険があった。
 1の殺人事件の被害者は、マサチュウセッツ州の最高裁Healy主席裁判官である。彼は、何者かに頭を鈍器で殴られ、その傷あとに蛆を植え付けられ、スズメバチに体は刺された状態で、自宅の庭で発見された。2の殺人は、牧師のTalbotが教会に通じる地下通路で殺された。その遺体は地面に掘られた穴に頭からさかさまの状態で埋められ、足だけが外に突き出ていたが、その足は油がかけられ燃やされていた。この遺体を警察から頼まれて見たホームズは、この異様な殺害状況がダンテの地獄篇(Canto XIX)の場面――聖職を売買したり、聖職を利用して金儲けをした「聖職売買者simoniacs」は、頭から逆さまに地面に埋められ、突き出した足は燃やされる地獄ーーに似ていることに気が付き、ダンテクラブのメンバーに話す。そうすると、Healy裁判官の死の場面も、日和見主義者Uncommitedーーすべきことをする能力も地位もあるのに、それをしない人々ーーの地獄を模したものである可能性がある(Canto III)Healy裁判官は、マサチューセッツ州の逃亡奴隷救済法にもかかわらず、逃亡奴隷を送り返したことでボストンの社会で批判されていた。犯人は、これを取り上げて、身体に蛆を植え付けたのだった。通常の蛆は、生きた人体組織の中では生存できないが、この蛆は南アメリカないしアメリカ南部にいるハエの蛆で生きた人体組織を食べるのだ。第1被害者Healy主席裁判官は、殴られた傷が原因で死亡したのではなく、蛆が内蔵や脳を食べたことが原因で死んだのだった。

       

Canto III 足の周りに蛆、頭上に蜂 CantoXIX 聖職売買者の逆さ埋め
いろいろなことがダンテの地獄篇と結びつくことがわかってきた。以前に、警察官Rayが別の事件で取り調べ中に飛び降り自殺した男が残した謎の言葉の意味がわからず、ダンテクラブのメンバーで外国語に詳しいLowellに解読を依頼したのであったが、その言葉もダンテと結び付けて考えるとその紙片には Lasciate ogne speranza,voi ch’ intrate (「ここに入る者は、すべての希望を捨てよ」:地獄の入り口の門のところに書いてある)であることがわかった。 こうして連続殺人がダンテの地獄篇と関係があるとなると、これを翻訳中のダンテクラブメンバーの立場は微妙となる。ダンテのことを知っている者が殺人者であることは確かであり、かれらがむしろ第1の容疑者となるからだ。そこで、ホームズたちは、警察に全ての情報を教えるのではなく、むしろ自分たちで犯人を捕らえようと計画する。・・・・・ しかし、この後も殺人が続く。それも、ダンテクラブの会合が行われる直前に、その会合で取り上げる部分を先取するかのように、殺人が行われる。それはどうしてなのか?
・ 最後に事件は解決するが、ちょっと考えさせられるところがある。

 
第3殺人 Canto XXVIIIの場面   第4の殺人未遂 CantoXXXII


David Liss
 
The Coffee Trader (2003) 17世紀、アムステルダム。ポルトガルにおける迫害を逃れてアムステルダムに来たユダヤ人の商人Miguelは、砂糖相場で失敗して債権者たちに追われる一方、鯨油相場で利益を上げたが、相手方の仲立人が依頼人から支払いがないことを理由に、Miguelに対する支払いを拒んでいる。取引所の相場で、ある時は設け、ある時は損失を被り、取立に回ったり、取立てられたり、厳しい世界の中で商人達は生きている。そんな時、 Miguelは、コーヒーというものに出会う。とあるきっかけから、なぞのオランダ人女性Geertuidと組んでコーヒーで一儲けすることを計画する。しかし、ほかにも、同じようにコーヒーに目を付けている商人がいる。また、Miguelに対する恨みからMiguelを陥れようとする商人(同じユダヤ商人)もいる。Miguelは、個人生活でも、いろいろ問題を抱えている。悩みを抱え、裏切りに合い、失敗や間違った判断も良くする。そんな中で、Miguelは周到な計画をねってコーヒーで一儲けする。取引所の取引といっても嘘の情報や駆け引き、相場の操縦など、いろいろな危険が蔓延している。そんな中で利益を上げるのは並大抵ではない。失敗して全財産を失い、没落する商人も数知れない。先物取引やオプション取引なども登場してくる。ユダヤ人の商人達が差別と迫害の厳しい環境の中で、どのように世界的な情報網を使い、自分達の安全を図り、利益を上げていくか、よく描かれている。オランダ人の商人達は、不履行があればすぐに裁判で取り立てるが、ユダヤ人たちはできるだけ裁判を使わず、仲間内で解決しようとする点も面白い。取引で世界的地位を築いたアムステルダム、その中でユダヤ商人達がどのような役割を果たしたのか、など興味ある問題が見えてくる。

Cleo Coyle
 
A coffeehouse mystery, Latte Trouble (2005)
Greenwich Villageにあるコーヒーハウス(Village Blend)を元夫と共同経営するClareが事件を解決していく。軽い読み物。事件はいずれコーヒーに関連して起きる。エスプレッソの入れ方や、コーヒー豆などに関しても多少専門的なことが書かれており、コーヒー好きには面白い。また、ニューヨーク市のいろいろな地名が出てきて、NY市内を歩き回ったことがある人には懐かしいだろう。さらに、専門書しか読まない私には新しい単語、若者の言葉を知ることができるというメリットもある。

その他
  Maus
(漫画) A comic story of a jewish family who experienced terrible days in the Nazi era but survived the concentration camp. Though I read and see so many stories and films of the kind, I never find it boring reading another. It is because each story tells us different pain and sorrow.

