このホームページを開設して間もない1998年11月のエッセー『犯罪統計』で、バイク盗難の統計資料を参照しました。当時、バイクの盗難件数が年間24万件もあったこと、さらにその件数が過去10年間変化がないこと、を指摘しました。
いま、それはどうでしょうか。1998年以降の統計を以下にまとめましたので、まずはその最上段「オートバイ盗」の行をご覧ください。
警察庁ならびに日本自動車工業会のホームページの統計資料、警察庁「犯罪統計書」より
1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 オートバイ盗 246,364 242,977 253,433 242,517 198,642 154,979 うち自動二輪件数 56,450 49,938 49,960 44,676 38,588 未発表 自動車盗 35,884 43,092 56,205 63,275 62,673 64,223 自動車盗検挙件数 18,210 15,241 11,415 13,390 12,791 11,931 自動車盗検挙率 50.7% 35.4% 20.3% 21.2% 20.4% 18.6% 二輪保有台数(126-250) 1,765,670 1,727,400 1,704,522 1,712,597 1,734,395 1,772,545 二輪保有台数(250以上) 1,243,277 1,269,232 1,288,399 1,308,417 1,334,354 1,352,199 新車販売台数(126-250) 68,871 56,409 75,887 85,598 95,294 90,814 新車販売台数(250以上) 104,744 93,681 83,963 85,612 82,961 75,598 なんと、件数で、2002年、2003年と連続してバイク盗難が減っています。それも、ただの減り方ではなくて、激減です。これは嬉しい数字です。このペースで盗難が減り続けてくれるなら、いずれこのサイトも役割を終える日が近いことでしょう。いったい、なにがあったのでしょうか。
当サイトには依然として被害報告が多く寄せられており、とくに上野・秋葉原で最近急増した、路上駐輪の大型バイクをわずかの時間で盗み去る犯行は、新たな手口として盗難件数を押し上げるものだろうとも想像しておりました。統計としてバイクの盗難件数が減ったという事実は、実感が伴わないのが正直な感想です。
同じく、このコーナーの2001年4月のエッセー『増えている?』で、自動車の盗難がそれまでの3万5千台から4万3千、5万6千と急増したこと、その結果、警視庁と税関が、盗難車の密輸を水際で阻止しようと連携協力することになったこと、を取り上げました。それが結果として功を奏したのでしょうか。
そうかも知れません。しかし、その発端となった肝心の自動車盗の件数はというと、6万台から減っていません。見方によっては、減ってはいないがこれ以上の増加を阻止している、と解釈することもできるかも知れませんが、それなら、なぜオートバイ盗だけ激減したのでしょうか。
自動車盗の検挙率を見ると、かつては50%くらいで落ち着いていたものが、盗難件数の増加に反比例するかのように減少して、ついには20%を割るところにまで来ています。これは、プロの窃盗団による、用意周到な犯罪の可能性を示唆するものと言えないでしょうか。
もしも、自動車バイクの盗難の大半がが組織的窃盗団によるものであり、かつ転売密輸目的ならば、それは海外の「顧客」の需要が変わってきた可能性もあります。いまや原付きバイクは中国製の安価なものが出回り、わざわざ日本から盗難原付きバイクを仕入れても、採算がとれなくなってきているのかも知れません。上の表で見るかぎり、原付きを除く自動二輪の盗難件数も同じように減少しているように見えます。昨年のデータがまだ発表になっていないので、これが興味深いところです。
でも、自動車盗難も高級車を狙ったケースが増えていると耳にしていますので、それと合わせて考えると、売値の張る高級四輪・二輪車にターゲットが移ってきている気配を感じます。バイク盗難件数が減少していることは歓迎すべきことですが、大型バイクは今まで以上に警戒が必要かも知れません。そう考えると、秋葉原で多発している大型バイクの盗難のケースと、符合するところがあるように思うのです。
250cc以上の中大型バイクの新車販売台数が減少傾向にあるのは、ひとつには逆輸入車を含む外車の販売が増えているせいもあるでしょう。400ccという日本独特の排気量車よりも、輸出の比率の高い大型バイクモデルは、海外市場向けに密輸の格好の対象になりえます。