記 憶



      眠らない街ザナルカンド

       「ー!」
       「バド!どうしたの慌てて?」
       「エボン様の所に行くって本当なの?」
       「うん。あたしの召喚士としての力を伸ばしたいからって」
       「僕には来てない・・・・」
       「えっうそ!バドの方が力あるのに・・・」

       「・・・・・、行かないでよ!一緒に学校に行こうって言ったじゃないか」
       「バド・・・・でも・・・行かないって言っても良いのかな?」
       「それは・・・・そうだ!シューイン兄ちゃんに聞いてみよう。
        もう少ししたらフリッツの合宿から戻って来るって言ってたでしょ?」

       「うん!明日には戻るって!
        でもすぐにレンお姉ちゃんのトコに行ってパーティするって言ってた。あたしも行くんだ」
       「へえーなんのパーティなの?」
       「レンお姉ちゃんの歌姫デビュー記念!」
       「おっ!やっと決まったの!よく許してもらえたね。たしかレン姉ちゃんは僕やより
        召喚士として能力が上のはずなのに」

       「そうなんだよ。よく解んないけどシューイン兄ちゃんもずっとイライラしてた」
       「ふーうん・・・あっ!!早くしないとコンサート遅れるよ!」
       「わっほんとだ!」

       二人は慌ててスタジアムへと走った。






      
       「シューイン帰ってるかな?」

       バドはの事を相談しようとの家の庭にある、離れのシューインの部屋に行こうとしていた。
       するとシューインの怒鳴り声が聞こえてきた。

       「俺は認めないからな!父さん達はどうして断らなかった?が可愛くないのかよ!」
       「シューイン!私達だって断れるものなら・・・・」
       「俺は絶対にをエボンの所には行かさない!大事な妹を祈り子になんかさせない!」

       シューインは部屋を飛び出してバドが立ち尽くしている庭へと走って来る。

       「うわっ!!」
       「バ、バド?どうしてここに?」
       「僕・・・・・」







      現代のスピラ キーリカ

       「う、うーん。バ・・ド・・」
       「ちょっと!大丈夫かい?」

       は見知らぬ女の声で目を覚ました。

       「やっと気が付いたみたいね。ゆすっても起きないから焦ったわ」
       「・・・・こ・・こ・・は、どこ?」
       「ここかい?ここはキーリカだよ。貴方・・・船から落ちたのかい?」
       「キーリカ?し・・らない・・。あっ!おにいちゃ・・ん!」
       「ここには貴方しか流れ着いてきてないよ・・・」
       「そんな・・・」

       はその言葉に愕然としてまた意識を手放した。



       その夜

       「色々、ありがとうございます」
       「いいのよ。それより貴方、何処からきたの?キーリカを知らないなんて・・・・」
       「私、ザナルカンドのブリッツスタジアムでブリッツを見てたんです。
        そしたら急に地鳴りがなってスタジアムが崩壊して、モンスターが現れて
        逃げてたらすごい大きな物体に引き寄せられて・・・・」

       を助けた女はザナルカンドと聞いて驚いた顔をしたがすぐにその驚きの表情は消えた。


       「貴方・・・・シンの毒気にやられたのね。ザナルカンドから来たなんて・・・・ありえない」
       「シンの毒気?それは何ですか?それにありえないって・・・・」
       「ザナルカンドは誰もいない。あそこに行くのは召喚士だけ・・・」
       「召喚士?」

       「ふうー・・・・シンの事も召喚士の事も覚えていないなんて。よっぽどシンに近寄ったんだね。
        でも・・・おかしいね・・・・」
       「えっ!?」
       「シンが現れたっていう話は最近は聞かないのに・・・・」
       「そうなんですか・・・・」
       「まっ、怪我もないみたいだし・・・・少し休めば記憶も戻るでしょ。治るまで此処にいなさい」
       「でも・・・・」
       「行く当てないでしょ!あっだけどザナルカンドから来たなんて言わないようにね」

       「有難うこざいます。えっと・・・」
       「私はドナよ。貴方は?」
       「私はって言います」
       「ふーんね。宜しくね」
       「はい、ドナさん」
       それからはドナの作った夕食をご馳走になり眠りについた。

       


       次の日
      
       が目覚めるとドナは起きていて朝食の用意をしていた。
       その隣には大柄な男がドナに叱られながら手伝っていた。

       「もう!バルテロ・・・貴方は手伝わなくていいから、皿でも出していて・・・・」

       バルテロと呼ばれた男はドナに言われ頷くと、テーブルに皿を並べ始めた。
       は声を掛けれずに見ているとバルテロと目が合った。

       「ドナ!・・・」
       「今度は何?」
       「彼女・・・・目が覚めたみたいだ」
       「おはよう。よく眠れたみたいね」
       「はい・・・・あの・・・」
       「心配しないで・・・この人は私のガードよ。バルテロっていうの。無口だけどとっても強いんだから」