  Liberty's Kids (also animation on VHS/DVD is available) A story of American Revolution through the eyes of an English girl Sarah and an American boy James. They are apprentice reporters in Benjamin Franklin's print shop. Exciting and adventurous, also informative. It tells us how the people in America became united, which was far from easy in those days. It also tells us about the slavery problem during the American revolution. Both children and grown-ups can enjoy this story.

8) Recent books
Rhys Bowen Molly MurphySeries 第1作 Murphy's Law 第2作 Death of Riley 第3作 For the Love of Mike など
 時は1900年。アイルランドの農民の子で事情があってアイルランドを逃れ、New Yorkに来た赤毛のMolly Murphy(この名前はアリルランドの多い名前)は、若く、元気で、知性のある女性。NYで仕事を見つけ自力で生活しようとしてもがいている。あるとき、私立探偵のPaddy Rileyを知り、助手として雇ってくれと頼むが、女性だという理由で断れれる。しかし、知性と頑張りで、なんとか掃除や使い走りとして雇ってもらう。まだ、女性に参政権がない時代だ(第1次世界大戦後、州レベルで参政権を認めるところが出てくるか、1920年に合衆国憲法修正19条で婦人参政権が認められる)。しかし、その矢先、Rlieyが何者かよって殺害される、Too big for meという謎の言葉を残して。Riley and Co.として探偵の仕事を続ける一方、Rilely殺害犯人の捜す。Riley がかかわっていた仕事が手掛かりだ。彼はDelmonico(26th St. at Fifth Av)で見張りをしていた。また、彼の手帳には、saw RO with LC at OCSとあった。ROはRaily O'haraとわかる、OCSはO'Connersというアイリッシュ・パブとわかる。手掛かりを探しにOCSに行く。そこでSidとGusという2人の女性に会う。生涯の友となる。彼女たちはNo.9 Patchin Placeに住んでいる(Greenwich Av.と6th Avの近く。Jefferson Market,, Washington Squareの近く)。Mollyも、しばらくそこに同居する。ところがMollyは誰かに見張られている感じがする。そして、SidとGusの家で襲われる。犯人はMollyの何かを奪おうとしている。Rileyがもっていたフイルムがある。その中にROと若い男が映っている写真があった。これがsaw RO with LC at OCSか?この若い男は誰か?Saloon Schwabsで見たことのある男だ。Mollyの代わりに、SidとGusがSchwabsに入り込み、写真の男の名前を聞き出す。その男はCzolgoszという者だ。Barrel StrのBoarding Houseにしんでいるという。そこは殺されたRileyが一時住んでいた場所だ。Mollyがそ下宿屋に行き、女主人に尋ねるとCsolgoszはいないという。Baffaloに行ったという情報を得る。Rileyとの接点もある。この男だ。Mollyは男を追ってBaffaloに行く。1901年BaffaloではPan- American Expositionが開かれていた。Mackinley大統領も来ることになっていた。・・・・Riley追っていた男CzolgoszはMackinley大統領の暗殺を狙っていたアナーキストだった。Rileyはこれを阻止しようとして殺された。It was too big for meの意味が分かる。Mollyもこれを阻止しようとするが失敗。かえって犯人の一味と疑われる。・・・Mackinley大統領は1901年9月、犯人Leon Cの銃弾の傷がもとで死亡する。Mackinleyは、リンカーン、ガーフィールドに続く、暗殺された3人目の大統領となる。 
 このようにMolly Murphyシリーズは1900年ころのNYの生活、場所、事件を織り込んだ楽しい推理小説。いろいろな出来事を盛り込んでいるので、時に話がそれすぎてしまうが、当時のNYの生活を知る上で大変よい。本のほかに、audio book があり、Nicola Barberの朗読(言葉やアクセントの使い分け)が実によい。

         
Pachin Place 道路入口には鉄製の門がある CzolgoszがMckinley大統領に発砲  1905年に9th AveのEL Trainで起きた事故
                                                   

19世末から1952年までNYの3rd Ave, 6th Ave., 9th Aveなどにあった高架鉄道を EL Train と呼んだ(Elevated Train)

Molly Murphy Series 第8作 The Edge of Dreams
 1905年、Mollyは、NY市警のCaptain Daniel Sullivanと婚姻し、長男Leonが生まれ、探偵の仕事は一休み。しかし、New York市内では、一見関連のなさそうな殺人事件が連続して起きていた。そのたびごとに、Mollyの夫のDanielに犯人からの殺人報告が来ていた。そして、犯人からは、犯行未解決を誇示するかのように、今度は殺人予告が来た。そんなとき、MollyはLeonを連れて9th AveのEL Trainに乗ったところ、ポイントの間違えから脱線し、13人が死亡する大事故が起きた(1905年9月の実際の事故を題材)。Danielは、連続殺人が自分に対する恨みから起きているのではないかとおもうようになった。Mollyもまた探偵心が動き始めた。・・・






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