前回の熱対策以来すっかり記事を書くのをさぼってしまったファイルケースPCですが、その間にも職場に持っていって事務用PCとして使ったり、最近では自宅のサブマシンとして活用したりと、予想以上に活躍しています。簡単に持ち運べて、スリムですきま家具的な使い方が出来るなど、使い勝手は思った以上に良いものがあります。
ただいろいろ活用していくと不満になってくるのはCPUのパフォーマンスで、C3の733MHzでは何かと不満に感じるのも事実です。そうかと言って筐体スペースも冷却能力も電源容量も制限の多いファイルケースPCですから、普通の自作PCのように気軽に高クロックCPUに交換というわけには行かず、熱がこもらないように消費電力には注意を払う必要があります。
そういう訳で、、省電力を保ちつつファイルケースPCの更なるパワーアップを目指したいと思います。
さっそくジャンク箱をあさって、ソケット370で適当なCPUを探した結果、以下のCPUが交換候補になりました。
CPU名 | コア名 | Clock | L1/kB | L2/kB | TDP |
C3 | Samuel2 | 733MHz | 128 | 64 | 10.6W |
C3 | Ezra | 800MHz | 128 | 64 | 8.5W |
C3 | Ezra-T | 1GHz | 128 | 64 | 12W? |
C3 | Nehemiah | 1.2GHz | 128 | 64 | 19.0W |
Celeron | Mendocino | 300MHz | 16+16 | 128 | 19.1W |
Celeron | Coppermine | 533MHz | 16+16 | 128 | 11.2W |
PentiumIII | Coppermine | 1GHz | 16+16 | 256 | 26.1W |
Celeronの1GHzも持っていたのですが、マザーボード(Shuttle FE22)の対応の関係で起動せず、残念ながら候補外となりました。C3の1GHz(Ezra-T)と1.2GHz(Nehemiah)コアも起動画面では認識できていませんでしたが、一応規定のクロックで起動出来ていたので一応よしとしました。
右の写真は測定の様子です。
各CPUにおける、PC全体の消費電力の実測値を下のグラフに示します。
以前紹介した簡易電力測定アダプタで行って、待機時とSuperπ実行時の両方について、測定を行いました。
C3の1GHz,1.2GHzを除くと、ほぼTDP通りの順番になっているのが見て取れます。待機中の消費電力については、インテルCPUの方が案外少なくて、インテルの省電力技術の一端を垣間見ることが出来ます。
C3の1GHz,1.2GHzの消費電力は、TDPから予想されるよりも多くなっています。この点については、BIOSがEzra-T以降のC3に対応していないため、単にSamuel2として認識して、規定の1.45Vではなく1.6Vと高めの電圧を印加しているためと考えられます。
全体を俯瞰すると、EzraコアのC3プロセッサ(800MHz)が最も省電力という結果となりました。
次は、肝心となる演算性能の比較です。定番ベンチマークソフト、HDBench3.30のCPUベンチマークで比較してみました。
予想通り、クロックあたりの性能はインテルの方が遥かに優れているという結果になりました。特に浮動小数点演算性能については、1GHzのC3を以ってしてもCeleronの533MHzにすら及ばないです。まあこれは性能よりダイサイズと省電力を優先したC3の設計方針なのですから、C3が良くないと言うより設計通りの結果だったと言うべきです。グラフから見ると、C3の866MHz位がCeleronの533Aに相当すると言うことになるかと思います。
C3もNehemiahコアになると、整数演算、浮動小数点演算ともに改善されているのが見て取れ、1GHzのEzra-Tコアをかなり引き離し、PentiumIII/1GHzに迫る性能です。FE22がNehemiahコアに対応して、正規のコア電圧で動作させることができれば、省電力さも兼ね備えられたのですが・・・。この点に関しては、FE22のBIOSの更新がない以上、残念ながら諦めるしかありません。本当に残念です。
消費電力測定時にSuperπを使ったので、ついでに104万桁の計算時間も計測しました。
Superπは浮動小数点を多用する重量級ソフトで、C3の設計方針とはまったく逆の方向性を持つソフトです。案の定と言うべきか、SuperπにおいてC3の性能は極端に悪いと言う結果となりました。したがってC3は、浮動小数点演算を多用する大規模ソフト、たとえば画像のエンコードとか物理シミュレーション、3Dグラフィックなどにはまったく向いていない事は明らかで、グラフからすると、こういう用途ではCeleronの300AMHzにも及ばないことが分かります。
やはりC3は浮動小数点演算の頻度の低いビジネスやネットワーク等に活用するのが最も適していると言えそうです。
ベンチマークからするとPentiumIII/1GHzが最も良いのですが、C3(733MHz)より10W以上も消費電力が増えるのは、特にファイルケースが放熱に難があり熱がこもりやすいことを考えれば、とても採用するわけにはいきません。消費電力を考えれば、Celeron533AMHzかC3(800MHz)のどちらかになるかと思いますが、マルチメディアやゲームまで視野に入れればCeleron、ビジネス・ネットワーク分野に用途を限定すればC3と言う選択になるでしょう。ただC3より良いとは言っても、Celeron533AMHzでは最近のCPUの足元にも及ばないので、マルチメディアやゲーム向きというのもあまり意味のある話ではありません。そう考えると、消費電力が一番低いC3にして、ビジネス・ネットワーク専用機として活用するのが最も妥当と言うことで、ファイルケースPCのCPUとしてEzraコアのC3(800MHz)を使うことに決めました。性能的にはわずかな改善となってしまいましたが、それなりに根拠を持って選定できたと言うことと、消費電力も下がったということで、これで良しとします。