オフコースのさよなら 伊勢へ
オフコースのさよならは、MOMOさんのHPで聴けます。さよなら。さよなら。もうすぐ外は白い冬。
寄りそい歩ける寒い日の息は白く
12月30日4時50分。
真っ暗な中で、雅夫は松原団地の階段の下で待っていた。寒くはなかった。
東京駅6時20分発の「のぞみ3号」に乗る人って、どんな人なんだろう。
階段を下りてくる足音がする。
あたりは、しーんと寝静まっている。
こんな時間に、下りてくるのは、みほしかいないだろう。
「お早う、雅夫君」「ああ。お早う」冬の息は白い。
二人は駅の方に向かって、歩き始めた。
松原団地の遊歩道は完全に落ち葉を落としていた。
オフコース さよなら
「雅夫君。オフコースの『さよなら』っていう曲、知ってる?」
「♪さよなら さよなら さよなら―。もうすぐ外は白い冬♪という歌詞は、聞いた事がある」
「その曲の中に、こんな歌詞があるの」
♪僕が―照れるから― 誰も―見ていない道を―
寄りそい歩ける寒い日が― 君は好き―だった―♪
聞いた事があった。甘く、切なく、つらい曲だった。
みほが雅夫の腕をとって、寄りそってきた。
さよなら は いつ?
「でも、その歌。その後、『さよなら』なんだろ」
「歌の中の話よ。現実世界の未来はだれにも、わからないわ」
「恋も、はかなく終わる時もある。それは誰にもわからない。かな。」
「命もよ」
「そう、かもしれない。でも、だからこそ、恋も命も大切にしたい。
いつか、恋は愛に変わる?
いつか、小さな命も立派な人間に成長する?」
「そうなれば、いいけど。答が出るには、長い時間がかかると思うわ」
「前に言ったけど。マラソンのゴールも、山の頂上も遠いんだ。
遠いから、ゴールに着く前に、たくさんする事がある。長い時間がかかる。
それが、楽しいんだ。」
「愛も人生も?ゴールは遠いわ」
「うん。愛は漸近線さ。永遠に交わらないように見える。でも、永遠に近づく事もできる。どう思うかは、その人しだいさ。」
気温は低いが風はない。冬山に登るには、いい気候条件だ。
みほの体温が、ふと、そんな事を考えさせた。
「駅が近づいてきた。」雅夫が言った。
「そうね」みほは、そっと、雅夫から離れた。
「みほは、英雄の娘として有名になった。
でも、僕にとっては、ただの幼なじみの女の子だった」
「だった?」
「そう、だった。
でも、『現実世界の未来はだれにも、わからない』だよね」
「さっき、私がそう言ったわ」
5時10分。
日の出まで、まだ、1時間半以上もある。
星の輝きは良く見えない。
雲っているのか、それとも、地上が明るすぎるからなのか。
答は、新幹線に乗る頃に、出るだろう。
ジョンレノン イマジン放送自粛 ジョンレノン命日 12月8日20へ続く
オフコースの意味
of courseなら、「もちろん」という意味だが。
off courseなら、コースを離れて、という意味。
「さよなら」を歌ったオフコースは、後者の意味で、
普通の人が行かない道を行く。という意味。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。