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ピーター家の一日は、7時の朝食ではじまる。お湯で煮たオートミールに、ブラックベリーのジャムや、カリンシロップ、3種類の種を粉にした「特製モーニングミックス」をかけて食べる。今まで食べたオートミールの食べ方の中で、一番おいしい。朝食後は、作業だ。8時〜10時半、11時〜1時半と5時間働く。春は野菜の種まき、秋は収穫や種取りや保存食作りなどある。ピーターはオーストラリアの種会社に種を売って、生活費を稼いでいる。夏はあまりすることがないので、結果的には体力仕事となる。畑の畝立て、水のパイプひき、森の道路の防火帯づくりなど、なかなかハードだ。「体力仕事は、初めの3〜4日がきついんだよ。自分の体だけでなく心も試される。でも1週間も過ぎたら、もっと楽しくなって前向きになって自分に自信が出てくる。現代の社会では、鬱や精神的な病が多いけれど、そういう人は頭を使わずに体を使うことがすごく大切なんだ。」とピーター。 |
ピーターの所には、持続可能な暮らしに興味がある人や、都会の雑踏を離れて静かな場所を求める人など、様々な人が訪れる。ピーターはどんな人でも受け入れることができる度量のある人だ。ピーターの家に来て、ピーターの生き方や考えを聞き、人生観が変わる人も多いのではないかと思う。 |
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お茶の時間や、食事を作るときは、薪で火をおこす。マッチがあるので、慣れれば一瞬だ。火の加減は、かまどの中央に置くか、端に置くかによって調整するが、基本的には普段の2倍くらいの時間をかけて、ゆっくり茹でたり焼いたりする。冷蔵庫がないので、じゃがいもやにんじん、たまねぎなど保存のきく野菜や、畑からサラダ用の菜っ葉などを直接とってきて作る。農家の食事がそうであるように、台所や畑にあるものでメニューを考える。本来の自然の暮らしは、メニューを決めてから野菜を買いに行くのではなくて、手元にある野菜からメニューを考えるものなのだ。同じ野菜ばかりが続いても、飽きないような料理法で。毎日じゃがいも料理をみんなで考えながら、旬もなにもなくなってしまった日本の豊かな食生活のことを思う。 ピーター家ではパンやジャム、シロップ、石鹸など、たくさんのものを手作りでつくる。もちろん、電気がないので、小麦粉は手作業で粉にする。1カップを粉にするのに30分程かかるので、ウーファーの間で小麦粉は別名「金の粉」と呼ばれていた。パンなんか作ろうものなら、全員総出で小麦粉挽きだ。 |
仕事が終った後は自由時間だ。川へ泳ぎに行ったり、散歩をしたり、本を読んだり、昼寝をしたり。ピーターは時々、町のネットカフェに店番のボランティアに行く。その代わりに、パソコンを使わせてもらうのだ。「パソコンを使うから電気がない暮らしなんてできない、と初めに思うのではなく、パソコンも使えて、電気がいらない暮らしをするにはどうしたらいいだろうと考えるんだよ。そこに創意工夫が生まれるんだ。実現のための道を探すんだよ。」 いい話を聞いても『確かに素晴らしいな。でも自分は○○だから、それは無理だな』と、考えることもあるかもしれない。けれど、できない理由は探せば無限とあるものなのだ。どうやったらそれを実現できるか、近づいていくことができるか、というプラス思考と創意工夫こそが大切なのだ。 |