Way Down South (1939)              


(story) 南北戦争以前(ante bellum)のルイジアナ州の話(1854年)。Timothy Reid, Sr.はルイジアナ州に " Bayou Lovelle Plantationを所有しているが、奴隷達には優しい善意の人である。しかし、収穫祭に出かけたときに黒人達の歌声に驚いた馬を止めようとして、かえって馬に蹴られ命を落とす。後には、息子でまだ12才のTimothy Reid, Jr. (Bobby Breen)が残されるが、Martin Dillという男が遺言執行者となり、プランテーションの奴隷達を売却しようとしている。これに対して幼いTimothyは、自分の父親は奴隷を売ったことがないと言って反対するが、なすすべがない。奴隷達も将来の不安から大騒ぎになるが、どうしようもない。・・・そんなとき、Timothyが知り合ったPapa Doodonという食堂の主人Jaques Bouton が知恵を貸してくれる。遺言執行者は、遺産の売却などなんでもする権限があるが、不正があればこれを止めることができるかもしれないという。遺言執行者が奴隷の売却を進める中で、Timothy とJaquesは裁判所に行き、遺言執行者の不正を暴いて、奴隷売却を止めてもらうとする。・・・・・
 南北戦争以前のルイジアナ州をはじめ南部の諸州では奴隷制度があった。ルイジアナの民法典には奴隷に関する規定もあった(*)。奴隷は、主人の財産であり、いつでも売却することができた。この映画では、遺産管理に権限のある遺言執行者Martin Diilという男がその権限として、奴隷達を売却しようとしている。しかし、弁済すべき債務があるわけでもなく、奴隷を売る必要もないのに、売却しようとしていることから、また、遺産中にあった首飾りをある女性にプレゼントしようとしたり、背任的な疑惑があるために、遺言執行者のDillはかえって裁判所の取り調べをうけることになり、奴隷の売却は中止となる。
 南北戦争以前のルイジアナ州の奴隷の生活を描く映画として興味深いが、「善良な白人」に助けられるという内容であり、奴隷制度に対する反対を強く主張する映画ではない。ただ、売買リストにあげられた奴隷達の嘆き(家族がバラバラになる可能性がある)、奴隷の売買がどういうものかを描くことで間接的に奴隷制度の不合理を訴えている。

(*)ルイジアナのいわゆるBlack Code(黒人奴隷に関する法律)は、10才に満たない奴隷の子を、母親と別々に売ってはならない(10条)と規定するが、それ以外の場合は、夫婦でも親子でもバラバラに売ることができたので、奴隷売却は生活を破壊する大変な出来ごとであったことがわかる。
ーー>詳細は、拙稿「人の権利能力ーー平等と差別の法的構造・序説」(平井古稀記念論集所収)


(奴隷売買の告示)
NOTICE
SALE OF SLAVES
At Bayou Lovelle Plantation, at
2 o'clock in the afternoon of
November Tenth, the year 1854
Anno Dominii **:: ***
of fine ****., sound of mind
and limb, of obedient and docile
nature and all well trained in the
work of the fields and house.

          MARTIN DILL

(**)当時のルイジアナ州民法では、奴隷は「不動産」であるが、奴隷だけ土地とは別々に売ることもできた。そして、「身体または性格に欠陥」があると、売主に瑕疵担保責任が生じた(2500条)。上の「告示」でsound of mind and limbとは、このような欠陥がないことを言っているが、これは売主による告示なので(裁判所の許可を得ているが)、実際に「欠陥」が見つかれば担保責任が生じる。

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