1号機の第3次改造
2000年5月18日改訂
2000年5月16日公開

第3次改造

AMD K6-2/350
 2次にわたる改造で、Windows98マシンとしてもそこそこ使える改造286Vですが、最近(2000年5月)のパソコンは、5万円台でもCeleron/466MHz搭載という有様。Cyrix MII CPUコアは決してIntel P6コアと引けを取らないのですが、クロックが223MHzでは見劣りも目立ってくるようになってきました。
 そんな折り、ふらっと寄ったパソコン屋でAMD-K6/350MHzが格安で売られているのを目にして思わず衝動買いしてしまいました。さっそく改造286Vで使うことに。第3次改造はCPUアップグレードです。

CPU装着
 CPU装着は一般のPC/AT互換機の場合と全く同じです。あとはディップスイッチさえ設定してしまえば作業完了、のはずだったのですが、改造286Vでは問題が出てしまいました。というのは、装着したK6-2は、FSB100MHz×3.5倍の設定で350MHzで動作させるのですが、メモリーがFSB66MHz時代の旧式のEDO-DRAM(60ns)のSIMMであるため、FSB100MHzには対応していないのです。マザーボードにはDIMMスロットもあるので、PC100のSD-RAMを使えばいいのですが、マザーボードと電源のレイアウトの関係で、SD-RAMが電源と衝突してしまうため使うことができません。ものはためしとFSB100MHz×3.5の設定を試してみたのですが、残念ながら警告音が出て起動しませんでした。この段階で、FSB100MHzはあきらめ、確実な動作が期待できるFSB66MHz×5の333MHzに設定しました。

ベンチマーク
 クロックアップどころかクロックダウンでの使用となったK6-2ですが、それでもMII/233MHzよりは格段にパワーアップされているはずです。そこで、例によってEP82改/かず氏作のHDBENCH(Ver2.61)でベンチマークをとってみました。 (HDBENCHはEP82改/かず氏のサイト http://www.lares.dti.ne.jp/~ep82kazu/ 、もしくはVectorのサイト http://www.vector.co.jp/soft/win95/hardware/se032899.html で入手できます。)
結果を下に示します。Video系は32bitカラーでの数値です。
.ALLTextScrollDDReadWriteMemory
第2次改造(MII/233MHz)110561331221294202641113512241129275237483811789
第3次改造(K6-2/333MHz)126612086925805202401193711910129275215518412807

 少しわかりにくいので、MIIを100としたときのK6-2の値をグラフ化してみました。
 CPU性能の項目(浮・整)が向上しているのがよく分かります。特に浮動小数点演算の性能改善が著しいです。MIIコアが浮動小数点演算に弱いことがよく分かる結果です。

やっぱりクロックアップ
 K6-2/333MHz搭載マシンとなった改造286V、でもやはり元が350MHzで動作するはずなだけに、勿体ないことは否めません。規定クロックは越えてしまいますが、66MHz×5.5(366MHz)とか83MHz×4.5(374MHz)でも、案外いけるかもしれません。そんなわけで、さっそくクロックアップに挑戦してみました。
 最近のマザーボードはBIOSからクロックが変えられますが、AI5VG+は昔ながらのDIPスイッチでクロックと倍率を設定します。AI5VG+はCPUベースクロックとバスクロックが独立しており、CPUベースクロックが60,66,83MHzでバスクロックは66MHzに、75,95,100MHzでバスクロックはCPUクロックと同じ設定となります。何回も書いたようにメモリーの関係で95,100MHzは使用不可なので、CPUベースクロックとしては83,75,66,60MHzから選択となります。このうち75MHzは、マニュアルどおり設定しても、なぜか66MHz動作になってしまいました。マニュアルにCyrix CPU用に75MHzの設定が書いてあるところから、このクロックはCyrix以外は使えないのかもしれません。60MHzは使っても意味がないので除外です。結局66MHzと83MHzのみが使えるクロックということになります。両者ともバスクロック66MHzとなるので、クロックアップによって周辺がついてこれないことは無いはずです。
 クロックアップは、66MHz×5.5(366MHz)、83MHz×4.5(374MHz)、83MHz×5(415MHz)の順にトライしていきました。結果から言うとすべて何事もなく起動し、HDBENCH、Memory Speed、coretest99といったベンチマークテストもクリアしました。
 ではさっそくベンチマーク結果を御覧に入れましょう。HDBENCHの結果を以下に示します。
.ALLTextScrollDDReadWriteMemory
66×5.0(333MHz)126612086925805202401193711910129275215518412807
66×5.5(366MHz)132732295028390202521178011966129275463525814000
66×5.5(374MHz)12782234372898320245739711498129275278529114240
66×5.5(417MHz)13528260543221620264755411487129275248527215778

