恋のキューピット-松原団地駅を降りると
恋のキューピットは誰?
恋のキューピット
翌日は二人とも代休で休み。二人は何をしていたのでしょうか。
そして一日おいた、翌々日の学校からの帰り、雅夫が松原団地駅で電車を降りると、
偶然にもみほがいた。
同じ電車だったのだ。
「おとといは恥ずかしかったな。」
「そうね、びっくりしたわ。」
(天の声)
さて、ここで「恥ずかしかった」と「びっくりした」という言葉は、
全然意味が違うという事にお気づきであろうか。
実は(really、in fact)
『いいわね。お二人さん。若いって。』と指摘された時、
みほは、それまで自覚していなかった自分の気持ちに気がついてしまって、
びっくりしていたのである。
舌を出したのは、その照れ隠しだったのかもしれない。
(/天の声)
二人は以前のように松原団地の遊歩道を家へと歩き始めた。
実際にものさしで測れば、二人の物理的な距離は近くなってはいなかったが、
精神的距離は近づいたようだった。
「あのおばさん、ヘッドフォンしてたでしょ。何聞いてたか聞こえた?」
「疲れると聴力が落ちるからね。気がつかなかった。」
「ビージーズよ。」
「ふーん。ぼくもビージーズの曲は聴くよ。」
「えっ。私、ビージーズ大好きなの。
なんでだか、聞いていると、とっても落ちつくの。
小さな恋のメロディって映画、知ってる?
音楽はほとんどビージーズが作っているのよ。
もうすぐ終わっちゃうけど。」
と、みほは劇のセリフのように言った。
「FIRST OF MAYは知っている。映画の内容は知らないけど。」
「今度の日曜日どうかしら。小さな恋のメロディ。」
おばさんは恋のキューピットになってしまいました。
なんだか、話ができすぎているようですが、これはフィクションですから。
(天の声)同じ電車だったのは偶然かどうか、怪しいですよ。
ヘッドフォンからビージーズの曲が聞こえてたのも。
雅夫が「ビートルズじゃないの。」と答えても
「ビージーズもよ。」と答えればすむし、
たとえ、雅夫がビージーズを知らなくても、
映画を見に行くという結末にたどり着くストーリーを作るのは簡単だ。
頭の良い女の子が、1日、考えておけば。単なる推測に過ぎませんがね。
(/天の声)
Leaves have not fallen. And they have not fallen in love, yet.
(現在完了)
11月初めの遊歩道にはまだ、落ち葉は早く、
二人が恋におちいるにも、もう少し時間が必要だった。
ただ、みほはその恋の予兆を感じているようだった。
「じゃあ。今度の日曜日。」
以前のように、自然に、二人は別れていった。
たぶん、この段階では「好き」が最もあてはまる。
2週間後には「恋」かもしれない。
そして、2年後には「好き」でもない。
「恋」でもない。
「愛」のようなものに変わるのである。
(5月にメダルをとった。しかし、その時、みほはそばにいない)
But guess who cried,come first of May
初めてのデートの前々日。11月8日11へ続く
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。