三嶺の紹介


 三嶺(さんれい・みうね)は 高知県香美郡物部村(ものべそん)と徳島県東祖谷山村(ひがしいややまむら)にまたがる標高1893mの山です。

 三嶺の魅力は、何といっても「手垢に汚れていない」ということでしょう。四国には、西日本一の高峰石鎚山(1,982m)や剣山(1,955m)瓶ヶ森(1,897m)といった秀峰がありますが、いずれもスカイラインや林道、リフトなどが整備され、本来の山の魅力を著しく失っています。
 そうした中で三嶺は、高知県側から見れば、物部川源流の人里からは見えない奥まった位置にあったこと、徳島側からは「剣山のまだ向こうの遠い山」であったことなどが幸いして、日本の高度成長期における開発の魔手からかろうじて逃れることが出来ました。それでも、昭和50年代になって、林道を延長したり自然林を伐採し、人工林にしていこうという動きがあり、また最近では、平成12年(2,000年)に、東祖谷山村によって三嶺中腹へロープウエイの設置が計画されるなどの危険な状態がありました。
 これに対し、高知県側では、昭和50年(1,975年)に登山者や自然愛好者によって 「三嶺(さんれい)を守る会」が結成され、自然保護の活動に取り組み、今の姿をとどめることが出来ました。また、徳島側でも、ロープウエイ計画に対して、平成12年に「徳島三嶺(みうね)を守る会」を結成し、全国の登山者から寄せられたロープウエイ反対の声を背景に、計画を中止させることが出来ました。  このような努力が続いた結果、今では「四国で最も自然が残された山」として、多くの登山者に愛される存在になっています。




  三嶺は「さんれい」か「みうね」か
 三嶺は、もともと地元では「みうね」と呼ばれていたようですが、高知県側の登山者は「さんれい」と呼びます。徳島側の登山者は「さんれい」「みうね」の両方を用いていたようですが、守る会の結成にあたって、「みうねをまもるかい」としましたので、最近は「みうね」と呼ぶ方が多いのでしょうか?
 地名は一つの文化ですので、そこを利用する者が勝手に読み方を変えるのは良くないかもしれませんが、私は「さんれい」という音の響きがこの山ぴったりしているように思います。高知の登山者が「さんれい」と呼んでいるのも同じ気持ちだからでしょう。

   三嶺の本当の魅力
 高知県の登山者にとって、三嶺の魅力は何といっても途中の登山道周辺の森のすばらしさです。
高知県側の主な登山口である光石(ひかりいし)からは、フスベヨリ谷沿いに登るコースと、カンカケ谷沿いにお亀岩に登り県境稜線に出たあと、尾根沿いに頂上に至るコースがあります。いずれも谷沿いの原生林の中のコースで四季を通じて森の魅力を堪能することが出来ます。
 最近、山の案内書などでは徳島県側の名頃(なごろ)からの登山ルートが紹介されることが多いようですが、徳島側からの登山コースは、この森の魅力に欠けており、三嶺の本当の姿を知っていただきたい者から見れば不満の残るコースです。
といっても、頂上からの眺望は、どちらから登ってきた登山者にも分け隔てなく楽しませてくれます。

  三嶺の四季
 三嶺は四季を通じて楽しめる山です。急坂はあるものの、岩場のような危険な場所はありませんので、時間さえかければ初心者でも登ることが出来ます。
 春から夏にかけては、足元の植物や滴るような緑を楽しみながら登ることが出来ます。また、10月中旬からは紅葉のシーズンで、原生林のブナやカエデの仲間の黄葉・紅葉を楽しめますし、稜線のミヤマクマザサの中に点在するコメツツジの紅葉は見事です。
 写真は、1980年12月の三嶺ですが、このような積雪を見ることは最近少なくなりました。積雪期でもアイゼンを必要とする急斜面はありません。ただ、思わぬドカ雪が降った場合など、ラッセルを強いられることがあります。登山者の多い山では、先行者のラッセルを利用させていただくことが出来る場合もありますが、三嶺ではそんなおいしい話はまずありません。雪の時は麓から頂上までラッセルすることを想定して挑戦してください。


目次

登山案内
三嶺の自然
三嶺の花たち
三嶺を守る会


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