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朝のキッチン当番も毎日担当が変わる。掃除から始まり、かまどの掃除と次の薪の用意、バターやパンやヨーグルトづくり、生ゴミをミミズファームに入れる、足りない食材や調味料を食料庫から出してくるなど、大忙しだ。朝のキッチン当番(毎日)以外にも、乳搾り(毎日)、夕食作り(週5日)、バター作り(週2日)などの中から、週に2回、いずれかの当番を受け持つ。これは台所に当番表があるので、各自好きな日と仕事を2つ選んで、書いておく。鶏の世話と卵の回収も、全員交代で行っているようだった。また金曜はコミュニティのワークデイ(共同作業日)だ。皆で、薪割りや草刈り、果樹の手入れ、メインハウスの掃除など、コミュニティ全体の仕事をする。みんなでやると、作業もお茶もワイワイと賑やかだ。そして、土曜の午前中は、野菜畑でのワークデイ。それ以外にも、個人個人の能力や希望による年間を通じての担当もあり、ウーフコーディネーター、鶏、食料買出、野菜畑、森林再生、育苗、みみずコンポスト、果樹、ハーブ、種採り、草刈り、水など、生活していくために必要なことをみんなで支え合っている。 |
これだけのコミュニティの作業がある中で、仕事や生活はどうしているのだろうか?夕食のテーブルでみんなに聞いてみると、カウンセラー、大学教授、発達心理学の研究、コンポストトイレの販売、衝突解決専門家など、社会福祉に関係する仕事が多かった。発達心理学を研究している女性、キーランは週3日だけ働いている。「学校を卒業したとき、本当はフルタイムの仕事を探していたんだけど、週3日の仕事しか見つからなかったの。でも、ダルマナンダに住んでいると支出が少ないから、収入が少なくてもなんとかやっていけるわ。今は、この暮らし方が気に入っていて、もうフルタイムをやるつもりはないの。畑仕事や自分のやりたいことをする時間がたくさんとれるし」とキーラン。他のメンバーも、共同作業日の金曜日と土曜日には仕事を入れないように調整しているようだった。 |
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「ゴーンゴーン」と夕方、ダルマナンダの敷地内に鐘が響き渡る。その音を合図に、皆、自宅からメインハウスへ夕食に集まってくる。ダルマナンダで週に5日、一緒に食べる夕食はすべてベジタリアン料理である。それ以外にも、小麦(グルテン)を食べない人、乳製品を食べない人のためのメニューも用意されている。夕食の前には「静かな時間」があり、みんなで肩を抱き合って円になり目をつむる。みんながその時間をどうとらえているのか私にはわからなかったが、私にとっては食事への感謝と、心を一つにし、おだやかな気持ちで食事の時間を迎えるための時間となった。食後、借りてきたビデオをみんなで見たり、冬至の日には子どもも大人も一緒に歌を歌ったりして楽しんだ。ちょうどクリスマス前だったので、クリスマスの曲をオーストラリア&ダルマナンダ風にアレンジしたものだ。「♪走れそりよ風のように 草の中を軽く早く〜♪」 |
ダルマナンダは協同組合として、メンバー全員で土地を所有している。メンバーになるには、1年間コミュニティに住んでみて、お互いに上手くやっていけるかを見た上で、メンバーズ・ミーティングで検討される。ダルマナンダのコミュニティとしての接着剤は、コミュニティを円滑に運営していくために力を注ぐこと。そして地球で暮らしていくために、それぞれの方法で何かポジティブな貢献をする(例えば持続可能な農業や、家庭教育、ヒーリング、教育、社会変革など)ということの2点だが、確かにそれをしっかりと理解できる人でないと今のコミュニティを継続していくことは難しいだろう。「コミュニティの仕事をしっかりとできるか、メンバーに好かれるか、対立したときにどう対処できるのか、ヒステリックになったりしないか、そういったことすべてが関係してくるの。もちろん希望者自身も、ダルマナンダでやっていけるのか、本当にこのコミュニティは自分が求めるものなのかなど、試用期間中にじっくり考えることができる。コミュニティはたくさんあるから、自分に合ったところで住むのがお互いにとってもいいことだと思う。だから1年では答えがでない時もあるわ」とエレン。私達が居る間にも、3家族と1個人がメンバー希望者として生活していた。メンバーに認定されれば、出資金は120,000ドルかかるが、コミュニティから出て行くとき、返ってくるようになっている。家は以前のメンバーから賃貸として借りるか、自分で建てるそうだ。 |