登山口までの交通機関としては、JR土佐山田駅からJRバスが大栃まであり、そこから村営バスが影まで運行しています。しかしながら、大栃〜影間は便数も少なくまた終点の影から登山口まで2時間近くかかることなどを考えると、大栃からタクシーを利用した方がいいでしょう。
徳島県側からの登山口としては東祖谷山村の名頃と菅生があります。いずれも国道439号線沿いの集落です。名頃から更に林道を車で走ればアプローチが短くなり2時間30分ほどで頂上に着き手軽に頂上が踏めますが、登山道周辺の自然や山登りの魅力という点では高知県側からのルートに比べ劣ります。(徳島の方には悪いですが、高知県側から登らずに「三嶺はいい山だ」といって欲しくないです。)
菅生からのルートは途中人工林が多くお勧めできませんが、バリエーションルートとして下山路に使うのも一つの方法です。
原生林の中を流れる谷に沿って登っていく三嶺頂上への最もポピュラーなコースです。三嶺登山の高知県側の登山口の中心となっている光石登山口から10分ほど降ると私たちが「木戸の河原」と呼んでいる堂床野営場に着きます。
ここは砂防ダムの上流に土砂が堆積して出来た河原で、絶好のキャンプサイトになっています。三嶺には日帰りでも登れますが、ここにテントを張ってゆっくりと三嶺の自然に触れられることをお勧めします。堂床野営場から、フスベヨリ谷沿いに少し登ると長笹谷との合流点があり、すぐ上流で長笹谷にかかる橋を渡ります。橋を渡って少し登るとまたフスベヨリ谷が現れますがその手前に「さおりが原」への分岐があります。右へ行くと「さおりが原」を経由して「カヤハゲ」から三嶺へと通じる登山道です。フスベヨリ谷コースはまっすぐ進み、谷にかかる吊り橋を渡ります。
ジグザグの道を登り、うっそうとした竹林を過ぎると堂床小屋跡が右手に現れます。以前はここに山小屋がありましたが老朽化したため取り壊されて、今はコンクリートブロック作りのトイレだけが残っています。堂床小屋跡から少し登ると左側の山手の方へ登っていく綱附森への分岐の標識があります。「綱附新道」と名付けられているこの登山道は国土地理院発行の5万分の1の地図や登山用の地図とルートが違っていますので注意が必要です。
堂床野営場から40分足らずで八丁分岐に着きます。ここはフスベヨリ谷沿いに三嶺頂上に登るコースとカンカケ谷沿いにお亀岩へ登り稜線伝いに三嶺の頂上に登るコースの分岐点です。また、無人ですが物部村が設置した木造のちょっと感じのいい山小屋があり、三嶺登山のベースキャンプとして利用できます。八丁分岐からフスベヨリ谷へ少し下り、谷沿いの登山道を頂上を目指します。危なっかしい吊り橋で左岸側に出た後、丸木橋を右岸側に渡ります。右岸側に渡って少し登ると左手の山側からフスベヨリ谷に流れ込んでいる小さな沢があります。この沢が「ヌスビト沢」で沢登の対象としても面白い沢です。
八丁分岐からフスベヨリ谷や枝沢に架かった丸木橋を渡って沢沿いの登山道を1時間40分ほど登ると最後の丸木橋があります。以前は丸木橋がなく岩伝いに渡渉していました。丸木橋のおかげで便利にはなりましたが、反面、原生林の中のオアシスであった渡渉点で休むこともなくなり沢沿いのコースの魅力が薄れたことも事実です。最後の丸木橋を右岸側に渡るとそろそろ登りもきつくなりはじめ、やがて登山道脇の植生も変わり林床には笹が多くなってきます。ここらあたりがこのコースで最もきついところです。稜線を間近にした所に水場があります。一気に稜線に出たいところですが日本一といわれる美味しい水で喉を潤し、一息ついて稜線へ急ぎます。
登り詰めたところは私たちが「希望のコル」と呼んでいる小さいコルになっています。今までの見通しの利かない坂道と違って展望の開けた尾根は何となく希望が湧いてきます。
頂上はもう目の前です。
(降り)
三嶺頂上(60分)上のはしの丸木橋(1時間20分)八丁分岐(20分)堂床野営場
(15分)光石登山口
(登り)
光石登山口(10分)堂床野営場(30分)八丁分岐(30分)カンカケ谷渡渉点(1時間40分) お亀岩(30分)西熊山(1時間30分)三嶺頂上
(降り)
三嶺頂上(1時間30分)西熊山(20分)お亀岩(1時間10分)カンカケ谷渡渉点(30分) 八丁分岐(35分)光石登山口