       「ガード・・・・」
       「ガードも覚えてないの・・・・ガードって言うのは召喚士を守る人間の事」
       「へえー・・・」

       バルテロはペコリと頭を下げた。



       
       「ねえー・・・」
       「はい、なんですか?」
       「私とバルテロね、三日後に用事で寺院に行かなきゃ行けないの。
        戻るまで一人で大丈夫?一応は隣のおばさんに頼んでいるけど」

       「・・・・大丈夫だと思います。すいません迷惑を掛けて・・・」
       「気にしないでいいの!それより村を案内するわね」

       ドナとバルテロはが困らないように、会う人一人一人にの事を頼んでくれた。
       は見るものすべてが新鮮に見えた。しかし何かが足りないそんな違和感を感じるのだった。



       はその疑問をドナに聞いてみた。

       「機械?そんなものは使わないわ。教えに背く事になるもの。エボンの教えは絶対よ」
       「エボン・・・・私・・エボンを知ってる・・・・」
       「そりゃあスピラの者なら誰でも知ってる事だからね」
       「ちがうの・・・・何か・・・大切な事が・・・・」

       「焦らない方がいい」
       「バルテロさん?」
       「シンの毒気は中々ぬけない。ゆっくりと治した方がいい」
       「はい・・・・」

       けれどもの頭の中には”エボン”という言葉が残った。
       その日、ドナはにスピラの常識を教えてくれた。。


       「うーん昨日は参ったな、ドナさんてスパルタだよ。
        あんなに頭にイロイロ詰め込んだのテスト前だけ・・・・」

       はキーリカの船着場に来ていた。
       慣れてはきたものの自分を見る村人の目にストレスを感じていたのだ。
       ボーっと海を見ているとブリッツボールが漂ってきた。

       「これっ!」

       は何故か嬉しくなってボールを拾い上げた。

       「ここにもブリッツがあるんだ・・・」

       は何も解らないと思っていた場所に知っている物を見つけ嬉しくなった。

       「あっ!あったー」

       ボールを捜していた子供達が駆け寄ってくる。

       「これ君達の?」

       はそう言ってボールを子供達に渡した。

       「ありがとうお姉ちゃん!」
       「いいって・・・ブリッツの練習してたんだ」

       「うん!僕達大きくなったらキーリカ・ビーストの選手になるんだ」
       「へえー凄いね。私のお兄ちゃんもブリッツの選手なんだよ」

       「えー!ほんとなの?何処のチーム」
       「えへへ・・・あのね、ザ・・・」

       はドナの言葉を思い出して、名前を言うのを止めた。

       「ザ?ねえ?どうしたの?」
       「ごめん、今度、本人を紹介するからそれまで内緒」
       「えー、ちぇっしょうがないなー。絶対だよ」

       子供達はそう言うと、に手を振って去って行った。


       「うーんここで生活するの大変そう・・・・」

       は自分の事を説明できないもどかしさを感じた。
       ボーっと子供達の練習を見ていたの服を何かが引っ張った。

       「エッ?」

       「お姉ちゃん・・・・ブリッツ好きなの?」

       「うん、大好き」

       「あたしも。でもまだ小さいからって仲間に入れてくれないんだ」
       「そうなんだ・・・・じゃあ、お姉ちゃんがとってもカッコいい応援の仕方を教えてあげる」

       「ほんと!やったー!」

       は少女の親が夕食を知らせに捜しにくるまで、その少女にイロイロと教えてあげた。




       ドナ達が寺院に行く朝になった。は何故か胸騒ぎがした。

       「ねえドナさん、危ない事するわけじゃないんだよね?」
       「心配しなくても大丈夫よ。バルテロもいるし」

       「でも・・・・私・・・何かが起こる気がして、あたしの勘てよく当たるんだよ」
       「きっとは心細くなってるのよ。安心して明日には戻るから」

       ドナとバルテロはの心配をよそに寺院へと向かってしまった。



       は胸騒ぎが消せないまま、また船着場に来ていた。

       (なんだろう・・・・ドキドキする。そうあの時みたいに)

       は此処に来る前の事を思い出していた。

       (まさか・・・・あの時見たいな事が起こるの?)

       その嫌な予感には慄いた。


       そんなに昨日の少女が声を掛けてきた。

       「お姉ちゃん!」
       「マヤちゃん!」
       「昨日はどうもありがとう♪お兄ちゃんに話したら”覚えたい”って言って
        向こうで待ってるの。教えてくれる?」
       「もちろん!」

       は嫌な考えを頭の隅に追いやり、マヤと手をつないで彼女の兄の待つ所に向った。


       その後の悲劇をまだ知らずに。