鎮 魂



      それは突然やって来た。
      子供達と遊んでいたの耳に悲鳴が聞こえた。

      「キャー」
      「逃げろー!!」

      逃げ惑う人々。はマヤを抱き上げると咄嗟に走り出した。

      「お姉ちゃん・・・」
      「マヤちゃん、しっかりつかまってて」

      隠れる所を探ていたは一軒の家をみつけて飛び込んだ。
      その瞬間ごう音と共に家が大きく揺れた。

      「きゃー怖いよ」

      はマヤをギュッと抱きしめながら体を丸めた。
      それと同時に二度目のごう音が鳴り響き天井から破片が落ちてきた。

      (何なのこれは?地震?)

      「シンだ!!」

      の疑問は外の悲鳴のような叫びが答えてくれた。

      「シン!?どうしてここに!?」

      の疑問に答える者はなく、三度目の揺れでは意識を無くした。

      
      「船が着いたぞー!!」

      シンの起こした津波で壊滅したキーリカの船着場にビサイド島から出航したリキ号が
      ボロボロになりながらも辿り着いたのだ。

      「ひどいな・・・・・」
      「ああ・・・・」
      「さあ、降りましょう。やる事はたくさんあるんだから」

      黒いドレスを身にまとった女性が立ち尽くしている仲間を促して船を降りた。

      「ああ 召喚士様・・・・・」

      船を降りた一行に島の長老が近寄って行き、一行の中の召喚士の少女をみつけ縋りついた。
      少女は嫌な顔一つ見せずに長老に声を掛ける。


      「たくさんの島の者達が死にました。
       どうかお願いです、亡くなった者達が安らかに旅立てるように異界送りを・・・・」

      「分かりました。案内して下さい」
      「ユウナいいの?貴方まだ一回もした事ないでしょう?」

      ユウナと呼ばれた少女は心配して聞いた女性に微笑んだ。

      「ルールー心配しないで。私、ちゃんと出来るから。それにこれは召喚士としての役目だから」
      「そう・・・分かったわ。そばについててあげるから行きましょう」

      ユウナとルールーは長老に連れられて死者の安置されている場所へと向う。

      その後にユウナを護るようにロンゾ族のキマリが続いた。

      「おい行くぞティーダ!」

      「なあワッカ、異界送りってなんスか?」
      「いいから黙ってみてろ。すぐに解るから」

      ワッカはティーダの腕を掴むとユウナ達の後を追った。



      ティーダが見た光景はとても不思議な光景だった。
      亡くなった人々は、一人一人布に包まれ海に浮かばされていた。
      ユウナは一歩一歩水面を歩いて行き杖に願いを込めながら舞始めた。
      ユウナの舞始めると辺りに小さな光が集まり始めた。
      その光景にティーダは息を呑む。

      (凄い・・・・あの光は何だろう?)

      ユウナの舞が終わりに近づくと辺り一面は光が広がっていた・・・・。
      そしてユウナの舞の終わりと同時に光は空へと昇って行くように消えていった。
      戻って来たユウナに生き残った島の人々が口々に感謝を述べた。
      その一つ一つに応えながら仲間の許に戻って来たユウナはルールーを見つめた。
      


      「よく頑張ったわねユウナ。立派だったわ・・・・」
      「ルールー・・・・」

      ユウナはルールーに抱きついた。

      「ユウナ・・・・今回は大目にみるけど、次は泣いては駄目よ。
       貴方は皆に期待されているのだから」
      「うん・・・・ごめんね。ルールーの顔みたら気が緩んじゃったみたい」

      ユウナは少し赤くなった目でそう言うとティーダを見つめた。

      「ユウナ・・・・俺・・・なんて言っていいか解んないけど、感動したっス」
      「うん・・・・」
      「よし・・・・後は、分かれて出来る事をやろう」


      ワッカはそう言うとビサイトオーラカのメンバーを連れて瓦礫の撤去に向った。

      「私たちは怪我人の手当てね。ティーダはどうする?」
      「一緒に行ってもいいっスか?」
      「もちろんよ。力仕事はお願いね」

      ティーダはルールーとユウナの後に付いて行くことにした。




      ティーダとユウナ達は怪我人が集められた家に向う途中に
      壊れかけた家の中から泣き声が聞こえるのに気付いた。

      「誰かいるっスか?」
      「怖いよー。動けないのー」

      「よし!俺が今からそっちにいくからまってるんだぞ」

      ティーダは壊れかけた板を飛びながら家に辿り着いた。

      「大丈夫か?」
      「うん。でもお姉ちゃんが・・・・」
      「心配しなくても大丈夫だから・・・・君は先に外に行くんだ」

      ティーダは少女を抱き上げると外で待っていたキマリに彼女を渡した。
      その動作も慎重にしなければ為らなかった。
      家が今にも崩壊しそうだったのだ。

      次にティーダはすぐに家の中に戻り倒れている少女を抱き上げた。

      「えっ!?」

      ティーダはその少女の顔を見て驚きの声を出した。

      「!!どうしてここに!?」

      しかしティーダはキマリの危険を知らせる声に考えるのを止めをしっかりと抱いて家から飛び出した。


      間一髪で脱出したティーダの許にユウナ達が駆け寄ったが
      少女をしっかりと抱きしめて泣きそうになっている彼を見て立ち尽くした。