フスベヨリ谷コースの途中からさおりが原を経由して、カヤハゲから西に伸びる稜線に出た後カヤハゲ(標高1720m)で県境の尾根に出て、最後に三嶺南稜の急坂を登って頂上に至るコースです。
途中、アセビの群落やトチの大木、ブナ林、ダケカンバの林など林相の変化が楽しめるコースです。
堂床野営場から、フスベヨリ谷沿いに少し登ると長笹谷との合流点があり、すぐ上流で長笹谷にかかる橋を渡ります。橋を渡って少し登るとまたフスベヨリ谷が現れますがその手前に「さおりが原」への分岐があります。まっすぐ行く登山道がフスベヨリ谷沿いに頂上に至るコースで、右のルートがさおりが原への道です。
のっけからきつい坂ですので、体が暖まってない時など調子を狂わさないようにゆっくり登りましょう。
大きなアセビの木の群落の中を登ると小さい尾根に出ます。後は緩やかな登りになって、堂床野営場から60分でさおりが原に着きます。
さおりが原は、標高1162mの山の中腹に出来た凹地で、中を小川が流れておりゆったりした気分になります。ただ夏は鬱蒼とした感じで「原」というイメージからはかけ離れた状態になります。1975年ころまではこの凹地の統一された呼び名はなく、各山岳会が勝手な呼び方をしていました。1975年に高知営林局がここまで長笹林道を延長し駐車場を設置しようと計画したため、これに反対して三嶺を守る会がこの地域の自然を守る活動を始めたのですが、その時高知大学ワンダーフォーゲル部が使っていた「さおりが原」という呼び名を統一して使うことにしたのがさおりが原の由来です。
高知大学WV部はアイドルだった歌手の名前から「さおりが原」と呼ぶようになったと当時聞きました。
さおりが原からトチやケヤキの大木が立ち並ぶ中を30分ほど登るとカヤハゲへ登る道とフスベヨリ谷への分岐があります。なだらかな道をそのまま行くとカヤハゲから西に伸びる尾根を回り込んでフスベヨリ谷へ出ます。右手の坂になった方がカヤハゲへの道です。
分岐から20分ほどで尾根に出ます。ここらあたりはブナ林からダケカンバの林へと林相の変化が楽しめます。樹林帯を抜けコメツツジが現れ出すとカヤハゲはもうすぐです。
稜線に出てから1時間ほどでカヤハゲに到着です。カヤハゲからは、重量感のある三嶺の南面が望めます。
カヤハゲからは一度急坂を降った後、再び登りになります。頂上までは県境の尾根伝いに約1時間ですが、頂上のすぐ手前は胸突き八丁の急坂で、しかも足元が悪く鎖がかかっているところもあります。くさりをあてにせずにゆっくり慎重に、足元を確かめながら登りましょう。くさりを過ぎれば頂上は目の前です。
(登り)
光石登山口(10分)堂床野営場(60分)さおりが原(50分)カヤハゲ西尾根稜線
(60分)カヤハゲ頂上(60分)三嶺頂上
(降り)
三嶺頂上(30分)カヤハゲ(1時間40分)さおりが原(50分)堂床野営場(15分)
光石登山口
三嶺の魅力を味わいたいという方にはあまりお勧めできるルートではありませんが、標高1460mの白髪山登山口まで車で登るためアプローチが短縮され手軽に三嶺に登ることが出来るルートです。
登山口から白髪山の頂上までは約40分ですが急坂の連続です。頂上の稜線沿いにブッシュがあり視界を北と南に分断されますが、南側からは剣山に至る縦走コースや石立山を望むことが出来ます。南側の視界に入る所は稜線沿いのごく一部を除いてほとんど自然林を伐採した後にスギ、ヒノキを植林した山々で寂しい思いをします。
頂上からブッシュをかき分けて少し北に降りると大きな岩の上に立つことが出来ます。ここからは白髪山、三嶺、綱附森で囲まれた原生林を見ることが出来ますが南側の殺風景な山々と比べると心が和みます。
白髪山から県境尾根の白髪分岐まではほとんどアップダウンのない尾根道で、30分ほどで白髪分岐に着きます。白髪分岐から三嶺までは剣山〜三嶺の縦走コースとして利用されている登山道になります。
分岐から一度韮生越に下った後再びカヤハゲへの急坂を登りますが、分岐からカヤハゲ頂上まで40分ほどです。ここからは約1時間で頂上ですが、さおりが原コースでも紹介しましたが頂上直下には鎖のある足元の悪い急坂がありますので、あまり先を急がずゆっくり登って下さい。
(登り)
白髪山登山口(40分)白髪山頂上(30分)白髪分岐(40分)カヤハゲ頂上(60分)三嶺頂上
(降り)
三嶺頂上(50分)カヤハゲ頂上(40分)白髪分岐(30分)白髪山頂上(30分)白髪山登山口