 表だけではピンとこないと思うので、66×5.0(333MHz)を100としたときの、各クロックでの相対性能をグラフ化したのが右の図です。
 CPU性能は、ほぼクロックに比例した結果が得られていますが、Video性能、特に円描画の数値がCPUベースクロック83MHz時に極端に悪化しています。

 では、メモリー性能はどうでしょうか。Coretest99でのベンチマーク結果です。
Read4k16k64k128k256k512k1M2M4M8M
66*5(333MHz)1262.11269.4202.9219.6245.0138.7112.7102.1101.8102.5
66*5.5(366MHz)1388.31346.7306.5303.7272.4177.4109.7101.6102.2102.5
83*4.5(374MHz)1416.91425.4372.9375.5144.0163.989.983.182.983.4
83*5.0(417MHz)1574.31517.2376.9308.4171.1116.393.283.683.183.4
Write4k16k64k128k256k512k1M2M4M8M
66*5(333MHz)1184.91269.282.190.8102.552.241.036.536.336.2
66*5(333MHz)1385.71397.8139.1139.7117.668.339.536.136.336.2
83*4.5(374MHz)1306.11427.1133.6133.055.662.836.233.633.533.5
83*5.0(417MHz)1225.11532.0133.2111.265.546.137.533.733.633.5

 分かりやすいように、右に各クロックでの性能変化を、333MHzを100%としたグラフにまとめてみました。
 キャッシュが有効な領域ではクロックアップによる効果がそこそこ出ています。しかしメインメモリー性能がもろに出る1M以上の領域で、特にCPUベースクロック83MHzだと、逆にアクセスが遅くなっています。また、キャッシュが効いている領域でもWriteアクセスの場合、366MHzが最も高速で、ベースクロック83MHz動作の374MHzや417MHzでは、逆に少し遅くなっています。

 これらのベンチマーク結果から、CPUベースクロック83MHzにおいては、グラフィック性能、メモリーアクセスともに遅くなり、CPUクロックをいくら上げてもあまり効果がないことが分かりました。予想ですが、マザーボードVI5VG+ではベースクロック83MHzにおいてもシステムクロックは66MHz固定であり、両者を同期させるためにCPU−システムバスのアクセスにいくらかのウエイトが入っていることが原因ではないかと思われます。
 いずれにしても、実行速度の点でメリットがないなら、CPUに負担のかかる高クロック動作の必要はないわけで、バランス的に最も良い結果の得られた366MHzが最適と判断し、このクロックで使っていくことに決定しました。

 この検討で感じるのは、クロックアップしたからといって、必ず全ての性能がアップするわけではない、ということです。たしかにL1、L2キャッシュが有効な領域では、クロックアップに比例して性能は向上します。しかし上の例でも分かるように、それ以上の領域ではチップセットの性格やメモリーの種類によっては、システム全体としての性能が逆に悪くなることもある、ということです。そして、実際Windows95/98/2000やMS-Officeといった、数十MBものメモリーを要求するOS、アプリケーションを使っていることを考えれば、他を犠牲にしてキャッシュの領域のみが速くなっても、あまり意味がないのではないでしょうか。

前へ  次へ

「エプソン286のAT互換機化改造記」の目次に戻る
トップページに戻る