LM380非革命パワーアンプ

2008年4月22日公開 2008年4月23日改訂

はじめに

アンプ外観

 LM380はナショナルセミコンダクタ社のパワーICで、30年以上前からある息の長いICです。出力は標準で2.5W、最大で5W取れます。外付け部品も少なく、気軽に使えるのが特徴です。

 私がこのICを知ったのは、小学生のときに見たNHKの電子工作番組で紹介されていたのがきっかけです。(そういう番組があったのです。正式なタイトルは忘れましたが・・・。)
 実際に使ってみたのが中学生になるちょっと前で、それが第2作目のアンプとなりました。第1作目のアンプがただ増幅できるという程度の性能だったので、この第2作目は性能的に飛躍的な進歩を遂げたはずですが、当時はプレーヤやスピーカーもガラクタを改造したようなものだったので、違いなんてさっぱりでした。

 その後、LM380は初心者向けという変な先入観があったりして、あまり注目してこなかったのですが、最近になって、どんな音がしたのだろうということを考えるようになり、またこのICを使ったアンプを作る気になったという次第。

 ただ標準回路のままでは面白くも無いし、性能もたかが知れているので、作って満足して終わりという作品になってしまいます。私も今はそれなりに勉強し、測定器類も揃えているので、色々と工夫をして、自分なりの究極のLM380アンプを目指すことにしました。その辺の検討過程が、ここのLM380に関する一連の記事です。

 その結果は、右の写真に写っているシンプルなアンプに結実しました。第24作目のアンプとなります。完成は2008年4月です。

 

回路

回路図

 回路図を右に示します。「非革命アンプ」の推奨回路3です。

 電源は15Vのトロイダルトランスから供給しています。整流後の電圧は無音時で約20Vです。

 

製作

アンプ回路写真

 回路は、0.5mmの銅版上に立体配線しました。LM380を銅版に貼り付け、さらに放熱用グランドピン(3〜5、9〜11ピン)を銅版にはんだ付けしました。こうすることで、LM380の熱を効果的に銅版に伝えることができます。さらにこの銅版を放熱板に接着させることで、放熱をより効果的に行えるようになっています。その効果は強烈で、放熱板に接着したあとは、銅版上の半田は普通の半田ごてで溶かせないぐらいです。(なので放熱板への接着は、配線が終わってから行います。)ちなみに放熱板は、PentiumII-III用のものを使いました。サイズも手ごろで使いやすいです。PCパーツのリユースということで、廃棄物削減にもなりますね。

 銅版は、ベタアースもかねています。ただ大電流が流れるラインと、信号が流れるラインは意識して区別しています。

アンプ内部写真

 パーツ類は特に変わったものは無く、秋月電子や千石電商さんでまとめ買いしたものばかりです。出力コンデンサあたりは、オーディオ用でも良かったかもしれません。もちろん単なる気分的な話ですが。
 電源トランスはRSコンポーネンツで扱っていた基板実装用トロイダルトランスを使っています。背が低いので、非常にコンパクトにまとめることが出来ます。格好も良いですね。

 ケースはタカチのブロンズ色のケースを使いました。このケースを使うとどの作品も似たり寄ったりの外観になってしまうのが難点です。ただ、コンパクトかつ丈夫なケースなので、実用本位に徹するということで、デザインは妥協しました。

 

特性

周波数特性

周波数特性

 −3dBポイントで9Hz〜100kHzと十分な特性です。変なうねりやピークもありませんでした。ゲインの実測値は+23dBで、したがってNFB量は11dBとなりました。

ひずみ率

ひずみ率

 100〜10kHzにおける歪み率はほとんど0.1%以下で、特に1kHzの小出力時においては0.01%以下と、市販のHi−Fiアンプに匹敵するすばらしい性能です。

 40Hzでは歪み率はやや悪化します。悪化とはいっても高々0.1%程度ですので、立派なものです。この低域での歪みが聴感にどう影響するのかは、興味のあるところです。

 

矩形波応答

矩形波応答1

 8Ω負荷時の10kHz矩形波応答波形を右に示します。リンキングもなくきれいな応答です。

矩形波応答2

 容量負荷に対する安定度を見るため、負荷を8Ω+0.22μFとした時の応答が右の波形です。若干リンキングが見られますが、発振するほどではありません。

矩形波応答3

 もっと厳しい条件でのテストとして、負荷を0.22μFのみとした時の応答波形を右に示します。さすがにリンキングが激しくなっていますが、発振はしていません。

 もう少し安定度が欲しいところですが、実用上は問題ないと思います。

 

試聴(プラセボ入り)

試聴中

 メインスピーカーのNS−1000Mにつないで、ヒアリングをしました。自作アンプですので思い込みがふんだんに入っていますが、一応インプレッションを記しておきます。音について触れないというのも、さびしい話ですので・・・。

 見た目や使用素子からは想像できないぐらい、まともな良い音です。外見と音質とのアンバランスに戸惑うぐらいです。パワーが2.5Wと小さいのですが、うるさいぐらいに鳴らしても特に不満は感じられません。普通に鳴らすには十分だと思います。

 デノンのPMA−390Vと比較すると、低音の鳴り方が少し違うように聞こえました。このアンプのほうが、低音楽器が良く聞こえるような感じです。これは低音の歪みのせいかもしれません。ただ歪んだ感じはまったくなく、なぜかリアリティを感じさせる低音です。

 試聴を続けるうちに、だんだん音の優劣などどうでも良くなって、単純にこの音を楽しめばよいという気分になってきました。まあそのぐらい心地よい音を聞かせてくれたと言うことで、このインプレッションを終えたいと思います。